M.C.制作話(9回目)
始めましての方、読んでくださっている方、ありがとうございます。
いきなりですが宣伝からいきたいと思います。
4月9日、明日……というよりも、おそらく0時販売なので、あと12時間くらいしたら、ASMRの新作「義理の姉になった彼女と、親に内緒で恋人になる方法」が発売です!
内容は前回と同じく、催○物です。
「義理の姉」となった彼女と、恋人になって――と、純愛系っぽい感じですが、ちゃんとdefineっぽい作品になっていると思います。
よろしくお願いいたします。
宣伝も終わりましたし、MC制作話の9回目といきましょう。
次回(10回)で、終了予定ですので、あと少しのお付き合いをお願いいたします。
さて、前回はゲームの制作は終わりが見えつつありましたが、CDのプレスが間に合わないことに気付いた、という状態でしたね。
そうです。当時は、今と違ってデータではなく現物(CD・紙媒体等)で欲しいという人が多かった時代です(※注1)
通常の会社(工場)では、プレスは不可能(※注2)です。となれば、自分達で作るしかなありません。
100枚ならば、スタッフ4人で割って一人25枚です。問題ないでしょう。
その後、変更した目標枚数300枚でも、スタッフ4人で割って……75枚です。
それなりの枚数になりますが、まあ、いけるでしょう。
しかし、実はこの時点に至って、さらに枚数を増やすことになりそうでした。
同人イベントに来られない人からご要望(※注3)をいただいたこともあって、委託販売をすべきでは? という流れになりました。
そうです。同人をやっている人ならば、みなさんご存じでしょう。メロンブックスさんや虎のあなさんの存在です。
さて――ここで、久しぶりの選択肢です。
1.コミケにもっていく制作可能な分だけだけを作成。メロンブックスや虎のあなさんには、会場で余った分を委託する。
2.会場販売予定分を作成、その上でメロンブックスさんや虎のあなさんに委託する分も作る。
このような選択肢が出た場合は、答えはいつも一つです。
そうです。2ですね。
……無謀にもほどがありますが、当時はいくしかないと勢いで決まりました。
生まれたばかりのサークル、イベントそのもの(※注4)に初参加、知名度など無いに等しい状態です。
しかも、コミケには自分達のサークルで参加しているわけでなく、他の方の厚意で場所を間借りさせてもらうだけ。
そんなサークルとしては、制作するリスクを考えると無謀もよい枚数へと膨れあがっていきます。
しかし、制作できる枚数には限界があります。
それでも待っていてくれるみなさんの要望に応えるためにも、やるしかない! と決定しました。
……表向きは綺麗な理由を書いてますが、たくさん売って、うっはうはしたい、というゲスな下心が透けて見えますね。
さすがにこれだけの枚数を作れば、絶対に余るだろうという考えから、会場には700枚(※注5)持っていくことを決めました。
ショップさんは、合わせて500枚くらい(※注6)の委託分があったと思いますが。
ともあれ、この時点で制作数はさらにアップしました。一人あたり、300枚くらいです。
20分で1枚作っても、6000分です。1日が1440分(※注 追加)なので、眠ることなく、休むことなくやっても4日以上かかる計算です。
……かなりキツい枚数になってきましたね(苦笑)
この時点でも、ほぼ無理な状況なのに、さらに無謀な意見が出ます。
普通(レーベル面が販売した状態のもの)のCDでは味気ないという話が出ました。
プリンタブルCD(※注7)を使用し、盤面に絵を印刷しようということになりました。
……余裕のない状態で、ずいぶんと余裕(笑)のあることです。
当時はテンションもあがり、少しでも良いものになるなら! というノリで、できることはなんでもするぜ、という感じでした……が、CDを手焼きするだけでもかなりまずいのに、盤面に印刷をするなど、正気じゃありません。
何しろ、手元にあるのはインクジェットプリンタです。
専用の台(?)に乗せ、1枚ずつ印刷をしていく必要があります。これも手焼きと同じくらいの時間がかかる作業です。
