クソザコ勇者の使い方~尋問官の裏の顔~
コツコツコツ。
「!!」
地下室に響く硬質な足音にカミルは思わず顔を上げた。
何度も聞きなれたブーツの足音。
もうこの地下に来て何日になったかもわからない。
ただ毎日毎日、女性に経験値を献上するだけの道具として生かされていた。
道具に服は不要と全裸にさせられ、餌は城で残った残飯を与えられていた。
顔の形が変わるまで殴られ、小さくされて死ぬ寸前まで踏み潰され、焼印を押され、果ては排泄物まで与えられ、人として扱われることは無い--もはや女性はカミルにとって恐怖の象徴とすら言えた。
逃げられるなら今すぐにでも逃げ出したい。
カミルにとってはそれが唯一の願いとも言えた。
そんな女性のみが履くことが許されたヒールの音。
カミルは今日は誰が来るのかと恐怖で歯を鳴らしていた。
ギィ。
重い扉が開かれ、見知らぬ女性が姿を見せる。
「……!! ……初めまして、噂の君が経験値製造機? 私の名前はアーシアよ。私を呼ぶ時はそうね……どう呼べばいいと思う?」
カミルの前に現れたのは青い軍服に身を包んだ金髪碧眼の美女だった。
スレンダーで長身の見た目は鋭く、それでいて青い瞳が特徴的だろうか?
何故かアーシアがこちらを見て衝撃を受けた様な表情をしていたように見えたが気のせいだろうか?
「ア、アーシア様でいいでしょうか?」
今までなら、誰もが自分のことを様付けで呼ぶように命令してきたので、カミルはいきなりの質問に戸惑ったが、今までの経験からそう答えた。
それでも答えがわからないから、コソコソ答えたが……。
「ふふ、アーシア様か……。悪くないかな。ご主人様でもよかったけど」
どうやら正解だったらしい。
カミルは内心安堵する。
もし不正解ならどんな罰を与えられたのか想像したくもない。
「ご、ご主人様ですか?」
今までない呼び方だった。
まるで所有物にされているかのような呼び方だ。
--様付けよりも惨めな気がする……。
「あぁ、気にしないでいい。私のことはアーシア様と呼べばいいわよ。さて、君の名前は? まだ自己紹介がないけど教えてくれる?」
「えっと、カミルです」
「そう……カミルと言うのね。上では経験値製造機としか言われていなかったから名前は知らなかったわ。たぶん、知ってる人間の方が少ないかもね」
アーシアがサラリと言い放った言葉にカミルは胸を深く抉られた。
自分がもはや完全な道具にされているのだと思い知られる言葉だったからだ。
知らずに頬に涙が流れる。
「そんな顔しないで? カミルは道具扱いされて悲しかったのかな?」
「は、はい……」
--当たり前だ。
何の罪も犯していないのに毎日○問される悔しさと理不尽さと悲しさとこんな能力を与えた神への憎悪等の負の感情が混然となって涙となってしまったのだ。
「カミル、辛かったのね……」
スッ、と暖かい手が頬に添えられ、涙を拭った。
「え?」
決して痛めつける強さでは無い優しい手の動きにカミルは思わず動揺する。
「カミルは本当に頑張ってると思うわ。辛い中、この国のために身も心も削ってるもの。もし女性なら勲章を与えられたと思うわ。カミルが男だから仕方ないけど、私は評価してあげる」
溢れる涙を拭いながら優しく語りかけるアーシアの言葉にカミルは涙が止まらなかった。
「うう! あぁぁぁぁぁ! アーシア様ぁ~」
女性上位国家では男はどれだけ国に貢献しても報われない。
それはわかっていた……けど、辛かった。
毎日、人間どころか生き物ですら無いかのような残酷な扱いを受けてきた。
泣いてもわめいても彼女達は徹底的に笑いながら責め立ててきたのだ。
でも、目の前の彼女--アーシアは褒めてくれた。
優しい言葉をかけてくれた。
カラカラの土に水が深く染み込むようにアーシアの優しい言葉はボロボロのカミルの心にこれ以上なく響いたのだ。
悔しいはずの涙は自分の存在が認められた嬉しさの涙に変わっていた。
「よしよし、好きなだけ泣いていいわよ? 私がちゃんと見ておいてあげるからね? 恥ずかしいとか情けないと思わず泣いていわよ?」
涙を流して泣くカミルを煩いと突き放さず、アーシアは優しく包み込むように頭を撫でてくれる。
それの優しさがカミルの涙を更に流させた。
そんなカミルを慰めながら、アーシアは鋭い目でスキルポイントを調べていた。
(これも精神的な責めに入ってる? 慰めてもスキルポイントが入ってる? う~ん、屈辱的に感じてるようには思えないけど……。もしかして、感情の起伏が条件なのかも? それに報告よりも入っている量が多いわ。負の感情よりも正の感情の方がスキルポイントが多く入ってくるってことかしら? もう少し調査が必要ね。まぁ、私として得意分野だからやり易いけど♪)
