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『快鳥童子シーガルマン』制作ノート#22

こちらはバックステージプランでの支援者様限定の記事となっております。

第二十二回目の制作ノート、今回はすっかりシーガルマンワールドではお馴染みとなったパーシアスエンタープライズの私兵集団ヌルズについてのお話です。

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【今回は予定を変更し、3本立てでお送りいたします。】快鳥童子シーガルマン八戸夜話 第五回

八戸夜話#5


光線銃を持つ男

ある4月の末の日、八戸市湊町の新井田川沿いに所在する株式会社ITOビルサービス第2営業所の社屋の中の一室には、ITOビルサービスを隠れ蓑に活動する武装集団ヌルズの構成員4人が集まっていた。

窓が無く白色灯に照らされた室内においては、3名が「コ」の字に並べられた机を前にして着席し、1人は部屋の中央に無言で直立している。その様相は、そこそこに良い質感の木目の壁紙も相まってさながら審理中の裁判所を思わせるものであった。この部屋を仮に「ヌルズ簡易裁判室」と呼称するものとする。

 ここで、現在室内にいる4名について各々の様子をご紹介する。

 中央に立たされた男はコードネーム「ヨーク」で呼ばれる、ヌルズの構成員 福田文男である。

 福田の目線の先、他三名の中央の位置には、ヌルズの総責任者であるコードネーム「スケルトン」、本名ユージン・ジョン・スミス、愛称ジーン・スミスとしてヌルズ内に知られる男が、机の上で両手を組みながら常日頃にもまして鋭い眼光で福田を見つめている。

 福田から見て左手には、ヌルズの直接の総指揮官であるコードネーム「エイブル」、本名松方直美が、「ヨーク/福田文男による兵装開発予算の請求に関する査問」と書かれた資料に目を通しながら不敵な笑みを浮かべている。

 最後の1名、福田から見て右手に着席しているのは、ヨークこと福田文男が在籍しているヌルズの第5班の班長を務める男、即ち福田の直属の上司にあたるコードネーム「チャーリー」本名寺内昌隆である。彼は黙って腕を組みながら目を閉じて俯いている。手前の机には複数個の謎の物体が置かれている。

「んだば、はじめるすけ。」

スミスがそう発言すると、松方は立ち上がり、室内によく通る声で話し始めた。

「それでは早速、福田文男くんに、ITOビルサービスに届いた請求書に関する質問をします。」
福田の額から一滴の汗がタラリと流れ落ちた。

松方は一通の封筒を取り出すと、中からさらに一枚の紙片を出した後掲げて言った。

「昨日ITOビルサービス第2営業所宛てに届いたこの書類、“¥93,000,000-”って書いてあるんですけど福田君、これなんて読むのかな?」

松方は人工的な印象の機嫌のいい調子で福田に聞いた。

「…円です。」

福田はぼそぼそと答えた。

「な ん て 読 む の か な?」

松方は打って変わってドスの効いた声で改めて福田に聞いた。

「き、9300万円です!」

福田ははりつめた声で叫んだ。

「はい、それではスミス君、コメントをお願いします。」

ここで松方は責任者であるスミスに話を振った。

「…福田、内訳は?」

スミスは引き続き肘をつきつつ目の前で手を組んだ体勢のもと、低い声で福田に聞いた。

「あっ、えっと…、ひ、秘密兵器の開発予算です!」

福田はそう絶叫した。

「…秘密兵器。」

スミスは低い声でそう呟いた。

ここでこれまで沈黙を保ってきたチャーリーこと寺内がついに口を開く。

「今俺の手前にあるのが、福田の手製の“秘密兵器”だ。」

寺内はジェスチャーまじりにそう言うと、目の前の机に置かれたいくつかの“秘密兵器”を手で指した。

「…んだば、一個ずつ詳しく教えてけんだ。」

スミスは寺内にアイコンタクトを送ると、寺内は無言で頷き、得体のしれない物体群のうちの一つを手で持ち上げ福田に聞いた。

「福田、これはなんだ?」

寺内が持ち上げたのは白い直方体のような物体である。

「はい、それは直方型投擲用セラミック、名付けて”TOFU”―SQ04っす!」

「…トーフエスキューゼロヨン?」

スミスは神妙な顔で奇妙な兵器の名称を復唱した。

「はい、特殊なセラミックを利用した投擲用兵器です!投げるまでは柔らかいんですけど、標的に直撃した瞬間に一種のダイラタンシー現象が発生して、その強力な衝撃で対象を破壊します!」

