母の浮気/114
良太は、母の膣内から、肉棒を抜いた。精液と愛液でテラテラと輝くそれを伴って、ごろりと母の隣に横になる。すると、母も身を横たえて、甘えるように寄りかかってくるのを良太は感じた。
「ああ、良太ぁ……すごかったぁ……」
良太は、母を腕の中に抱いた。行為後に女を腕枕するなどと、いっぱしの男のような気持ちになった良太は、その相手が実の母親であるというところが、嬉しいような、しかし、もしかしたらそうではないほうがいいような少し微妙な心持ちになった。、そのとき、
――あっ!
と唐突に思い出したことがあって、それは、久司の母のことである。良太は、久司の母から、童貞を卒業させてもらえるという約束をしていたのだった。再来週の土曜日だったな、と良太は思い出した。しかし、今となっては、もう童貞でもなくなったことだし、断った方がよかろうかと思った。
――うーん……。
久司の母親の容姿が脳裏に浮かんだ良太は、それは、いかにも、もったいないことのように思われた。とはいえ、彼女の誘いに乗れば、母との関係がぎくしゃくするのではないかという気もした。仮に誘いに乗るとして、母には断るべきか、それとも、こっそりと行くべきか。
迷っていると、良太は、アホらしい気持ちになってきた。というのも、母は、良太の知らないところで、いろいろやっているのである。だとしたら、自分だって、母の知らないところで、いろいろエロエロやってもいいのではないか。
――でもなあ……。
母には、自分以外の人としないように頼んだわけだから、それを依頼した以上は、こちらも信義を尽くすべきとも考えられる。
「何を考えているの、良太?」
母が隣から尋ねてきた。
「べ、別に何も」
「ウソよ。何か難しい顔してたわ」
「そう?」
「うん。お母さんに話して。裸同士で隠し事はなしでしょ」
良太は話すことにした。彼女に訊いてみることにしたのである。これも信義の尽くし方の一つだと考えるのは、さすがに都合がいいかもしれないが、それはそれとして、久司の母親から誘われているという具体的なことは言わずに、
「母さんは、おれが、母さん以外の女とするのは嫌だよね?」
と訊いてみた。「当たり前でしょ」という答えを予測していたら、
「ふふっ、好きな子がいるのね」
と母は早合点したあとに、
「全然そんなことないわよ。良太には、色々な人と、どんどん経験してほしいわ」
と言った。
「えっ、本当!?」
「本当よ。お母さんだけが、良太のことを独占するわけにはいかないでしょ。いくら、お母さんが良太のことを好きでも、良太と結婚するわけにはいかないんだから」
母の論点は微妙にずれているのではないかと良太は思った。母は、セックスするということを女性と付き合うことの延長線上に置いているようであり、息子が好きな女性と付き合うこと、その結果としての交わりを了承している格好だけれど、良太はそういうつもりではなかった。ただ、シたいだけである。しかし、母の誤解を良太は訂正しなかった。
「それで? どういう子なの、好きな子って」
「いや、たとえばの話で、別に好きな子なんていないよ」
「なあんだ」
母は、がっかりしたような声を出した。