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ウメ畑 2022/11/01 09:46

リクエスト作品 『淫靡な洞窟のその奥で』 フィアーナ『醜い男からの羞恥検査』

「おおっ!? フィアーナ殿、そのお姿は……」

 その日、フィアーナとアルフィラが国へ戻ってきたという話を聞きつけたドルイドが謁見の間へ続く大広間で見た光景は、とても言葉にすることが難しいものだった。
 フォンティーユにおいて最強とも言われるエルフの女性騎士フィアーナと、その部下アルフィ。
 二人の姿を見た時、土塁では言葉を失った。
フォンティーユ王城、玉座の間へと通じる大階段の前に、あれほど夢想した美貌の女騎士が立っている。
 それはいい。
 多くの犠牲が出たものの、けれど生存者がいたというのは喜ばしい事だ。
 ……戻ってきたのはその二人だけで、彼女の部下たちはほぼ全滅と言っていい状態。
 ただ、フィアーナとアルフィラの二人は……とても、言葉にしづらい姿をしていたからだ。
 城へ戻るために最低限の身嗜みこそ整えているが、ボロボロになった衣服、その身を守っていた鎧はほとんど失われ、所々から白い肌が覗いてしまっている。
 城内で見かける際にはいつも目を惹かれていた美しい銀髪も汚れが目立ち、凛としていた表情には疲労の色が目立つ。
 そこには場内で誰もから一目置かれていた『最強』の姿はどこにもなく、疲労と不安に揺れるエルフの美女が立っている光景なのだから。

(お、おぉ……)

 敬虔な女神ファサリナの信徒でもあるフィアーナは隙を見せる事が少なく、城内や私室であってもだらけた姿を晒すことはほとんど無かった。
 それはいつも彼女を目で追っていたドルイドだからこそ分かる、とても貴重な姿。
 いつも隠れていた肩や両脚の素肌が露になるどころか、その胸元……服の上からでも隠せていなかった豊満な胸の谷間まで。
 しかもフィアーナは自分の姿が恥ずかしいものだと理解しており、彼女の帰城を知って集まってきた人々の視線から肌を隠すように少しでも身体を小さく見せようと肩を丸めてしまっている。
 その恥ずかしがる仕草に、ドルイドはまるで人生初めての恋心を抱いてしまったかのように胸を高鳴らせ、同時にズボンの上からでも分かるほど股間を熱くしてしまう。
 ……けれど、それを責めることは不可能だ。
 なにせ、この場に集まった男たちのほとんどが同じような劣情を胸に抱き、あられもない姿を晒すフィアーナとアルフィラに熱い視線を送っているのだから。

「どけ、どけ! 道を開けろ!」

 ドルイドは数十秒ほどフィアーナのあられもない姿に目を奪われた後、そう言って人波を掻き分けながら前へと進んだ。

「フィアーナ殿、大丈夫ですか!?」
「ドルイド卿……はい、身体の方に問題はありません」

 フィアーナは下心満載で近付いてきたドルイドの本心を視線から察しつつ、けれど律儀に返事をした。
 彼は近付いたことで鮮明に見えるようになった胸の谷間、ローブのような衣服の左右に作られた深いスリットから覗く健康的な美脚、ボロボロの衣服を纏っていても隠し切れない美しい素肌から視線を逸らすことが出来なかったのだ。
 なんとも間抜けで欲望を隠しきれていない視線だが、けれどフィアーナはドルイドを邪険にすることは出来ない。
 彼はこの国における財務大臣――財政の多くを担っている貴族である。
 権力を持つ貴族たちの中でも高い地位にあるドルイドを邪険に扱えば、いかに国民から英雄視されるフィアーナでも城内での活動に不和が生じてしまう。
 ……これから女王に対して敗戦の報告をしなければならない立場からすれば、更に敵を増やすような行動はとりたくないと考えての事だ。
 そんな気持ちから、フィアーナはドルイドの欲望が透けて見える視線を受けながら、けれどそれを咎める事もせずいた。

「これはこれは、フィアーナ殿。……まずはこちらへ。そのようなお姿で女王の目に留まっては危険でございます」
「ど、ドルイド卿?」
「アルフィラ……だったな。貴女もまずは兵舎なり私室なりへ戻り、身嗜みを整えなさい」
「はっ――フィアーナ様、これから……」

 突然割り込んできたドルイドがフィアーナを呼び、アルフィラには着替えてくるようにと指示を出す。
 それは実際、その艶姿を眺めていた他者たちから守るという意味では、最善にも思える手際の良さだった。
 こういう事と金に関することへの頭の回転だけは速いのか。
 ドルイドはその巨体からは想像できない機敏さでフィアーナが通る道を確保し、彼女を扇動して別室へと連れていく。
 フィアーナはその有無を言わさぬ行動力に抵抗できず巨体の後を追うと、アルフィラの方へ顔だけを向けた。

「着替えてから、レティシア様へのご報告に向かいます! 後で落ち合いましょう!」
「了解いたしました!」

 それだけを話すと、アルフィラも早足でその場を後にする。
 彼女も城を出る際に身に着けていた全身鎧は失われ、着ている黒を基調とした衣服もボロボロ。
 厚手の上着のいたるところが破られ、ズボンも破損が目立って激しく動けば黒色の下着が見えてしまう状態だ。
 騎士とは思えない綺麗な白い肌を露にし、フィアーナには及ばないが十分に巨乳と言える胸の谷間や横乳まで見えている状態を他人の視線に晒すのは恥ずかしかったのだろう。
 フィアーナがその場を離れると、アルフィラも両手で胸を隠しながら小走りで私室へと向かった。

「あの。ドルイド卿、どちらに?」
「この時間なら使っていない客間があります。ここでは人目についてしまいますので……そのような姿を一目には晒したくないでしょう?」
「…………」
「それに、多くの貴族たちはまだ気付いておりませんが、フォンティーユの騎士が魔物に敗北したなど……貴族や国民に知られてしまっては、問題が大きくなってしまいますからな」

 その言葉に、早足で場内を歩いていたフィアーナがビクリと身体を震わせた。

「それは……」
「いえいえ。戦いに絶対はございませんし、私は剣を握ったこともありませんからこれ以上の事は申しません。ただ、『敗北した』という状況を必要以上に悪く思う者も多いのです」

 私のように戦いを知らない者ばかりですから、とドルイドは続けた。
 別に悪い意味で言ったわけではない。
 ドルイドにとって、戦いというのは勝負であり、勝つ者が居れば、負ける者も居る。
 魔王が存在していた時代を経験しているからこそ、たとえフィアーナであっても負ける側になる可能性は十分に有り得るのだ。
 ただ、問題なのはそれが『国一番の騎士』である事。
 その実力と美貌から国民の信頼を多くうけるフィアーナの敗北は、悪い意味で国中へ伝わってしまうだろう。
 そしてそうなれば国民からの国への信頼が揺らぎ、少数だろうが他国へ移住する可能性だってある。
 それではフォンティーユの財政に少なくない打撃となり――財務大臣としては、その打撃を可能な限り少なくしなければならない職務があるのだ。
……と言い訳しておく。
 けれど実際には、ドルイドはフィアーナを扇動して歩きながらもチラチラと事あるごとに振り返り、破損した衣服から覗く白い肌や、清純で真面目な騎士らしい純白の下着を見てくる。
 フィアーナはその視線に耐えながら、けれどドルイドをあまり刺激しないようにその後を追ってい歩いていた。

「まずはお召し物を整えませんとな。そのような状態で女王へご報告などすれば、それこそ騎士団の弱体化が顕著に見えてしまいます」
「お心遣い感謝いたします、ドルイド卿」

 フィアーナは邪な感情はあれど、ドルイドの自分だけでなく国全体を考える気遣いに感謝の言葉を述べた。
 正直、フィアーナはドルイドが苦手だ。
 容姿もだが、何よりその欲望を隠そうともしない態度が好きにはなれない。
 けれどそれは、王城へ勤める大勢の女性たちが抱いている感想である。
 ドルイドは美しい女性を好み、フィアーナ以外にも好色な視線を向けていた。
 メイドや魔術師、中には同じ貴族階級の女性にも。
 けれど、決して職権を乱用しようとはしない。
 欲望は大きいけれど、自分の立場を危うくするようなことまでは手を伸ばせない……そんな小心者。
 だからこそ女王レティシアの信頼も厚く、好色でいつか問題を起こしそうな性格なのに財務大臣という要職に付けている人物。
 それがドルイドという貴族だった。

「ささ、こちらへ。貴族のご令嬢が休む部屋ですが、なに、彼女たちは服が一着減った事など気付かないでしょう」
「それもどうかと思いますが……」

 そうしてドルイドが案内したのは、貴族用の寝室だった。
 部屋は一つ、天蓋付きのベッドが二つ。
 メイドたちによって掃除も行き届いており、ベッドの近くにあるサイドテーブルの上には綺麗な紅い花が活けられた花瓶が飾られている。
ドルイドが室内を進むと、大きなクローゼットの前に立った。
中には煌びやかなドレスや小奇麗な衣服が収められている。

「こちらをどうぞ」
「……本当に、勝手に使ってもよろしいのですか?」
「問題ありません。あまり大きな声では言えませんが、これなどは私がお贈りしてから一度も着てもらえていないのです」

 そう言ってドルイドが指で摘まんだのは、黒い布地に金の刺繍が施された……フィアーナの目をして少し派手すぎる……悪趣味なドレスだった。
 しかも胸元の布地は少なく、スカートの左側には臍の高さまでありそうな深いスリット。
 これでは、少し動けば下着が丸見えになってしまうだろう。
 肢体にぴったりと張り付く形状をしていて、身体の線が丸見えになってしまうのも……見ているだけで恥ずかしい。

「失礼いたします」

 フィアーナはドルイドが選んだドレスを身に着ける気にもなれず、女王の前に出て恥ずかしくない服を自分で選ぼうとクローゼットの前に立った。
 ドルイドが数歩下がって、後ろからその美肢体を眺める。
 鍛えられたフィアーナは体幹がしっかりしていて、背筋がまっすぐに伸びていた。
 銀色の髪で彩られた正しい姿勢を後ろから眺めているだけでも目の保養になるが、なにより彼の欲望を刺激するのはそのお尻。
 厚手のローブを大きく持ち上げる臀部だが、ボロボロになり、汗を吸って肌に張り付いたことで下着の線を如実に浮かび上がらせてしまっている。
 大きなお尻を包み込む下着の形を見ていると、クローゼットの中か服を選んでいるフィアーナが左右に動く。
 それに合わせて大きなお尻も左右に動き、足が動けば肌に張り付いたローブも動いて、その下にある大きなお尻の形が僅かにだが変わってしまう。
 それが、右に、左に。
 フィアーナは着る服を見付けられずにいるようだ。
 当然だろう。
 ここにあるのはドルイドが選んだ、メイドや格の低い貴族の令嬢に着せるための……所謂、夜のお供となるドレスばかり。
 最初はそんなつもりはなかったが、ここへ来るまでにフィアーナが抵抗しなかったこともあり、多少の無理なら押し通せるのでは……と感じたのだ。
 それに、拒絶されたとしてもフィアーナはこのことを他の騎士や貴族たちに報告する事も出来ないだろう。
 たかが田舎の魔物に敗北してきたのだ。
 そんな状況で貴族の一人から個室に連れ込まれたと話せば、『国一番』の騎士であるフィアーナの評価は良くも悪くも落ちてしまう。
 優秀な彼女の評価はすなわち騎士団の評価にも直結し、それは騎士団の弱体化にもつながる。
 それが些細な変化だったとしても、個人で背負いきれる責任でもない。
 長く生きたエルフだからこそ周囲の評価の変化がどれほど重要か理解しており、ゆえにフィアーナはドルイドからの言葉を断り切れない。

(しかし……どんな女たちよりも、美しい……)

 金勘定やそんな思考の計算ばかりが早いドルイドは、フィアーナの背中を眺めているだけで満足だった。
 彼は小心者なのだ。
 ここで手を出したりすれば、フィアーナは口に出せないだろうが、けれど彼の評価は地に墜ちるどころか地の底まで沈んでしまう事だろう。
 それを恐れ、せめて眺めるだけで満足してしまう。
 こんな冒険することを恐れる小心者なところが、逆に女王レティシアからは高評価だったりするわけだが……。