福田は、先ほどまでの態度と打って変わり自信満々に答え始めた。

「『豆腐の角に頭をぶつけて死ね』という言葉から着想を得まして、実際に現場でハウさんに使ってもらいました!」

「で、結果は?」

スミスは寺内に尋ねた。
「確かにうちのハウが投げたこれはシーガルマンの肩アーマーを破壊した。…が。セラミックの重量に耐え切れず、ハウは右肩を脱臼、さらに本物の豆腐を投げたと勘違いしたシーガルマンがブチ切れてハウをタコ殴りにして、ハウは3週間寝込んだ。」

寺内が答えた。

「…無事回復したすけ、いがった。」

スミスは表情と体勢を変えることなくそう呟いた。

「それで福田君、お値段は?」

突如松方が福田に話を振った。
福田は一瞬びくついた後、若干背を丸めながら答えた。

「せ…1300万円です。」

「はい、“13,000,000-”っと!」

松方は陽気に答えた。相変わらず人工的な陽気加減である。

「次はこれだ。福田。」

寺内が持ち上げた次の物体は一見するとLEDや煌びやかな装飾が施された大型の自動拳銃と、打って変わって武骨な弾倉のようなものだ。弾倉には、なぜか紙幣の投入口がついている。

「はい、乱数式拳銃”CRマグナム001”っすね」

福田は再び堂々と答えた。

「…乱数式拳銃?」

「乱数を使用して射撃する拳銃っす。銃弾が発射される際、内部の特殊なアルゴリズムによって生成された乱数が使用され、命中する場所が予測不可能となります。これにより、対象の動きや状況に応じて命中精度が変化し、戦術的な柔軟性が向上します。」
「…まっだ癖がありそったな。」

スミスがボソッと呟いた。
福田は意に介さず説明を続ける。

「それから、射撃の際にランダムなボーナス効果が発生する可能性があります。例えば、特定の乱数が出た場合、弾丸が追加の爆発効果を持つことがあります。しかし、逆に不運な乱数が出ると、命中精度が低下したり、弾丸が無効化されることもあります。これにより、戦闘における予測不能な要素が生まれ、緊張感と戦略性が高まります。そして、ボーナス発生時はド派手な演出で射手のドーパミンを増幅させることで戦闘への没入感を高めます!」

「…ふむ。それで、寺内が左手で持ってるのは弾倉か?」

「そうです!」

「…なして1000円札の投入口がついてるのさ。」

「その…やっぱり予算がかかっちゃったので、現場で回収しようかと。」

福田はポリポリと首をかきながら答えた。

「…現場で?」

スミスは首を傾げた。

「正確にはそれ、弾倉とセットになった“弾貸し機”です。」

「“弾貸し機?”」

「1000円を投入すると、弾が5発弾倉に補充されます。そこからマグナムの使用開始です。」

「寺内、現場だばどうだった?」

スミスは再び寺内に話を振った。

「実戦ではうちの班のピーターが使った。…が。」

寺内が言いよどんだ。

「…が?」

スミスが寺内に聞く。

「あいつ、マグナムの演出に妙にハマっちまったみたいで、戦闘そっちのけで馬鹿すか弾を無駄撃ちするようになっちまった。今は週一回カウンセリングに通ってる。」

「…はぁ。」

スミスがため息をついた。

「でも、お陰で100万円ほど回収できました!」

「で、銃とマガジンのお値段は?」
松方が鋭い印象の目つきで唐突に福田に問いかけた。

「…2000万円です。」

「…。」

スミスは無言で頭を抱えた。

「次はこれだ。」

寺内は、水色の粘土のような物体を取り出した。

「…もしかすっどそれ、一班の連中が食ってた非常食か?」

「はい!正確には食用プラスチック爆弾、C4-Xっす!」

福田は三度自信満々に答えた。

「…―」

すると、スミスは無言で席を立って裁判室を退出した。

残された3人は何とも言えない表情をしながら数分待った。

「…悪ぃがっだ。続けてけんだ。」

戻って来たスミスはハンカチで口元を拭いながらそう言うと、若干力なく席に座った。

「はい、子ども向けの誤飲しても安全な粘土を見て思いついたんですけど、従来食べると甘いけれど強い毒性のあったC4爆弾を、素材を色々と変更することで健康上の問題なく非常食としても活用できる―」
「…もう大丈夫だ。松方。」

