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制作録の記事 (1)

饗庭淵/喘葉の森 2021/10/28 20:43

『温泉旅館のパイズリ怪異』を振り返る

さて、例によって制作の経緯などを振り返っていきましょう。
本作は『乳愛奴○調教計画』の作業を他人に投げている間、暇だなあと思ってつくった作品です。
どっかで聞いたような話ですね。

で、前々からどこでもパイズリシステムっぽいゲームはつくりたいなと思ってました。
ヒロインが後ろからついてきて話しかけるといつでもえっちなことができる!
きっと楽しいはずです。
以前に似たようなシステムは組んだので簡単にできるでしょう。
きっとちょうどよい暇つぶしになるはずです。

※以下、ネタバレし放題です。
気になる方は本編をプレイの上お読みください。

・なにが面白い?

ゲームを新しくつくりはじめる際にはまずこの点を考えます。

この点についてはさほど不安はありませんでした。
なんたって過去に黒先輩という似たようなゲームをすでに作ってますからね。
面白さについてはすでに保証されているといえます。

・ホラーっぽい雰囲気のなか適当な謎解きをしつつ、
・謎に詰まれば後輩がヒントをくれ、
・精液が溜まりればどこでもパイズリ

これで間違いはないでしょう。
『黒先輩』と異なる点は「精液ゲージ」の存在です。
「精液ゲージ」の及ぼす影響だけが未知数でしたので、そのへんは精査する必要がありました。

さて、本作にかぎらず私がなにかゲームを作る際にはだいたい既存作を参考に作り始めます。
言い換えると、既存作で「面白い」と感じたことの再現です。

『黒先輩』も元はといえば「オープンワールドゲームでメインクエストを無視する楽しさ」がもとになっています。
『黒先輩』自体はオープンワールドでもなんでもないですが、「謎解き」というメインクエストに対しまったく無関係の「セクハラ」要素は、ゲーム上まったく必要性はなく、プレイヤーがただ楽しいから行うものです。

つまりは「必要だからやる」のではなく、「自分でやりたいから選択する」という体験のゲームデザインというわけです。
「どこでもパイズリシステム」もそれと同じコンセプトです。

仲間が後ろからついてきてどこでも話しかけられるようなゲームはあるのに、なぜその仲間がえっちな爆乳ヒロインではなく、いつでもどこでもパイズリできるようなゲームはないのか?
その思いが本作に表れています。

『魔機人形』についても過去に似たようなことを書いてます。
メイドさんMODとか仲間をぞろぞろ引き連れるの楽しいよね、という体験の再現がコンセプトです。
もともとは一要素に過ぎないものを抜き出しそれに特化するわけですから、再現でありつつ単なる焼き直しやパクリではなくゲームとしては独自の味になるかと思います。

誰も見たことのない完全なオリジナルを目指すよりは、「知ってるけど少し違う」くらいがちょうどいいと思ってます。


・UIを設計しよう

なにからつくりはじめたのかあまり覚えてませんが、一つ覚えてることがあります。


この画面はかなり初期につくりました。
エロゲーといえばやはりこれですよ。エロステータス画面。これは必須です。

これもまた過去に体験した「面白かった」の再現です。
正確には面白いというより「えっちだ……」の再現でしょうか。

ちなみにこれを初めて感じたのは『Natural Another One 2nd -Belladonna-』という作品です。なつかしすぎる。
パラメータがあるだけでなんか臨場感増すなあ! と感動したのを今でも覚えてます。


メニュー画面のUIもどうしようかなあと思いましたがさっぱりした感じに。
『百合籠』くらいすっきりさせたかったですが。
メニューに後輩の爆乳立ち絵を出すことも考えましたが、話しかければいつでも拝めるんだからメニュー画面に出すのは余計かなと思って却下しました。

・温泉旅館っぽいマップをつくろう

と、その前になぜ温泉旅館?


元ネタはこちらです。
えっと……2015年の絵ですね。そんなに前?!