「時に、フィアーナ殿。いくつか質問してもよろしいか?」
「はい、なんでしょうか?」

 ドルイドとしては何気ない、世間話のような感覚だった。
 彼がフィアーナへこの仕事を伝えた際、冒険者協会から聞いていたのは『田舎の村で魔物が出現した』『将来有望な冒険者が数人戻ってこなかった』というものだ。
 強力な魔物が出現したのだろうというのは予想できたが、それが『なに』なのかが気になって、訪ねる事にした。

「騎士団がほぼ全滅するというのは、どれほどの魔物が相手だったのでしょうか?」

 ドルイドが聞くと、フィアーナは……後ろからも分かるほど身体を強張らせ、着るためのドレスを探していた手が止まる。
 あからさまな動揺に、ドルイドの方も驚いてしまったほどだ。
 いつもは冷静で、凛としていて、貴族相手にも物怖じしない長く生きた美貌のエルフ。
 その彼女がドルイドの前で始めて見せた動揺に、少しだけ興味が湧いた。

「おや、どうかなさいましたかな?」
「いえ……」

 フィアーナは同様に声を強張らせながら、背中越しに何とか返事をする。
 けれど、ふと、思い出してしまうのだ。
 フォンティーユの北にある廃坑で襲われた事実を――城へ戻る間にも、何度も。
 スライムに襲われた。
 戦い、殺されかけたという意味ではない。
 性的な意味で襲われ、犯され……精液を胎内に出されてしまった。
 それは屈辱と恐怖でしかないはずなのに、どうしてもフィアーナはその時の事を思い出すと腹の奥が疼いてしまう。

(……そんなはず、ない……はずなのに)

 犯され、生き延びたアルフィラと二人。
 フォンティーユの城へ戻るまでその事に自分たちから触れることは無かった。
 精神に深い傷となった凌○――けれどそれだけではない。
 処女だったアルフィラはともかく、この数百年の人生において何度か男性と契りを結んだフィアーナはスライムの技巧が人とはかけ離れたものだと理解していたのだ。
 嫌悪感とともに、隠し切れない快楽も与えられたのだ。
 ……しかもそれを気持ちいいと感じてしまう自分が情けなくて、惨めで……認めたくない。
 その気持ちからフィアーナがこの話題に触れることは無かったし、アルフィラの方も処女を散らされ、気持ち良くされ、絶頂までさせられたなど、たとえ相手が同姓だったとしても口が裂けても言いたくなかった。
 だから二人はこの話題を避けていたのだが、そんなことを知らないドルイドは興味から質問してくる。

「それで、フィアーナ殿? 田舎に現れた魔物というのはどういったものだったのでしょうか? 騎士団が敗北するほどですから、大型の……キマイラだったとか?」
「いえ、スライムです」

 動揺していたフィアーナは、つい、口を滑らせてしまった。
 スライム。
 この世界において最弱とされる魔物。
 人間の子供でも石で叩けば殺してしまえるような弱い存在であり、戦いを経験したことが無いドルイドであってもとても脅威を抱かない……そんな魔物。
 その名前を聞いた時、ドルイドは何か聞き間違いをしたのかとすら思ったほどだ。

「スライム……ですと?」
「ぁ、いえ――相手は特別なスライムだったのです」

 フィアーナは説明した。
 魔法を使い、人間のように罠を張り巡らせる知性がある魔物だと。
 けれど。

「スライムに知性が……? にわかには信じられませんな……」

 ドルイドは感じたことを口にする。
 確かに高位の魔物は知性を有し、中には人語を解する存在も居た。
 けれどスライムだ。
 子供でも殺せるような弱く脆い存在が魔法を使い、罠を使う知性を有するなど……この世界の常識から外れていた。
 だからドルイドの言葉には信じられないという感情と、そんなものに敗北したのかという……僅かに呆れの混じった声となってしまう。

「ですが本当なのです。私たちは敵がただのスライムだと思っていました。ねぐらである洞窟に入り……けれど、逃げ場が無くなったのは私たちの方だった」
「それで全滅したと?」
「……はい。それに、スライムに協力する人間もいたのです」
「それこそ、信じられませんな。人類の敵である魔物に協力する人間など……」

 ドルイドはフィアーナが精神的に疲れているのだと思った。
 それも当然だろう。
 部下はアルフィラ以外の全員が全滅し、もしその話が本当なら『国一番』の騎士がスライム程度に敗北したというのだ。
 そんな状況で正気を保っていられるはずもない。

「まあ、よろしいでしょう。ただ、そのような話を女王様の前でされては困ります」
「そ、それは……」
「少しおやすみなさい。その方が貴女のためにも……」

 ドルイドがフィアーナに休息を勧めるのは当然の事だった。
 こんな精神状態で女王の前に出られては、何を話すか分からない。
 貴族と騎士の仲が悪い事は、周囲の事実だった。
 利権を主張する貴族と、国は強くあるべきと考える騎士。
 魔王が居なくなったこの世界では、これから先、騎士の言う『強い国』と言うものの形も変わってくる。
 金だ。
 使える資金を潤沢にし、国を栄えさせることこそがフォンティーユという国の未来を支える事になる。
 騎士たちが言うように戦技を鍛えたところで、使う相手が居なければ無意味でしかない。
 けれど、国に騎士も必要だ。
 もし有事の際、戦力が無ければ無力に蹂躙されるしかないのだから。
 その均衡を保つことが重要であり――もしここで騎士がスライムなどに敗北するほど弱い集団だと知られては、その均衡が崩れてしまう。
 他の貴族たちはそれを喜ぶだろうが、こと、財務大臣という金銭に深く関わる立場であるドルイドには騎士の没落はまだ早いと思っていた。
 だからこその、フィアーナへのねぎらいの言葉。
 けれど、フィアーナはその言葉を聞くと勢いよくドルイドの方へ向き直った。

「そ、それは困りますっ」
「こ、困る……ですか?」
「私は一日も早く、あの場所に戻らなければ――部下たちの無念を晴らしたいのですっ」

 この時、ドルイドはようやくフィアーナが女王へ何を訴えようとしていたのかに気が付いた。
 任務の報告だけではない。
 敗北を雪ぐために、もう一度魔物退治に出ようとしていたのだと。

「お願いします、ドルイド卿。何でもしますから、どうかお口添えを……お力をお貸しください」

 フィアーナはそれほどまでに追い詰められていた。
 振り返った表情はとても必至で、余裕がない。
 スライムごときに負けた、部下を失った……異世界から現れた勇者によって魔王が倒され、平和になった世界に突然起こった悲劇。
 それに心を痛めているのだ。
 それと同時に……。

「な、なんでも……」

 ドルイドは不謹慎ながら、その言葉に動揺してしまった。
 女王にも劣らない……一部では女王よりも人気があるフィアーナのような絶世の美女が自分のような男に「なんでもする」と口にすれば、どんな男でも動揺してしまうだろう。
 それに、フィアーナの服装も問題だ。
 まだ着替えていない彼女は厚手のローブのような衣服をまとい、しかも所々が破れて素肌や下着の一部が覗けてしまう。
 そんな彼女が懇願するように頭を下げれば、エルフとは思えないほど豊満な胸の谷間が露になり、そこへ視線が向いてしまうのを止められない。
 ゴクリ、とドルイドが生唾を飲み込んだ。
 そして……。

「それは……また。なぜそれほどまでに――お仲間の敵討ちですか?」
「は、はい――」

 けれど、フィアーナはその言葉に少しだけ返事を詰まらせた。
 そこに感じるものがあったのは、財務大臣として多くの人……要職に在り、一枚も二枚も舌が回る老獪な有力者を相手にしてきたからか。

「他にも何か?」
「いえ、他には何も……」

 そんな言葉とは裏腹に、フィアーナは先ほどまでの勢いを失い、視線をドルイドから外してしまう。
 けれどその白雪のような美しい肌にはうっすらと朱が浮かび、エルフ特有の長い耳まで赤くなってしまっている。
 そんな状態のまま胸の下に腕を置けば豊満な胸が更に強調され、反対の腕は下半身へ……まるで股間を守るように置かれた手が、僅かに揺れる太ももの間に挟まれていた。

(……これは?)

 明らかに過剰な、そして男を意識した動きだとドルイドは感じた。
 フィアーナらしくないとも思う。
 いつも凛として女神ファサリナに祈りを捧げ、ドルイドの好色な視線に強気な態度で返していた彼女とは別人のようだとも思う。
 そんな彼女が恥ずかしそうに身を竦め、胸や股間を守るために両手を置いている。
 むしろそんな事をすれば余計に男の目を惹いてしまうということを……知らないはずはないのに。

「まあ、フィアーナ殿が女王様へ任務の報告をするのは当然ですし、私は否定しませんが……」
「そ、そうですか?」
「ですが、もし今の話を他の貴族たちに話したらどうなるか……は、分かりませんな」

 いつもなら絶対にしないだろう、強気な女騎士を相手にしての駆け引き。
 失敗すれば失うものの方がはるかに大きい博打であり、確実な勝算が無ければ挑めない類の選択。
 けれど、ドルイドは恥ずかしそうに身を縮こまらせるフィアーナの色香に惑わされ、気付いた時にはそう言ってしまっていた。
 吐いた言葉は呑み込めない。
 ――フィアーナはドルイドの言葉を聞くと、驚きに目を見開き、そして悔しそうに唇を噛む。
 服の上からでもそうと分かる豊満な胸の下に回された腕に力が籠ると、余計に胸をしたから持ち上げて強調してしまう。
 破損した服の隙間から覗いていた谷間が更に深くなり、両脚が内股気味になる。
 ……けれどそれだけだ。
 侮蔑の言葉も、軽蔑の視線も無い。
 フィアーナは顔の赤みを強くしながら視線を外し、無言のままその場から動かない。
 その頭の中では、部下たちの無念を晴らし自身の恥辱を雪ぐことと、これからドルイドに要求される事とを天秤にかけ……。

「…………お願いいたします、ドルイド卿。このことは、他の方々には内密に……」

 その言葉に驚いたのは、ドルイド自身だ。
 色香に惑わされたとはいえ、優秀な騎士相手に侮蔑とも取れる言葉を履いて無事に済むとは思っていなかった。
 平時なら、彼女の腰にある剣で『侮辱された』として斬り裂かれても……。

「おや、フィアーナ殿? 腰の剣はどうなさったのですか?」

 ドルイドはこの時になって彼女の腰にあるはずの名剣が無い事に気付き、聞いてみた。
 フィアーナはその事を話すのも悔しいのか唇を噛み……数秒の後。

「……スライムとの戦いで失いました」
「スライムとの? アレは確か、女王様から賜った名剣だったはず――それをスライム御コキとの戦いで?」
「――――ッ」

 それで弱みを握られたと思ったのか、フィアーナは一瞬だけドルイドへ強い視線を向け……けれどすぐ悔しそうに視線を外す。
 小心者のドルイドはその視線だけで背中に冷や汗を流してしまうが、次に見せた悔しそうで……そして、自分に抵抗できない女騎士の姿に興奮してしまう。

(これはもしかしたら、もっと深い事を聞けるのでは……?)

