スタジオポーク 2018/07/09 01:59

製作を断念した人妻ゲー3

予備校帰りの俺は、近くのスーパーに買い物に立ち寄り、レジ袋をぶら下げながら帰ってきた。

【貴志】
「やれやれ……マジで真剣にやらないと、ついていけなくなりそうだな。ちょっと気合いを入れて勉強しないと」

 じわり、じわじわと勉強に遅れが出始めていた。

 危機感を覚えた俺は、そう言って自分を叱咤しつつ、アパートの部屋に入ろうとする。

【貴志】
「……うん? おっ!」

 そんな時、俺はふと階段の方に視線を向けた――。




【貴志】
(うおおおお! ま、麻衣子さん……!)

 麻衣子がまたも無防備な姿で、階段の掃除に精を出している。

 掃除に夢中になるあまり、今日もまた、短いスカートの裾からチラチラと、見せてはいけない眺めが露わになっていた。

【貴志】
(うう、またパンチラ! 今日も、あんなエロいパンツを穿いて……)

 刺激の強すぎる眺めに、俺は苦もなく視線を吸い寄せられてしまう。

 今日もまた、麻衣子の股間を包装しているのは、セクシー極まりない極小パンティ。

 こんもりと盛り上がるヴィーナスの丘に柔らかそうな布が食い込み、得も言われぬ丸みを見せつけていた。

 プリプリと振りたくられるヒップに、パンティが窮屈そうに食い込んでいる。

 健康的な太腿がエロチックに揺れ、肉のさざ波を絶え間なく走らせた。

【貴志】
(くうう!? やっぱりエロすぎだよ……! あんな、エッチな格好で掃除なんてされたら……俺、ムラムラして……!?)

 ゾクゾクと不穏な鳥肌を背筋に駆け上がらせる。

 ふと気なんて抜いたものなら、後先考えずに襲いかかってしまいそうな濃艶エロス。

 俺はつい、さらに熱い視線で若熟れヒップをガン見して――

【貴志】
「……ぐびっ!」

【麻衣子】
「……え?」

【貴志】
(し、しまった! メチャメチャすごい音を立てて、俺ってば生唾を……!!)

【麻衣子】
「まあ、お帰りなさい」

【貴志】
「あ……」

 俺が生唾を嚥下をする音には気づきもしなかったとでも言うような明るい笑みとともに、麻衣子は俺に挨拶をする。

【貴志】
「ど、どうも……ただいま……戻ってまいりました……」

【麻衣子】
「クスッ……なによ、そんなに固くなって。何かあったの、貴志くん?」

 ぎこちなく挨拶を返す俺に色っぽく笑った麻衣子は、掃除の手を止めて近づいてくる。

【貴志】
(うわあ、お、おお、おっぱい、こんなに揺れて……! うう、たまんない……!)

 麻衣子の胸元でたゆんたゆんと揺れるたわわな豊乳に、俺は顔が引きつるかと思うほどの緊張と興奮を覚えた。

 視線がおっぱいに吸着しそうになるのを必死に堪え、なんでもない顔をしてぎくしゃくと微笑む。

【貴志】
「お、お掃除、してたんですか?」

【麻衣子】
「うん、そう。綺麗にしておかないと気が済まないものだから、よくこうやって階段まで掃除しているの」

【貴志】
「そう、なんですか……」

【麻衣子】
「馬鹿でしょ、別に誰かに頼まれたわけでもないのに」

【麻衣子】
「でも、家の中の掃除も一段落しちゃったし、今は仕事もしていないから、他にやることもないしね。気分転換にもちょうどいいと思って」

【貴志】
「あ、なるほど。専業主婦さんなんですね」

【貴志】
(ああ、麻衣子さんとこんな風に話ができるなんて、なんか嬉しい……♪)

【麻衣子】
「ええ、そうなるわね。寿退社で会社を辞めてからまだそんなに経ってないから、専業主婦一年生って感じだけど」

【貴志】
「えっ……てことは……麻衣子さんもしかして、まだ新婚さんなんですか!?」

【麻衣子】
「ええ、そうよ。奥さんとしても、まだ一年生」

【貴志】
「うわあ……」

【麻衣子】
「……? 何が『うわあ』なの?」

【貴志】
「い、いや……そうですか。新婚さん、でしたか……」

【貴志】
(いいな、旦那さんが羨ましすぎる! こんな色っぽい奥さんを自分だけのものにして……)

【貴志】
(それじゃまだ、毎晩毎晩、この綺麗な人と、旦那さんはあんなことやこんなことを、ネチネチネチネチ、いやらしく……ううっ!?)

