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2011年 08月の記事 (58)

サークルSBD 2011/08/31 23:00

「THREESOME」 前編

原案・キャラクター設定:けい    著:SBD



「んっ・・・・はぁ・・ん・・」
だめだ、どうしても甘い声が出てしまう。
枕に顔を埋めて嬌声を殺してはいるが、それにしたって限界がある。
「んっ・・・・んっ・・・んっ・・!」
このまま声が高まり続ければいつか部屋の外にまで漏れ聴こえてしまいそうだ。
それより何より、このままでは、大変なことに・・・・
「・・くぅ・・んんんーッ・・あっ、あッ!」
メフの全身が、小刻みに震え出した。
きゅうっと、下腹部のどこかの筋肉が収縮していくのが感じられた。
このままではまずい、一刻も早くやめなくては!
と、理性ではわかっているものの、メフはいつもここで、ギリギリまで粘ってしまう。
「あっ、あーっ!ダ・・メ・・・くふぅ・・・・んーーーっ」
奥歯を噛みしめたメフは、波の様に寄せ来る快感に抵抗し、更に激しい愛撫を加えようとする痛烈な衝動を抑え込んだ。
自らの股間に伸びた彼女の指は、ここに至ってようやく理性の言いぶんに従い、動きを止めた。
指の間では、乳首を思わせる桃色の突起が、ひくひくといまだ脈動を繰り返している。
メフがギュッと目をつむって耐え続けていると、脈動は徐々に緩やかになってゆき、やがて突起は、それが元々収められているべき場所・・彼女の肛門の奥へと、引っ込んでいった。
張り詰めていた全身のこわばりが、急速にほぐれていくのが感じられた。
上気した頬に掌をあて、まだ荒い息を静めながら、メフは物憂げにつぶやいた。
「また、やっちゃった・・・・・・・」

メフがこの秘密の独り遊びをはじめたのはいつからだったか・・・・
物心つく頃にはもう既に、メフは知っていた。
シマスカンクである彼女の武器、「おなら」の噴出口・・・・普段は肛門の内側に隠れている、桃色をした小さな二つの臭腺が、異常な快楽を生み出す場合があることを。
彼女は幼くして気付いていた。
「おなら」をする時にはいつも、ある種のめくるめく感覚が伴うことに。
彼女が「おなら」を使うのは、厳に絶体絶命のピンチの時に限られていたのだが、そんな過酷な状況下にも関わらず、否、だからこそ、なのかもしれないが・・・・
迫る敵の顔面を狙いすまして「おなら」を噴射するその一瞬、目もくらむような甘い痺れが全身を貫き、メフの心を千々に乱した。
ハッと気がついた時にはもう、敵は既にほうほうの体で逃げ去っているか、逃げることもできずに地面をのたうち回っているかだった。
いくら自分を襲った危険な敵とはいえ、ほとんど半死半生のありさまで苦悶し、嘔吐し、衰弱し、命乞いを繰り返す相手の惨めな姿を目の当たりにすると、胸の奥が締め付けられるような強烈な感情が後から後から湧き上がり、メフはそんな時、逃げるような足取りでその場を後にした。
相手が毒ガスで七転八倒の地獄を味わっているその時、彼女の方は言い知れない密かな悦楽に酔い痴れている・・・・
それを思うとメフの心は震え、彼女は独り、頬を染めつつ深く恥じ入るのだった。

そんなこともあってか、メフはいつも妹のスピルに、「おなら」を慎むよう言っていた。
スピルは昔から、安易にその武器に頼り過ぎるところがあるのでなおさらだった。
「世間体を考えなさい、スピル!森のみんなが迷惑してるかも知れないのよ?」
「でもお姉ちゃん、私達、スカンクなんだもん。しょーがないんじゃなぁい」
「だからって・・・あなたみたいにすぐそんなことしてちゃダメよ!大体あなたも女の子でしょう?女の子がそんなっ・・・もうっ、いやらしい!」
「やらしい~?何で?」
「え、そ・・・れは・・その・・ほら・・・・」
「大丈夫だよぉ、私、逆立ちができるもん!プ~するときだって、恥ずかしいトコとか見られないようにもできるもーん」
メフと違いスピルは、マダラスカンクである自分が「おなら」を武器にできることを楽しんでいた。
スピルは比較的安易に「おなら」をする。
ちょっと不機嫌になったり、何かに驚いたというだけで噴射したことすらあり、それがメフの悩みの種なのだった。
しかし、熟練の技とでもいうのだろうか、いつしかスピルは、「おなら」の濃さをコントロールして出すことができるようになっていた。
その気になれば、他のケモノが放つ臭気ほども匂わない控えめな一発から、スピル本来の毒ガスのような強烈な一発まで、かなり自在に濃淡放ち分けることさえできる。
「コツをつかめば簡単なのに」
とスピルは言うが、メフにはどうやっても真似のできない芸当だった。
スピルがする時のように、逆立ちしながらでなくてはならないのだろうか?
逆立ちのできないメフは、あきらめ顔で溜め息をつくしかないのだった。

しかし一方、スピルにしてみれば、メフの「おなら」こそが驚異でありまた脅威でもあった。
スピルより二回り以上もヒップの大きいメフは、逆立ちがへたくそだ。
スピルは随分とそのことで姉をからかった。
だいたい、普段から並外れておっとりとしており、運動神経ゼロのような姉である。
そのかわり、メフのそのボリューム豊かなヒップから放たれる「おなら」の威力は、スピルがどうあがこうととても太刀打ちできないほど猛烈な代物だった。
過去に一度、姉妹で大ゲンカの末に、ついにお互い、スカンクとしての最終兵器をお見舞いし合ったことがある。
しかけたのはスピルの方からだったが、メフは逆立ちしたスピルの尻から噴射された「おなら」のシャワーを全身に浴びつつ、まったく慌てもせず騒ぎもせずに、
「臭ぁい!よくもやったわねっ・・・スピルのバカ!もう知らないっ!」
と言い放つなり、まだ逆立ち中のスピルに尻を向け、スピルのよりもひときわ黄色の濃い「おなら」を、ブシュゥッとひっかけ返した。
「ッキャァァァァ」
スピルは変な叫び声を上げて地面にひっくり返り、鼻を掻きむしって転げ回った。
「く、くさい、臭あああい!」
メフのニオイは目に沁み鼻に沁みて涙と涎と鼻水が止まらず、スピルは、息をするのも困難なほどだった。
しかも、スピルがその時点で完全に戦意を喪失していたにも関わらず、それ以上不要なはずの「おなら」がさらにもう一発、のたうち回るスピルの上に降り注いだ。
(後にスピルがわけを問い詰めたところ、メフは顔を赤くし、しどろもどろになって、”勢いがついてしまいどうしても止められなかった。すまない。”というような意味のことを口にするなり、逃げて行ってしまった。)
辺りを包むガスの雲の中で鼻を突き上げる刺激と臭みに激しくえずきながらスピルは、それまで自分が「おなら」を浴びせてきた犬やコヨーテたちの気持ちが初めてわかったと思った。
それ以来、メフの「おなら」はスピルにとって恐怖と羨望の的となり、スピルは以前より少しだけ、ききわけが良くなったのだった。