スミスは頭を抱えながら松方に話を振った。

「えっ。…ああ、福田君、お値段は?」

松方は福田に聞いた。

「…10個で2000万円っす。」

「高級食材だねー。」

松方は乾いた笑顔でそう言った。

「最後はこれだ。」

そう言って寺内が手に取ったのは、金色に輝く拳銃である。

「確か…“ネロルヤ光線銃”だったべか?」

「正確には、『五次元光線銃ネロルヤ』。四次元の世界を克服し、不可能を可能ならしめ、あらゆる科学兵器より強い。問答無用でターゲットを気絶させる傑作っす!」

「話はきいた。確か不意打ちでシーガルマンを昏倒させた銃だったべか。」

「はい!これなら文句ないですよね?」

「福田くん、お値段。」

松方は冷たい声で福田に言った。

「…3500万円です。」

福田は肩を落としてそう答えた。

「…それだけじゃないよねぇ。」

松方はさらに低い声で福田に尋ねた。

「……専用の使い捨てバッテリーがあって、一発100万円です。」

「さて、今回の請求書の総額です。」
松方は、手書きで記入した丁寧な表を一堂に見せながら話す。

「投擲用セラミック、乱数式拳銃、食用プラスチック爆弾、ネロルヤ光線銃、その他付属品、全て合計して、9300万円の請求書が、福田君から当社に送られました。」

「福田、わけを聞かせてけんだ。」
スミスは低い声で福田に尋ねた。

「…その…すみません。最初会社からお金がでるものと思ってて…。」
福田は頭を掻きながら蚊の鳴くような声でそう呟いた。

「でも、材料とか買うにしても先立つ資金は必要だったはずだろ?」

「その…闇金で。」
福田は引き続いて頭を掻きながらそう言った。

「…ハァ。」
福田以外の一同は揃ってため息をついた。

しばらく後、松方が声を上げた。

「では、福田君の処遇についてです。私からは、ネロルヤ光線銃以外は製造法ごと没収。光線銃も無駄撃ち一発につきスクワット1万回を提案します!」

『異議なし』

スミスと寺内は同意した。

「福田。異議はないな?」

寺内がそう尋ねると、福田は無言で頷いた。

スミスはその様子を見届けると、起立して声を発した。

「んだば、福田。“判決”を言い渡す。」

「はい。」

「ネロルヤ光線銃は無駄撃ち一回につきスクワット1万回、その他の兵装はすべて没収するものとする!」

「…はい。」

「最後に請求してきた9300万円だけんども、うちさそったら予算はねぇじゃ。」

「……はい。」

福田はずっと背を丸めてスミスの言い渡しを聞いている。

「よって、これから闇金に“話をつけに”行くべ。福田、寺内、んがんどついてきてけんだ。」

「…了解‼」

「それじゃ、私留守番してます。福田君、帰ってきたら去年無駄撃ちした1発分、早速スクワット1万回ね!」

「えっ。」

その後、八戸市湊町の道路には、武装したスケルトン、チャーリー、ヨークが乗車した、一般車両に偽装した戦闘用ワンボックスが走行する様子が見られた。

翌日、八戸市内でひっそりと活動していた闇金の事務所13件が、そのいずれも“悲惨な事故により爆発した”というニュースが地元新聞の3面記事を飾り、その後ITOビルサービス第2営業所内で膝を震わせた福田の姿が目撃されたのは言うまでもない。

F I N

(作:伊角茂敏)