題材はわりとなんでもよかったというか、規模はそこまで大きくならない(黒先輩みたいに一つの屋敷が舞台)とか、せいぜい条件はそれくらいで、なにかないかなあと目についたのがこちらのイラストです。

で、旅館はちょうどいいなと思って実際の旅館の見取り図を調べながらマップを組みました。
カラオケルームといいつつ特に歌えるわけでもないパイズリ専用部屋がありますが、それは見取り図をいろいろ調べていたときに「へえ、旅館にカラオケとかあるんだ」と思ったからです。

実際にどの旅館を参考にしたよ、とか貼れるわけではありませんし、いうほどモデルになっている旅館はありませんが、要はマップを組むときにはググりますという話です。

マップデザインとして意識した点は、序盤に渡り廊下を歩かせる点です。
なんかいい感じに綺麗なマップを見せたかったのです。


・謎解きをでっち上げよう

パイズリがメインのゲームではありますが……

本作の制作順としてはパイズリはひとまず後回しにして、探索・謎解きゲームの部分から作り始めました。
パイズリはひたすら絵を描くだけでゴールの見えている作業ですが、謎解きなどは作る方も思いつかなければ延々と詰むことになります。

そういうわけで、本作のパイズリ絵を描きながら作業用BGVとしてそれっぽいゲームの実況動画を延々と流していました。

あれ? さっきと言ってること違くない?
違いません。謎解きをつくるには多くの参考資料が必要なのです。
謎解きゲーをつくるのに私自身は実のところ素養があまりないのでそれを補うために実況プレイ動画をいっぱい見ました。

なんだかんだふつうに楽しんでただけでどれだけ参考になったかは定かではないですが……
意識した点としては、「一つのアイテムを手に入れいたら二つ以上の使い道が欲しい」とかそんなんです。といいつつ、一つしか使い道のないアイテムも多いですが。

また、謎解きと呼べるようなものではありませんが、カウンターを飛び越えたり台の上に飛び乗ったり見たいな動きは「あ、こういうことできるんだ」と気づいてもらってちょっとだけ気持ちよくなってもらえるかなあ、みたいな意図です。

本作の謎解きはぶっちゃけてしまうと時間稼ぎです。
プレ時間の水増しというと聞こえは悪いかもしれませんが、「体験」の提供には時間が必要です。
「旅館をうろうろ歩き回る」という体験の設計のために謎解きを用意します。
あとは「謎を解いた先になにがあるのか?」というワクワク感を意図しています。

ところで、謎解きの難易度設計って難しいですよね。
私は謎を解くまでの工数でだいたい測れるのではないかと思ってます。

「○○の鍵を手に入れた。これで○○の部屋が開く」

謎解きとすら呼べないほど非常にシンプルです。

「手がかりが三つ各地に散らばっていて、それを合わせると謎が解ける」

まず三つの手がかりを集めるという工数が生じます。
そして各地に散らばっているという要素が合わされるとプレイヤーの思考は枝分かれを強いられます。
「手がかりは三つだけなのか?」「他にも手がかりはあるのか?」「なぜあの場所にあったのか?」
結果、難易度が上昇します。

本作で一番難しいのはロッカーの番号ではないでしょうか。
ここで難しい謎解きを挿入したのは時間を稼ぎたかったからです。
「あーでもないこーでもない」と頭を悩ませる時間が没入感を与えます。
まあ、本作はエロがメインなので詰まった場合はぶっちゃけ答えを教えてもらえます。
このへんは『黒先輩』と同じですね。

でもせっかくだからそれなりに難しい謎解きも欲しいな……隠し要素としてちょっと難しい謎解きを用意しよう……その難しい謎解きを達成した後の報酬は?


ヒロインが増えました。

・ストーリーをでっち上げよう

パイズリがメインのゲームではあるけれども……
それなりの臨場感、ホラー感を出すためにそれっぽいストーリーを用意します。

この作業はだいぶ楽でした。
悪く言えば手癖です。

もとよりなんかホラーっぽいのを書きたいなあと思っていたので実話怪談系の本を読み漁っていました。
そうして得た知識をもとにホラーっぽい話を書いていきます。

実際にホラー体験をした人はどんな反応を示すのか?
そうしたホラー現象が科学的に検証不能であるのはなぜなのか?
実話怪談ってそういう体なだけでフィクションなんじゃないの?
でもわりと「勘違い」で済まさせそうな実害のない話ばかりだな……