さて、話を冒頭の、寝所の場面へと戻そう。
メフは、例の独り遊びの余韻を持て余したまま、火照った体をベッドに沈ませているところだった。
と、そこへ突然、ノックの音が響いたかと思うと、ドアが開き、スピルの顔がひょいっとあらわれた。
早朝である。
寝ぼすけのスピルは普段ならまだ床に就いている時間のはずだったが、今日はやけに早起きをしたようだ。
「お姉ちゃん、おはよ」
「・・あ・・ぉあ・・ぉはよぉ」
股間にいまだ残るジンとした感覚の埋み火のせいで、ついついろれつが怪しくなってしまう。
するとスピルが急に、ちょっと眉根を寄せ、おかしな顔をした。
「・・・どうかした・・・・?スピル?」
「う、ううん、何でもないよ。それよりさ、お姉ちゃん、一緒にマイクのとこ行ってみない?」
「マイク?・・・・・って、キツネの!」
メフの尻尾が、毛布の下で緊張し、ふわっ!と反り返った。
「うん、キツネのマイク。美味しいタマゴをめいっぱいご馳走してくれるって約束なんだ。ね、行かない?」
メフはベッドから降り、スピルの手を掴むと、首を横に振って、
「ダメ・・・・スピル、危ない目に遭うかも。だっておかしいわ、そんな話・・・。キツネがわたしたちに親切にする理由なんてある?・・もしかして、だまして何かするつもりじゃ・・・」
期待感に水をさされて少々憮然としながらも、スピルは努めて明るく反論した。
「お姉ちゃん気にしすぎぃー!へーきへーき。マイクって、キツネの間でも変わり者で通ってるんだから」
「で、でも・・・・もし・・・」
「大丈夫ったら大丈夫なの!」
スピルは姉の手を振り払うと、ピョンと一跳びして家の扉から外へと一目散に駆け出していった。
「あっ、スピルだめよ・・!」
「お姉ちゃんのいくじなし!」
スピルは扉の外で一度立ち止まり、メフのよりもやや小ぶりな尻尾をフリフリと動かしてみせながら言った。
「何でもかんでもガマンしっぱなしなんて、損しちゃうよっ?あたしそんなのヤだし!危ない目?遭ってみたぁい。くふふっ、そしたら今度こそお姉ちゃん公認で堂々と思いっきり、やっちゃってもいいんでしょ?」
「え・・・・」
メフが目を白黒させている間に、スピルの姿は消えていた。
「スピル・・・バカ、あの子ったら何てことを・・・・!」

森のはずれにある池のほとりで、一匹の若いキツネが水面を覗き込んでいた。
どうやら水面を鏡に、毛並みを整えるのに余念が無い様子だ。
そこへ、白黒まだら模様を身にまとった小柄なスカンクが、小走りにやって来た。
「ハーイ、マイク!待ったー?」
若いキツネはそれに応え、振り向いてニカッと笑った。
「全然。ぼくも今きたトコ!あぁスピル!今朝も可愛いねえ。最高だよ」
「おえっ・・・お世辞はもう耳タコだって。それより早くぅー、ご馳走してよぉ。ねーねーご馳走!」
「む・・・・」
「約束でしょー。ご馳走ぅー!」
「わかった、わかったってば・・・・じゃ、着いてきて。山鳥の巣のある場所を見つけたんだ。産みたてのタマゴの味ときたら、そりゃもう絶品」
「そそそ、それそれぇー!早くはやくぅ~」
キツネのマイクの先導で、二匹は歩き出した。
「メフは・・・来られないって?」
「ちゃんと誘ったよ。でもムリムリ、お姉ちゃん、頭ガッチガチにカタいからぁ。・・・・何よマイク。あたしのだけじゃ、不満なの~?」
「い、いやほら、ぼくはきみらの・・・それ・・に、純粋に学術的に興味があるわけだからね。サンプルは多いほうがいいのさ。わかるかい?」
「ふーーーん。ま、いいけどー。あんまり調子に乗ってあたしを甘くみてたりするとぉ・・」
そう言うとスピルはその場で立ち止まり、ひゅっと後足を宙に蹴り上げて、見事な逆立ちをしてみせた。
「想像もつかないくらい、ヒドイ目に遭っちゃうよぉ?くふふっ」

「わ・・お・・・」
マイクは、はじめの一瞬だけ怯んだような素振りを見せたが、やがて目をうるませ、鼻息を荒くし、逆立ちしたスピルを上から下までなめ回すようにじろじろ見て、
「イイ・・・イイよぉ・・・!そのポーズで、そのままその、ア、アレをするんだよね?想像もつかないくらい、クサイんでしょ?どうなるんだろうなぁ。ぼ、ぼくキゼツしちゃうのかなぁ~。今!ねえ、今してみてくれる!?ねえねえ!今ここで!」
「ちょ、ちょっとマイク・・・きゃっ!」
その勢いにあっけにとられたスピルはバランスを崩し、近寄ってきたマイクの上に、どすうんと倒れこんでしまった。
「むぎゅーっ!」
「くふふっ。わあ、天然クッション!」
「あ、いったたたた・・・、いい加減どいてくれっスピル」
ようやく、もつれ合った二匹の体が離れた。
ホコリだらけになった自慢の毛皮を気にして、渋い顔をしているマイク。
スピルはくすくすと笑いながら、そんなマイクを茶化すように、
「だから言ったじゃなーい?ヒドイめにあうって」
「・・・む・・・・」
マイクは渋面のまま、黙然と歩き出すしかなかった。

