わさび農園領主の日記 #13 ダーケストダンジョン後編~最後の戦い~
長く苦しい戦いも、いよいよ最終局面に到達した。
プレイ時間は70時間を超え、プレイ週数は94に上った。
だが、辿り着いた。
今、わさびは、ダーケストダンジョンの中心部にいる。
最後の戦いが、始まろうとしていた。
最後の攻撃
ダーゲストダンジョンへの4回目のアタック。
どんな敵が待ち受けているのか。
どんな構造のダンジョンなのか。
わからなかった。
だが、戦いに赴くメンバーは決まっていた。
レイナルド
ディスマス
ヨルガタ
ヴィヴェル
初期メンバーの二人と、最初に村にやってきた二人である。
信頼できる。今まで大きな功績を残した4人だ。
ナレーションも何も言ってくれない。
このゲートの向こうには何があるのか……
長い道だ。これまでにないほど長い。
なんだこの空間は。地の底に向かっているのに宇宙があった。
いや、仏教的な世界観だとすると、内部だからこそ宇宙なのかもしれない。
ここは全にして個。一にして全。始まりと終わりがある場所なのだろう。
なんだこのおっさん!?
ご先祖様らしい。狂っちまった経緯を語り、テメー大義のためとはいえ冒険者の命使って進んだなそのせいで何かが強大になっちまったんだぞって話をされ、この空間で永遠に存在することになるのだって言われた。何言ってやがるんだこのクソ爺。宇宙は内部にあるんだってよ。ボケ老人の戯言かよ。
てめえがボスなのかジジイ! 寝ぼけたことぬかしやがって!
HP5しかない雑魚雑魚かって思ったら硬え。
なんか増えたんだけど……ジジイが沢山いてもうれしくないんだが。
っていうか完全なる複製なのに本人よりHP多いぞ……。
本体にはダメージを与えられないから仕方なく分身を倒していく。
毒をまき散らし、気絶させ、ディスマスに永続バフをかけて強化していく。
敵の攻撃は触手を出してきたり、なんだかよくわからない口から出す波動。
ディスマスやっぱりつええ。
そのうちに、不完全なものが現れた。
そいつを倒すと本体にダメージが。
大体わかってきた。再生するときに、一定の割合で不完全なものが出てきて、そいつを倒していけばいいんだな。貴様も無限ではないのだ。
たった5ダメージを与えればいいだけ、戦いはすぐに終わった。
すると、今度は巨大化しやがる。
しかも完全無敵のぐちゃぐちゃしたよくわからないものを引き連れている。
よくわからないやつは攻撃をしてこないので、回復を入れつつ本体にダメージを与えていく。ディスマス、つよい。惚れる。
こいつの攻撃ヤバすぎる……。分解って何?
だが、ジジイは攻撃する度に近づいてくる。手が届く。
おっさんにキスされた!
レイナルドがジジイのキスでドン引きして狂っちまった!
どうでもいい、とつぶやきつつも前に出てくれるレイナルド。やっぱお前は狂っちまっても戦士だよ。一流の戦士だ。
近づいてくれば毒も当たる。ほとんどの敵に毒か出血のダメージが通るのがこのゲームのいいところ! ペスト医師の活躍の場だ!
クリティカル+気絶! ボスでもスタンする!
全体回復はやっぱり強い。全員がそれぞれの役割をこなしている。負けはしない!
出血攻撃は攻撃自体のダメージも高い!
終わりだ……
だが、HP0でもなぜか動いている?!
そしてヨルガタの精神にも限界が……(かわいい)
なんか巨大な心臓っぽいものに変身するジジイ。
肉体は不滅?不死?戯言だ。血を流すんだ、毒が効くんだ、殺せるさ。
攻撃するとこちらが回復し、毒になる。触ると毒ってことか?
攻撃は全体毒。辛いが行動回数は1。気絶も良く通る。
こいつは、狭義で言うところの宿形態というやつでは……
こいつらの心ももう限界みたいだ
ヨルガタがトドメを刺す! すると……
討伐対象の暗黒の心臓に変化した。なんだろう、人間を創造したのは善き神ではなく、このおぞましい怪物だとでもいうのだろうか。するとこいつはアザトースってところか、さもなくばヤルダバオト、デミウルゴス、グノーシスの神話で語られる悪の造神というところだろうか?
だが、殺せば死ぬのだ。血を流し、毒に苦しむのだ。
倒せる。いや、倒すために我らはここにいる!
攻撃も、痛いが今までのボスとそう変わらない。
やれる。そう思った時、何か……嫌な予感が
攻撃対象を選ぶのではない、攻撃される対象を選ぶ攻撃だ。
嫌な予感がした。しかし、選ばねばならなかった。選んだのは、レイナルドだった。何が起こるのかわからなかった。
言葉を失った。レイナルドが即死した。
死が重いゲームだ。育てた冒険者を死なせないように細心の注意を払うゲームだ。
それなのに、この最終局面にきて即死技……ありえない。
二度とレイナルドは戻ってこない。
だが、戦うしかない。回復している暇もない。殺すしかない。
総力を結集して、死に、神に、抗うのだ!
流石のディスマスも発狂してしまう。恐怖に心を捕らわれてしまう。
そして2回目の即死攻撃……誰を選ぶ? 最悪なことに、選ぶ時間はあった。
アタッカーのディスマスはあり得ない。
ヨルガタは弱っていたがダメージを稼いでくれる。
答えは一つしかなかった。
ヴィヴェルが死んだ。
この戦いにおいて回復役は必要ない。ダメージを稼いでくれない。
だが、初期から戦ってくれた仲間二人の死は、重い。
ついにヨルガタのHPが1になる。だが、回復している余裕なんてない。
守ったら死ぬ。守ったら負ける。
この継続ダメージはでかい!
ディスマスは安定して活躍してくれる!
ヨルガタがディスマスに刃を振るう!
そしてトドメを刺す! ついに長い戦いに終止符が打たれる……!
勝利……しかしその代償はあまりにも重い……
それをもたらしてくれた4人のヒーローを祝福しよう。
戦いは終わった
ザンボット3のラストくらい人が死んだよ。だが、成し遂げたのだ。
数多くの苦難と犠牲の果てに、勝利を得ることができたのだ。
しかし、ED後失われた命を、一つ返してくれるらしかった。
3人とも返してほしい。だが、それはならないらしい。
考えた結果。むちむちを選んだ。彼女はわさびのミスで失った命だ。
改めて、全てが終わった。
遂げた達成感と、もう何もやるべきことがない寂寥感があった。
選択と後悔、欠乏とストレス、成長と死、幸運と不運、様々なものがこのクソッタレなゲームには詰まっている。
難易度は高い。胃が痛くなるほど精神的に辛い。
けれど、やりがいがあり、それらを乗り越えた先には愉悦が待っている。
しかし、本当に全てを終えたわけではない。
DLCが残っている。
次回、日記の続きを書くのであれば、それはDLCをプレイするときになるだろう。
それまでは、しばし冒険者たちに休みを与えよう。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。