とかあれこれ考えながら話をまとめます。


また、マップのそこら中に断片的な文書が落ちていて、それらを読み進めることでストーリーの全体像が見えてくるという構成はカリスあたりからずっと続けている手法です。
『黒先輩』にもその片鱗はなくはないですね。

これは自作でも何度もやっていたり、『Fanastasis』をプレイしていても面白さを感じた要素です。
まあ、外れはないでしょう。もちろんテキストの質にもよりますが。

CG集にせよ漫画にせよ、ストーリーラインが一本しかない作品はエロ以外のことをしていると「余計なことしてないでさっさとやって?」となりかねない問題がありますが、ゲームの場合は「寄り道」がしやすくていいですね。

また、真相とかそういうのは特に考えずに書きはじめていますので、一通り書き終わって思いついたら帳尻を合わせる修正を入れます。


・パイズリ実装と精液ゲージの仕様を考える

どこでもパイズリシステムである以上、場所によって変化する多様なパイズリを描きたい……!

とか言ってたらキリがないので、そこまでバリエーションはありません。
せいぜい「縦パイズリ」「寝パイズリ」「座りパイズリ」「馬乗りパイズリ」「搾りパイズリ」くらいです。


どこでどのようなパイズリができるのか、はこのように話しかけるたびに左上に表示されます。
ただ、これは初期の初期にはありませんでした。
やっぱいるよなあとは思いつつ、「背後霊テストプレイ」によって「いるに決まってんだろ」と思い実装したものです。

第一のテストプレイヤーは作者自身ですが、何度も何度もプレイしているうちに仕様を完全に把握しているだけでなくいろいろ慣れてしまうものです。
他人にテストプレイをさせるのは必ずやってください。

「このゲーム、テストプレイしてないのでは?」と揶揄されるゲームがありますが、おそらくはテストプレイを「させていない」が実情なのではないかと思っています。

閑話休題。
本作において特に新しい試みは「精液ゲージ」の存在です。
ロリ巨乳の里にて』にもそれらしいゲージはありましたが、本作では同じ仕様のままではいられません。
『里』における仕様は「眠れば回復」「レベルアップで最大値上昇」「精液回復薬でも回復」「たまに演出でも回復」といったものでした。

本作では眠ることもなければレベルの概念もありません。
ただ、「精液回復薬」「演出による回復」は使えそうです。

回復の仕様で考えたのは「リアルタイムで少しずつ回復」「行動ごとに回復」ですが、結局どちらも採用されることになりました。
前者の場合、ただ待つ時間が生じてしまわないか?
後者の場合、回復に限界が生じてしまわないか? あるいは同じ行動を連打することにならないか?

それぞれ問題点はありましたが、リアルタイムで回復することで限界問題は解決でき、行動によって回復することでただ待つしかない問題を解決できると考えました。

また、精液が回復する行動として「後輩に話しかける」を採用しましたが、話しかけるたびに回復していたのではただ連打するだけのゲームになり没入感が削がれてしまいます。
よって、「新規会話」のときだけ精液回復が発生する仕様としました。
新しい会話はゲームを進めるごとに増えていきます。
つまりはゲームを進めるモチベーションにもなるわけです。やったね。

さて、まだ大きな問題が残っています。
回復速度をどの程度に調整すべきか。これが難しい。

パイズリの種類がそこまで多くないので何度も頻繁に精液が溜まってもやることがなくなってしまう。
せっかくなので焦らされるような体験を味わってほしい。
「やった! 溜まった」感のためにはそこそこ時間がかかってほしい。
でもプレイヤーとしてはさっさと何度もパイズリしたいはず……。

というわけで、とりあえず暫定的に決めてテストプレイをしてもらい、そのフィードバックから回復速度を調整しました。
結果として初期verから比べるとかなり速くなりました。


・エロは手段ではなく目的

本作のゲームデザインとしてはこの点を意識しました。

エロとゲームを合わせるとき、たとえばですが……
「錬金術の材料に精液が必要」「だからエッチをして精液を搾り出す」
という構造にしたとします。
この場合、エロは「手段」となるわけですが……

ゲームに没入すればするほど「早く新しいアイテム錬成したいからエロシーン飛ばせねえかな……」になりかねない問題が生じてしまいます。
錬金系ゲームはそれだけでも面白いものです。
その「手段」の部分にエロを足すと、「テンポを削ぐ余計なもの」になってしまうかもしれません。