 そう思うと、ドルイドは半裸とも言える格好で自分の前に立つ銀髪の女騎士の美肢体を頭のてっぺんから足の先までじっくりと舐めるように視姦した。
 僅かに汚れが目立つが小奇麗に整えられた銀髪、エルフらしい長い耳、少し力を籠めたら簡単に折れてしまいそうな細い肩――そんな線の細さが嘘のように膨らんだ豊満すぎる胸。
 腰は内臓が詰まっているのかと疑問に思ってしまいそうなほど細く、更に視線を下げれば安産型の大きなお尻と、騎士として鍛えられた魅惑的な太ももと美脚。
 そんな、どれだけの金を払っても手が届かないような美肢体を持つ女騎士が、自分の前で悔しそうに美貌を歪めながら、けれど恥ずかしそうに耳まで赤くしてしまっている。
 抵抗する素振りは見せず、ドルイドの機嫌を取ろうとしている姿は格下の貴族令嬢たちに通じるものがあるけれど――それとはまったく状況が異なる。
 あいてはあの、このフォンティーユに置いて最強とも言われるほど優秀な女騎士、フィアーナなのだ。
 そんなフィアーナが、今まで妄想の中でしか劣情を抱くことが許されなかった女傑が、ドルイドの前に立っている。
 ボロボロになった衣服を着替える事もせず。
 ……それで興奮するなという方が不可能だ。

「まあ、他の皆様方に黙っているのは構いませんが――いくつか質問させていただいてもよろしいですか?」
「え?」

 ドルイドは数分前にも口にしたことを、もう一度言葉にした。
 確認のためだ。
 その表情にはいつ訴えられるか分からない緊張と、そしてこれからもしかしたら何度も妄想したフィアーナの美肢体を隙に出来るかもしれないという興奮から歪んだ強張りを浮かべている
 その表情から嫌な予感がしたが、フィアーナは屈辱と恥辱を雪ぐ機会を失いたくない一心で頷く。

「では――まずは、装備はどうなさったのですか?」
「装備、ですか?」
「ええ。騎士団が身に着けている装備は、元を辿ればこの国から支給されたもの。それをどこで紛失したのかと聞いているんです」

 何気ない質問だ。
 特に不穏な意味も無いように思え、フィアーナは正直に答える事にした。

「スライムに襲われた際に、脱がされました」
「脱がされた?」
「はい」

 フィアーナとしては『スライムから攻撃された』と伝えたかったのだが、けれど装備を脱がす魔物だなんてそれも常識ではありえず、そんな事を言えばドルイドからまた不審に思われてしまうだろうと考えての事だ。
 言葉を選んだ返事にドルイドは満足したのか、胸を抱いて身を縮こまらせるフィアーナの隣に移動する。
 視線には欲望が濃く表れ、それが胸に向いているのが嫌でも感じられて気持ち悪かった。

「この胸を守っていた鎧も、スライムに剥がされたのですか?」
「――――っ。ドルイド卿っ! それは――ッ」
「それは? 私の質問に答えていただけないなら、次は貴女の部下であるアルフィラ殿に質問するしかないですな」
「っ。あ、アルフィラには……」
(彼女はスライム相手に処女を失って、私より……)

 フィアーナの前では気丈に振舞っていたが、もしこんな質問をされたら……。

「わ、わかりました。答えますからアルフィラにはこのような事はやめてください」
「勿論ですとも」

 ドルイドはその言葉で、フィアーナの弱点を一つ握った。
 唯一の生き残った部下であるアルフィラは、フィアーナにとって大きな弱点だったようだ。
 運良くその事に気付けたドルイドはほくそ笑みながら――それでも抵抗しないフィアーナの態度にほくそ笑む。

「それで、鎧はスライムに外されたのですか?」
「は、い。そうです……」
「どのように?」
「え?」
「スライムとは粘液の塊でしょう? 金具を外したのか、それとも、鎧の下に潜り込んで破壊したのか……気になりまして」

 その質問の意図が分からず、フィアーナは疑問符を浮かべたまま返事をする。

「き、気絶させられて……気が付いたら、外されていました」

 実際には胸を揉まれた絶頂の衝撃と屈辱で気絶したのだが、そんなことを口に出来るはずもない。
 フィアーナが答えると、ドルイドが満足したように頷く。

「ほうほう――その知性の有るスライムというのは、鎧を外す知識も持ち合わせていると」
「はい……」

 その呟きの後、ドルイドが手を伸ばした。
 必要以上に刺激しないよう、腰に少しだけ指先が触れるだけ。

「――ッ」
「あの粘液の怪物が肌の上を這いまわって、スライムが鎧を外したのですか?」
「…………そ、それは答える必要があるのでしょうか?」
「勿論ですとも。どうやってスライムが鎧を外したのか気になりますし……もしかしたら、失敗を隠すための嘘、かもしれませんから」
「私は嘘などっ!!」
「分かっていますとも――ですが、スライムと言えば最も弱い魔物ではないですか。そんなスライムにどうやって負けたのか……事前に聞いておかなければ、私もフィアーナ殿の支援が出来ませんので」

 ドルイドは我ながらよく回る舌だと思った。
 聞いただけならそれっぽい事を言いながら、肥満体の貴族はフィアーナの腰に指を触れさせたまま質問を続ける。
 まるでナメクジのように太くて、丸くて、それでいて体温高い指だとフィアーナは思った。
 服の上からでも異物感が強い。気持ち悪い。
 その嫌悪感に耐えながら、女王レティシアへの面会、そして恥辱を雪ぐ機会を得るためにドルイドの支援を得ようとする。
 疲労困憊のまま城へ戻ってきたばかりでまだ動揺が抜け切れていないからこそ、そんな思考になってしまうのだろう。

「そ、そうです……鎧の下に入り込まれ……その」
「鎧の下ということは……」

 ドルイドはフィアーナがフォンティーユの城を出立する前の姿を思い出す。
 素早さを生かした戦いを得意とする彼女の鎧は最低限で、関節や胸を守る程度のモノ。
 だから、鎧の下に入り込んだということは……。

「……こうやって?」

 ドルイドの指が動いた。腰から腹部、臍の傍……そこから更に上へ向かって。
 少しずつ、ねっとりと。
 指先にボロボロになった衣服の感触と、フィアーナの体温を感じながら。

「っ」
「聞いているのです、フィアーナ殿。こうやって……スライムは、鎧の下に入り込んできたのですか?」
「………は、はぃ」

 フィアーナの美貌が真っ赤に染まる。
 恥辱に震え、屈辱に形の良い眉が「ハ」の字に下がっていた。
 あまりにも顕著な反応に、ドルイドの方も驚いてしまう。
 けれど抵抗が無い事を良い事に……そのナメクジのように太い指が、胸の下乳にまで触れてしまう。
 僅かに硬い下着の感触を感じながら、指先でその縁をなぞりながら横へ。

「そのスライムは、鎧の下でどのように動いたのですか?」
「そ、それは……」
「教えてください。もしスライムの話が真実なら、私もフィアーナ殿に協力いたしますので」

 方便だ。
 ドルイドはスライムの行為に羞恥心を感じているフィアーナの様子に興奮し、貴族らしい仕立ての良いズボンの下で不気味なほど股間を膨らませていた。
 偶然にもそれを見てしまったフィアーナはゴクリと唾を飲み、そして異様なほど腹の奥が熱くなってしまう。

(違う、こんな……)

 スライムとの情事を無理やり言葉にさせられ、思い出し、その動きに沿ってドルイドの指が服の上を這う。
 まるで肌を直接撫でられるような気持ち悪さを感じ、男の生理現象を目の当たりにして……だというのに嫌悪感や羞恥心と同じく、性的な興奮を覚えてしまうなんて。
 そんなことはあり得ないと、フィアーナはドルイドの前に立ったまま身を硬くした。

(違う、違う……違います、こんなのは……)

 自分にどう言い聞かせながら、深呼吸。
 肺一杯に冷たい空気を取り込もうとしたが、感じたのはドルイドの汗の匂いだった。
 とても臭い。
 男の匂い。
 ……それを肺いっぱいに吸いこむと、ドルイドが目に見えるほど大量に汗を掻いていることに今更ながら気が付いた。
 緊張しているのだ。
 肥満体の身体は油のようにねっとりとした汗で額と言わず顎まで濡らし、息を乱している。
 ゾッとした。
 恐ろしいと感じてしまう。
 同時に――その指が下着の縁に沿って動けば、凌○を思い出して興奮する身体が勝手に反応してしまう。
 弱い刺激だということも災いした。
 動けないまま一方的に、乱暴に犯された刺激とは全く違う弱い刺激に……ほんの僅かだが、物足りなさを感じてしまったのだ。

(ちがう……こんなの、こんなのは私じゃない……)

 そう言い聞かせるのに。

「ん……ぁ……」

 開いた唇から、小さな、耳を澄ませなければ聞こえないような小さな声が漏れてしまった。
 指で撫でられたくすぐったさではない。
 明確な……性的な刺激。
 スライムもそうだった。
 緊張感で身を硬くしているフィアーナに対し、緊張をほぐすために優しく触ってきた。
 ドルイドがそんなことを知るはずはないのに、けれど全く同じ動き。
 ゆっくりと、ねっとりと、嫌悪感を最小限にするための触れるだけの刺激――それは嫌でも、フィアーナにあの洞窟での凌○を思い出させてしまう。

「ドルイド卿……ゃ、やめてください。このようなことは……」

 フィアーナは精一杯の勇気を振り絞ってそう言った。
 自分から受け入れた事なのに、これ以上は何か嫌な予感がしてしまう。
 ――どうしても、頭からスライムの凌○が消えない。
 スライムが最初に行った優しい愛撫を思い出してしまうのだ。

「このような事? 私はフィアーナ殿が口にしたスライムの動きをなぞっているだけなのですが……なにが、このような事なのでしょうか?」
「え?」
「これはスライムの攻撃でしょう? まさかフィアーナ殿は、スライムに攻撃されて感じたなど……ないですよね?」
「そ、それはっ! 当たり前です!!」

 フィアーナはまるで馬鹿にされたような気がして強気に言い返したが、しかし直後にしまったと考える。
 表情が強張ったが、反対にドルイドはニヤリと笑う。

「なら問題ないではありませんか――それで、スライムはこの後どう行動したのですか?」

 あくまで『鎧の下に潜り込んだスライムの真似事』をするドルイドは、フィアーナから次の言葉を引き出そうとする。
 ここで否定すれば、自分は『スライムの攻撃で感じた女』と侮辱されるようで……フィアーナは目を伏せ、唇を噛む。

「それは……」
「それは?」
「……その、鎧の下を這い回って……私の胸を……」

 ドルイドから協力を得るために自分はなにを言っているのか。
 そんな思いもあったが、今更引けないという気持ちもある。
 何より、自分が断ればアルフィラに害が及ぶのだ……傷心の部下をこれ以上追い詰めたくない気持ちで、フィアーナは洞窟内でフレデリカたちに裏切られ、スライムに潜り込まれ――その粘液で胸を揉まれた時のことを口にする。

「胸を、揉まれました……」
「スライムに?」
「はい。服の下にまで潜り込まれて、胸を揉まれたんです……」
「ほほぅ、それは――」

 その言葉に、ドルイドの心臓が高鳴る。

(服の下に?)

 その言葉の通り、ドルイドはローブのいたるところに作られた穴から指を服の下に侵入させた。
 フィアーナの美肢体がドルイドの目の前でビクッと震える。
 その指先はフィアーナの体温と、そして緊張と興奮で浮いた汗を感じていた。

「フィアーナ殿? こんなに汗を掻いて、どうしたのですかな?」
「そ、それは……」
「貴女は状況を話し、私が真偽を確かめる……それだけのはずなのですが」

 けれどフィアーナの肢体は、まるで情事の最中にある女その桃の反応にしか思えなかった。
 肌は火照り、汗が浮き、そして僅かな指の動きにも反応してしまうほどの敏感さ。
 銀髪の女騎士がその肢体を興奮させていることは明らかで、ドルイドが指摘する。

「まさか――まさかですが」
「ち、違います! 違う、そんなことは……」
「まさか、スライムなんかが肌に触れ、胸を揉まれたことに感じたのですか?」
「――――ッ」

 ドルイドがわざとらしく大仰に言うと、フィアーナが身を強張らせた。
 同時に、更に一歩、その肥満体が近付く。
 身体と身体、服と服がぶつかり合うほどの接近。
 女騎士の美肢体に当たった男の肥満体が僅かに歪んでしまうほど。
 けれどフィアーナは他人の体温を感じて、さらに胎の奥を疼かせてしまった。

(ありえない、こんな――)

 立ち尽くして言わされるままだったフィアーナの後ろに、ドルイドが立った。
 身長はほとんど変わらない――ドルイドが後ろから腕を伸ばせば、丁度良い位置にフィアーナの豊満な乳房がある。
 そのままドルイドはボロボロの衣服の隙間から、両手で女騎士の肌に指を這わせていく。

「ですが、ほら」
「ぁ、だめです……ドルイド卿、止めてください……」
「ダメと言いながら――しかし抵抗はしないのですなぁ」

 ドルイドの言う通りだった。
 フィアーナは口では抵抗しているが、けれど身体は動かさない。
 指一本すら抵抗するどころか、むしろドルイドが触りやすいように胸を下から支えていた腕を下げてしまうほど。
 あの時フィアーナは剣を握り、スライムと相対していた。
 その時を再現するように、両手を腰の前に持っていく。