「まだ何事もないといいけど・・・・」
メフは心配のあまり、仕方なくスピルを探しに来ていた。
とはいえ、キツネのマイクとどこで待ち合わせしているのか、それを訊いていなかったのが良くなかった。
あてどもなくただ闇雲に探し回るには、この森は広く、深く、危険なケモノとはち合わせしてしまう可能性も高過ぎる。
もっとも、「おなら」というとんでもない武器を備えた彼女達を本当の意味で脅かすことのできるような敵は、実際のところそう多くはなかったが・・・・・。
メフが心配なのはスピルの身の安全というよりむしろ、スピルがまた、森の皆の迷惑をちっとも顧みずに「おなら」をまき散らして、皆が冗談めかして言うところの「一時立ち入り禁止区域」を次から次へとこしらえてしまいはしないかということだった。
メフは、「おなら」が森中の注目を集めてしまうのを何よりも恐れ、恥じていた。
出来ることなら、この忌まわしくていやらしい「おなら」の力なんて初めから、持って生まれて来なければよかったのに・・とさえ、彼女は思った。

「あっ、すかんく!」
急に、メフの頭の上で声がした。
見上げると、はるか樹上で小さなリスの坊やがおろおろしている。
樹から降りようか、どうしようかと迷っているようだった。
見ると、メフの目の前の地面に大粒のクルミが一つ、転がっていた。
どうやら坊やは、腕に抱えていた大事なクルミを落としてしまったらしい。
ちょうどそれを取りに向かおうとしたところへ、他のケモノの気配がしたので、慌てて樹上へ駆け戻ったという風だった。
それを察したメフがクルミを拾ってあげようとすると、リスの坊やの慌てようはますますひどくなった。
「あっ、やめろよう!それボクんだよう!触っちゃ、ダメだよう!あ、あ、触っちゃったぁ!すかんくが触ったぁ、あーんあんあん」
リスはいきなり泣き始めた。
「すかんくがボクのクルミに触ったぁ。あーんあん。おならくさくなっちゃったぁ。もうクルミ食べられない、あーんあんあん」
どうしようもないやるせなさに襲われ、メフはクルミを手にしたまま、その場に立ちつくしていた。
「ごめんね・・・ごめんね・・・・」
いつのまにかメフの目からも涙が一粒二粒こぼれてきて、後はもう止まらなかった。
「あーんあんあん」
「えーんえんえん」
坊やとメフの泣き声は、二重奏になって森の小道に響いた。

そのうち、泣き止んだ坊やが、メフのことを不思議そうに見つめて言った。
「おなら、しないの」
急に問われたメフは、涙目のまま、えっ?と返答に詰まった。
「きみって、おならしないすかんく?」
坊やはまたメフに尋ねた。
「すかんくって、いつもブスブスおならしてるんでしょ。でも、きみっておならしないね」
あっけにとられていたメフは、何だか急におかしさがこみ上げてきて、くすっと笑って言った。
「うん、あんまりしないわよ」
「わあい、じゃあ、ぼくのクルミ、くさくなってないね!」
リスは、ちょこちょこと樹の幹を伝い降りてきたかと思うと、いきなりメフのふさふさした尻尾に飛び移った。
「きゃっ!?」
「あ、ほんとにくさくないや。よかったあ。じゃあ、ボクのクルミ返してっ!」
リスは、メフの尻尾から尻、尻から背中のほうへ、ちょこちょこと走っていった。
尻の辺りをリスの小さい足でくすぐられた時、ふいに襲ってきた「おなら」の出そうな感覚を、歯をくいしばって何とか押し留めるメフ。
そんな苦労を知るよしもなく、リスの坊やはメフの手からクルミをひったくるようにしてもぎ取ると、目にも止まらぬ速さでまた元の樹上へと駆け戻っていった。
少し上気した顔でそれを見上げ、メフはにっこり笑って、リスに言った。
「スカンクだって、いつもはおならしないの。わかってくれたかな?」
「うん。あのね、昔、ボクのおじさんがね、すかんくのにおいをかいで、木から落ちてけがしたの。それで、おじさんがいつも言うんだ。すかんくには近づくな、くさいのをぶっぱなされるぞって。でも、そうじゃなかったね。ボク今度、そんなことないよっておじさんに言うよ」
メフは、笑顔でうなずいた。そして急に思い出したように、
「あ・・・ねえ、この辺りで、他のスカンクを見かけなかったかしら?わたしの妹なの・・・もしかすると、キツネと一緒かも」
取り戻したクルミを齧っていたリスの坊やは、それを聞くとメフの方を振り向いて、
「見たよう」
「ほんと!?どっちへ行ったか、わかる?」
「うーんとねえ、えーっとねえ・・・」
リスは、食べかけのクルミを小脇に抱えたまま、ちょこまかと樹から降りてきた。
「こっち」
リスは、メフを先導するように、森の小道を走りだした。
しかし、その速いことといったら。
メフが一生懸命追いすがろうとしてもどんどん距離は開き、とうとうリスの姿を見失ってしまった。

途方にくれて辺りを見回すメフ。
ここはもう、森のはずれに近いところだ。
耳をすましても、辺りはシンと静まりかえるばかりだった。
と、静寂を裂いて、キキッというかすかな悲鳴が聴こえてきた。
「あっ!」
悲鳴の聴こえた場所へメフが駆けつけると、大きな老キツネがあのリスの坊やを地面に押さえつけているところだった。
「やめて!!」
メフの叫び声に、うるさそうに顔を振り向けた老キツネは、眠たげな声で言った。
「・・・・なんだ、スカンクの娘ッ子か?いくらこのおれだってお前さんとやりあう気はないよ。くわばらくわばら。だからお前さんも、その物騒な尻尾を下ろしてくれ。ここを通りたいのか?勝手に通んな。お前さんにゃ指一本だって触れたくねえや」
「・・・お願い、その子を、放してやって下さい」
「なんだ?そっちにゃ関係ないだろう!お前さんのエモノってわけでもなかろうが」
「何でもいいから、はやく放してあげてぇ・・・!じゃないと、わたし、わたしっ・・・・しちゃい・・ます」
尻尾を旗のようにぴんと立てたメフは、ゆっくりと老キツネの方に、尻を向けた。
完全に持ち上がったスカンク特有の白黒の大きな尻尾の真下で、ピンクの肛門がひくひくと痙攣するのを目にした老キツネは、うぎゃあっと一声叫んでとびあがり、その勢いで腰を抜かして、仰向けにひっくり返ったままジタバタともがきだした。