【麻衣子】
「……どうしたの、貴志くん?」

【貴志】
「……ハッ! あ、い、いえ、何でもないです……それじゃ、俺はこれで……」

 あまりの羨ましさに、つい我を忘れて卑猥な妄想に浸りそうになってしまい、俺は慌てて自分を律した。

 無難な挨拶を麻衣子にし、一刻も早くこの場を離れようとする。

 ジーンズの中で一物が、一気にムクムクと硬度を増し始めてしまっていた。

【麻衣子】
「あ……ちょっとちょっと、貴志くん」

 すると、そんな俺を、慌てた様子で麻衣子が呼び止める。

【貴志】
「……はい?」

 俺は立ち止まり、ぎこちなく麻衣子に小首を傾げた。

【麻衣子】
「…………ンフフフ」

【貴志】
「……は?」

【貴志】
(なんだなんだ、この意味深な笑いは……!? あっ! も、もも、もしかして!?)

【麻衣子】
「……さっき……また見てたでしょ?」

【貴志】
「あっ……」

【貴志】
(――やっぱりばれてた! それじゃ、さっき俺が生唾を飲んだこと、しっかり分かってたんだ。あああ……)

 目を細めた麻衣子に「全部お見通しよ」とでも言いたげな顔つきで見つめられ、俺はたちまち顔が熱くなる。

 しかも超至近距離にまで肉薄してきた麻衣子のむちむちボディからは、鼻腔と脳髄を痺れさせる甘い匂いが鱗粉のように香り立っている。

【貴志】
(うお、うおお……! なんたるフェロモン……た、たまらない!)

 俺は恥ずかしさにかられてうろたえながらも、麻衣子の放散する濃密フェロモンにくらくらし、足元をふらつかせそうになった。

【麻衣子】
「……ほんとにエッチな子ね、きみ」

【貴志】
「あ、いや……その!?」

【麻衣子】
「ンフフ、お話しできて楽しかったわ。またお話ししましょう」

【貴志】
「――えっ!? あ……」

【貴志】
「……行っちゃった……だけど、今の麻衣子さんの態度……!?」

 たった今麻衣子と交わしたやりとりを思いだし、顔だけでなくカーッと身体を熱く火照らせる。

【貴志】
「俺にエッチな目で見られてるって分かってるのに、全然いやそうじゃなかった。いや、それどころかむしろ……何だか妙に色っぽい感じに……」

【貴志】
「もしかして、俺にスケベな目で見られることがいやじゃない!? ひょっとして、あの様子だったら……」

 ――うまくいけば……やれてしまうのでは!?

【貴志】
「うおおお……! マジかよ……いや、でもそんな……俺の思い過ごしじゃ……!?」

 一人になった俺は、その場で興奮し、さらに悶々と落ち着かない心地になった……。

 ……………………

 …………

 ……

 ――翌日。

 俺はいつものように、近所のスーパーで買い物をしていた。

【貴志】
「あ……! あれは……」

【貴志】
「ま、麻衣子さん! いいぞ、こんなところでバッタリと……!」

 昨日のこともあり、浮き足立つ心地になった俺は、運よく遭遇した色っぽい美妻の姿に色めき立った。

【貴志】
「よし、話しかけてみるか。あくまでも、さりげない風を装って。さあ、行くぞ!」

 鼻息を荒くした俺は、一つ大きく深呼吸をして、いそいそと麻衣子に近づこうとする。

【貴志】
「あっ……」

【貴志】
「――っ!? しまった……旦那も一緒か……」

【麻衣子】
「……あら? 貴志くん♪」

【貴志】
「あっ……」

【貴志】
(麻衣子さんに気づかれちゃった!)