「わ、私は剣を構えていて……服の下に潜り込んだスライムが、邪魔をしてきたんです……」
「ほう。ということは、スライムは複数いたのですか?」
「はい……一緒に居た女性魔導士は、子供だと言っていました……」
「スライムの子供という事でしょうか」

 魔王が死んだことで、魔物が増えることはない。
 これはこの世界の常識である。
 ドルイドはその思考から『子供』という単語の意味を深く理解せず、小さなスライム程度の認識で考える。
 そんな事よりも……。

「では、フィアーナ殿は胸を揉まれながらスライムと戦ったのですな」
「え、えぇ……あっ……」

 ドルイドの手の動きが大胆になってきた。
 服の上と破れた隙間から豊満すぎる胸を揉む。
 下着の硬い感触を手の平に感じながら、最初は優しく、肌を撫でるような繊細さで。
 その太いなめくじのような指からは想像もできないような丁寧な動きだ。

「ぁ、そう……最初は、優しく……」
(私、こんな事を……)

 自分の口が信じられない。
 知っている相手とはいえ、再び戦場へ戻るためとはいえ、異性にこんなことを話すだなんて――。
 潔癖症というわけではないが、正常な貞操観念を持つフィアーナには自分の行動が理解できない。
 いやそれは……。

(また、お腹が熱く……)

 ……こんな状況で、スライムに犯された時のように身体を熱くするなんて信じられない。

「は、い……最初は優しく……」
「最初ということは、徐々に激しくなっていったのですかな? それとも突然?」
「わ、わかりません……ただ、気が付いたらすごく……」
「すごく?」
「…………これ以上は、必要ないはずです……っ」
「それを判断するのは貴女ではなく私です、フィアーナ殿。貴女はどうやってスライムと戦い、敗北したのですか?」
「……っ」

 ドルイドは退かなかった。
 いや、両手に感じる極上の感触に理性が薄れ、普段の好色な本性が表に現れてしまったのだ。
 フィアーナはいつも弱気で、卑屈とすら感じていたドルイドの変貌に動揺し、その質問を断れない。
 いや、心のどこかで『もう一度戦うために』と『アルフィラを守るために』という考えが浮かび……従ってしまう。
 自分よりも弱い相手に敗北する――スライムで経験した被虐的な快感を覚えてしまったからこそ、その先にある快感を知っているからこそ、フィアーナは従ってしまう。

「む、胸をずっと触られていました……戦っている、間……ずっと」
「胸を揉まれながら戦った、と」
「……は、はい」

 認めると、それだけで体温が上がったような気がする。

「どうやって負けたのですか?」
「胸を……揉まれて……」
「それで?」
「……集中力が乱れて……です」
「何故、集中力が乱れたのでしょうか? 胸を揉まれても、気持ち悪いならそれほど気にならないようにも思うのですが」

 ドルイドはフィアーナの反応から、そこで何が合ったのかをすでにある程度理解していた。
 なにせ、こうやって後ろから抱きしめるようにして胸に触れているだけでも息を乱しているのだ。
 ……フィアーナは最初の抗議が嘘のように黙ったまま、ドルイドの質問に答えている。
 その体温はドルイドの胸の中でどんどん上がり、服を着たままだというのに美女の汗が服に染み込んでくるかのよう。
 体温の上昇から『女の発情』を理解したドルイドは、更に行為を激しくしていく。

「……」
「フィアーナ殿? 何故、スライムという魔物に胸を揉まれて集中力が乱れたのか、と聞いているのですが?」
「それは……」

 気持ち良かったから、とは言えなかった。
 恥ずかしいし、何より魔物に触られて感じたということを自分から認める事が嫌で。
 だというのに、すでにその事に気付いているドルイドはフィアーナを急かす。
 ボロボロのローブと下着越しにドルイドの太い手でも包み切れない豊満な胸の表面を撫で、微弱な刺激を与えながら。
 ……たったそれだけの刺激で、フィアーナの細い腰がピクン、ピクンと跳ねるのだ。
 その反応が面白くて、ドルイドは質問しながら、フィアーナの反応を楽しむ。

「では、少し質問を変えましょう」

 数分ほどフィアーナの反応を楽しんだ後、ドルイドが言った。
 フィアーナはほっと安堵の息を吐く。
 けれど、彼女に襲い掛かる恥辱は変わらない。

「スライムはずっと優しく触っていただけですか?」
「……え?」
「貴女は、こうやってずっと優しく触られたまま戦ったのですか?」

 それは、次に進むための言葉だ。
 フィアーナは理解する――敗北の瞬間まで、この辱めは続くのだと。
 同時に、ゾクリと背筋が、そして胎の奥が疼く。
 敗北の瞬間を思い出して。

「少しずつ……激しくなっていきました」
(あぁ……)

 言ってしまった、とフィアーナは思った。
 瞬間、その言葉通りに……少しだけドルイドの手が激しく動く。
 ナメクジのように汚らわしい太い指が、ボロボロのローブと下着の上から、そんな布切れでは隠し切れない豊満すぎる胸へ沈み込んだ。
 ほんの少しだけだ。
 けれど、刺激が強くなる。
 ゾクリと、背筋が震える。
 ビクンと、肩が震える。

「ぁっ」
「おや? どうしました、フィアーナ殿?」

 フィアーナが隠し切れない快楽に染まった声を上げた瞬間、まるで今気付きましたと言わんばかりのわざとらしい言葉がドルイドから放たれる。
 ……その間も、巨乳に食い込んだ指は動き、まるで牙で食むように食い込んでくる。

「ぁ、いえ……っ……その……」
「それでは、徐々に胸を揉んでいたスライムの動きが激しくなっていった……と」
「はい」
「その刺激で集中力を乱してしまい、負けてしまったのですね?」
「……はい」

 一つ一つ、敗北の原因を口にさせられる。認めさせられていく。
 頭が変になりそうな屈辱と恥辱なのに……フィアーナの両脚は内股気味のまま太ももを擦り合わせ、腰が勝手に上下してしまう。
 フィアーナ本人は気付いていないが、腰が上下う動いたことで胸にも劣らない豊満なお尻が動き、ドルイドの股間を刺激してしまっていた。
 まるで今以上の刺激を求めるように、ローブとショーツ、ズボン越しに男性器を優しく包み込む。

「おっふ……」
「……ドルイド卿?」

 ドルイドがその刺激にたまらず奇妙な声を上げると、フィアーナが心配そうな声を出しながら肩越しに振り返った。
 美人のそんな仕草にも色香を感じながら、お返しとばかりにドルイドがフィアーナの胸をギュッと握った。
 根元から押し出すように、牛の乳を搾るように。
 根元から先端に向けて、握りながら手を動かす。

「は、ぉ……ッ」

 その刺激に肩越しに振り返っていた美貌が眉を「ハ」の字に垂らし、艶やかな唇を開いたまま舌を覗かせ、鼻の穴まで膨らませた情けない姿。
 女王レティシアにも比べられるほどの美貌がだらしない顔へと変わったのはほんの一瞬。
 けれどその一瞬を見逃さなかったドルイドは、スライムからの凌○で感度が増したフィアーナの反応に気を良くしていく。

「まさか、この程度の刺激で敗北したのですか?」
「ち、ちが――」

 フィアーナは敗北していないと言いたかったが、ドルイドは『もっと気持ち良かった』と勝手に解釈して手の動きを激しくする。
 片腕五本、両手で十本の指の動きが変わった。
 変わったとフィアーナは思った。
 今までの優しい刺激ではないとわかる――明らかな変化だ。

「あ、あの……っ」
「これは確認です、フィアーナ殿。それでは、報告の続きを」

 後ろから肥満体の男に抱きしめられ、胸を揉まれる。
 こんな状況で報告も何もない――と思うが、フィアーナはその言葉に逆らえない。
 上昇した熱と状況が思考力を奪い、ドルイドの命令に従って口を開いてしまう。

「それで、スライムの動きはどのように激しくなったのですか?」
「どのように……?」
「このまま胸を揉んでいたのか……それとも」

 そこで言葉を切ると、ドルイドの両人差し指がトン、と優しく胸の先端を叩いた。
 服と下着越しでも隠し切れないほど固くなった、乳首。胸の先端。
 そこを叩かれると、フィアーナの熱がまた一段上がる。

「どうなのですかな?」
「……そ、れは……」

 けれどそれは、まるで自分から「乳首を触ってくれ」と言っているようなものではないか。
 そう考えると、フィアーナは羞恥心が勝って返事が出来ない。
 十数秒の後、その反応の意味を理解したドルイドはその耳に口を寄せる。
 エルフの長い耳。
 そこへ息を吹きかけるように。

「では、頷くなどで返事をしてくださって結構です。乳首を触られましたか?」

 その質問に、フィアーナはすぐに首肯した。
 触られたのは本当だ。嘘ではない。
 ……嘘ではないけれど、自分から認めてしまったことが恥ずかしい。
 まるで少女のように頬を赤らめながらフィアーナが顔を伏せると、ドルイドは彼女の見事な銀髪に顔を埋めながら指を動かす。
 十本の指それぞれが異なる石を持っているような複雑な動きだ。
 度の指も繊細で、力強く――その中でも人差し指が、服の上から乳首を押す。
 ギュッと。第一関節まで沈み込むほど強く。

「オっ」

 伏せたフィアーナの唇から、低い声が漏れた。
 同時に、全身が震える。
 人差し指から力を抜くと、見事な張りと弾力によって指が押し戻され――また第一関節まで乳首を押す。

「ア、 ぅっ!」

 どうやら、フィアーナはとても乳首が弱いようだった。
 ……まさか何十時間も嬲られ続けて敏感になってしまったなどと想像もしないが、ドルイドはフィアーナの弱点を見付けるとそこを重点的に刺激し始める。
 人差し指を刺したまま胸を揉んだり、服の上から人差し指と親指で乳輪ごと摘まんで扱いたり。
 下着の裏地に擦れる硬い刺激が特に気持ちいいのか、服の上から扱くとフィアーナの全身が激しく震え出した。
 両脚は踏ん張っていないとも謳っていられないように揺れ、力が抜け、背後に立つドルイドに背中を預けてしまう。

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ウメ畑 2022/11/01 09:43

リクエスト小説 エスパダ・ラヴ 『女性専用性感マッサージ』

「ほう、ここが話に聞いていた……」

 そう呟いたのは、見た者なら誰でも魅入ってしまいそうな美貌の女だった。
 太陽の光を反射して眩しいほどに輝く金髪、宝石のように綺麗な碧色の瞳、女優も顔負けの整った美貌。
 大人びた容姿を袖を捲ったセーラー服で飾り、この女性がまだ少女と呼べる年齢なのが分かる。
 そして何より目を惹くのは、学生服を着ているというのに大人どころかAV女優でもありえないようなメートル越えの美爆乳。
 セーラー服の布地が持ち上がり、カーテンのような影を作ってしまうほどの美爆乳はツンと前に突き出た砲弾型。
 しかも下着をつけていないのか、その先端には爆乳によって強調された小さな突起まで見えてしまっている。
 彼女が一歩歩くだけで爆乳はタユン、と音が聞こえそうなほど大胆に揺れ、前に突き出た胸の柔らかさを強調してしまう。
 そんな美貌と爆乳から視線を下げれば見事にくびれた腰がセーラー服の裾から覗き、その爆乳が肥満体から来るものではないと証明している。
 スカートを押し上げるお尻も魅力的で、両脚はこちらも見事に鍛えられた肉付きの良い美脚。
 セーラー服という野暮ったい服を着ているはずなのに魅力を隠す事が出来ず、彼女がこの場所へ来るまで、何人の男たちが視線を奪われ、鼓動を早くしただろうか。

(うーん。噂になるほど凄い店には見えないけれど……)

 いつもならここで彼女……エスパダ・ラヴは自分に好色的な視線を向けてきた相手に興味を示していた事だろう。
 けれど、今日の興味はここ。
 彼女の視線の先にある、比較的最近建てられた汚れの目立たない外見をしたエステ店だった。
 彼女が知る幾人かの女性がこの店を訪れ、それからは不自然なほど連日にわたって店を訪れている。
 しかも、その内の幾人かはこの店の素晴らしさを吹聴して回っているというのだ。
 このエスパダ・ラヴもその話を聞いた一人で、興味を惹かれてきたのだが……真新しいが道行く人々は一見もしない地味な外装を見れば、少しだけ興味が薄れてしまう。