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『快鳥童子シーガルマン』制作ノート#21

こちらはバックステージプランでの支援者様限定の記事となっております。

第二十一回目の制作ノート、今回は『快鳥童子シーガルマン』における主要な登場人物の口調に関するお話となります。

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快鳥童子シーガルマン八戸夜話 第四回

八戸。時折積雪も見られる冬真っただ中の、一月のある日。

「スケルトンには連絡を?」
「勿論。スチルシャークとコールダーが支援のためこちらに向かっている、と」
「よしよし、問題なし。後は……」

 ――黒ずくめの彼らとはあまりに対照的な……純白のアーマーをした男が、そこに立っていた。

「……毎度お疲れ様です」
「全くだ、アンタのお陰で疲れるよ」

リーダーらしき五人組の男の先頭が、悪態をついた。彼らヌルズ第四班は、対シーガルマン戦闘に特化した精鋭部隊だ。市内での戦闘活動の後にシーガルマンと会敵、遅滞戦闘の後、市内ビル群に退いてきていた。

「安給料でよ、アンタみたいなチートの塊とドンパチやる身にもなってくれよ」
「イージー、今日の晩飯なんですかね」
「さあな。肉食いてえよな肉。もう随分カレー続きじゃねえか、作りすぎたって。確かに寝かしたカレーは美味いけどよ、それも度が過ぎりゃあ腐敗という名の退化に過ぎねえんだぜ?」
「イージー!アンタ味噌と納豆、その他諸々の発酵食品を侮辱しましたね?!」
「してねえよ!」
「いいやしたっ!カレー付きの福神漬けの立場をアンタは微塵も考えてない!!カレーの野菜を悪魔のような顔で刻む人間並みに悪辣極まりない!」
「何で!」

 ――班内は早速瓦解しかけていた。

「あの」
「何だ!!」
「カレーにも、肉は入ってるんじゃないですか?」
「……シーガルマン。野郎が先を争って食うんだぞ?一週間過ぎのそれに肉なんて残ってると思うか?」
「……ご愁傷様です」
「と言うわけだ。俺たちのQOL向上と明日以降の栄光の晩飯の為に、手合わせ願おうじゃねえか」
「おう!」
「……」

 結束を取り戻した第四班が相対する。シーガルマンはガルセプターを構え、イージーは大仰にファインティングポーズを取り……残りの四人は棒状の何かと、礫状の何かを取りだした。

「新兵器……?」
「まあ、アンタに対しちゃ役不足かな……まあいい、やれ!」
「!!」

 殴打の連続。その攻撃はシーガルマンの各所にヒットし――

「……あんま効いてねえな?」
「う、嘘だっ!次の時代を切り開くリーサルウェポンだって、俺は……」
「だから俺は信用ならねえって言ったんだ……」
「肩こりが取れました」
「こ、このっ!」

 ――その後、ヌルズ第四班は壊滅状態に陥り、後詰めの二人も投入されたが、シーガルマンを捕縛せしめるには至らなかったという。

『しかしあの新兵器……果たして新兵器だったのか?』







 一ヶ月後。八戸市湊町、ITOビルサービス第2営業所。

「ん、来だが」
「どうも、スケルトン」

 上司から呼び出しを受けたヌルズ第五班長チャーリーは、その上司の執務室に居た。

「まあ、掛けてけんだ」
「ええ」

 執務室の主スケルトンはそう言うと、机の引き出しから小箱を出し、途端英語で話し出した。

『プレゼント、だそうだ』
『へえ、俺に?』

 双方とも海外も、そして付き合いも長い。英語の会話に何ら不都合はなかった。

『だそうだ、とは。……まさか、パパ・スミスから?』
『やはりそう言うのか……』
『悪いか?親父殿がそう自分でおっしゃってるなら、別に構わないだろう』
『慣れの問題、とは言ってもだな……』

 珍しく苦虫を噛み潰したような顔のスケルトンに、くつくつとチャーリーは笑う。

『シガリロか。流石親父殿、好みを分かってらっしゃる』
『……点けるか?』
『吸わんだろう?』
『執務室だ。今日は仕事も入ってない、構わん』
『どうも』


『さて。チャーリー、呼んだのは他でもない。これを見てほしい』

 渡された封筒の中身を見るなり、チャーリーは怪訝な顔をした。

『なんだこれは』
『ヌルズの内情だ』

 ――異様な光景だった。ヌルズの活動中の写真、その全てに……

『バットと、石?』
『そうだ。連中の間じゃ”粉砕バット”と呼ばれているらしい。後者は不明だ』

 ――棒状の、何か。黒く塗られたそれは先端は太く、そこから手元に向かって絞られ、最終的に手元過ぎで再び太くなる……俗に言う、バットだ。礫状の何かに対しては……礫状の何かとしか、形容しようがない。

