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2022年 07月の記事 (1)

石刻屋 2022/07/20 15:54

R18小説の文章描写論

 pixivで小説とかを書いていて、なんとなく思ったことも含めて。
 小説と書いていますが、地の文のあるゲームとかCG集作品とかにも共通する面はありますね。

1.小説と、ほかの媒体の違い

 ゲームやマンガなどでは「セリフ」のみで物語が進行することが多いですが、小説の場合は明らかに異なる要素が含まれます。
 それは「地の文」です。
 なぜ地の文が必要かというと、セリフのみでは読み手に状況を説明しきれないからです。
 たとえば、

「う……そこは……だめ……!」

 というセリフがあったとします。
 もしこれがゲームのCGだったり、マンガのひとコマであれば、視覚的な絵から“そこ”が何であるか察することができるでしょう。
 しかし小説では違います。映像があるわけではないので、その“状況”を補足しなければなりません。

 男の手が、彼女の秘所へと滑り込んだ。
「う……そこは……だめ……!」
 拒絶の言葉を気にも留めず――男はその濡れた穴に、指を潜り込ませた。

 こうすると、読者に状況が伝わります。“そこ”とは膣を指しているのだと、地の文で明示したわけですね。
 一般的な小説はこのように地の文を駆使するわけですが、もちろんこれが全てではなく、場合によってはこういう表現もあるでしょう。

「う……そこは……だめ……!」
「何がダメなんだ? お前の膣穴……濡れてるぜ?」

 要するにセリフで説明するわけです。これでも“そこ”が膣穴を指していることが、読者へ伝わります。
 とはいえ、このセリフでの説明が連続すると、登場人物がひたすら説明口調で会話しつづける不自然な展開になるので、“小説”作品であるならば地の文を駆使したいところですね。


2.視点の種類

 では地の文を書く時に、はたしてどうやって描写すればいいのか。
 これを考えるにあたって、重要なのはまず“視点”を決めることです。

 多くの人は、小説に視点の違いがあることを知っていると思います。
 代表的なのが、「一人称視点」と「三人称視点」です。
 この中で、「三人称視点」については「三人称一元視点」と「三人称多元視点(神視点)」に分けることもできます。
 例文を見ていきましょう。


・一人称視点

「ねぇ……」
 私は甘えるように、彼の胸に抱きついた。
 愛おしい温もりを感じて、幸せの笑みを浮かべてしまう。
「どうしたの、急に?」
 彼の手が、私の頭を優しく撫でた。
 まるで子供をあやすような仕草。
 こうして突拍子もなく甘えても――彼はいつも受け入れてくれる。そういうところが、私は大好きだった。

・三人称視点(一元視点)

「ねぇ……」
 彼女は甘えるように、彼の胸に抱きついた。
 愛おしい温もりを感じて、幸せの笑みを浮かべてしまう。
「どうしたの、急に?」
 彼の手が、彼女の頭を優しく撫でた。
 まるで子供をあやすような仕草。
 こうして突拍子もなく甘えても――彼はいつも受け入れてくれる。そういうところが、彼女は大好きだった。

・三人称視点(多元視点、神視点)

「ねぇ……」
 彼女は甘えるように、彼の胸に抱きついた。
 愛おしい温もりを感じて、その顔に幸せの笑みが浮かぶ。
「どうしたの、急に?」
 そう問いながら、彼は彼女の頭を優しく撫でた。
 まるで子供をあやすような仕草。
 こうして突拍子もなく彼女が甘えてきても――彼はいつも受け入れている。
 そういう優しさが、彼女が彼を大好きでいる理由でもあった。

 第一に、「三人称一元視点」は基本的には「一人称視点」の「私/俺」を「キャラ名/彼女・彼」に置き換えたものと考えると分かりやすいです。
 三人称ではありますが、物事を「彼女」の視点からすべて描写しているわけで、実質的には一人称視点と変わりません。

 じゃあ三人称にする意味は? となるわけですが、これは登場キャラが多かったり群像劇的なストーリーを描くときには、こっちのほうが都合が良かったりします。
 たとえばA場面でとある女性の視点で描きたいが、B場面では別の女の視点で描きたい。あるいはC場面では男の視点にしたい。そうした時に、視点が変わるたびに一人称がコロコロ変わると、やはり不格好な印象を受けてしまいます。
 ところが外面上は三人称を使っていると、たとえば章ごとに視点となる人物が変化しても違和感を覚えにくくなります。

 一人称は絶対に変化をせず、一貫して主人公の視点から物事を描くと決めているなら有用ですが、そうではなく別人の視点にも触れうるのならば、三人称のほうが都合がいい――という感じでしょうか。

 この三人称についても、多元視点だと少し描写方法が変わります。
 例文でもわかるとおり、描写の主体が一貫していません。神が見下ろして言動を説明したり、登場人物の内面を語っているような感じになることが多いため、別名として神視点とも呼ばれます。
 視点が一貫しない、ということは「感情移入しにくい」ということも意味するため、あまり初心者向きではない描写方法です。しかし人物の情緒を楽しむのではなく、謎解きを目的としたミステリーなどにおいては、好んで利用する作家も多いようです。


3.R18作品ではどう書くべきか?