【貴志】
「どうも……」

【麻衣子】
「ンフフ、お買い物? よく会うわね」

【貴志】
「そう、ですね……あ、こんにちは……」

【慎一郎】
「やあ、どうも」

 麻衣子の旦那の慎一郎は、売り場から持ってきたらしき大根を翳すようにして俺に笑みを向け、明るく挨拶をする。

【麻衣子】
「何だか、形が悪いわね、この大根。もっと普通なのなかったの?」

【慎一郎】
「なんで。別にいいじゃないか、見かけより味だよ、味。あはは」

【麻衣子】
「そうだけど。見た目だってけっこう大切なのよ? ねえ、貴志くん?」

【貴志】
「――え!? あ、いや、どうなんでしょう、ははは……」

 仲睦まじげに会話をする麻衣子と慎一郎。そんな中、麻衣子にいきなり話を振られ、どう答えたものかと、俺は曖昧にごまかした。

【貴志】
(味ももちろんだけど……見かけも大事……ってことは、俺の見かけも、そこそこ評価してくれてるってこと? なんて……違うか……)

【慎一郎】
「予備校の帰りかい?」

 麻衣子の言葉を深読みしていろいろと考えていると、爽やかな笑みとともに慎一郎が聞いてくる。

【貴志】
「え? あ、は、はい、そうです。あれ、慎一郎さんは、今日は仕事は?」

【麻衣子】
「休みが不定期なの。運送業なものだから」

【貴志】
「ああ、なるほど……」

【慎一郎】
「久しぶりに休みが取れたもんだからね。だからこんな感じで、今日は家の仕事」

【麻衣子】
「まあ、仕事だなんて思ってたの? これはこれでラブラブデートでしょ、新婚夫婦の。ねえ、貴志くん?」

【貴志】
「あは……あはは……そう、ですよね……」

【慎一郎】
「おいおい、若い子の前でそう露骨に……」

【麻衣子】
「何よ、露骨って。全然露骨でも何でもないじゃない」

【慎一郎】
「そうだけどさ……あはは……」

【貴志】
「あはは……あはははは……」

 堂々とした麻衣子の態度にはにかむように、ごまかし笑いで慎一郎は俺を見る。

 そんな慎一郎に、俺もまたごまかし笑いで答えながら、心の中はモヤモヤとしてきていた。

【貴志】
(慎一郎さん、麻衣子さんにメロメロだな。それに麻衣子さんも、慎一郎さんに甘えているのがよく分かる……)

【貴志】
(やっぱり、俺のことなんか何とも思っていないってことかな……ただ、からかわれてただけ? 女の人って、よく分からないな……)