アーシアのカミルに向けていた慈愛すらある優しさの仮面の下から実験動物を眺めるような眼差しが覗いていたが、泣き続けるカミルがそれに気づくことはなかったのだった。
『甘毒』の渾名を持つアーシアは、得意の毒を持ってカミルの心を溶かしにかかる事を決める。
甘く離れられなくなる快楽と言う名前の猛毒で--。
◆
「ねぇ、カミルって女の子に気持ちよくしてもらったこととかあるの?」
「えっと……」
「ふふ、私に知られるのが恥ずかしい? 大丈夫よ? 君くらいの年齢なら童貞なんて珍しくないし?」
そう言われてカミルは顔を赤くした。
今までの女性とは明らかに違う感情だった。
アーシアに自分の恥ずかしい姿や過去を知られるのがとても恥ずかしく感じる。
ここにきて優しくされたカミルはアーシアに好意を持ってしまった。
極限状態の乾いた身体に入れる水分がこのうえなく美味しく感じるように、アーシアの優しい言葉はカミルにとってアーシアを特別な女性と感じさせるのに十分だった。
「は……い……ないです」
「あらあら、カミルは顔を真っ赤にして可愛いわね。カミルったら、恥ずかしいの? 童貞なのが恥ずかしいの? でも、この城でそんなことして貰えたわけないものね? だってカミルは人間扱いされてなかったものね? それにカミルが童貞なのは匂いでわかってたわよ? カミルってとっても美味しそうな匂いがするものね?」
ザクっ!
アーシアの言葉が再びカミルの心を抉る。
人間扱いされていない。
アーシアに言われると今までよりも遥かに強い衝撃を受けた。
その後に続いた言葉に疑問を持てないほどに--。
「私が訊ねたのはセックスした事があるかじゃなくてね?」
宙ずりにされているカミルの胸元へ白く長い指を伸ばして--。
コリコリ。
「んぁ!?」
未知の感覚にカミルは声を漏らした。
「ふふ、乳首を触られるのは初めて? こんな風に身体を責められたことはないの?」
コリコリコリコリ。
「んぁ! ん! な、ないです!」
カミルは悶えながらなんとか答えた。
吐息がかかるほどの側でアーシアに乳首を責められたカミルは痛みとは違うくすぐったくも、何処か気持ちいい感覚に困惑していた。
何しろ、女性=苦痛と屈辱を与えてくる存在、だったのだ。
その女性のはずなのに、しかも密かに好意を芽生えさせていたアーシアに気持ちよくしてもらうなんて……。
カミルのアーシアへの好意はさらに高まっていく。
「んふふ、可哀想なカミル。ただ道具にされていたぶられてご褒美ひとつ貰えなかったのね。哀れなカミル、搾取されて捨てられて……。だから、私が他の女の分も可愛がってあげるわね?」
甘いキャラメルの様な香りに頭がクラクラする。
コリコリコリコリ。
乳首を弄るアーシアの指がさらに早く動き出した。
「あ、アーシア様! ああぁ!」
人生で初めて他人に乳首を弄られる刺激にカミルは身体をくねらせる。
ガチャガチャと手足を捕らえている鎖が楽しげに地下室に鳴り響いていた。
だが、アーシアはカミルを責める手を緩めない。
「ほら? 逃げちゃダメよ?」
コリコリコリコリ。
「んぁぁ! あ、あぅ! ああぁ!」
乳首から伝わる未知の感覚にカミルは悶えた。
そんなカミルの耳元でアーシアが囁く。
「ねぇ? カミルって自覚してる? 貴方の大事な所が凄いことになってるわよ?」
アーシアはカミルの身体に張り付くように身を寄せており、その長い脚がカミルの下肢に巻き付いていた。
「あ、アーシア様ぁ! ああぁ!」
下肢を締め付けるアーシアの脚は器用に動き、細長くも柔らかな太腿でカミルのモノを刺激していた。
「ふふ、もうびしょびしょね? もうイきたいでしょ? それともまだ我慢してたいの? カミルも所詮は男よね。こうしてちょっと刺激してあげたら簡単に発情するもの」
コリコリコリコリ、と刺激されるにつれ、カミルのペニスが徐々に硬くなっていく。
遊び半分に毛を剃られ地肌をさらしていた男根が大きくなっていく様をアーシアがじっと見ている。
「いやぁ……見ないでぇ……アーシア様ぁ……」
顔を真っ赤にして懇願するカミルに対して、アーシアは妖艶に微笑みながら唇を舌で濡らした。
「カミルったら、そんな可愛い声で泣いちゃうの? そんなの女達が放っておくわけないじゃない。カミルがいけないのよ? だって、そんな可愛い顔で見つめられたら、とまんなくなるじゃない? それに身体は喜んでるんでしょ?」
アーシアはカミルに絡めていた脚を解くと、乳首を責めていた手とは逆の手でペニスを握りしめる。
「んひぃ!」
「あは♪ また可愛い声が出た。ほら? もうこんなに先走ってるわよ? ふふ、我慢汁がたくさん出てきて止まらないのね。可愛い赤ちゃんチンポは我慢ができないのね」
アーシアに優しく握られただけでカミルの先走りがだらだらと溢れて止まらない。
恥ずかしいのに!