「たたたたすけて、腰が抜けた!頼む、やめてくれぇ!逃げられねえっ、息が詰まって死んじまうよぉぉ!たすけてくれーーっ!!」
わめきながら暴れる老キツネを尻目に、メフはリスの坊やに駆け寄ると、優しく抱き上げた。
「痛かった?もう大丈夫よ・・・」
「こわかったよう、あーんあんあんあんあん」
「そう、こわかったよね・・・ごめんね。道案内ありがとう。さあ、もう帰ろうね。こわかったね・・・」
「チッ・・・。くそっ・・・・何だ、チクショーッ!久々にリスの味にありつけると思ったのによう。てめえら・・・覚えてやがれ、クソッ・・・!」
ひっくり返ったまま、ふてくされて悪態をつく老キツネ。
その姿とメフを交互にじっと見つめていたリスの坊やは、メフの手を引いて、
「ねえねえ。おなら、しないの?」
「えっ?」
「おならしていいよ。ボク、お鼻をつまんでるからへいき。あいつに、うんとくっさーいのをぶっぱなしてやっていいよ」
「ゲッ」
それを聞いて、老キツネは再び激しく暴れはじめた。
「ちょっ、ちょっと待て!待って下さいぃ!それだけは!それだけは!ややややめやめてくれぇ、たすけてくれぇーーーーっ!!」
メフは、にっこりしてリスに言った。
「ありがと。でも、やめとくわ。これ以上ひどいめにあったらキツネさん、かわいそうすぎるでしょ」
「そうそう、かわいそうかわいそう!見逃してくれ見逃してくれえ!」
老キツネも必死だ。

リスの坊やを樹上に見送ったメフは、相変わらず仰向けになっていた老キツネを、注意深く抱き起こしてやった。
老キツネはキョトンとして、穴があくほどメフの顔を見つめている。
メフは気恥ずかしくなって、目をふせた。
「さっきはごめんなさい。本気でその・・・しちゃう気は無かったんです。あの子もいたし・・・・。でも、ああでもしないときっと、あの子を放してくれなかったでしょう?」
「・・・・・・・・・」
老キツネは腰をさすりながら、うさんくさそうな目つきになってメフをにらみつけた。
「・・・チッ、もういい。済んだ事だからな。まあ、あそこでお前さんに屁を嗅がされなかっただけでも、めっけもんとしとくさ」
「屁って・・・そんな言い方・・・」
メフはますます頬を紅く染めて、うつむいてしまった。
「やれやれ。近頃よくわからん世の中になったもんだ。スカンクがキツネに情けをかけるとはね。わがままで卑怯で残酷なだけがスカンクだと思っていたがね」
「・・・・・・・・・」
「キツネ仲間にも変なヤツは出てくるし。新顔のあのおかしな若造め、あんたらスカンクが昔々ブッぱなした跡をわざわざ嗅ぎ回っちゃあ、おかしいな、思ったほど臭くないですねだってよ。お前さん、慈善家の真似事がしてぇんならよ、こんなとこでおれみたいな老骨をいじめてないで、さっさとその野郎んとこへでも行って一発でも二発でも、新鮮な屁を見舞ってやるがいいや。なぁに。あのマイクのことだから、念願かなって、泣いて喜ぶことだろうさ。はっは」
「・・・マイク?」
メフの大きなふさふさの尻尾が、その名前に反応してぴんとはね上がった。
「マイクって言いました!?」
「・・・・あ、ああ。言ったがどうした・・・うわ、来るな、近寄るな。二度と尻を向けるなよ、絶対、こっち向けるんじゃないぞ!頼むから!」
「わたし、そのマイクの居場所を探してるんです!お願い、教えて下さい!」
興奮して尻尾を立てたスカンクに詰め寄られ、老キツネはたじたじとなった。
「どこにいるったって・・・そんなの知るか。う、嘘じゃないっ、本当だ信じてくれ!たた頼む、いきなり屁をブッ放すのだけは勘弁してくれっ!・・・・・・・い、いいか、落ち着け、いいな・・・・・?野郎の居場所なぞ本来おれの知ったこっちゃないがね。ただあいつは大抵、あの大きな池の近くをウロついてるようだな。おれらにゃあ、縄張りってもんがある。その辺りがもし野郎の縄張りだとしたら、そっからそうそう離れては行動しないはずさね」

「あー美味しかったぁ~。マイク、ごっつぉーさまー」
「そりゃよかった。ぼくもうれしいねぇ喜んでもらえて」
山鳥の巣で食事を終えた二匹は再び、最初に会った池のほとりにやって来ていた。
この近くの洞穴に、マイクの住処があるのだ。
「さて・・・と」
マイクは、そわそわした様子で、スピルのほうにちらっちらっと目をやっている。
スピルはそんなマイクをじっと見つめていたが、ふいにマイクの目の前で、さっと逆立ちの姿勢になった。
「マイク、じゃー、約束だから、してあげる。でもぉ、目はつぶっててよね!これでも一応女のコだし。じろじろ見られながらって、何か気分的にヤ!」
「わお・・・・あ、う、うん。じゃじゃじゃあ、お願いしちゃっていいのかなあ。いつでもいいよ・・・思いっきり、やっちゃって!」
「はーい。それじゃ、ん・・・っと」
逆立ちしたスピルの丸い尻が、マイクの顔に向かってぐっと突き出された。
いよいよ、「おなら」発射の秒読み態勢である。
しかしその時、
「あっ、ちょ、待って!」
狼狽したマイクが、頓狂な声を張り上げた。
「なっ、なによう・・・もう。いまさらやめろなんて、オトコらしくないよっマイク!」
「そうじゃなくて。ぼくに直接ひっかけるのは無しにしてくれって、前に言ったろうっ、もう!大事なこの毛並みを台無しにする気か!そいつを避けるために、わざわざこんなに苦労してるんじゃないか。さ、その草むらに向かってやってくれ」
「え・・・・・・・・・・え~!」
「え~じゃないよ、ほんとにもう。危ないところだったじゃないかまったく」
「でもぉ・・・それじゃ、ムード出ないよぉ。何か、調子狂っちゃうなぁ」
「そこを何とか、頼むよ。ぼくは約束を守っただろう?きみも守ってくれなくちゃ」
「それは、そうなんだけど・・・」
「じゃ、どうぞ。思いっきり」
そう言ってぶっきらぼうに草むらの方を指し示すと、マイクは目をつむった。
「・・・・・」
スピルはしばらく憮然とした表情を浮かべていたが、やがて諦め顔になって、逆立ちのまま器用に体の向きを変えると、その草むらめがけて「おなら」を噴射した。
プシャー!
半透明の黄色い液が草の葉を濡らしていく。
とん、と、スピルの後足が地についた。