「確かに胸が重くて肩が凝るからエステを受けるつもりだったけれど、これは外れかしら」

 店の目の前で堂々と口にするあたり中々の性格だが、本人に悪気はない。
 正直者――なのだ。
 自分に対しても、他人に対しても。
 欲望に忠実とも言うのだが、本人にはそれを『悪い事』と思っている認識はない。
 なにせ女性の身であり、これほど見目麗しく、神に選ばれたような美肢体の持ち主だという自覚もありながら、彼女は羞恥心を失くしたような快楽主義者であることを一切隠していなかった。
 むしろ公言して回り、その美貌で男女問わずに自分の虜にしてきた一面もあるほどだ。
 彼女が通う天日学園では日常的に男性も女性も誘惑し、中には学園の教師まで含まれてしまっている。
 そんな彼女にとって肢体の状態を口にすることは当然で、このメートル越えの胸も、それによって発生する肩凝りも、別に恥ずかしい事ではない。
 エスパダはエステ店を値踏みするように見ながら胸の下で腕を組み、歩くだけで人々の目を惹いていた美爆乳をより強調させるように持ち上げて見せた。
 セーラー服の上着が持ち上げられた胸の形に膨らみ、下着をつけていない先端の形がしっかりと浮き上がってしまうけれど、やはり彼女は気にしない。
 桃色に染まった内面とは裏腹に、凛とした美貌、スラリと伸ばされた背中、腕で持ち上げたことで更に強調された美爆乳。
 本人は意識していないが、まるで美の女神のような肢体を道行く人々に見せつけたまま、数秒の逡巡。
 この何の魅力も感じない外観をしたエステ店を値踏みした後、彼女はその持ち前の強気を崩さないままドアを開けた。

 カラン

 ドアベルが渇いた音を立てると、正面にある受付に立っていた女性従業員が一礼をする。

「いらっしゃいませ」
「今日が初めてなのだけど、大丈夫かしら?」

 当たり障りのない事を口にしながら店内に進めば、地味な外観の通り、店内も地味な作りになっていることが分かる。
 まるで病院のような全面が白の壁に、外からは中が見えない掏りガラスの窓。
 程よい温度に設定された冷房の風に混ざって感じるのは、アロマか何かだろうか。
 地味な外観と内装からは想像していなかった心地良く感じる甘い香りに感心しながらエスパダが店内を進むと、彼女以外に客が居ないことが分かる

(こんな店が、噂になるほどかしら?)

 ふとそう思ったが、この店は24時間営業だった事を思い出す。
 エスパダはそういう事を気にしないが、噂通りにエステ店が性的な仕事を行っているのなら、そういうことをする客は夜に訪れるのかもしれない。
 ふとそんなことを考えながら、女優顔負けの美貌を持つ美少女は特に警戒することも無く受付で名前や年齢、凝っている個所などの情報を伝えていく。

「肩と腰……あとは適当に」
「了解いたしました」

 性的な刺激は大好物だが、外観と内装からそれほど期待していないエスパダの態度はどこまでも平坦だ。
 むしろ、期待し過ぎていただけに、落胆の気持ちの方が大きいまである。
 その気持ちが現れた声音は普段とは打って変わり、むしろ彼女を知る人物が聞けば落ち込んでいると表現するかもしれない。
 個人情報の記入を終え、表情から内面を感じさせないまま顔を上げれば、ふと受付の女性と目が合った。

(中々悪くない顔ね)

 客ではなく、女としての視線で店員の顔をそう賞すると、そのまま視線を下げていく。
 受付の棚があるので下半身は見えないが、見える範囲――上半身はなかなかのものだ。
 淡いピンクの施術服に包まれた肢体は細身で、けれど胸元はしっかりと膨らんでいる。
 エスパダほどではないけれど、この細身にこの胸のふくらみなら、多くの人が『巨乳』と称するのではないだろうか。

(84……E、もしくはFカップといったところかしら?)

 何の気なしに女性の胸のサイズを想像しながら、エスパダは案内されるままに着替え室へ。
 店内に客が居ないのだから、そのまま奥に通されてしまう。
 この『待ち』が無いというのも、この店に不安を抱く一因だ。
 人気店なら店内に人が居なくても予約が埋まっていて断られることが多々ある。
 それが無いということは、昼間のこの時間は本当に『客が居ない』ということだ。

(もし気持ち良くなかったら、噂の出所を調べる必要があるかしらね)

 それは悪い噂を流したからではなく、貴重な『自分の時間』を無駄にさせられた事への怒りだが。
 そんなことを考えながら、エスパダは着替え室へ通され、着替えとガウンを手渡された。

「オイルを使った施術を行いますので、そちらの水着に着替えてください」
「分かったわ」

 渡されたのは、地味な――平日の昼間にノーブラで街中を歩く露出狂で、男女どちらにも性的な行為を抱くバイセクシャルの好色家な彼女からすれば“とても”地味なパステルグリーンの布地を白のレースで飾った水着を前に、エスパダは一瞬動きを止めてしまった。

「本当にこれを着るの?」
「はい。オイルで下着が汚れてしまいますので。大丈夫、他のお客様も皆同じような水着に着替えておられますので」
「いえ。なんなら私は裸でも構わないのだけれど?」

 エスパダはむしろ裸から直接触ってほしいと思ったのだが、店員は「水着を着てもらう決まりなので」の一点張り。
 それを言われて駄々を捏ねる事は相手への迷惑になると、変なところで律儀に思いながらエスパダは言われた通りに水着へ着替える事にした。
 更衣室から店員が出ていくのを待ってから、セーラー服に手を掛ける。
 一気に脱いでしまうと、その下から成人男性の手にも収まりきらないメートル越えの美爆乳が現れた。
 下着の支えが無くてもツンと前に突き出た砲弾型。
 エステのような外的刺激が全く必要ないようなキメ細かな肌に彩られた、若さからの針に支えられた美爆乳だ。
 見事という言葉以外は何も浮かばない。
 その先端には美爆乳のふくらみに相応しい少し広めの乳輪と、性行為のし過ぎで太く育ってしまった大きめの乳首が乗っている。
どちらも綺麗なピンク色で、エスパダの美貌に相応しい卑猥な乳首と乳輪だ。
しかも、この店を訪ねるまでの興奮で乳輪も乳首もふっくらと膨らみを増している。
 パフィーニップルと称される見事な爆乳とピンク色の乳首を揺らしながら、今度は手をスカートのホックへと伸ばした。
 あっさりと蒼色のスカートを脱ぎ去れば、その下から現れたのは女子高生が身に着けるというには派手過ぎる――けれどエスパダによく似合う黒いショーツが現れる。
 左右は紐結びになっており、クロッチ部分以外は肌が透けて見える煽情的なランジェリー。
 一目で高級だと分かるショーツには黒薔薇の意匠が施されており、それが余計に彼女の下半身を卑猥に彩っていた。
 見た者を誘うためだけに作られたものだと分かるショーツも簡単に脱いでしまえば、その下からは頭髪と同じ金色の陰毛が現れる。
 綺麗に切り整えられた逆三角形の陰毛の下にはこの歳で激しい性行為を繰り返しているとは思えない綺麗に閉じた陰部があり、その上には卑猥な性格の彼女らしくない慎ましいクリトリスが包皮に守られたまま。

「はあ……」

 はずれの予感にエスパダはため息を吐くと、渡された水着を着ていく。
 おそらく店で用意している水着の中でも特注サイズだったはずだ。
 けれどメートル越えの胸には小さくて、布地と紐が胸肉に食い込んでしまう。
 大きめのマイクロビキニのような格好になると、可憐なパステルグリーンの水着も卑猥な意匠にしか見えない。
 いつもならその光景を見せびらかして楽しむのだが、見る者が居なくては何の楽しみも無い。
 そのままパンツも履くけれど、やはりこちらも胸に匹敵する豊満な下半身が履いてしまえば不出来なマイクロパンツとなってしまうだけ。
 中途半端なエロさはエスパダの嫌う所であり、なんの面白さもないようにしか思えない。

……けれど、そこにはエスパダが理解できない美があった。

 男好きする豊満な肉付きをした美女が、少女が好むような可憐な水着に身を包んでいる光景。
 豊満な胸と尻には水着の布地と紐が食い込んで卑猥な段差を作り、あきらかに『似合っていない』。
 けれど、こういうアンバランスな意匠を好む客も一定数存在しているのも事実。
 エスパダは水着の食い込みが気になって何度も指で場所を整えようとするが、しかし何度やっても紐は食い込み、布地はズれてしまう。
 サイズが合っていないから……というのは簡単だが、それを選んだのは受付の店員なのだ。
 エスパダはその事をよく考えていなかった。
 自分には無い観点から、美の女神のような美肢体に新しい魅力を見付けるという行為の意味を。
 すでに内心では店の評価に落胆していたからだろう。

「さて。エステの腕はどうかしら?」

 エスパダはただただ動きづらいとしか感じない小さめの水着に苦笑すると、ガウンを羽織って更衣室を出た。
 尿意も無かったので、そのまま施術室に向かう。
 そこには三人の施術師が待っていた。
 全員が女性だ。
 腰まである茶髪を首の後ろで束ねた女性。
 豊かな黒髪を三つ編みにして左肩から垂らした女性。
 そして、この三人の中で一番上の立場にある、理知的なフレームレスの眼鏡をかけたショートカットの金髪美女。
 おそらく染めているのだろう。
 エスパダの美しい金色と違い、僅かに濁った金色の髪だ。
 同じ部屋に居て見比べてしまいと、その色彩の違いがはっきりと分かってしまう。
 誰もがエスパダには及ばない者の世間一般では美女に分類されるであろう女性たち。
 彼女たちはエスパダが施術室に入ってくると、軽く一礼をした。

「それでは、ガウンを脱いでいただいて、うつ伏せで横になっていただいてよろしいでしょうか?」
「ええ、分かったわ」

 無駄な会話はせず、エスパダはガウンを脱ぐと三人の女性に見事な肢体を晒す。
 施術師たちはその堂々とした仕草と、ガウンの下から現れた見事過ぎる美肢体にほう、と息を吐き、一瞬だけ動きを止めてしまった。

(ふふ)

 エステ店の施術師が他人の肢体に一瞬たりとも釘付けになってしまってどうするのか。
 そういう所でも施術師としての格が窺える。

(あまり期待しないのが正解かもしれないな)

 エスパダは性的な刺激や興奮は好きだが、けれど下手な刺激はあまり好きではなかった。
 過度な期待は落胆に繋がる――十数分前から感じている気持ちの変化を教訓にしながら、彼女は言われるままに施術台の上でうつ伏せになる。
 豊満な胸が施術台と身体に潰されて横からはみ出し、パステルグリーンの布地が大胆に食い込んだ大きなお尻が施術師の視線に晒された。
 ここへ歩いてくるまでの間に食い込んだのか、パステルグリーンの布地のほとんどが豊満すぎる尻肉の谷間に隠れてしまってTバックのような格好になっているが、恥ずかしさは無い。
 エスパダは自分の肢体が極上のモノであると認識し、それに自信と誇りを持ち、むしろ見せつけるような堂々とした態度と言える。
 彼女はそんな男だけでなく同姓まで魅了してしまう美肢体を無防備に晒し、そして完全にリラックスしながら全身を脱力させた。

「それでは、施術を開始させていただきます」
「ええ」

 宣言と同時に、三人の手がエスパダの肢体に伸びた。
 まずは身体の要である腰に一人。
 他の女性たちはオイルの準備をしているのか、施術台から離れていく。

「痛かったらおっしゃってください。それか、もっと強くしてほしい時にも」
「わかったわ」

 そこから、施術が始まった。
 金髪の女性のしなやかな指が、無駄な脂肪などほとんどない腰に触れる。
 細く、それでいて硬い指だ。
 触れられただけで指先までしっかりと力が籠っているのが分かり、そのまま押し込まれると僅かに硬くなっていた腰の筋肉に沈んでいく。