【麻衣子】
「それじゃ貴志くん、またね」

【貴志】
「あ……はい……」

【慎一郎】
「じゃ」

【貴志】
「はい、失礼します……」

【貴志】
「麻衣子さんってば、旦那と腕を組んで行っちゃった……」

 ――やっぱり、全部俺の勘違いだったのかも知れない。

 俺はそう思い、ズシリと胸が重くなる。

 夫の腕を取り、幸せそうに話をしながら遠ざかっていく麻衣子は、何だかとても幸せそうだった……。

 ……………………

――そして、翌日。

【麻衣子】
「あら、こんにちはー」

【貴志】
「あ、麻衣子さん……」

 予備校から帰ってくると、俺はまたばったりと麻衣子に会った。

【貴志】
「昨日は、どうも……」

【麻衣子】
「ンフフ、こちらこそ。いい大人が昼間からイチャイチャしてて笑っちゃった?」

【貴志】
「そんな……」

【麻衣子】
「でも貴志くんったら、私たちを見てすごく居心地悪そうにしてたから」

【貴志】
「そんなことないですよ、あはは……」

 それはそうでしょと内心では思いながら、俺は必死に繕って、明るい笑いで応じてみせる。

 やっぱりすべては俺の勝手な思い込みに過ぎなかったのだと、とっくの昔に変な期待は捨てていた。

【貴志】
「でも、ほんとに仲がいいんですね、麻衣子さんたちって」

【麻衣子】
「そう? どうしてそう思うの?」

【貴志】
「だって、あんな風に一緒に買い物をしたり……手を繋いだり……」

【麻衣子】
「あら、だって夫婦だもの。それぐらいのことはみんなするんじゃない?」

【貴志】
「そうですか? いや、俺、まだ若いからそういうのはよく分からなくて……」

【麻衣子】
「貴志くんは、カノジョとかいないの?」

【貴志】
「そ、そんなのいませんよ! 予備校生だし……」

【麻衣子】
「それどころじゃない?」

【貴志】
「まあ……そんな感じですよね、はい……」

【麻衣子】
「そう……お互いにちょっと寂しいわね」

【貴志】
「……え? 寂しいって……麻衣子さんは寂しくないじゃないですか」

 いささかいじけた気持ちになって、思わず俺はそう突っ込む。

【麻衣子】
「あら、どうして?」

【貴志】
「だって、何て言っても新婚なんだし、あんな素敵な旦那さんがいて、休みの日にはしっかりデートができて……」

【麻衣子】
「デートって言ったって、スーパーで買い物をするだけよ? 悲しすぎない?」

【貴志】
「でも、楽しそうだったじゃないですか……」

【麻衣子】
「そりゃ、つまらなくはないけど、やっぱり時間が全然足りないわ」

【貴志】
「そう、ですか……」

【麻衣子】
「うん。どこかに出かけたいって思っても、あの人の仕事の関係で、なかなかそれも難しいし……は~~。次にデートができるのは、いったいいつになるか……」

【貴志】
(えっ……! うわっ、すごい色っぽい目つきで……俺を見てる!?)

 夫について不満げに喋っていた麻衣子は、艶めかしいため息をつくや、愁いに満ちた目つきで、訴えるように俺を見た。

【貴志】
「あ、あの……!?」

【麻衣子】
「あの人……いつも家を空けてるから……けっこう……寂しいの……」

【貴志】
「――っ!!?」

【麻衣子】
(うおおおお! お、おっぱい……メチャメチャ寄せながら甘えてきてる!?)

 誘うように、しかもさりげなく乳房を寄せ、胸の谷間と乳の量感をこれでもかとばかりに見せつけてくる麻衣子。

 俺はそんな人妻のエロチックな様に、たちまちのぼせあがりそうになる。

【貴志】
(いや、待て待て待て! 全部俺の勘違いだったんだって、気持ちを切り替えたばっかりじゃないか!)

【貴志】
(これは俺が血迷っているか、あるいは麻衣子さんが遊び半分で年下の持てない若造をからかっているかのどっちかだ……落ち着け!)

 必死に自分をなだめた俺は、密かに深呼吸を繰り返して冷静さを保とうとした。

【貴志】
「そう、たしかに、寂しい、でしょうね……」

【麻衣子】
「……え?」

 俺の反応が意外だったのか、麻衣子はちょっときょとんとした顔つきになる。

【貴志】
「でも、きっと旦那さんも同じように寂しがっているはずです。だって、俺、二人を見ていて、旦那さん、麻衣子さんの事が大好きなんだなって、よく分かりましたもん」