「・・・・!このニオイは、スピル・・・!?」
池をめぐってマイクや妹の姿を探していたメフは、風に乗って届いたかすかな香りに全神経を集中させた。
「間違いないわ、スピルの・・・・!ああ、一足遅かった・・・」
メフは香りの流れをたどり、風上へと走った。
そしてついに、当のスピルと、マイクの姿を見つけ出した。
メフにとって予想外だったのは、スピルの「おなら」のニオイは確かにするものの、マイクがまだピンピンしていたことだった。
そういえば先ほどから流れてきていたニオイも、どれほど接近しようと常に、ほんのわずか香る程度にとどまっていた。
臭くないのだ。
スピルが本気になっていないのは明らかだった。
メフは思わずほっと胸を撫で下ろしていた。
しかし、何がどうなっているのだろう。
好奇心の虫がうずいたメフは、マイク達に気付かれないようそっと、近くの大きな立ち木の陰に身を隠して様子をうかがうことにした。
ここなら見つかる心配はないし、彼らが何を話しているのかも、なんとなくは聴き取れるはずだ。

「うっ、これは確かに・・・強烈、かもな」
マイクは草むらから立ちのぼるスピルの臭気をフンフンと嗅いでは、ひとり悦に入っていた。
「でも・・やっぱりこんなもんかなぁ・・・・ちょっと、がっかりではあるね」
「ふーん。何が?」
「スカンクのガスって、想像もできないくらいめちゃくちゃクサいって聞いてたから、それがどれほどのものかって、ずうっと気になってたんだ。確かにさ、これをいきなりもろに浴びたりしたら、気が動転してすっ転んだりとか、毛皮に染み付きやしないかって狩りどころじゃなくなったりなんかはするかもしれないけど。ばかでかいウマが発狂に追いやられたとかさ。どっかの犬がスカンク恐怖症になったとか。ああいうのは結局、大げさに尾ひれが付きまくった話だったんだなあ。夢が壊れたって感じ。ま、でも現実ってのはさ、大概そういうものなのかも知れないね。はっはっは」
「ふーーん。それはそれは、失礼いたしましたぁ。まー、あたしのなんてどーせ、お姉ちゃんのの足元にも及ばないから」
「えっ・・・メフの?そんなにすごいの?ほんとかなあ」
「さあ・・?くふふっ。そんなに嗅いでみたいなら、自分でお姉ちゃんを襲って、確かめてみればいいのに」
「・・・それは、スマートじゃないんじゃないかな、つまりその・・・学術的好奇心を満足させる手段としては・・」
「ふーん。あんたもほんと、いくじなしよねー・・・・まーそんな、キツネのくせにてんでキツネっぽくないとこ、あたしはわりかし好きだけど。んー、いいわ、じゃあ、とっておきの情報を教えたげる。要するに、安全なトコからお姉ちゃんのニオイを体験できさえすれば、満足なんでしょ?」
「う、うん」
「これは絶対、あたしたちだけの秘密よ。約束だからね。約束破って、お姉ちゃんにばれたりなんかしたら、ただじゃおかないから」
「わかったから・・・はやいとこ教えてくれ」
「お姉ちゃんね、ときどき朝早~くに、あたしに隠れて、ひとりでいけないことしてたりするんだ・・」
「・・・いけないこと?」
「そう。臭腺おなにー」



後編につづく

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サークルSBD 2011/08/31 00:30

スカンクメイドのうっかり放屁


はー、うっかりうっかり。これはもう事故なので仕方がないですね。
彼女達スカンク娘さんの場合、事故というより大事故ですけども。
きっと、屈んでお腹を圧迫したのでつい出てしまったのでしょう。
例えそれが彼女の背後でお尻に見とれていた時の事だったとしても、笑顔で許してあげましょう。
彼女もそんな御主人様の優しさにハートきゅんきゅんでしょう。
失神するならその後で。

 
ところで前記事『スカンクメイドのお仕置き』ではスカンクのアレについて、いつものオナラガス風ではなく、臭腺から分泌される液体という形で描写しておりました。
実はそちらの方がより本物のスカンクのアレの実態には近く、「スカンクの武器=おなら・気体」というのはいわゆるファンタジーの類いなわけなのですが・・・
しかしスカンクが身近にいない日本人にとっては「スカンクといえばおなら」が今も昔も一番わかり易いですし、そもそも米国の人々もスカンクのことを「FART SQUIRREL(おならリス)」なんて呼んでたりする上にキッズ向けの動物アニメだとアレを放屁で表現してることも多いですので、スカンク=おならという認識も普通に全然ありかと思われます。
何はともあれ、フェチならば自分にとって最もしっくりくる感覚を信じるのが一番ですね。


※拙作『スカンクメイドのお仕置き』の番外編・『スカメイドvs猛犬』を、「けい」さんが書いて下さいました。
けいさんの作品は、ピラーさんのブログの「作品保管庫」にてお読みになれます。

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サークルSBD 2011/08/30 23:00

「スカンクメイドのお仕置き」

バニー家は、古くからこの湖水地方を治めてきた貴族の家柄です。
何百年もの昔から代々受け継がれてきた、湖のほとりの大きな大きなお屋敷は、バニー家の歴史と共に古い荘厳さで、その見慣れないおかしな入居者を迎え入れました。

バニー家がメイドとして新しく雇い入れたその少女は、じつに奇妙キテレツな姿をしていました。
いいえ実際は、その種族のうちではすばらしく端正で優しい顔だちをした、愛らしい少女だったのですけれど、その少女がこのあたりではほとんど見かけることのない「シマスカンク」という種族であり、独特のおっとりとした歩き方や、白黒のシマ模様をした毛皮、それに、とても大きなふさふさの尻尾を持っていたことから、少なくとも、まだ幼いバニー・ラビ坊やの目には、「見たことも聞いたこともない、ヘンテコなやつ」と映ったのでした。