『一応聞くが。チャーリー、お前は?』
『持ってるわけないだろう。しかも初耳だ』
『と言うことは、第五班ではまだ流通していないのか』
『ああ。装備課の連中か?いや、なら俺の所に連絡が来てるはずだよな……』
『流通経路は現状不明だ。一月ほど前から、急に流行り始めた』
『ふん』

 二人は首を傾げる。

『……と言うわけでだ、チャーリー。この件について、早急に調査してくれ。無論俺も協力する』
『それは良いが……エイブルには連絡を?』
『いや、していない。それとなくカマを掛けたが、のらりくらりだ』
『逆に怖いな……』
『この調子だと、途中での介入はないだろうが……』
『エイブル、だからな。静かに、かつ早急に解決するほかないだろう』
『そういうことだ。よろしく頼む』





翌日、チャーリーは市内某所の病院を訪ねた。パーシアス・エンタープライズの附属病院だ。

「失礼。先刻連絡差し上げた、寺内ですが」
「伺っております。内田様は六階の六二一号室です」
「どうも」

 やはり基本は聞き込みということで、壊滅した第四班隊長・イージーこと内田に、当時の状況を聞いてみることにしたのだ。見舞いの菓子折を抱えて、六階へ上がった。

「……寺内!」
「災難だったな、内田」

 広い個室は一人部屋だ。

「調子はどうだ」
「大分良いぜ、来週には復帰だな。それはそうと寺内よ、他でもないお前が来たってことは……何かあるんだろ?」
「……」
「話せよ。……三日前にここに移されたんだ。上がそうしたんなら、そういうことだろ?掃除も手入れも、行き届いてるってわけだ」

 チャーリーは一つ頷くと、話し始めた。

「聞き取りやら何やら、来てるか?」
「いいや?いつも通りの報告書だけさ、後始末書な」
「成程」

 上は現状、黙っていると言うことが分かった。

「病み上がりの所悪いが、あの時の状況を教えてくれないか」
「状況、ねえ……ほぼ部隊全員がバットで突撃した、それで負けた。それ以上の事実はねえよ」
「そのバットについて、知りたいんだ」

イージーは首を傾げた。

「知りたいって言ってもよ……俺も分かんねえんだよな」
「と言うと?」
「なんか気づいたらな、凄え流行ってたんだ。部下連中に聞いても教えられませんの一点張り。そんな信用ねえかなあ、俺?まあ、あの具合じゃ何の変哲もねえバットと石だろうがな」

 あの白いのにも碌に効いてなかったしな、とぼやく。

「……お前は?」
「使うわけないだろあんな得体の知れないもん。あいつらはどうしてもって言うから、その辺の意を汲んで使わせてただけで……寧ろあの白いの以外には案外善戦してたのが怖いよな、何だかんだであいつら強いからなあ」
「……」


(ますます、分からないな)

 湊町の営業所に戻るなり、チャーリーは食堂に腰を落ち着けた。

(モノの威力と真偽はともかく……バットの震源地は何処だ?)

 基本、ヌルズの装備は装備課からの供給品だ。だが一応少数精鋭の部隊とあって、個人の装備にはある程度の自由が許されていた。それでも殆どの隊員は余程の事情でもない限り、正規の供給品を使うのが大多数なのだが。

(それに装備課経由でないのなら、まず間違いなく出所は外部だ……よもや間者か?)

 それはない、とチャーリーはかぶりを振った。何せこの閉鎖空間だ。自由はある程度はあると言え、外部接触は一部の例外を除いて極端に少ない。ましてやここの上層部は、八戸を実効支配する天下のパーシアス・エンタープライズだ。情報戦は専門部署付きでお手の物、果たしてそのセキュリティを容易に突破できるものか?

(それに、突破したところでバットと石……何をする気だ?)