 それでは、エロ小説ではこの視点などをどうやって決めるべきでしょうか。
 おそらく官能を目的にした場合、読者にとって重要なのは臨場感や感情移入度合いになるかと思います。
 この点を考えると、あまり多元視点・神視点というのは官能小説と相性がよろしくありません。男女の視点を行ったり来たりすると、やはり集中が難しく興奮が削がれる恐れがあります。

 基本的には「主人公」に視点を固定するのが無難だと思いますが、もし作家として読者のことを考える場合、「どの読者層をターゲットにしているのか」ということも考える必要があると思います。
 その典型例が、「男性向け」「女性向け」という区分です。
 男性向けなら男性視点が、女性向けなら女性視点が、より感情移入しやすいというのは事実としてあります。
 男の視点から女を○す、という作品は男性に感情移入をもたらしやすくし、女性の視点から男に犯される、という作品は女性に感情移入をもたらしやすくします。

 逆に言えば、視点次第で男性ウケを狙うことも、女性ウケを狙うこともできるわけです。
 ゲームやマンガなどでは“絵柄”などが男性向け・女性向けを極端に分けている部分となっていますが、小説にはこの手の“絵柄”が存在しません。
 文章を読んで、想像力を働かせたときに思い浮かぶ絵面は、各々の趣向に任せられるのです。

 たとえば、「輪○レ○プ」といったような内容を考えると分かりやすいかもしれません。
 男性向けマンガ作品では、しばしば顔なしモブのような存在がヒロインを○すといった内容が見られます。
 一方で、女性向けとなるとヒロインが顔のいいイケメンにレ○プされるような作品が相当数あります。複数人のイケメンに輪○される場合は、ある意味で「逆ハー」と言えるかもしれません。

 内容的なことだけ見ると、べつに男性向けと女性向けでそこまで大差はないわけです。
 だからこそ、小説は書き方次第で男性向けにも女性向けにもなるという柔軟性を持っているとも言えます。

 個人的な考えとしては、

「ヒロイン視点のエロだと多数のユーザーに受け入れやすい」

 という実状があるかなと感じています。
 DLsiteなどの同人作品を覗くと分かりやすいですが、男性向け作品の場合はけっこう女主人公モノが多く、女主人公に慣れている、あるいは好んでいるという男性ユーザーが比較的多くいます。
(というか、そもそも男性向け作品の作家に女性が一定割合いて、女性作家が女主人公で男性向け作風に寄せて制作していることも多いのですが)

 翻って女性向けブースを覗くと、男女の交わる作品で男主人公が描かれた作品というのはなかなか見られません。基本的に女性視点で描写されるものばかりです。

 そうした状況を踏まえると、エロ小説は女性視点で描いたほうがユーザーウケが良いということは確かです。
(そもそもpixivにおいては、小説を読むユーザーのほとんどが女性という背景もあるので、女性視点がウケやすいというのもありますが……)


4.プレイで見る男女差

 小説にせよマンガにせよ、男性向け作品と女性向け作品で明確に差異が見られるプレイがあります。
 それは「クンニ」です。
 男性向けでは当たり前のように入っているフェラですが、一方でクンニはだいぶレアなプレイとなっています。
 それに対して、女性向けでは当然のようにクンニが入ってきたりします。女性向け作品を嗜む男性が口を揃えて言うのは、「女性向け作品はクンニが多い」だったりします。

 この辺は、まあ理由も分かりやすいと思います。
 性交は両者に刺激が発生するけど、口淫はされている側にしか性感がもたらされません。なので男性向けはフェラが、女性向けはクンニが好まれるというのは、当然の帰結でもありますね。

 プレイ以外だと、だいぶ特徴的なのは男女の口調かもしれません。
 男性が女性向け作品の男キャラのセリフを見ると、セリフ回しにけっこう違和感を覚えます。演技がかった、芝居のような言い方のセリフが多い気がします。
 まったく逆のことを、女性が男性向け作品で女キャラを見た時に感じたりもすると思います。
 この辺のキャラの言動は、演技的にするか自然的にするか作風次第だと思いますが、基本的には自然な感じの喋り方のほうが、万人に受け入れられやすいかもしれません(個人の感想ですが)


5.終わりに

Q.どうしてこんな内容を書いたんですか?
A.急に書きたくなって……。

 とくに深い意味はありません!
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