成人向け漫画のネームとコマ割りについて考える
もともとギャグ漫画を描いてた人間なので、
初めて成人向けBL漫画を描くにあてっていろいろ苦戦中です。
こういうの描いてます。
基本的なコマ割りの原則やセオリーは「コマ割りのコツ」とかでググれば山ほど出てくると思うんだけど、成人向けとなるとあまり情報がありません。作画のチュートリアルはいっぱいあるのに。
いろいろ読んだ感じだと、
・いろいろすっ飛ばしてお目当てのシーンにいち早く辿り着けるようにする工夫
・R18シーンでの演出
・滞在時間をコントロールする
あたりが非エロ漫画と違う部分みたいです。
というわけでR18漫画に特化してコマ割りのコツとかヒントをまとめてみました。
○いろいろすっ飛ばしてお目当てのシーンにいち早く辿り着けるようにする工夫
成人向け作品はサクッとお目当てのシーンが始まるのが理想。
具体的にどうすればいいかは、いきなり他人の記事に丸投げしちゃうけど、
こちらのブログの記事が詳しいです。
http://haijin.blog7.fc2.com/blog-category-52.html
「どこで」「だれが」「どのように」を最低限のページ数で説明するとか、導入部分はもちろん、成人向け漫画描くヒントがいろいろ載ってます。おすすめ！！
それからTwitterで#あなたのエロ漫画導入 っていうハッシュタグで検索するのも参考になるかも。ほぼ全部男性向けで、数はそんなに多くないけど。
https://twitter.com/Thighs_rounder/status/1430641201871347712
ちなみに、今描いてるやつは導入がめちゃくちゃ長いです。すいません。
→なんでこんなことに系
コマ割りの話じゃなくなっちゃったけど上の話に関連して、
TL、BL問わず、女性向けでよく見るやつ。
冒頭にいきなりR18シーンを持ってくる→どうして…どうしてこんなことに！？的なモノローグ→1ヶ月前…みたいな回想が始まって、冒頭のR18シーンまでの経緯を描く、というパターンです。
女性向けの作品って、行為に至るまでの説明が手厚いのですが、その分時系列できっちり描いてしまうとR18シーンが出てくるのがかなり後になってしまいます。
おそらくデジタル漫画の時代では、サンプルページを読んでもなかなかR18シーンが始まらない＝購入につながらない恐れがあるので、こういう手法が増えているんじゃないかなと思います。サブスクのせいでサビから始まる曲やイントロが短い曲が増えた、と同じような話です。
男性向けでもR18シーン→回想、っていうパターンはあるにはあるけど、どうしてこんなことに！？っていうお決まりのモノローグは女性向け作品特有の文化かも？なんでだろ。
男性向けは、そもそも行為に至るまでにそこまで説明を必要としないのもあるのかな。
○見せゴマをバーン！
先程紹介したブログにも書いてあった話ですが、売れてる作品とか読んでみると実際に大ゴマが効果的に使われています。
普通の漫画だと「見開き1ページに1回は見せゴマを入れろ」なのが、R18シーンだと1ページに1つは入れるようにした方がいい、って言われてるそうな。
これを応用して、
a体全体、あるいはほぼ全身を映すカメラ
b局部・接合部、乳首や唇など体のパーツをクローズアップするカメラ
c顔の表情を撮るカメラ
この3つのカメラを意識して、流れよくバランスよく配置することで、自分もなんとかR18シーンのネームがとりあえず形になりました。
もとのツイート見失っちゃったけど、「描きたいいくつかのシーンを一枚絵で考えて、それを決めゴマとして使って、空いてるところに繋ぎのコマを入れる」っていうやり方の人も見かけました。
大ゴマにするのは全身カメラが多いけど、顔のアップや体のパーツのアップも上手く使えば面白くなりそう。
そして、上手い人の作品とか分析するとやっぱりこの辺の塩梅が素晴らしいなと思います。個人的に顔の表情がよく描けている作品が好きです。
例えば男性向けですが、これは今世紀最大の傑作の一つである、ホムンクルス先生の「求愛エトランゼ」の例(BLやTL描いてる人も読んでみてほしい…！)
全身カメラを大ゴマに使いつつ、パーツや顔のコマをバランスよく配置している感じ。
ただ、コマ数はだいぶ多めかも！
大ゴマを使う、というのはTLやBLも同じだけど、女性向けだと男性の顔のアップも使われます。
これはもんでんあきこ先生の「すべて愛のしわざ」(個人的にTLでこれを超える作品にまだ出会えてないくらい最高)。
これもちょっとコマ数は多め。
媒体によるけど、今はいちページあたりのコマ数は4〜6コマが中央値っぽいです。スマホ向けは特に少なめ。
中でもエロシーンで見せゴマドーン！ってやるならコマ数はさらに少ないかも。
それから基本の3つに加えて、
d小物のクローズアップ