そういうわけで、私はエロは「目的」にした方がよいのではないかと考えています。
あるいは「報酬」とも言い換えられます。
たとえば「めちゃくちゃ強いボスを倒した報酬としてのエロシーン」
強いボスを倒すためにあらゆる準備と工夫をし、やっとのことで倒せた。
一息つき、達成感に浸っているうえでさらにエロシーン。
むしろこれが見たくてボスを倒したんだよ!
となると、ゲームとエロがうまく噛み合うのではないでしょうか。

本作においても、パイズリはゲームを進めるうえでほぼ必要のないものです(一つだけ例外あり)。
むしろゲームを進めた報酬として、「100円玉を見つけると栄養ドリンクが買える」「栄養ドリンクが飲めると精液が回復する」「精液が回復するとパイズリできる」という構造になっています。

つまり最終到達点がパイズリなのです。
本作では100円玉をいくら集めたからといって、たとえば強い武器のようなゲームで有利になるようなものはなにも得られません。ただパイズリできるだけです。

それでよいのか?
いいんです。
前にも似たような記事を書きましたが、ゲームを進めるうえでなにか有利になるようなものではない「報酬」としてのストーリーという発想に近いものです。

そもそも、スーパーマリオワールドのドラゴンコインだって集めたからってなにもいいことはありません。ただ集めるのが楽しいだけです。
そのうえパイズリもできる!
ならよいではないですか。

別にパイズリはしなくてもゲームはクリアできる。
でもしたいからする。

もとよりゲームとはそういうものです。
「しなければならない」からゲームをプレイするのではありません。
「したい」からゲームをするのです。


・その他細かい点

・最大量
「実は精液ゲージの最大量増えてるんだけど気づいてた?」
「え、全然気づいてなかった。アハ体験かよ」

テストプレイの段階からこの問題はありましたが、製品版をプレイした方にも同じ経験をされた方はいるのではないかと思います。
一応、対策としてなんかそれっぽいエフェクトが出るようにしましたが、まだわかりにくい!
「精液量をHPとかみたいに数値として可視化すればええんちゃう?」とは思いましたが、なんの説明もない謎のゲージの方が面白いかなって……
このへんは作家のエゴが出てしまった部分でしょうか。


・脱出ゲーム“ではない”
このゲーム実は「脱出ゲーム」ではありません
「温泉に入ったらクリア」なのですが、これもわからないですよね。
ただ、ハーレムエンドが存在する仕様上、「あれ? これで終わった?」「回想モードが開放された」「まだありそうだな……」となると思いますので、噛み合っているようないないような。


・扉の演出
細かいこだわりポイントは鍵のかかった開かない扉を調べるとガタガタ震えるやつですね。ホント細かいですが。
鍵を開ける場合はどの鍵で開けたのかわかるように「○○の鍵を使った!」とメッセージを出します。これも大事です。


・パイズリ誤爆防止
後輩に話しかけたときの選択肢は上から順に「話す」「パイズリ」「どいて」になっています。
実はこれ、もともとは「話す」がなくて「パイズリ」「どいて」だけでした。
するとしたくもないのにパイズリを誤爆してしまうリスクがありました。
もっと精液を溜めてからしたかったのに! しかも長い!

そんなわけで、誤爆防止に「話す」が一番上にあります。
初期で無選択状態にするUI(カーソルキーを押すと選択状態になる)もよくありますが、あれ嫌いなんですよね……めんどくさくて……。


・端書の合体
足し算すればいいだけなんですが、電卓とかを取り出して計算するのはめんどくさいだけでなく、「本気でこんなことさせるつもりか?」とプレイヤーにメタ読みさせるようなことになりかねません。
という感じの指摘がありました。
せっかくそれっぽいUIがあるので合体できるようにしました。


・文書コレクション
回想モードのためエロシーン回収はエロゲーなら定番ですが、本作には文書も収集要素としてありますので、ゲームクリアフラグが立った場合には最大数と取得数を表示するようにしました。
最初から表示させないのは没入感を削ぐことを懸念してです。


・タイトル画面
ロゴがぷにってするやつ好き。

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