 そんなことを考えていると、突然背後で破裂音が響いた。

「?!」
「いやあ、当たんないもんだなあ」

見れば、ヌルズ第五班のピーターが、僅かに顔を赤らめながら拳銃を発砲していた。具合が悪いわけではない。酒だ。

「……???」
「あ、寺内さん!おはようございます!」
「……昼だぞ池田。一応聞くが、何をしてるんだ?」
「射撃訓練です!」
「食堂でやることではないな……」

 彼はヌルズ第五班きっての問題人員だった。射撃の腕、特に乱戦でのそれは十分以上だったが、それ以外が全て問題と言っても過言ではなかった。
 ――だがチャーリーはそんなことよりも、別の所に目を向けていた。

「……池田、その石はなんだ?」
「何って、石ですが。鉱物の石です、人間のじゃなくて」
「何処から手に入れた?」
「買ったんですよ、御利益あるとかなんかで。まあ俺はそういうのあんま信じない口なんで、こうして使ってるわけですが」
「ウチの……第五班の連中も、皆持ってるのか?」
「皆と言うより……若槻さんは持ってましたよ?」
「若槻……ハウが?!」

 チャーリーは頭を抱えた。数少ない常識人枠の同志が、よく分からないものを買っている姿に驚愕したのである。

「や、福田のヤツはまだ買ってませんでしたかね?まああいつだからなあ、その内……」
「呼びました?」

 驚いたチャーリーが振り向いた先――粉砕バットを嬉しそうに抱えた、ヨークこと福田が立っていた。





「もう生き残りはお前だけか……小渕」
「勝手に他の人たち殺さないで下さいよ」

翌日、社用車を借り出したチャーリーは、生き残りのエ……オブチを伴い、湊町を流していた。

「お前は何で持ってなかったんだ?」
「ああ……勧誘は来たんですけどね、あれタダのバットと石でしょう?そこら辺の店で手に入るじゃないですか」
「そのお前の感覚に助かったよ……それで、どこから勧誘が来たんだ?」
「三班からですよ。でもあの連中ヤバ目でしょう?対人専門部隊だからかどうかは知りませんけど、凄い腕利き、でも少しまともな池田さんみたいなメンツが五人揃ってるって……」
「そうだな。あそこも優秀なんだがなあ……」
「装備課の一班からだったら、買ってたかも分かりませんが……それで、今日は何処へ?」
「聞き込みだ。あのバットと石の出所を、本格的に突き止めに行く」


 車はやがて公園に着いた。ここも、パーシアス・エンタープライズ所有の公園だ。無言でランニング中の男連中五人に、チャーリーは気さくに声を掛けた。

「よう、清浦。精が出るな」
「ああ。誰かと思いましたよ、寺内さん」

 先頭の男が、見た目に似合わぬ物腰の低さで返した。部隊内ではフォックスの名で通る班長だ。

「え」
「どうだ調子は」
「特に変わりありませんね。最近は目立って困難な出動もなし、平和なものです」
「そりゃあ良い」

 ――対人専門部隊、ヌルズ第三班。単純な任務遂行能力ではヌルズ有数の実力を誇り、またその姿勢からヌルズ内部からをも一目置かれる部隊だ。

「トレーニングの邪魔をして悪いんだが、少し聞きたいことがあってな」
「いえいえご遠慮なく。寺内さんであれば大歓迎です」

 男は満面の笑みで返した。

「……第三班も、粉砕バットと礫を導入したと聞いたんだ。どうだ一つ、戦闘のプロの意見を聞かせちゃくれないか?」
「腕はあなたの方が上でしょうに……まあそうですね、個人的な意見を言わせて頂くなら」
「?」
「粗大ゴミです」
「ひっ」