【麻衣子】
「あ……」

【貴志】
「……………………」

【麻衣子】
「……………………」

【貴志】
「……? な、なにか……?」

 俺の言葉に、少し考え込んだような顔つきになる麻衣子。

 そんな美妻に見つめられ、俺はいささかたじろいだ。

【麻衣子】
「ううん、なんでもないわ。それじゃあ、またね♪」

【貴志】
「あ……ま、麻衣子、さん……? 行っちゃった……」

 にこやかに手を振って挨拶をすると、軽やかな足取りで麻衣子は立ち去った。

 例によってムンムンと、フェロモンいっぱいの甘い残り香をこれでもかとばかりに残しながら……。

【貴志】
「……ちょっと……ご機嫌、損ねちゃったかな……でも、遊び半分でからかわれるのも、いい加減耐えられないし……」

【貴志】
「まあいいか。どっちみち俺は、女の人なんかに気持ちを奪われていていいような身分じゃないし。さあ、勉強勉強!」

 麻衣子の態度に少しだけ気がかりなものを感じはしたものの、俺は自分に言い聞かせるようにそう言うと、気持ちを切り替えて部屋に向かった。

 ……………………

 …………

 ……

 ……そして、それからの麻衣子はと言えば――。

【貴志】
「あ……お、おはようございます!」

【麻衣子】
「あ……おはようございます。行ってらっしゃい」

【貴志】
「は、はい。今日も、いい天気ですね」

【麻衣子】
「ええ、そうね」

【貴志】
「……………………」

【麻衣子】
「……………………」

【貴志】
「……………………」

【麻衣子】
「……………………」

【貴志】
「そ、それじゃ……」

【麻衣子】
「……ええ」

 麻衣子はもう、以前のように親しげに、あれこれと話をしてこなくなった。

 ぎこちない沈黙に堪えかねてそこそこに挨拶をすると、俺は足早に麻衣子の前を離れる。

【貴志】
「……まったく、気まぐれな人だな。前はあんなにあれこれと話をしてきたのに……」

【貴志】
「つい期待をしちゃうような態度を取られるのも困りもんだけど、全然構ってもらえないっていうのも、少し寂しいな……」

【貴志】
「でもまあ、しかたないか。さてと、今日もがんばって勉強しなきゃ」

 一抹の悶々感を覚えつつも、俺は無理やり気分を変え、予備校へと出かけた……。

 ……………………

 ……そして、そんな風に過ごし続けた、ある日のことだった。

【貴志】
「……自分の下手な手料理も、いい加減そろそろ飽きてきたな……」

 いつものように、予備校の帰りにスーパーに寄ってきた俺は、レジ袋の中にある具材を見て、うんざりとため息をついた。

 始まる前は、それなりに楽しみにもしていた独り暮らし。しかし生活に慣れてくると、早くもいろいろなところに不満を感じるようになってきている。

 人間って奴は、まったく贅沢にできている。というか、俺が贅沢だというだけの話か。

【貴志】
「まあいいや。とにかく、夕方までもう一がんばり勉強したら、味はそれなりでも栄養のある食べ物を作って――」

 ――バタン!

【貴志】
「……え?」

【麻衣子】
「あわわ……あわわわわわっ!?」

 自分の部屋に行こうとすると、いきなり麻衣子の部屋のドアが開き、半ばパニックな様子で、麻衣子が中から飛び出してくる。

【貴志】
「ま、麻衣子さん!?」

【麻衣子】
「あっ……! 貴志くんっ!!」

【貴志】
「――えっ!?」

【貴志】
「うわわっ!?」

【貴志】
(だ……抱きついてきた!?)

 思いがけない展開に、今度は俺がパニックだ。

 相手が俺だと分かった麻衣子は、脇目もふらずに飛びついてくる。

【麻衣子】
「た、貴志くん! 貴志くん、貴志くん!」

 グイッ……グイ、グイ、グイッ……。

【貴志】
「おわわ……ま、麻衣子さん!?」

【貴志】
(ああ、やばい……! こんなにグイグイ身体を密着されたら……うわあ……!)

 色っぽい新妻のなりふりかまわぬ抱擁に、俺はさらに浮き足立つ。

 本人はどう思っているのか知らないけれど、力の限り抱きつかれ、たわわなおっぱいが胸に押しつけられる。

【貴志】
(ああ、おっぱいが……俺の胸に……! や、柔らかい……でもって……やっぱりでかい!)

 プニュプニュ、プニュ……。

【貴志】
「ぐおおお……ま、麻衣子さん……?」

 不測の事態に動転しつつ、俺はたまらず興奮して、下半身を熱くしてしまう。

 これはもしかして、神の与えた僥倖か。やっぱりこの人は、夫を持つ身でありながら、俺のことを思ってせつなく煩悶し、こらえきれずにとうとうこんな行動に……。

【貴志】
(くうう!? だめだ……こんなに熱っぽく抱きつかれたら、もう俺……チンポが……!)

【貴志】
(だ、抱き返すぞ!? 抱き返していいんだよな! いいんだよな!? ああ、麻衣子さ――)