なんかをたまに使ってもいいかも。行為に使う道具はもちろん、持ち主の属性を暗示したり、伏線に使ったりとかも。あと背徳感の演出にも使える(NTR系の漫画の行為中のシーンで、ゼ○シィが机の上に置いてあるのをクローズアップするとか)
e引きのロングショット
風景や背景、状況を見せるコマ。
なんとなく第三者の目線っぽくて扇情的だし、会社とか学校とか、不謹慎な場所でやってる感じとを演出したりもできる。冒頭からR18シーンで始まる場合や画面が切り替わる場合は、最初のページに入れた方がいいかも。5W1Hの「where」の説明になります。
→定点カメラ
e引きのロングショットに派生して、主に男性向け作品で近年見るようになった手法。行為が長時間、あるいは継続的に行われてる感じを演出できる。うまく使わないと尺稼ぎや手抜きに見えちゃうけど。
追記→ハルヒスキーさんの動画でも似たようなこと紹介されてた！冒頭の講座パートと、1時間16分くらいからの実践パート？は必見。
https://www.youtube.com/watch?v=biD5w91o1pQ&t=163s
…で、実際に描いてみると、絵としてのバランスはもちろんだけどリズムとか流れ、盛り上がりみたいなのが難しい…！いろいろ読んだり描いたりするしかないのかも。
そのあたりは「姉なるもの」シリーズでお馴染みのぽち。先生の解説もヒントになりそうです。
https://www.pixiv.net/artworks/37017563
「男なんて小ちゃい扱いでいい！」ってバッサリ切ってて面白い。
あと、こちらのリンクでは使えるコマ割りのパターンを紹介してくれていて参考になります。
僕の漫画のコマ割りの仕方
https://www.pixiv.net/artworks/69300604
⚪︎何を見せたいかが大事
とりあえず形にするならこんな感じでいいと思うのですが、
1ページあたりのコマ数はこうじゃないといけない、
決めゴマを使わないといけない、
って手段が目的化しすぎないように注意。
とある編集者さんに相談した時に
「とりあえず大ゴマを使う、というよりも何を見せたいのか考えることが大事」
って言われたので。
○前後のページで構図やコマ割り被っちゃう問題
実際に描いてみると、ページ単位ではなんとかなるんだけど、それをつなげると
「あれ、キメゴマが顔のアップのページが続いてる」
ってなって、それを直すと今度は別のページと構図が被っちゃう…
ってなって無限にパズルになりがちです。
で、出張編集部でそのことを相談したら
「プロもやっぱりパズルになる…プロットの時点で拝見して、
何箇所か直していただくと他と被るところが出るので
またそれを直して…の繰り返しです…」とのことだったので、
そう言うもんなんだと思います。
こちらのポイピクでもエロ漫画のコマ割りについて解説されてますが、
やっぱりパズルになってる！
https://poipiku.com/81886/6648128.html
○滞在時間をコントロールする
漫画は視線誘導をしっかりして読みやすくするのが常識だと思っていたのですが、成人向け(中でも主に男性向け)の場合は時に「あえて滞在時間を増やす」ことも大事らしい…！
https://twitter.com/inushins/status/373200917241139200
上で紹介したぽち。先生の講座でも、滞在時間を増やすために決めゴマは視線誘導をあえて複雑にしてるって書いてありました。上手い人たちの間では常識なのかも。
おまけ
参考になりそうな講座や記事
記事内で紹介したやつ
廃人への人生岐路
http://haijin.blog7.fc2.com/blog-category-52.html
個人的 エロ漫画の描き方
https://www.pixiv.net/artworks/37017563
僕の漫画のコマ割りの仕方
https://www.pixiv.net/artworks/69300604
それ以外
ハードボイルドよし子先生のFanbox
https://hbyoshiko.fanbox.cc/
一般的な漫画の話が多いけど、成人向けシーン含めたネームの修正点とか参考になりそう。
【エロ漫画の描き方】プロット編
https://konoshiro-shinko.com/archives/289
【動画】
【#Eのから騒ぎ】超有名漫画家が大集合！センシチブ漫画家編【因幡はねる / あにまーれ】
https://www.youtube.com/watch?v=qI5p6h2o9vg
【動画】
BLの名作シリーズ・リーマンラブホ男子会のすめし先生のネーム作り配信！
https://www.youtube.com/watch?v=K2oI4P73DX4
以上です。まだまだ勉強中なので偏ってるかと思いますが、参考まで。