しかし、やると決まったからには、もう後戻りはできません。
自らの首を絞めているとしか思えない行為に飛び込んでいくdefineスタッフ達。
まずは、表面に印刷ができるCDを大量に購入する必要があります。
50枚入りのケースを、予備も含めて結構な数、購入しました。
車を持っているスタッフがいなかったので、電車で移動です。秋葉原とスタッフ宅を、重い荷物を持って行き来することになりました。
CDのケースについては、通販会社を利用していました。
……足りなくなるたびに、やはり電車で秋葉原まで買いだしに行きましたが。
ガワ部分の準備をしている間にも、ゲームの制作も大詰めです。
シナリオの分量が最初に予定していた倍になったり、絵の差分数が減ったり、色々とありましたが、ついに必要な素材は全てあがりました。
もう、家から家に移動している時間も惜しいと、defineメンバーは合宿よろしく、一人の家に集まって作業です。
男だらけのむさい空間のできあがりです。
しかし、それはそれで楽しい時間だったと言えなくもありません。
ここからは、ゲームの組み立て作業、スクリプト(※注8)です。
ここからは、ざくざく作業をすることになりました。defineスタッフの得意分野(?)です。面目躍如といったところでしょうか。
とはいえ、時間がまったくない+いじり始めて10日くらいしかたっていない吉里吉里です。
どうにかゲームの体裁を整えるだけでいっぱいいっぱいでした。
そんな中、シナリオ執筆という苦行から解放されたHAREは、のんびりと過ごしていました。
……嘘です。ゲームを手焼きする予定のCDの盤面に、絵の印刷をしていました。まるで、賽の河原で石を積むような作業でした。
この時点で、コミケまで残り数日です。
え? もういくつ寝るとコミケなの? と歌いたくなるくらいの状態です。
わかっていましたが、ゲームが完成してから手焼きをしていては、どうやっても間に合わないんじゃね? と再確認するしかない状態です。
考えなしにゲームを制作してはいけない。常に時間の余裕を持って行動しなければならない。
これは、M.C.制作から20年近く経過しても、うまくいかずに失敗をくり返すのですが。
さて、M.C.制作話も、いよいよ次で終わり(の予定)です。
※注1 HAREの実感と偏見です。
※注2 後で知り合いに聞きましたが、資金力にものを言わせて頬を札束で叩くと、数日でプレスをしてもらうことも可能だそうです。当然、そんな知識も予算もありませんでした。
※注3 ありがたくも、メールなどでご連絡いただきました。当時の人には届いたのかはわかりませんが。
※注4 普通は小さめのイベント等に参加するものですが、defineはそういう経験もほぼありませんでした。
※注5 内部でも意見がわかれる程度には、当時のdefineにしては強気の枚数です。
※注6 記憶が曖昧なのと、1回目だったので、枚数についてはちょっと違うかもしれません。ありがたいことに、この後すぐに追加もいただくことになります。
※注7 CDの盤面が真っ白で、そこにインクジェットプリントで絵や文字などを印刷できるものです。当時、ちょっと流行だしたころだったと思います。
※注8 なんどか説明していますが、ここで言うスクリプト作業は、ゲーム画面に、背景、立ち絵、イベントCGなどを表示するための命令を本文に入れていく作業です。
//■背景:教室・昼 表示
//■立ち絵:ポーズ1:制服・笑顔 表示
【ヒロイン】「こんにちは」
//■立ち絵 消去
//■背景 消去
//■画面遷移(場面を変える命令)
//■背景:空・昼 表示
【ヒロイン】「今日も良い天気だね」
//■画面遷移(場面を変える命令)
//■背景・教室・昼 表示
実際は、指定部分は英文や記号ですが、わかりやすくしてみました。
このような感じで、延々と必要な指示を入れていく作業です。
やってみればわかりますが、面倒くさい上に、こだわり始めると終わりのない作業です。
※注 追加 さくっと間違っていたので、こっそり修正しました。
最初の状態で読んでいた方は、生暖かい目で見ていただければと思います。