「見事なお身体ですね」
「そうかしら?」
「ええ。とても鍛えられていて、しなやかな筋肉……それに、無駄なお肉という物がとても少ないように感じます」

 そう言いながら、金髪の施術師は指を腰から背中に、そして肩へ。
 ビキニの紐を解かないように注意しながら、背中全体を揉んでいく。
 要所だけでなくその周辺まで刺激してこそマッサージというのは効果がある。それはエステも同じだ。
 言われた場所だけを刺激するのではないその行動に、うつ伏せのままエスパダは少しだけ感心した。

(へえ、中々……)

 彼女はその指使いの力強さと繊細さ、そして敏感に自分が気持ちいいと感じる場所を見付けられる刺激でさらに全身から力を抜く。
 開始して数分で施術師の技量を理解すると、最初に感じていた不満があっという間に消し飛んだ。

「ん、んぅ……」
「痛かったでしょうか?」
「いいえ。とても心地良いわ」

 時間が経つごとに、だんだんと力が抜けている。
 それに合わせて、施術師の指の動きも大胆になっていった。
 最初は背中全体を指でなぞり、その際に発見した凝っている場所を的確に刺激される。
 そうすると背中全体が心地好くなり、エスパダは自分の身体が火照ってきたのが分かった。
 性的な刺激とは言えないが、けれど「気持ちいい」と思える刺激。
 身体の凝りがほぐれ、全身が弛緩していく。
 だんだんと気持ち良さばかりに意識が向き、施術師の指の動きを敏感に意識で追ってしまっていた。

「それでは、本格的に揉んでいきますね」
「……えぇ」

 エスパダは夢見心地で呟くと、金髪の施術師の指が腰に戻ってきた。
 親指の腹を押し付けると、グッ、と力が込められた。

「アゥっ!」
「痛かったですか?」
「い、いえ――中々、力が強いのね」

 エスパダが驚いたのは、先ほど見た外見、細身で、腕も細い女性施術師の姿からは想像もできないほど強い指圧の衝撃だ。
 両手の親指が背骨を挟んだ左右の腰の一点を押し込むと、僅かな痛みと、そんなものが一瞬で消えてしまうほどの気持ち良さに襲われた。
 あまりに気持ち良くて声が漏れてしまったが、むしろそれは本能からの喘ぎ声である。
 今までもエスパダは何人もの男女と肌を合わせてきたが、いつも自分主体の性行為だった。
 気に入った男を襲い、気に入った女を喘がせる。
 そんな性行為ばかりだった自分が、年上とはいえ女性の指だけで喘がされてしまった――僅かに動揺してしまうほどの快感だ。

「それでは、続けさせていただきますね」
「ええ、おねが――いっ」

 宣言と同時に、もう一度。
 腰を強く押されて、今度はエスパダの身体が強張った。
 今まで感じていた快楽とは別種の快感に驚き、身体に力が籠ってしまう。
 それは施術師の視界でも確認できるほどの変化で、強張った際に大きなお尻が力むとパステルグリーンのマイクロパンツがより深く尻肉に食い込んでいく。
 それはまるで、大きな尻肉がグリーンの布地を食んでいるかのようだ。
 指で押すたびにお尻が浮き、力み、パステルグリーンの布が尻肉に呑み込まれていく。
 それを十回ほど繰り返すと、指の位置を僅かに動かしてもう一度――。

「フッ、く……っ」
「痛かったらおっしゃってくださいね」
「えぇ、とても気持ちいいわ……」

 エスパダは痛みと快感の混じった声でそう呟くと、指から力が抜けるのに合わせて全身を脱力させていく。
 気持ちいい。

(エステって……マッサージって、こんなに気持ちいいものだったかしら……?)

 そんな疑問が浮かんでしまうほどだ。
 この美肢体を維持するために、エスパダは多くのマッサージ店やエステサロンを体験していた。
 中には一時間でこのお店の数十倍以上の値段がするような高級店も経験していたが、しかしここほど気持ち良かっただろうか?
 今まで経験してきたエステサロンとはまったく別種にも思える快感に、けれどエスパダは困惑するのではなく喜びで全身から無防備に力を抜いていく。

(あぁ、気持ちいい……この店は“当たり”ね)

 なにせ、気分次第でノーブラのまま街を歩き、男女関係なく関係を持つような精神性だ。
 それが性的な快感であったとしても気にせず、その判断基準は『気持ち良い』か『そうじゃないか』で分けられる。
 その点では、この店はエスパダのお眼鏡にかなう……合格を与えられた。

「ふ、ぁ……ぁぁ……」

 そのまま十分。
 腰や肩を中心とした施術が十五分ほど続くと、エスパダはまるで火が付きそうなほど熱く甘い吐息を漏らすほどまで出来上がってしまっていた。
 全身は発情したように淡く色付き、うっすらと汗まで浮かんでしまっている。
 うつ伏せのまま息が乱れて肩が上下している様子はあきらかに異常だが、彼女の表情はとても幸せそうだ。
 恍惚とした表情のまま流れ出た涙や涎で枕を濡らしながら、恥ずかしげも無くパステルグリーンの布地が食い込んだ大きなお尻を左右に揺らし、その股間部分には小さいが隠しようのないシミが浮いていた。

「それでは、次はお尻の方を揉んでいきますね」
「ええ、よろしくお願いね」
「当店特製のオイルを用意いたしましたが、お使いして構いませんか?」

 普通の女性ならこの時点で返事も出来ないほど出来上がってしまっているのだが、相手は快楽に慣れたエスパダである。

「ええ、大丈夫よ」

 当然のように返事をして、けれど今以上に気持ち良くしてくれるであろう特製オイルを受け入れる。
 彼女がここまで性的な快感を覚えているのには、理由があった。
 この室内を満たす甘い香り。
 受付でも焚かれていた特製のお香は女性の性感を刺激するもので、施術室には受付で炊かれているものよりもより濃度の高いお香がたかれていた。
 施術師たちは事前に中和剤を飲んでいるのと、何年もこんな仕事をしていることで身体が鳴れたこともあり、それほど大きな変化は現れない。
 けれどたとえそれがエスパダのような快楽に慣れた人間であっても、これだけ濃度の濃いお香……媚薬のお香『媚香』を嗅げば、思考に霞がかかってしまう。
 しかもマッサージで全身の血流を良くすれば、その効果が早く強く表れるのも当然。
 そうやって来店してきた女性たちを虜にしてきたのだ。

「では、オイルを垂らしていきますね」

 エスパダの身体が『出来上がった』と確信したところで、別の場所でオイルを用意していた二人が合流する。
 そのまま三人がかりで金髪美女の見事な背中、お尻、そして両足にオイルが垂らされた。
 僅かに粘り気のある、少し黄色がかった液体だ。
 オイルというよりもローションといった感じだが、エスパダは気にしない。

「んっ……」
「冷たかったですか?」
「少し……」

 一つ一つの動作を確認されると少し煩わしかったが、けれどそれを上回る快感に思考が緩み、その時の感情を言葉にしてしまう。
 そうしながら女性施術師たちの手が背中の窪みに溜まったオイルを引き延ばし、両手に、そしてお尻、両脚へ。

「は、ぁぁ……」
(ああ、これは確かに……きもちぃぃわ……)

 揉み解される全身だけでなく、まるで心まで溶けていくかのような快感だ。
 オイルで滑りの良くなった肌の上を、三人、六本の腕が移動する。
 十五分の時間を掛けて丹念に揉まれた背中は最初だけ。
 二人の施術師が肩と両腕に。
 そして一番上手な金髪の施術師が両脚とお尻に。
 両脚にオイルを塗られると、僅かに浮腫んでいた太もも、そしてふくらはぎへ。
 肉体の根幹である背中から、お尻、太もも、ふくらはぎと外へ外へと快感が広げられていくかのようだ。

「ふぅ……はぁ……」

 知らず、エスパダの吐息が乱れていく。
 意識が下半身に集中してしまう。
 臀部や陰部といった性感帯を触られていないのに、意識が施術師の指を折ってしまう。
 両肩もそう。
 こちらはコリが強かったこともあり、かなり、気持ちいい。

(全身、溶けちゃいそう……)

 そう思ってしまうほどの気持ち良さ。
 本人も気付かないまま足の指が丸まり、けれど施術師の指が動くと脱力する。
 キュッと丸まり、だらんと開く。
 その繰り返し。
 太ももから膝裏にかけて刺激されると丸まり。
 膝裏からふくらはぎに欠けて刺激されるとゆっくりと開いていく。

「エスパダ様、力加減はいかがでしょうか?」
「えぇ、とてもいいわ……」

 向けられた質問に、エスパダは本心で答える。
 頭がふわふわする。
 全身、指の先まで気持ちが良い。
 オイルを塗られた場所がゾクゾクして、火照り、オイルとは違う液体がマイクロビキニのショーツを濡らしてしまっていることに本人は気付いているだろうか。

「では、お尻を失礼いたしますね」

 そう言うと、施術師の指がエスパダの大きなお尻をゆっくりともち上げた。
 太もも側から押し上げれば、尻肉が卑猥に歪み、けれど手を離せば見事な弾力で元の形へ戻ってしまう。
 見事な弾力。
 若さからの張りだけではなく、しっかりと鍛えられている証だ。
 それに、施術師は直接触れたからこそ分かる――大きな脂肪の塊のはずなのに、その下にはどっしりとした筋肉が隠されている。
 それが同姓でも興奮するような弾力を産み、金髪の施術師はそこから数度、同じように下から上へとエスパダの尻肉を持ち上げた。

「ここ、分かりますか?」
「んっ! え、ええ……そこがとても気持ちいいわ」

 しかし、彼女は施術のプロ。
 内心で興奮しつつもしっかりと仕事をこなし、その見事な尻肉の中でも凝っている部分を見付け、凝りをほぐすように揉んであげる。
 そうすればエスパダの意識がお尻に向き、その口からはまたも素直な言葉が漏れた。

「ここがとても凝っておられますね。重点的にお揉みいたします」
「えっ、ええ……」

 その宣言に、エスパダはなぜかドキリと胸を高鳴らせてしまった。
 男に抱かれている、もしくは、男を抱いている時でもここまで興奮することは稀である。
 その感情を同性に、しかもエステ施術の最中に感じたことに少しだけ驚く。

(なんだか……とっても気持ちが良い、わね)

 それは快感に慣れているエスパダだからこそ感じる違和感。
 自分がたかが十数分の施術でここまで“出来上がる”なんておかしいと考えるけれど、身体は脱力してしまって、抵抗感も湧いてこない。
 その原因は全身に塗り広げられたオイルにあった。
 それほど効果の高くない筋弛緩の薬物と、全身が敏感になってしまう薬物の混合液。
けれどどちらも効果は低く、痺れのような刺激を感じる程度。
 だからこそ気付かれにくく、気付いた時には身体の反応が鈍くなっている。
 エスパダは媚香と媚薬オイルを併用された状態にあり、身体は敏感、反応も鈍くなり、けれど意識だけは保っている状態だった。
 その状態でエスパダでも巧みだと感じる指技でお尻を揉まれると。

「ぅ、あ……っ」

 ゾクン、と感じ慣れた快感が背筋を伝って脳を痺れさせた。
 気に入った相手に愛撫された際に感じるような強い快感だ。
 絶頂には至らないけれど、身体が興奮し、心がときめいてしまう。
 確かに気持ちいけれど、ほんのちょっとだけ物足りない刺激。
 だから、エスパダはその“ほんのちょっと”を求めて腰を浮かせてしまい、傍目には施術師の指に向かってお尻を突き出してしまっているかのよう。
 快楽を求めるのはいつもの事だが、それを本人が意識しないレベルで無意識に行ってしまっていた。

「エスパダ様、気持ちいいですか?」
「ええ……」
「なにかあれば、いつでもお言いつけ下さい」

 金髪の施術師の言葉はどこまでも丁寧だ。
 言葉遣いも、そして指使いも。
 丁寧で、気持ちいいけれど、あとほんのちょっとが物足りない。
 上半身の方が性感帯は多いはずなのに、けれど意識は下半身にばかり向いてしまう。
 技術の差なのか、それともエスパダの微妙な変化に気付ける経験の差なのか。