気持ちいい!
女性に気持ちよくされたことなどないカミルは初めての快感に悶えてしまう。
そんなカミルを楽しそうに見つめながら、アーシアは再び乳首への刺激を再開した。
コリコリコリコリ、と乳首を弄られながらもペニスも扱かれるという二箇所からの責めにカミルは身体をのけ反らせて喘ぐ。
「ん! んぅ!」
鎖をジャラジャラと鳴らし、カミルが快感から逃れようとするが、アーシアの指使いは容赦がない。
「んぁ! ああぁ! うあぅ!」
乳首からの刺激とペニスからの刺激に悶えながらカミルは身体をくねらせることしかできない。
「ほら? イきたいでしょ? それともずっと我慢してたいの?」
コリコリコリコリ。
「ああぁ! んぅぅ! あ、ああぁぁ!」
アーシアに乳首を弄られながらペニスを扱かれてカミルは悶え続けた。
もう、すぐそこまで限界が来ている。
--イきたい……でも、イッても大丈夫なのか? イかしてもらえるのか?
だが、そんなカミルの葛藤もアーシアにはお見通しだった。
「もう、我慢しないで? それとも私の言う事が聞けないの?」
責めるような口調とは裏腹に優しく乳首とペニスを扱き続ける。
コリコリコリコリ、とアーシアの白い指がカミルの乳首を弄り、先走りで濡れたペニスをアーシアが扱いている。
「ん! ああぁ! イ……く! イかしてくらはぃ!」
もう限界だった。
カミルは無意識に腰を揺らして叫んでしまう。
「ンフフ! いいわよ! イってしまいなさい!」
「あ、ああぁ! イクぅ!」
ドピュッ! ビュルルルッ!!
カミルは身体を痙攣させながら精液を撒き散らした。
「あは♪ カミル、イッちゃったの? 私の命令に従えて偉いわよ?」
アーシアの手と床がカミルの出した精液で白く汚れる。
「ん……はぁ……」
肩で息をするカミルにアーシアが優しく声をかける。
「気持ちよかったかしら?」
「はぁい……アーシア様……ありがとうございますぅ……」
好きな人に快感を与えられる幸せにカミルはどっぷりとハマってしまっていた。
こんな優しくしてくれる女性がこの世にいるんだ……。
蕩けきった快感はアーシアへの好意を崇拝へと昇格しつつあった。
「ふふ、私のことが好きになっちゃったかしら?」
透き通る瞳に吸い込まれそうになる。
「はぁい、大好きですぅ……アーシア様ぁ」
蕩けきった脳にアーシアの言葉は深く深く染み込む。
もうアーシアのことしか考えられなかった。
優しくしてくれて、甘やかしてくれるアーシアはカミルにとって特別な女性になっていた。
「そうなのね。なら……私のモノにしてあげましょうか? 私だけのモノになるなら、もっと、優しくしてあげるかもしれないよ? もっと私に好きになって欲しいでしょ?」
「はい……アーシア様になら……」
所有されてもいい。
カミルは心の底からそう思ってしまったのだった。
カミルの心が完全に傾ききった手応えを感じたアーシアはニッコリと笑う。
「ふふ、なら私を今度は気持ちよくしてくれる? カミルならわかるよね? 女の楽しませ方、喜ばせ方を……ね?」
アーシアは妖しく瞳を光らせながら、耳許で甘えた声で囁くのだった。
[フルバージョン](クソザコ勇者の使い方~ドSな女の子様の玩具にされて~ | エムのアトリエ https://ina1.booth.pm/items/5933505)