 男は満面の笑みで言い放った。

「……その心は?」
「ここからも個人的な意見になりますが。武器というもの基準を語るなら、それは十分な威力と時に過剰なほどの耐久性が、その条件と信じます。この粉砕バットと礫……まあその辺の安物のバットと石でしょうが、とても私が信奉するそれに当てはまっているとは思えません。まあそうは言っても、一応武器と括られていれば武器で、それなりに使えるものではありますし、一般的に武器と括られていないものでも、状況によって敵に対する十分な脅威になり得る……つまりは武器と見なし、人によっては活用できる――いや活用しなければならないことも多々あるでしょう。しかしどうです。この粉砕バットやら礫やら、タダのバットと石です。石はまあ、自然界のなかに存在するものですからそりゃあ武器にはなりましょう。しかしですね、いけない。これはいけない。僭越ながら我々は特殊部隊です。大いなる仕事を最小限のエナジーでこなすことを自身らに課し、また上層部から命じられています。つまり我々の目指すべき目的から逸脱、いいや正反対だ。そうなんですよ。ですからこれらは少なくとも、現状の我らヌルズ第三班の基準においては、武器と言えないわけです。――ああご心配なく。無論先達の歴史上の苦労とその威光を侮辱するつもりは毛頭ありません。確かに我らが先達は石で木の実を割り、火をおこし、狩りをした。槍で直接、また矢尻で間接的に打撃、出血ダメージを与えた。傑作でしょう。素晴らしいとも思います。……しかし残念なことに今は現代です。人は行き着くところまで到達し、そして未だに戦争を遂げている、おぞましいもの。我々がその尤もたるものですがね。つまり何が言いたいかと言いますとね、こういう俗に言う石ころはその現場において突発的、なおかつ応用的に使用するものであって、こうしてあらかじめ用意するべき程のものではないんですよ。しかもそのようにして使用したところで、相手に致命的ダメージを与えうる可能性は限りなくゼロに近い。同じく礫として直接的、なおかつ相手への致命的ダメージを期待するなら、もっと空気抵抗とダメージ効果を突き詰めた上でその速度を上げるか、礫自体の物理的ダメージを上げるか、どちらが有効な手立てとなるわけです。……寺内さんと小渕君なら、もうお分かりでしょう。……銃器です。そうなんですよ。人間は斯くして礫を高速度発射するという天啓を得てしまったために!ああ!大量消費と絶対的な大火力を引き換えに、こうも混沌の世を結果として導いてしまった!」
「…………それで、バットの方はどうなんだ?何か有効な使い道はあったのか?」
「中に砂を詰めました。威力が多少上がりました、焼け石に水ですがね。有効活用はしていますよ。後、勘違いなさっているようですが、正式導入はしていませんよ?」
「え?」

 男はさらに笑みを深めた。

「ウチの部下達が、どこからともなく持ってきたんですよ。それで実践で使ってみましたらね、これがまあ使い物にならない。いくら御利益だリーサルウェポンだと騒いでみても、実戦で役に立たなければその存在意義がありません」
「……まあな」
「ということで実戦に使えるようにしたんですよ、部下の個人努力で。静音性を求められる任務には、威力に難があるとはいえ問題なく使えましたから、まあ及第点といった所でしょうかね」
「それで、そのバットは一体何処から?」

「一班のクイーンから、貸しがどうとかで、そいつは同じ班のアンクルから」
「俺は二班のロジャーから、何か装備課経由だって」
「僕は四班のシュガーから」
「同じく四班のシュガーから……あれアイテムだったかな、何かアイテムだったような気がするな……アイテムから貰ったアイテム……くふふ……」


「結局、分からずじまいでしたね」
「ああ」

 その後も調査を続けたが、分かったのは各人の調達経路が錯綜していることだけだった。

「あるんですかね、こんなこと」
「実際に起こってるんだ。事実と認めるしかないだろう」

 新井田川に架かる橋だ。鉄道橋の向こうに橋が二本、その先川は左右に分かれ、左は工場街で行き止まりの旧河川、右はもう一本橋を越えれば太平洋に至る。欄干にもたれながら、互いに缶コーヒーを呷る。

「上がりましたねえ、値段」
「どこも好景気、ってわけじゃないからな」
「益々酷い」
「それでもやってかなくちゃならないさ。人生の義務って奴だな」
「嫌ですねえ」

 会話の内容とは相反して、緩慢な雰囲気が流れる。

「寺内さん、今の仕事どう思います?」
「え?どうってもなあ。何か不満でもあるのか?」
「不満ってわけじゃあ、ないんですけどね。……俺たちのやってることがどうにも分からなくなるときが、時たまあるんですよ」
「……そうか」