「はぁぁ……ぁぁ、もう少し強く……」
「かしこまりました」

 エスパダが自分から腰を浮かせてそう告げると、女性施術師は特に気にした様子も無く同意して、ギュムッ、とその五指を尻肉に食い込ませた。
 指先が尻脂肪の奥、筋肉にまで到達して少し痛い。
 けれど、今のエスパダにとってはその痛みも気持ち良くて、むしろ程よい刺激に感じながらビクッと持ち上げたお尻を痙攣させてしまう。
 そのまま二本の腕、十本の指が無遠慮にエスパダの尻肉を揉みまくれば、絶世の美少女の腰がビクンビクンと痙攣する。
 あくまで指の動きはゆっくりと、丁寧で。
 そこに力強さが加わっただけなのに、一気に刺激が変化した。

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ウメ畑 2022/11/01 09:40

リクエスト小説 メルティア 『媚薬で敏感になったおっぱいで隠れ自慰行為』

 カリカリと、室内には羽ペンが動く音が静かに響いていた。
 開けた窓から入り込んだ涼やかな風が、執務机の上に重ねられた羊皮紙を揺らしている。
 室内は実用一辺倒と言うべきか。
 飾りと言えるものはほとんど無く、本棚と執務机、そして来客用のソファとテーブルが一対ずつだけ。
 執務机の正面にあるドアの向こうからは人の気配が複数あり、執務机で業務を行っている女性が多くの人から大切に守られているのだというのが感じられた。
 窓から入り込んだ風は室内に飾られた白花の香りを周囲に広げ、羽ペンを動かしている人物は鼻の甘い香りに気持ちを落ち着けながら、僅かに乱れた美しい銀髪を何気ない仕草で整えた。
 この国、魔導王国フォンティーユの王女であり、この国を救った黒髪の勇者マリアベルの姉メルティア。
 彼女は母親譲りの銀髪は窓から差し込む陽光を反射して神秘的に輝いて見え、机に座って仕事をしている彼女をどこか……神聖なもののように煌めかせていた。

「ふう……こうも書類の相手ばかりだと、肩が……」

 と独り言ちて、銀髪の女性は大きく伸びをした。
 ただそれだけだ。
 強張った身体を伸ばしただけ――なのだが、メルティアがそんな普通の事をしただけなのに、伸ばされた身体は強烈に胸元を強調させてしまう。
 こちらも母親譲りの、エルフの血を引いているとは思えないほど豊満に成長してしまった胸。
 小玉の果実を二つ、無理やりドレスへ押し込めてしまったような……そう思えるほどのモノ。
 メルティアの体格に合わせたドレスだというのに胸元だけは生地が左右へ引っ張られ、卑猥な皺を作り出してしまっている。
 薄桃色と純白を基調とした可愛らしさが感じられるドレスはメルティアのお気に入りの一着だった。
 戦前――ブラックウーズという汚らわしい魔物に一度は国を奪われ、けれど勇者マリアベルや仲間たちと共に取り戻した母国。
 復興の際に僅かだが残っていた私物の一つとして回収できたのだが、メルティアは1年の冒険……だけでなく、スライムによる数度の凌○によって身体の肉付きが明らかに変化してしまっていた。
 年齢とともに身体が成長したのとは違う。
 ……明らかに、胸が大きくなっているのだ。
 以前のドレスも腰回りなどは十分余裕があるのに、胸元だけはこの通り……生地が張り詰めるほどまで膨らんでしまっている。
 おそらく一回り……いや、二回りは大きくなったのでは、とメルティアは思う。
 その胸を小さめの下着に押し込めているが、ブラジャーのカップから溢れた乳肉がドレスの生地を引っ張ってしまっているのだ。
 それでなくとも、メルティアが着ているドレスは胸元を強調するように開いている造形している。
 そこから覗く胸の谷間はとても深く、縦割れと言っていいほどの形となってしまっていた。
 メルティアはそんな、自分でも『男の目を惹いてしまう』と理解している胸の谷間を見て、ため息。

「はあ……復興のためにお金が必要だし、当分はドレスを新調できないわよね……」

 メルティアはそう思い、もう一度ため息を吐いた。
 背を伸ばした後、今度は肩を回す。
 重い乳肉を支える肩は疲労で硬くなっており、たったそれだけでも吐息を漏らしてしまいそうなほど心地良い。
 それと同時に、その動きに合わせて二回りほど膨らみ、ブラジャーから溢れるほどまで成長した乳肉がドレスの下で卑猥に揺れてしまう。
 ドレスと下着に支えられた胸が揺れ、谷間が震える様子は、男から見れば目の毒としか言いようがない。
 けれど今、室内に居るのはメルティア一人。
 他人の目を気にすることなく、大きすぎる胸を大胆に揺らしながら肩を回しながらメルティアは執務で強張った全身をほぐしていく。

「ふう……さて、もうひと頑張り、っと」

 そんな、平和な時間。
 つい数週間前までブラックウーズの脅威に抗い、そして心の一部では恐れていた日常とは違う。
 平和で、穏やかな時間。
 メルティアはその時間を楽しむように言葉を紡ぐと、羽ペンを握り直して羊皮紙に向き直る。
 内容はブラックウーズによる被害、その報告。
 そして、それに必要な復興費用や、人員の補填。
 そこへ他国からの援助の申し入れや、不足している人員の補充などなど。
 事務的な内容が書かれた羊皮紙たち……その枚数は、数えきれないほど。
 その全部に目を通し、一年間の凌○で肉体的に、精神的にも披露している母、女王レティシアの代わりに対応する。
 それが王城へ戻ってきたメルティアの仕事だった。

「マリアも頑張っているのだから、私も頑張らないと」

 妹、マリアベル。
 異世界から召喚された父の血を濃く受け継いだ、この世界で優位いつの黒髪を持つ存在。
 女神ファサリナの武具を身に纏い、魔物ブラックウーズの討伐を果たしたフォンティーユの英雄。
 そのマリアベルは、スライムの残りを探して国中を移動している。
 男を殺して取り込むことで力を増し、そして女を犯して同族を増やしていく最悪の魔物。
 ソレは必ず滅ぼさなければならない人類の敵であり、もはや最弱と呼ばれていた魔物ではない……。
 メルティアが頭を使って疲労しているなら、マリアベルは身体を使って疲労しているのだ。
 そんな妹に負けないよう、そして頑張りすぎる妹が無理をしないで済むように、メルティアは自分に出来ることを頑張ろうと考える。

――カリカリと、羽ペンの動く音が室内に響く。

 涼やかな風と淡い花の香りに気持ちを落ち着ければ、メルティアはうっすらと微笑みを浮かべながら仕事をこなしていく。
 静かな時間、ゆっくりと真面目な時間が流れていく……。

「…………」

 だがある時から、時々、メルティアの手が止まるようになった。
 時間は昼前。
 執務室で仕事を始めて、四時間ほどの時間が経った頃だろうか。
 羽ペンの動きが止まる回数が増え、本人も身動ぎをする回数が増えていく。
 無意識なのだろう。
 集中力が乱れたと言えば、そのようにも見える。

「ふう……ああ、もうこんな時間……」

 しばらくして、自分の変化に気が付いたメルティアは窓から見える太陽の位置でおおよその時間を考え、集中力が途切れそうになっている現状の理由を理解した。
 同時に、ゾクリ、と背筋が疼いたような気もする。
 ……気のせいではない。
 そして、疼いたのは背筋だけではなく――その、大きく成長した胸も。

「はあ。勝ったのはいいけれど、倒されてもまだ毒を残すなんて……最悪な魔物ね」

 その言葉を向けたのは、今は亡き最悪の魔物、ブラックウーズに対してだ。
 ブラックウーズ。
 メルティアの父とその仲間たちの力で魔王が倒され、魔物は増える術を失った……そのはずなのに、増える術を手に入れた突然変異の怪物。
 しかも、女性を犯して利用するというのだから、最悪だ。
 フォンティーユに捕らえられた、もしくはブラックウーズとの戦いに敗北した女性はあの薄汚い黒に近い灰色の体液を持つスライムに犯される。
 そして子を孕まされるのだが……メルティアは幸運にも、助けられた。
 マリアベルや、共に旅をした仲間たちによって。
 その際、あまり認めたくはないのだがブラックウーズの仲間とも言えるかもしれない忌むべき魔物の一種族、女淫魔のフェネルリエカに最も多く助けられたのは思う所が多々あるが……今はいい。
 メルティアはブラックウーズに襲われ、何度も犯された経験がある。
 処女も奪われてしまった。
 ……けれど、スライムが最も執着したのは、母親譲りのその胸だ。
 大きく、柔らかく、けれど張りもある。
 見事としか言いようのない美巨乳はスライムにとっても魅力的だったようで、メルティアは犯されるたびに胸を嬲られた。
 ――開発された、と言ってもいい。
 なにせ、胸を揉むだけでなく、悪辣なスライムは仲間の一人である女科学者が作り出した媚薬を利用してメルティアの胸の感度を上げ、更に乳腺という普通に生活していたら絶対に意識しない箇所まで性感帯にしてしまった。
 おかげでメルティアは媚薬の後遺症に悩まされ、ふとした拍子に発情してしまう。
 どうしようもないのだ。
 女科学者カーラが作り出した媚薬は強力――しかも、スライムはその媚薬を更に体内で変化させ、異常としか言いようがないほど強力なものへと作り変えてしまったのだから。

「ふぅ、は……ぁ……お薬、飲まないと」

 少し前まで真面目に仕事をしていたとは思えない、熱の籠った息を吐きながらメルティアが羽ペンから手を離す。
 白磁のように美しかった肌はうっすらと朱に染まり、僅かに額を濡らしてしまうほどの汗が浮かんでいる。
 トクン、トクンと心臓が今までより少し早く鼓動し、高鳴っているのが自分でも分かった。
 何より気になるのは、何度も何度も嬲られてしまった、自分でも大きいと分かっている美巨乳だ。
 胸元の開いたドレスから覗く谷間にもうっすらと汗が浮き、窓から流れ込む涼やかな風が撫でるだけでもジンと痺れたような刺激を放ってしまう。
 メルティアが興奮を抑えるための薬に手を伸ばそうとすれば、その僅かな所作で豊満すぎる胸が揺れ、下着の裏地に敏感過ぎる先端が擦れてしまった。
第三者が見れば机の上にある革袋へ手を伸ばしただけにしか見えないだろう。
けれどメルティアはその刺激だけでその母親譲りの美貌を魅惑的に蕩けさせ、「んっ」と鼻にかかった甘い吐息が漏れてしまった。
 ピクン、と小さく震えた細い肩が艶めかしい。

「……はあ。カーラさんが解毒剤を作っているそうだけれど、予算、少し増やした方がいいかしら?」

 カーラ。
 女神ファサリナを信奉する国家リシュルアに所属していた女科学者。
 そして今は、ブラックウーズが残した破壊と、その眷属であるスライムに抗するための道具を作るためフォンティーユに留まっている小柄な女性。
 その顔を思い浮かべながらメルティアは軽口を言う。
 実際には自分の一存で予算を振り分ける事など不可能なのだが、そう言いたくなる気持ちもわかるのだ。
 スライムの媚薬に苛まれているのは、何もメルティアだけではない。
 媚薬の実験台にされたカーラ本人や『聖女』と称される父と共に旅をした女神官、ジェナだって軽度だが媚薬の影響を受けている。
 他にもたくさんの女性たちが媚薬だけでなく凌○の後遺症に悩まされており、カーラが作る解毒薬はそんな彼女たちにとっては希望そのものなのだ。

「私はまだ、抑制剤が簡単に手に入るだけマシ……なのでしょうけど」

 それは王族だからというわけではなく、スライムに犯された回数が多く、そして媚薬を撃ち込まれた量も他の女性たちよりずっと多いからだ。
 カーラの考えでは、メルティアはおそらくこの大陸の誰よりも媚薬を打たれ、そして体内に蓄積しているのだという。
 しかも、その多くが胸なのだ。
 母親譲りの美巨乳。
 エルフの血を引いているとは思えない豊満な胸は、以前からも大きかったが、今では成人した男性でも片手では掴めないほど。
 しかも揉まれただけで簡単に絶頂してしまう最大の弱点でもあった。

「……お薬、飲まないと」

 思考によからぬ妄想が混ざりそうになり、メルティアはそう言葉にしてから抑制剤が入っている革袋を手にした。
 薬の形状は丸薬だ。
 とても苦くて、喉越しも最悪。
 けれどその苦さが興奮を抑えるのだと思えば、苦い食べ物が苦手なメルティアも文字通り涙を流しながら飲むしかない。

(はあ……いつまでこの薬を飲まないといけないのかしら?)