【麻衣子】
「あ……」

【貴志】
「……え?」

【麻衣子】
「あ…… ごめんなさい……」

【貴志】
「あれ……」

 もう少しで忍耐の限界に達し、力の限り抱き返しそうになったその時だった。

 いきなり麻衣子は我に返り、ハッとした様子で俺から飛び退く。

【貴志】
「あ、あの……!?」

【麻衣子】
「ごめんね、貴志くん。掃除をしていたら、いきなりゴキブリが……私、ほんとにゴキブリとか苦手で……」

【貴志】
「ゴキブリ……」

 ……なんだ、そういうことだったのか。

【麻衣子】
「私ったら、慌てて飛び出して来ちゃって……それで、つい貴志くんに……ほんとにごめんなさい……」

【貴志】
「い、いえいえ。いいですよ、別に。それじゃ、部屋にはまだゴキブリが?」

 俺は内心の失意を押し殺し、大人な態度で麻衣子に応じる。

【麻衣子】
「え、ええ……いるってことよね。ああ、鳥肌が……」

 思いだしただけでも身震いがするのだろう。麻衣子は自分の身体を抱きすくめるようにし、鳥肌立つ二の腕を必死にさする。

【貴志】
「俺……処分しましょうか?」

 そんな麻衣子に苦笑しそうになりながら、俺は言った。

【麻衣子】
「……え! い、いいの……?」

【貴志】
「ええ、かまいませんよ、ゴキブリの一匹や二匹」

【麻衣子】
「そ、それじゃ……お願いしようかしら……」

【貴志】
「はい、おやすいご用です」

 正直俺だって、ゴキブリなんてあまり気持ちよくはなかったけれど、これも成りゆきだ。

 ――こうして、怖くて戻れないという麻衣子を廊下に残した俺は、一人で中村家に入り、何とかゴキブリを退治した。

 カサカサと部屋の中を駆け回るゴキブリを目の当たりにして恐怖の叫びをあげそうになりながらだったことは、麻衣子には言えない秘密である。

【麻衣子】
「助かったわ、貴志くん。本当にありがとう」

 ゴキブリ退治が終わってやっと一段落した頃には、麻衣子もようやくいつもの落ち着きを取り戻していた。

【貴志】
「いえ、あれぐらい全然なんてことないですよ。あはは……」

 そのまま麻衣子の家で、お礼代わりのお茶をもらうことになった。

 余裕の態度で応じて見せながら、ゴキブリが一匹だけでほんとによかったと、心底胸を撫で下ろしていた。

 二匹も三匹もいた日には、俺から麻衣子に抱きついてしまうところだ。

【麻衣子】
「……いつも掃除をしているし、今まで出たことがなかったから、絶対に大丈夫って思ってたんだけど、甘かったわね。は~~……」

 コーヒーを淹れてくれた麻衣子は向かいに腰を下ろし、今さらのようにげんなりした顔つきでため息をつく。

【麻衣子】
「それにしても、やっぱり男の子ね。貴志くん、男らしくて頼もしいわ」

【貴志】
「――え! あ、いや、そんな。はは、ははは……実家では、ゴキ退治係りでしたしね……」

 麻衣子に誉めてもらえたことに舞いあがり、ちょっといい気分になりながら、俺は適当なことを言った。

 色っぽく潤んだセクシーな瞳が、尊敬のまなざしとなって自分の顔に向けられていることに、ドキドキと浮き足立つような心地になる。

【麻衣子】
「まあ、そうだったの? 偉いわね、あの人にも、そういう男らしさ、ちょっとは見ならってほしいわ……」

【貴志】
「え、あの人って……旦那さんですか?」

 いじけた様子になり、ため息混じりに訴える麻衣子に、俺は話を合わせて聞いた。

【麻衣子】
「ええ。あの人もね、私に負けないぐらいゴキブリ嫌いなの」

【貴志】
「そ、そうなんですか……」

【麻衣子】
「前にあの人が一人で暮らしていたアパートにもゴキブリが出てね、あの人ったら、女みたいにキャーキャー喚きながら、こんな風にゴキブリを……」

 麻衣子はその時の旦那の様子を思いだし、いかにも揶揄する感じで真似をして、へっぴり腰でゴキブリ退治をする旦那の様子を再現してみせる。

【貴志】
「あはは、でもまあ、誰にも苦手なものはありますから……」

【貴志】
(うおおお! て言うか……麻衣子さん、やっぱりおっぱい揺れすぎ!)

 丸めた何かでゴキブリを叩く演技をするたび、美貌の新妻の胸元で、たわわな乳果実がたっぷたっぷとこれ見よがしに揺れ躍る。

 俺はたちまちそちらに視線を吸着させそうになり、慌てて両目を引き剥がしながら、ぐびぐびとコーヒーを喉の奥に流し込んだ。

【麻衣子】
「なんだかね……分かるけど、やっぱり男なんだから、ゴキブリぐらい男らしく退治してもらいたいって思ったけど、ないものねだりなのかしら……」

【貴志】
「だって、いいところもいっぱいあるわけですし、旦那さん」

【麻衣子】
「あら、たとえば?」

【貴志】
「たとえばって……まずイケメンだし……」

【麻衣子】
「あら。男は顔だけじゃないと思うわよ?」

【貴志】
「う……」

【貴志】
(そ、そう言ってもらえると……いろいろと救われる気も……)

【貴志】
「そ、それに……麻衣子さんのために一生懸命働いて……麻衣子さんのこと愛してるんだなぁって、眩しいほどです」

【麻衣子】
「そうなのかなぁ……毎日ただ慌ただしいだけで、ここのところ、愛とか何とか、確かめあう時間もないし……」

【貴志】
「そ、そそ、そうなんですか……」

【貴志】
(愛を確かめあうって……セックスのこと? 忙しすぎてセックスをする時間もないってことなのか……!?)