缶コーヒーの、その最後の一口を煽った。

「俺も分からん」
「え?」
「パーシアスに入ったのはそこそこだが、この稼業自体はもう随分やってる。でもな、俺たちは何やってるのか、何のためにやってるのか。そんな根底の価値観から分からなくなる、よくあることさ」
「……どうしてるんです?」
「思考を止めるのは簡単さ。だけどな、それは現場どころか日常でも悪手だ。かといって思考にふけって下手に行動を疎かにするのは、少しばかり個人的には性に合わない。場合によっちゃあ有効かもしれないけどな」
「と、すると」
「対症療法。まずは自分なりに支柱を決める。そこから現在の手持ちの資源の範囲内で、自分の希望を現実とすりあわせて、あわよくば叶えていく。多少の博打も含めてな。個人主義も、個人でやる分には善悪もへったくれもないだろう?」
「はあ」
「あとはその支柱を突き詰めるなり、変更するなり、上を目指すなり、好きにすれば良い。その頃には資源もある程度はあるだろうしな、使うなり借りるなり助力を乞うなりすれば良いさ」
「えらい理想的ですね」
「……そういう気だけでも持ってないとどうにもならんさ。で、話を戻すが、何か引っ掛かる点とか、そういうのはあったか?」
「どうにも。ああも調達経路が錯綜しているんじゃ、元がどうだか……しかも同じこと、言ってるんでしょう?」
「『売り手のことを話すと御利益や効果が薄れる』……チェーンメールか何かか?」
「いや、案外そうかもしれませんよ?」
「ネズミ講?このご時世で?」
「寧ろこのご時世だから、じゃないですか?世間には色んな人が居ますし」

 二人は二本目のコーヒーに手を付けた。西日が眩しい。

「しかし、よくウチみたいなとこにネズミ講を仕掛けられましたね。震源地はどこでしょうか」
「そこだな。外部からだったとしても、やはり広がる要員は身内の誰か。パーシアス社内全域は厳しいだろうし、スケルトンがそれとなく調査をしている。となると」
「ウチのビル……でもヌルズ全班調査でこれですよ、他に探すところなんて」
「……いや、待てよ。あるぞ」
「え?」

 小渕が怪訝そうな顔をする。

「成程、ある意味盲点だったな。灯台下暗しって奴か」
「というと?」
「考えてみろ小渕。湊町のビルを使ってるのは誰だ?」
「え?そりゃあ俺らヌルズと……あ!」
「……そうだ。まだいるじゃないか」
 

十数分後、チャーリーとエクスレイは湊町のビルに帰還していた。

「おう。んがんど、帰ってきてらったが」
「ええ。少し気になることがありまして」
「……んがも、見逃しに気づいたが?」
「……成程。着眼点は同じだった、か」
「んだ。あれがわんつかでもそんなことするのは、考えられねんども……可能性があるんだば、聞くしかないべおん」

 そんな話をしていると、食堂の方から声がする。

『つぎのセカイタイセンはこのバットがシュリョクなんだってよ!』
『ええ……』

 聞き覚えのある声だった。全身濃灰色のノコ使いに、ブルーメットにレザーコートの冷凍人間。対シーガルマン部隊として、往々にして彼らの補助を務めることの多いヌルズ第五班には、特に。

『なんでも、えーと、たしか、フランケンシュタインとかいうえらいガクシャがいってるんだって!』
『それは聞いたことあるけど……』
『しかも!いまならセカイタイセンようの石がついてくるぞ!おトクだぜコールダー!』
『い、石?』
『ああ!これをもってるとな、えーと、もってるヤツのセン……センザ……』
『……潜在能力?』
『そうそれ!センザイノウリョク!それをたかめてくれるんだってよ!』
『どうやって?』
『それはワカンねえ!でも、こう……石をにぎってロックパンチ!石をなげてロックシュート!!』

 直後、食堂の窓ガラスの割れる音が響いた。

『ス、スチルシャーク!食堂の人怒ってるよ!戦争起きちゃうよ!』
『あ……すげえ!さすがセカイタイセンよう!』
「……これ以上は余計な被害が出るぞ」
「……んだの。行くべ」

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