 そう思ってしまうのも、しょうがない事だった。
 元凶であるスライムを倒したというのに、自分の体質は変化したまま――それを悪く思ってしまうのは当然の事だろう。
 心中でスライムへの恨みを言葉のしつつ、メルティアは革袋を手にするとその口を縛っている紐を解く。
 ……そして革袋を逆さにしたが、目的の丸薬は一つも落ちてこなかった。

「へ?」

 それが何を意味しているのか、淫欲に思考を曇らせ、息を乱すメルティアは理解できずに何度か革袋を振ってみる。
 けれど、何も落ちてこない。
 空だ。

「え、から……薬、切れてる?」

 不幸なことに、執務に追われていたメルティアは薬が切れていることに気付いていなかった。
 思えば、昨晩は「最後のお薬だから、カーラさんへ相談しに行かないと」と呟いたような気がする。
 その後は執務で疲れた頭を休ませるようにすぐ入眠してしまい、朝はまた執務に追われて羽ペンを手に取った……まあ、つまり。
 薬が切れたことも忘れて、仕事をしてしまったということだ。
 それに気付いた瞬間、メルティアは全身から汗が噴き出したような気がした。
 全身が火照り、そして胎の奥が燃え盛るように発熱たように感じる。
 椅子の上で身を固くしたのも一瞬で、メルティアはキュッと太ももを擦り合わせた。
 たったそれだけで擦れた肌がジンと痺れ、そしてゾクリとした疼きが腹の奥に溜まったのを自覚する。
 その奥……こちらもお気に入りの、薄桃色のショーツの奥が見なくても分かるほど熱く盛り――そして、恥ずかしい液体を漏らしたのが自覚できてしまう。

(ぁ、うそ……)

 媚薬の影響、そして抑制剤が無いという事を自覚すると、変化は早かった。
 あっという間に肌が汗で濡れ、心臓の高鳴りがより一層激しくなり、まるで子宮が自分から活動しているかのようにゾクゾクと疼いてしまう。
 メルティアは、その感覚に覚えがあった。
 性的な刺激を受けた際に、身体が発情した瞬間。
 何度もスライムに犯されたからこそ覚えてしまった、自分が興奮してしまった瞬間。

「うぅ……」

 メルティアはまた自分が興奮し始めたことを自覚すると、とにかくまずは唇を噛んで乱れる呼吸と一緒に漏れそうになる嬌声を抑えた。
 ドアの外には自分を警護してくれている騎士たちが居るのだ。
 そんな彼らに自分の嬌声など……聞かせられるはずがない。
 ……真面目に仕事をしている騎士たちの後ろで、淫欲に耽るなど。

(ぁ、だめ……っ)

 そんな淫らな妄想に、ほんの少し妄想しただけで、媚薬の影響が強く残る身体は発情してしまう。
 腰の疼きが強くなったことを自覚すると、メルティアは瞼を強く閉じた。
 ギュッと目を瞑り、椅子の上で身を固くし、背を伸ばし、両手を膝の上に置いて、深呼吸。

「すー……はー……すー……はー……」
(気持ちを落ち着けて、全部、忘れるの……)

 自分へ言い聞かせるように何度も心の中で繰り返す。
 スライムに襲われた事。
 犯された事。
 多種多様な形をした触手たちがメルティアの豊満な身体に群がり、瑞々しい肢体を嘗め回し、そして全身のありとあらゆる弱点を暴かれた。
 スライムは狡猾だ。
 科学者・カーラが言うには取り込んだ男たちの意識、もしくは知識を共有しているのかもしれないと言われるほど――人の弱味を見付け、突く事に長けている。
 その説明を受けた時、メルティアはその異常な進化は凌○にも発揮されているのではと思ってしまった。
 それほどまでに――スライムは普通の魔物とは違う。
 女を犯し、○すだけでなく感じさせようとしてくるのだ。
 大陸最強の魔導師である母レティシアの才能を継ぐ魔導師、勇者の姉であるメルティアも、その地位とは関係なく、『快楽』だけでなく『羞恥』を与えられたからこそ分かってしまう。
 スライムは、女を○すだけではなく、女を気持ち良くしようとする魔物なのだと。

「は、ぁ……んぅ……だめ、だめぇ……」

 スライムは何度拒絶しても、その触手を止めなかった。
 まるで人間の手のように――いや、人間の手では不可能な動きで片方だけでも大振りな果実のように膨らんでいるメルティアの形が整った美しい巨乳を簡単に包み込み、その全体を余すことなく刺激してくる。
 蛇が全体へ巻き付くようにゆっくりと、黒に近い灰色の体液を浸透させるように。
 最初は優しく丁寧に、痛みを与えて女を緊張させないように……その刺激を思い出すように、メルティアは執務に使っている椅子の上で腰を揺らしながら左手を持ち上げ、その細くしなやかな白い指を薄桃色のドレスの上から胸に重ねた。

「ん……」

 それだけで、鼻から甘い吐息が漏れてしまう。
 ピクンと細い肩が震え、整えられた爪がドレス越しとは思えないほど柔らかな胸の中に沈んでいく。

「ふ、ぁ……」
(ぁ、きもちいい……)

 たったそれだけでメルティアは今が執務中だという事も忘れそうになり、けれど右手に握っている羽ペンの感触が何とか理性を踏み留まらせる

「仕事……っ……し、ないと……」

 呼吸を乱しながら、メルティアがそう呟く。
 それは自分に言い聞かせるためのものだったが、けれど力が無い。
 鼻息は乱れ、頬が上気し、額や首筋には汗が浮いている。
 汗を吸ったドレスが肢体に張り付けば、薄桃色の生地にうっすらと下着の線が浮かんで見えた。
 その下着の上から、胸に重ねたままの左手がゆっくりと動き出す。

「は、ぁ……ぁん……っ……」

 ふに、と。
 細く美しい指が左胸を揉んだ。
 それに合わせて甘い吐息が漏れる。
 そうなると、もう駄目だ。
 メルティアは自分でも否定できない気持ち良さに思考を染め、左手がふに、ふにと優しく丁寧に胸を揉んでしまう。
 それだけで胸から身体を貫きそうなほど甘美な刺激が放たれ、溢れ、すぐにでも絶頂してしまいそうだった。

「だめ、だめなのに……ぃ……」

 スライムの媚薬に侵され、日常生活に支障をきたすほど感度が増した肢体――その中でも最もスライムに嬲られ、開発された美巨乳。
 白魚のように美しい指が少し揉んだだけでゾクリと背筋が震え、腰の奥の熱が上がる。
 メルティアはその疼きの中、スカートの中で下着が湿っていることに気が付いた。
 見なくても、触れなくても分かる。
 媚薬の興奮と胸からの刺激で、勇者の姉の膣穴は簡単に決壊していた。
 今はまだうっすらと湿っているだけだが、もし左手でスライムがそうしたように乱暴な動きで胸を揉みしだいたら……いや、両手で胸を揉んだらどうなってしまうだろう?

「はっ、はっ、はっ……」
(だめ、だめよ……そんなことをしたら、気付かれちゃう……)

 メルティアの視線がドアに向く。
 ドアの向こうで真面目に自分を警護してくれている騎士たちの顔を思い出してしまう。
 実直で、真面目な騎士たちだった。
 一人はメルティアより少し年上の、まだ若いエルフの成年。
 もう一人は、外見こそ若いが、どこか年老いた雰囲気がある長い年月を生き抜いたエルフの男性。
 今日は運が悪い事に、警護をしてくれている二人の騎士はどちらも男だった。
 もしこれが片方でも女性だったなら、この症状を相談できただろう。
 けれど、メルティアは一国の王女とはいえ一人の女だ。
 ……こんな症状、異性には相談できない。
 そして、もし執務室で自慰を行い、その声を聞かれてしまったら……。

「はぁ……はぁ……っ」
(お薬が無くて……興奮が収まらないまま、見つかってしまったら……っ)

 女とは違う男の大きな手で、自分とは違う太い指で、スライムと同じように乱暴に胸を揉まれてしまったら。
 ドレスが乱れるくらい――いや、この薄い布が破れてしまいそうなくらい乱暴に揉まれてしまったら……。

「ぁ」

 そう妄想した瞬間、メルティアの肢体が椅子に座ったままブルリと震えた。
 一瞬だけ瞳から光が消え、ぼうっとした視線が天井に向く。
 薄く化粧が施された唇が中途半端に開いたまま、その端から涎が一筋零れ落ちる。
 ……そのまま、数秒。

「は、は……ぁ……」

 メルティアはただただ、頭の中でもしかしたら男に襲われるかもしれない……そう妄想しただけで絶頂した。
 ……それを情けないとも、恥ずかしいとも思わない。
 なにせ、メルティアはすでに全身を開発されてしまっているのだ。
 一度興奮すれば満足するまで収まらず、そして快楽を我慢できるほど女の精神力は強くない。
 それを、嫌と言うほど思い知らされている。
 何度も、何度も。
 マリアベルとの旅の途中。
 スライムに襲われ、絶頂させられた。
 泣いても叫んでも、許しを乞うても……謝罪しても。
 きっと、男たちもスライムと同じようにメルティアを凌○するはずだ。
 時折、本当に時々だが――城に勤める騎士たちの視線が、自分の胸に向いているのをメルティアは気付いていた。
 妹よりも低い、学生のような低身長。
 メルティアが心の中で強く意識してしまっている低い身長に比べて、大人の女性顔負けの豊満すぎる胸。
 スライムからの凌○でさらに膨らんだそこは、もはや凶器のようなもの。
 子供のように低い身長と女淫魔のように膨らんだ大きすぎる胸。
 その差が男たちの理性を惑わせ、視線を惹いてしまう。
 そんな胸を持つメルティアが仕事を忘れて自慰を行っている姿なんかを男性騎士たちが見てしまったら……。

「だめ、だめぇ……っ」

 頭の中の妄想が加速する。

(声っ、出したら聞かれちゃう――気付かれちゃうっ)

 そうなってしまったら、自分は終わりだとメルティアは思う。
 執務室に籠って仕事をしている王女――ではない。
 きっと男たちに執務室に籠って自慰に耽る淫乱な王女という噂が広がり、自分は毎日犯されるのだ。
 乱暴に、滅茶苦茶にされてしまうのだ。
 男たちが一番興味を持つのは、きっと自分の胸だとメルティアは確信する。
 スライムに嬲られたことで一回り膨らみ、王城に残っていた昔の下着はどれ一つとして使えなくなってしまった大きな胸。
 感度も増していて、下着が用意できるまで布を強く巻いて胸の震えを押さえつけるしかなかった。
 そうしなければ、乳首がドレスへ擦れただけで軽く絶頂し、立っていられなくなるほどなのだ。
 ニプレスを張っても汗で粘着力が落ち、勃起した乳首がすぐに押し剥がしてしまうほど。
 その乳首だって――。

「ぁぁ……」

 メルティアの唇から、絶望の声が漏れる。
 抑制剤が無い事を自覚した身体は妄想で更に興奮し、乳首が勃起していく。
 それは……一目で分かるほどの変化だった。
 ドレスと下着越しにも勃起した乳首の位置が分かるほど、薄桃色の布の上にポツンと小さな突起が見て取れる。
 二枚の布地越しとは思えないほどはっきりと、くっきりと。

「だめ、だめ……収まって、おねがい……っ」

 メルティアは祈るような声で呟くが、乳首の勃起は収まらない。
 起ち始めただけでも丸分かりな変化だというのに、時間が経てばさらにその陰影は大きく太く成長していく。
 銀髪の魔導師はその変化を目で見て、絶望したように表情を暗くする。
 けれど、どうしようもない……メルティアの胸は、胸だけでなく乳首までが開発されてしまっている。
 スライムが好むように、スライムが嬲りやすいように、太く、長く。
 その乳首がうっすらとドレスの生地の上に浮かび上がると、メルティアの左手……その人差し指が狙う。
 その様子を、絶望するように見ている事しかできない。
 頭では分かっているのだ。
 それはダメだと。
 完全に歯止めが利かなくなると。
 分かっているのに――――。

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ウメ畑 2022/09/26 18:00

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ウメ畑 2022/09/26 18:00

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    nwojos ID00078292
    フィアーナさんをまた描いていただきたいです。

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