スカンクのメイドに与えられた仕事は、育ち盛りのラビ坊やのお世話係兼教育係でした。
というと新人の仕事にしては華やかな大抜擢のように思われるでしょうが、これがじつは結構な重労働なのでありました。
なにせ、今までにラビ坊やにさんざんいじめられて辞めていったお世話係の数といったら、両手の指では足りないくらいなのです。
とにかくわんぱく、きかんぼうで、その上、たちの悪いいたずらが大好き。
ぴょん、ぴょん、ぴょんと、自慢の足にものをいわせてそこらじゅうを跳ね回り、物は壊すわ人は蹴飛ばすわで、毎日がもう大変。
それに、貴族の血がそうさせるのか、まだ小さいくせにプライドだけはとても高く、どんなに厳しく一生懸命に叱っても、ふふーんと鼻で笑って、てんで取り付く島もありません。
古くからよく仕えてくれていたメイド達がラビ坊やのために何人も辞めてゆき、そんなことが続いたので、ラビ坊やの御両親も、これにはほとほと困り果ててしまっていたのです。
御両親は悩みに悩んだ末、とうとう最後の手段に出ることにしました。
ラビ坊やをきちんとこらしめてあげられるお世話係を、雇うことにしたのです。

「御主人様、そろそろお勉強のお時間です」
スカンクのメイドはそう言いながら、坊やの部屋のドアをノックしました。
でも、返事がありません。
メイドは、ドアのノブを回そうとしました。
しかし、回りません。
ドアの向こうで坊やが、メイドが入れないようにノブを押さえつけているようです。
「御主人様、いけません。開けてくださいな」
「やだもん!今日は勉強する気になんかなれないもん」
はぁ・・・
メイドは、ため息をつきました。
いつもいつも、なんてワガママな御主人様だろう。今日という今日こそ、お灸を据えてあげなくちゃ。
でも、やり方はまかせる、なんて御両親はおっしゃっていたけれど、スカンクのアレのこと、本当にわかっていらっしゃるのかな。
そろそろお尻の奥がムズムズしてきてるし・・・・ううん、どうしよう・・・。
やっぱりだめ、アレだけはガマンしなくちゃ。何とかいままではガマンできたんだし、これからも・・・・。
はぁ・・・
メイドは、2度目のため息をつくと、またドアをノックして言いました。
「御主人様、開けてください。これ以上おいたが過ぎると、もう、許しません!」
返事がありません。
今度は、物音もしません。
押し殺した息づかいも。
ノブを回すと、ドアは開きました。
しかし、室内を見まわしても、坊やの姿がありません。
「また、かくれんぼですか」
3度目のため息をつきかけたとき、メイドは、部屋の窓が大きく開け放たれているのに気がつきました。
見ると、カーテンが窓の外へと垂れています。
もしかして、と思い、窓から下を覗き込んだメイドの目に、カーテンの布を細長く破って伸ばしながら階下へと伝い降りてゆく坊やの姿がとびこんできました。
「あーっ!」
上等だったカーテンの惨状に、思わず叫んでしまうメイド。
ロングスカートからはみ出したふさふさの尻尾が思わずぴん!と伸び、同時にあん!と甘い声を上げ、メイドは自分のお尻を押さえました。
「あ・・・もうっ・・しちゃいそうになっちゃったじゃないですかっ」
「やばい、みつかっちゃった」
坊やは少し焦って、降りるペースを上げ始めました。
お世話係のあのヘンなメイドが、何だか今までになく、ほっぺたを真っ赤にして怒っています。
捕まったら、今度こそお小言じゃすまないかなあ、と坊やは思いました。
じつは坊やは、彼が何をしてもいつもおっとりとしていて怒らないし、怒っても今までのお世話係みたいにすぐひっぱたいたりしてこないあのヘンなメイドのことを、少し気に入りだしていたのです。
だから、泣かせて追い出させるような手ひどいいたずらは、今までは坊やなりにひかえていたのでしたが・・・・
「ボクをやっつけようっていうなら、こっちだってようしゃするもんか!」

ラビ坊やがお屋敷の壁を伝って庭へと降り立つと、ちょうど、玄関からあのメイドが走り出てくるところが見えました。
ぴょん、と跳び跳び逃げ出した坊やの後ろを、メイドの声が追いかけます。
「御主人様待ってぇ、ハァッハァッ、待たないと、許しませぇーん!!」
「へへん、ここまでおーいで、白黒ノロマの、でか尻尾やーい」
ぴょん、ぴょん、ぴょん。
坊やはいつのまにか、巨大な番犬のいる犬小屋の近くまで来ていました。
太い首に、大っきな口、血走った目玉。
ラビ坊やの十倍も大きな体のこいつは、世話をしているラビ坊やのお父様以外にはみんなに吠えかかる、恐ろしい犬として有名でした。
それが今、坊やの目の前で、いびきをかいて眠っています。
「しめしめ、よーし。まだ追っかけてくるなら、今度こそこっぴどいめにあわせてやるぞ」
坊やは、そーっとそーっと、眠る番犬の首輪につながれた鎖を、はずしました。
あのメイドの声が、近づいてきます。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、今日という今日は、ハァッハアッ、お仕置きよ、お尻ペンペン、してあげなきゃ・・・」
やがて、走りつかれてへろへろになったあのメイドが、お屋敷の角を曲がって現れました。
「今だ、そおれっ!」
坊やは、力いっぱい高く跳びあがると、番犬の鼻面を思いっきり踏んづけました。
太く鋭い悲鳴と共に、犬の充血した目が、カッと見開かれました。
鋭い牙がむき出しになり、その隙間から恐ろしい唸り声が上がります。
「御主人様・・・そ、それは、ダメぇっ!!」
事態を察してメイドは叫びましたが、後の祭りです。
それどころか、その声を聴きつけた犬が、メイドのことを見つけてしまいました。

