インディーゲーム制作サークルの「紡」です。
お蕎麦が好きです。味や風味も勿論好きですが、あの「蕎麦を手繰っている」という粋な感じも良いですね。日本酒と最後に蕎麦湯があるとなお良し。しかし、粋に囚われると寒い日でももり蕎麦で食べることに……いや、もり蕎麦が一番好きなんですけどね……。
さて、本日はショートストーリーをお届けします。つむぎちゃんの朝の風景を描いています。少しでも世界観を感じていただければ幸いです。
※今回はイラスト担当に挿絵を描いてもらったので可愛いつむぎちゃんです!
乙葉家の朝
「つむぎ~」
遠くから声が聞こえる。心地よい、ほっとする声。朝が来た。
レースのカーテンへ木洩れ日が差し、外では木々を揺らす風と小鳥のさえずりがシンフォニーを奏でる……なんて、とっても詩的ですてき。
温かな布団を頭まで被り、うつらうつらとするこの時間が私は好き。
「つむぎ~起きないと~」「ワンワン!」
「あ~、菊次郎さん~」「ワン!」
ぼふん! 「はぅ!」
布団のうえに毛玉が乗っかってきた。ポメラニアンの菊次郎さんだ。朝、私が起きないでいると、こうやって布団のうえにダイブしてくる。お利口さんな目覚まし兼家族。私は毎朝、この「ファーボール・ダイブ」により夢うつつの時間から引き戻される。
「おはよう~お寝坊さん。今日もお髪が跳ねまわってるわね」
「おはよぉ~おかあさん、菊次郎さん」
膝に乗ってる菊次郎さんを撫でながら、寝ぼけ眼でお母さんに挨拶をする。寝相は悪くないと思うのだけども、なぜか朝は必ず寝ぐせだらけ。そんな私の髪を、お母さんが優しく梳いてくれる。それが気持ち良くて、また眠りの淵でおっとっととバランスを取ってる私を、菊次郎さんのしっぽフリフリで応援してくれていた。ぺしぺし。
「はい、終わり~つむぎ、歯を磨いてらっしゃい」
「はぁ~い」
菊次郎さんを下に置いて、ふらふらとした足取りで洗面所へ向かう。菊次郎さんも小走りでついてきた。リビングでニュースを見ているお父さんに声をかける。
「おはよ~おとうさん」
「おはよう、つむぎ」
洗面所で私用の黄色の歯ブラシを取り、歯磨き粉をたっぷりつけてぐしぐしと歯を磨く。うがいをしたら顔を洗って、前髪で小さい三つ編みを作り、お花の髪留めでパチン。後ろ髪をサイドでまとめる。小学生の頃は髪をまとめて無かったが、友達のさよちゃんが「いつまでもそんなんじゃダメよ!」と、お花の髪留めをくれ、髪の編み方を教えてくれたので、毎日練習することにしてる。
お母さんが着替えの制服を持ってきてくれた。セーラー服に袖を通し、身支度完了。
さて、そろそろ菊次郎さんが待ち疲れている。お散歩に出かけよう。玄関でリードを取って、菊次郎さんの首輪に取り付けてると、ちぎれんばかりにしっぽをフリフリしていた。かわいい。でも、もうちょっとだけ待ってね。
玄関から出て、小さな庭に回り、育てているネモフィラとマリーゴールドの様子を見る。うん、元気に咲いてる。庭から窓越しにお母さんたちに声をかけ、菊次郎さん待望のお散歩へ出かけた。
朝の町はまだ人通りも少なく気持ち良い。私の住んでいるこの町は湖が近く、この時期はまだ風もちょっぴり冷たいけど、お散歩には丁度良い。
私と菊次郎さんは道端のお花や、葉っぱについてるイモ虫なんかを見つけては立ち止まり、観察しながらゆっくりお散歩をする。菊次郎さんにとっては自分の縄張りを荒らすモノがないか、威厳を持ってパトロールも兼ねている。今日も縄張りは平和だったようだ。近所を一時間ほど回ったら、朝のお散歩は終わり。
「ただいま~」
「おかえりなさい~今日のご飯は目玉焼きトーストよ~」
最高である。菊次郎さんの足を拭いて、手洗いうがいをして食卓に着く。ちょうど焼けた厚切りトーストと目玉焼き、トマトサラダ、牛乳が運ばれてくる。菊次郎さんにもご飯が運ばれてきて、一緒にいただきますをした。
ゴハンも好きだけどパンも好き。パリパリのトーストにたっぷりバター、目玉焼きは黄身だけを残して食べて、最後に黄身をひと飲みにするのが好き。ちょっぴりお行儀悪いかしら。
残さず食べてごちそうさま。お腹いっぱいだけどお皿を片して、そろそろ学校に行く時間。菊次郎さんを一撫でしたら自分の部屋に戻り、カバンを取って玄関へ。
(学校に行ったら花壇の様子を見ないとな~)
「いってきま~す」
「いってらっしゃい、気を付けてね~」
「ワンワン!」
今日もすてきな日になればいいな~。
乙葉家の家族構成は父母娘犬の3人と1匹、仲良し家族です。つむぎちゃんは比較的大人しくて、ぽやーっとしてますが、内心では色々と考えてますね。
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サークル紡 公式Twitter: @tumugi2021110