【麻衣子】
「あら、コーヒー終わっちゃったのね。もういっぱいいかが? すぐに用意するわ」

 俺のカップが空になったことに気づいた麻衣子は、返事も聞かずに席を立ち、流し台に向かう。

【貴志】
「あ、ほんとにもう、おかまいなく……」

【麻衣子】
「遠慮しないの。若い子に遠慮なんて、似合わないわよ」

【貴志】
「は、はあ……うっ……!」

 まるで弟でも諭すような親しげな口調で言うと、流しに向かって新しいコーヒーの用意を始める麻衣子。

 俺は思わず、そんな美人妻の後ろ姿をまじまじと見つめ、呻いてしまいそうになる。

【貴志】
(きょ、今日もまた……メチャメチャ短いスカートなんだよな。ずおおお……)

 欲求不満な若い男を嘲笑いでもしているかのように、丈の短いスカートから、むっちり太腿が惜しげもなく晒されていた。

 その上スカートだけでなく、露出の多い服からは、色白の肉感的な肢体が息詰まる艶めかしさで露わになっている。

【貴志】
(くうう、こいつは……たまらない! あっ!?)

【麻衣子】
「あらやだ、落としちゃった……」

【貴志】
(うおおおおおお!!?)

 麻衣子が何かを落とし、それを拾おうと身体を二つ折りにした。

 そのせいでスカートの奥がさらにバッチリ見えそうになり、思わず俺は身を乗り出して、食い入るように覗き込んでしまう。

【貴志】
(も、もう少し! もう少しでパンツが見えるんだけど……ああ、無理か……くそお……)

【麻衣子】
「……うん? 何か言った?」

 すると、突然麻衣子がくるりとこちらを振り返り、小首を傾げて穏やかに聞く。

【貴志】
「あ、いえ。何も」

 俺は慌てて態勢を戻し、しれっとした顔をして麻衣子に答えた。

【貴志】
(危ない、危ない。もう少しでばれそうだったな。ふー……)

【麻衣子】
「はい、お待たせしました。どうぞ~」

 やがて、二杯目のコーヒーを淹れ終えた麻衣子が、トレイに乗せたカップを手に、再び戻ってくる。

【麻衣子】
「ねえ、貴志くんはカノジョがほしいとかは全然思わないの?」

 俺に二杯目のコーヒーを勧めながら、麻衣子は色っぽい笑みとともに聞いた。

【貴志】
「えっ、カノジョ、ですか? あっ……」

 際どい質問をされてドギマギした俺は、つい麻衣子を見て目を見開きそうになる。

 妖しく微笑む美人妻は、意図的なのか無意識にか、たわわな胸の谷間を強調するようなポーズになって、俺を見つめていた。

【貴志】
(こ、これは……!? うおお……それにしても、なんておっきいおっぱい……!)

【貴志】
「いや……ほしくないわけじゃ、ないんですけど……」

【麻衣子】
「やっぱり、今は勉強第一?」

【貴志】
「そ……そそ、そうですね……」

【貴志】
(ああ、揺れてる! ユッサユッサって、柔らかそうな膨らみが……ううっ、チンポやばい……!)