一方、当のラビ坊やは、犬の目の届かないところまでぴょんぴょんぴょんと、上手いこと逃げおおせてしまっていました。
遠くから、犬のすさまじい吠え声と、メイドの悲鳴が聴こえてきます。
ラビ坊やは急に、じつはとんでもないことをしてしまったのではないかと、ひどく不安になりました。
あのヘンなメイドが、あの犬に本当に食べられちゃったら、どうしよう。どうしよう。どうしよう。
戻って、確かめてみなくちゃ・・・。でも、ちょっとこわい。こわいな。どうしよう。
坊やが迷っていたその時、今度は犬のものすごい悲鳴が聴こえてきました。
地獄から響いてくるようなその絶叫を耳にしてすっかり震え上がってしまったラビ坊やは、元いた自分の部屋へと一目散に逃げ帰ってきました。
一体、どんな怪物がどんなことをしたら、あの恐ろしい番犬にあんな悲鳴を上げさせられるのでしょう。
そういえばさっきからかすかに、今まで嗅いだこともない変な匂いがしています。
何かが焦げたような、生ゴミの腐ったような、ウンチが出ないときのおならのような、なんともいえないくさいニオイ・・・・
これは、地獄の香りなのでしょうか。
いたずらばかりしていたので、とうとう怪物が地獄からお迎えにやってきたのでしょうか。
そんな事ばかり考えながら、ラビ坊やは、毛布の下でブルブル震えていました。
あのヘンなメイドはどうなったのでしょう。
ドジでノロマなあのメイドのことだから、怪物にやられてしまったか、それともその前にあの犬に食べられてしまったか。
とにかく、もう死んでしまったにちがいありません。
ああ、とんでもないことになっちゃった、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・

「御主人様?」
「わぁっ!?」
急にあのメイドの声が耳元でしたので、ラビ坊やはとびあがってしまいました。
あわてて毛布から顔を出してみると、あのでか尻尾のメイドが、すました顔をしてベッドの脇に立っていました。
「あっ!?生きてた、よかったあ、よかったよかったあぁ」
「きゃっ!」
ラビ坊やは思わず、目の前にあったメイドの柔らかなふとももに、抱きついていました。
けれど、幼い坊やにはまるで思い至らなかった事なのですが、この時彼の指は、大胆にも少女の小さな秘密の割れめに触れ、少し湿り気を帯びたそのデリケートなクレバスを、無遠慮になで回してしまっていたのでした。
「もう」
メイドは、少し不機嫌そうな声を上げて、この小さな主人を見下ろしました。
そして、しょうがないなぁ、という感じで、黒のロングスカートをまくりあげました。
小さな主人のちょうど目の前に、メイドの形のいいお尻と、白と黒のふっさりとした大きな尻尾があらわれました。
「御主人様、あんまりおいたをすると、お仕置きしますからね」
メイドは、小さな主人の方を振り向き、たしなめるように、そして少々艶かしく、そう言いました。
「10数えるまでにエッチなことやめてくれないと、ほんとうに、しちゃいますから」
メイドはそう言うと、ゆっくり数を数えながら、尻尾を立てはじめました。
坊やは、ただただ目をまん丸くして、相変わらずメイドのふとももにむしゃぶりついたまま、その尻尾の動きを追っています。
「・・はーち・・・きゅーう・・」
尻尾は、天井に向かってまっすぐ伸びきったかと思うと、ぴたっと動きを止めました。
「・・・じゅう。うふふっ。ちゃんと警告、してあげたのに。仕方のない御主人様」
メイドは、小さな主人の方に顔だけを向け、いたずらっぽく微笑みました。
「これでも、ずうっとガマンしてたんですよ。でも御主人様があんなひどいことして、お尻の奥のムズムズに火をつけてくれちゃったから、もう・・・。
あの大っきな犬さんも涙を流してよろこんでくれた、スカンクの素敵な香りの贈り物・・・・。お仕置きとして、御主人様にもプレゼントしてさしあげますわ」
ラビ坊やの見ている前でメイドのお尻にきゅっと力が入り、ピンク色の肛門が、何かに押し出されるようにして徐々にもり上がり、広がりはじめました。
そして、ふっくらとした肛門のしわが少しだけ押し開かれたかと思うと、小指の先っぽを思わせる二つの突起が、肛門の左右の端から恥ずかしげに顔を覗かせました。
その突起の各々が、わずかにふくれ上がったように見えたその時。

ピュ、ピュゥッ!

瞬間、両方の突起の先端が時間差ではじけて、そこから放たれた二筋の黄色いしぶきが、小さな主人の胸板めがけ飛んで行きました。
「わっ!?」
ラビ坊やが持ち前のすばしっこさで身をかわし、部屋の隅にまで跳び退くと、黄色い弾丸は的を外れて、床のカーペットにぴしゃっと落ちました。
突然の思いがけないショックと、上手く切り抜けられたという安堵感から、坊やはホッとした顔でへなへなとその場にしりもちをつきました。
けれどもそうは問屋がおろしません。
このメイドのお仕置きは、これで終わりというわけにはいきませんでした。
坊やがぼうっとしていた間にも、床を濡らしたしぶきはカーペットの毛先から次々と気化し、辺りの空気を徐々に毒ガスへと変えていました。
そして、突然お鼻に強烈な危険信号を感じ、逃げなければと坊やが思った時にはもう、遅かったのです。
すでに部屋の中には、彼が地獄の匂いだと思っていたあのくさい匂いが、あの時感じたものよりも百倍も千倍も濃い、目玉が飛び出るほどの悪臭となって、隅々にまで充満してしまっていました。
坊やは、どうして怒り狂った番犬に襲われてもこのメイドが無事でいられたのか、そのわけを思い知ることになりました。

スカンクメイドのお仕置きは、叱ったり叩いたりするようなものではありませんでした。
にも関わらずそれは、ラビ坊やが今まで受けた中でもっともひどい強烈なお仕置きだったのです。
このスカンクの少女は、まるでオナラでもするかのように、肛門から臭いにおいのする液体を放つことができるのです。
このにおいは、風が無くても1㎞は平気で届き、風向きによっては数㎞先からでもわかるくらい物凄いものなのでした。
そんな臭い臭い臭い臭いスカンクのにおいを、彼女はラビ坊やに嗅がせたのです。
生まれて初めて嗅いだとてつもない悪臭、猛犬をもノックアウトするスカンク・ガスの強烈な刺激に、坊やの目はぐるぐると回り、口からはわけのわからない叫び声が、よだれと一緒になって噴き出しました。
両手は必死に辺りの空気をかき混ぜるような仕草をむなしく繰り返しますが、凄まじいにおいは薄まるどころか、いっそう強さを増していくばかり。
けれども本能というのは大したもので、スカンクメイドの「オナラ」の臭気にむせて息も絶えだえ、涙と鼻水にまみれながらも、ラビ坊やの両足はこの危機にきちんと反応し、目が回ってもうふらふらの彼の体を、ニオイの薄まる方へ、少女のお尻から遠ざかる方向へと、何とか押し進めてゆくのでした。
坊やはこけつまろびつ、よたよたと、ひたすら部屋の出口のドアをめざして進みます。
あのドアの向こうには新鮮な空気、オナラ臭くない空気、新鮮な空気、オナラ臭くない空気・・・!
今やそれだけが、坊やの頭の中の全てでした。
しかし・・・・
「もぉっ!お仕置きなんですから、キゼツするまできちんと嗅いで下さらなきゃ、ダメですぅ。逃がしませんよ、御主人様!そろそろ観念なさい。ん・・・えいっ」

ピュゥーッ!