【麻衣子】
「でも、貴志くんぐらい可愛ければ、女の子にだってモテるでしょうに」

【貴志】
「――えっ!? そ、そんな……モテないですよ、全然……」

【麻衣子】
「またあ、謙遜しちゃって」

【貴志】
「謙遜なんてしてないですって! そんなこと言われたの……は、初めてです……」

【麻衣子】
「あら、嘘でしょ? まわりの子たち、見る目がないのね」

【貴志】
「そんな……あは。あははは……」

【麻衣子】
「でも偉いわね、勉強が第一だから、今は恋愛は禁止だなんて。第一志望はどこなの?」

【貴志】
「あ、はあ……えっと……」

 俺はまだなお麻衣子の胸に理性を乱されながらも、ことここにいたるまでの事情を、ごく簡単に説明した。

【麻衣子】
「まあ、そうだったの……●●大学だなんて頭いいのねぇ」

 すると麻衣子は世辞ではなく、心底感心したというような顔つきになって、ため息混じりに言う。

【貴志】
「い、いや。まだ……受かってはいないんですけどね……」

【麻衣子】
「でも、余裕なんでしょ、その志望校?」

 しかし麻衣子は俺の心の声なんてお構いなしに、頼もしそうに見つめてくる。

【貴志】
「余裕ってわけじゃ……とにかくがんばるしかないって感じです」

【麻衣子】
「なるほど。でも、だったら恋愛ぐらいすればいいのに」

【貴志】
「……え!?」

【麻衣子】
「だって若いんだし、いろいろと辛くないの?」

【貴志】
「そ、それは……!?」

【麻衣子】
「あるんでしょ、年相応にそれなりの欲求不満とか? そういうのは、どうやって処理しているの?」

【貴志】
「しょ、しょしょ、処理って……!? それは……あの……えっと……別に……」

【麻衣子】
「ンフフ……可愛い……」

【貴志】
「あ……ま、麻衣子、さん……あっ……」

 どうやらまたからかわれているらしいと分かったものの、顔の火照りはいかんともしがたかった。

 しかも麻衣子はこれ見よがしに脚を崩し、あんなに見えそうで見えなかったスカートの奥を、チラチラと俺の視界に惜しげもなく晒してくる。

【貴志】
(ずおおお……! 見えた……ああ、エロいパンツ……こ、こんなものを、こんなタイミングで見せられちゃったら……おおお……!?)

 思わず腿のつけ根に視線が行ってしまい、鼻血が出そうになりながら、俺は必死に自分を取り繕った。

 しかし股間の一物は、持ち主の意志を裏切って、今にもバッキンバッキンに勃ってしまいそうになる。

【麻衣子】
「ねえ、毎日辛くないの、貴志くん? 意志や理性で自分を抑えられるなんて、やっぱり立派ね……」

【貴志】
「そんな、ことも、ないです、けど……」

【貴志】
(げ、現に今も……理性失いそうになってます! ああ、お、襲いかかりたい! 俺……獣になりそう! あっ……)

 わなわなと身体が震え、今にも目の前の美しい人に躍りかかってしまいそうになる俺。

 しかしそんな俺の目に、ふと、写真立ての中の写真が飛び込んでくる。

 それは、夫婦で一緒に撮ったらしき、仲睦まじげな写真だった。

【貴志】
「くっ……!?」

【貴志】
(いかん……落ち着け! からかわれてるだけなんだ……もしもここで飛びかかったりしたら、もうこのアパートにいられなくなるぞ……!)

 俺はグッと拳を握り、暴発しそうな激情をすんでの所で堪える。

【貴志】
「あ、そ、そうだ! そう言えば俺、ちょっと用事があったんでした!」

 マジで取り返しのつかないことになりそうなことに怯えた俺は、慌てて席から立ち上がった。

【麻衣子】
「あら、そ、そうなの?」

【貴志】
「ええ。いかんいかん。忘れてた。それじゃ、ご馳走様でした!」

【麻衣子】
「コーヒー、全部飲んでから行けば?」

【貴志】
「すみません、行儀が悪くて。でも、ちょっと急がないと……」

【麻衣子】
「まあそう? ごめんなさいね、用事があったのに引き留めちゃって……」

【貴志】
「い、いえいえ。こちらこそ、すみませんでした。それじゃ、失礼します!」

【麻衣子】
「ええ、それじゃまた。ゴキブリありがとうね、貴志くん」

【貴志】
「とんでもないです。ではでは……」

【麻衣子】
「ウフフフ……」

 ……バタン。

【貴志】
「ふう、危ない危ない。もう少しで理性を失うところだったじゃないか。何かいやな汗が出てきた。さあ、帰ろ帰ろ……」

 廊下に出た俺は思わずため息を零してかぶりを振ると、気持ちを切り替えながら、自分の部屋に向かった。

 股間の一物は、ようやく力を失って元の状態へと戻っていった……。

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