メイドの声と共に、大砲のように斜め上方に突き出された、臭腺と呼ばれる例の肛門の二つの突起から、あのまっ黄色なしぶきが再び、勢いよく噴射されました。
窓からの日差しを浴びてきらきらと輝くしぶきは、宙に大きな弧を描いて、小さな主人の全身に音も無く降り注ぎました。
部屋じゅうに立ちこめているのと同じ刺激的な香りが、坊やの体のまわりだけ段違いにニオイの濃さを増してゆきます。
新鮮な空気のかわりに新鮮なスカンク・ガスをたっぷりと吸い込まされ、あまりの臭さに手足をめちゃくちゃにバタつかせながら、ラビ坊やは、声にならない悲鳴を上げて、自分の部屋の豪奢なカーペットの上を転げまわりました。
「あれれ・・・?どうして今のでキゼツしてないんですかぁ。あの大っきな犬さんだって、2発めを浴びたらもう、あっという間に動かなくなっちゃったのにな」
スカンクのメイドは、強烈ガスに包まれてじたばたと悶え続けている小さな主人を振り返り見て、不思議そうに首を傾げました。
「んもぅ、そろそろ、溜まったコレの残りも限界っぽいのにぃ。こうなったらもう、手加減しません!んふふ、これならぁ・・・もう絶対のぜーったい、お目々グルグルになってバタンのキューですぅ・・・と、とくべつ、くぅっさあぁーーぃの・・ンふぅっ」

・・ピュプゥゥッ!

彼女がグッとお腹に力を入れてきばると、ピンクの肛門から、今までのものに輪をかけてドス黄色い、見るからに臭そうな3発めのしぶきがまきちらされました。
しかも今度は、小さな主人の顔面へもろにそれがひっかかり、飛び散った細かいしずくの1滴が彼のお鼻の穴へと入り込んでしまったからさあ大変です。
どんなに首を振ったりお鼻をつまんだりしてあがいても、もう後の祭りでした。
お鼻に侵入したしずくはたった1滴でしたが、ラビ坊やをさらに半狂乱の状態へと追いやるには、充分すぎる量でした。
もともと、カーペットに小さな染みを作る程度の量で、この広いお部屋の隅々にまでくさい毒ガスを充満させられるような代物なのです。
その1滴がかかった所からたちまち、例の腐った生ゴミと腐ったうんちをさらにもっともっともっと腐らせまくったみたいな物凄い悪臭が広がり始め、それこそあっというひまもなく、お鼻の穴の奥の奥にまでスカンクの特別臭~い「オナラ」がめいっぱい充満してしまい、坊やはもう、げえげえいって悶えるどころか、ろくに動くことさえできずに、仰向けに転がったまま、うすら笑いのような表情をうかべてアヒアヒとか細くあえぐばかりでした。

いっそ気絶できたら、どんなによかったか!
けれど小さなラビ坊やにとってスカンクのこのくさいお仕置きはあまりにも強烈過ぎ、かわいそうに、まともに気を失うことすらできずにいるのでした。
いつまでたっても楽になれない小さな主人のみじめな悶えぶりを見かねて、トドメに一発、彼女の猛烈にくさい「最後っ屁」を直接お鼻へ振りかけてさしあげようと彼の側まで寄って来たメイドは、ここでようやく、その事実に気がつきました。
もし4発めを浴びせていたりしたら、今度こそ彼は、息を詰まらせ苦しみもがいたあげく、哀れにもくるい死にしてしまっていたかも知れません。
くさい刺激臭をひっかけるだけとはいえ、この世のどんな悪臭よりももっとひどいといわれているスカンクの「オナラ」ですから、それだけの威力はじゅうぶんにあるはずでした。
メイドはすぐにバスタブに湯をはり、スカンクの臭い消しになるというトマトジュースと洗剤を山ほど使って、小さな主人の全身をくまなく洗い続けました。
もちろんお鼻は特に念入りにゆすぎ、臭みのもとが薄れるまで、彼女自身の舌で優しく優しくなめ続けてあげました。
メイドの献身的な介護のかいあって、坊やはやがて正気を取り戻し、体中に染み付いていたにおいも、月日が経つうちに少しずつ薄らいで消えていきました。

あれ以来、ラビ坊やはたちの悪いいたずらに手を出すことも無くなり、いよいよバニー家の子息にふさわしい落ち着きが身に付いてきたと評判になっていました。
いいえ本当は、今でもいたずらの虫が騒ぐことはあるのです。
でもその度に、あのお世話係のメイドが、少し申しわけなさそうにして彼にお尻を向け、おねだりするようにこう言うのでした。
「どうしよう、お尻がまたムズムズしてきちゃった・・。はやくまた何かおいたをして下さいよぅ。今度はもっと、やさしくしてさしあげますから、ね?御主人様ぁ・・・」


THE END

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サークルSBD 2011/08/30 00:30

公衆電話ボックスってなかなか見かけないですよね。


でも大災害などの有事の際には携帯電話よりもずっと繋がりやすいので、自分の生活圏内にある設置場所を一応覚えておく事が大切らしいです。

ところで女性の後にボックスに入ると何らかの残り香が漂っている事があります。大抵は化粧だったり香水だったりなのですが、運が悪い(良い?)とこの絵のような状況に遭遇するかも知れませんね。女性がスカンクだと洒落になりませんが・・・

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サークルSBD 2011/08/29 00:30

容赦しない!


拙作「Gassassin」にも通じるイメージの一枚。
豊満すぎるヒップで顔面騎乗され続けるだけでも相当苦しいと思いますが、そこにガス責めまでが加わると文字通り悲惨な○問になります。

なお前記事「ブチル・メルカプタン断章」には、ところどころに同人作品『サイレント・バット・デッドリー ver.M』(http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ081459.html)と共通するワードが出てきますので、『サイレント・バット・デッドリー ver.M』をお持ちの方はそれをお聴きになりながら読んでみられるのもまた一興かも知れません。

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