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憑依の記事 (594)

無名@憑依空間 2024/05/07 00:01

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無名@憑依空間 2024/05/05 15:06

★無料★”見える”男②~見える故の生き方~(完)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー!!!」

大学で親しくなって1年ほど前から
付き合い始めた彼女・麻由里ー。

1年が経過した今でも、
麻由里とは付き合い始めた当初と変わらず、
良好な関係を続けていたー

しかしー

「ーーー……」
その麻由里の”背後”に、
今日ー…

”疲れた表情のおじさん”の霊体が見えるようになったー

それはつまりー

「ーそれで、来週の土曜日なんだけど、
 待ち合わせ場所は~」

いつものように楽しそうに話している麻由里ー。

そんな麻由里の言葉を遮り、魁人は言葉を口にしたー

「麻由里ー…」

背後に、霊体が見えるようになったー
それはつまりー
”麻由里が憑依されたこと”を意味するー。

昨日、最後に会った時点では、
麻由里の背後に霊体は見えなかったー。
しかし、今は見えるー。

それが意味しているのはー
”昨日、大学帰りに別れたあと、今日、大学で会うまでの間に
 麻由里は、背後に見えているおじさんに憑依された”
と、いうことだー。

「ーーー……え?どうかした?」
麻由里が少しだけギクッとしたかのような表情を浮かべるー。

だがー
今、話している限りでは、麻由里は”いつもの麻由里”だー。

「ーーー…」
”憑依”のことを確認しようとは思ったもののー
そのことに違和感を感じて、魁人はそのまま言葉を止めたー

「いや、なんでもないよー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ごめんごめん、残業頼まれちゃってー
 連絡遅くなっちゃったー”

夜10時ー。
姉の麗華(れいか)から、電話がかかってきたー

大学が終わってすぐにLINEで”姉さんに聞きたいことがあるんだー”と
魁人がメッセージを送ったため、
仕事を終えた姉がわざわざ電話をかけて来てくれたのだー

「ーーこんな時間まで残業?大変だなぁ」
魁人が言うと、姉は”ふふんー新人OLは大変なんですぅ”と、
少し誇らしそうに言い返してきたー

”それで?わたしに聞きたいことって?”

姉の麗華はー
魁人が小さい頃から”憑依”されているー。

憑依のことを知った直後、姉のことも追及したもののー、
それはあくまでも”背後に霊体が見える人間は、本当に憑依されているのか”を
確かめるためで、
それ以上の追求はしていないー

今ではお互いに
”姉さんは憑依されている”
”魁人に”憑依”のことを知られている”と、理解しながらも
姉弟の関係を続けていて、
お互いに何だかんだで本当の姉弟のような信頼関係を築いているー。

”あ~~…彼女さん、憑依されちゃったんだ”

今日の出来事を伝えると、姉がそう呟くー

「でもさ、不思議なんだよー」

”なにが?”

「麻由里って言うんだけどさー、
 その子、”おじさんが背後に見えるようになった”けど、
 昨日までと同じように普通に話してるんだー」

魁人が言うー。

高校時代、隣の座席だった少女・麻美が憑依されたときには、
文字通り”豹変”したし、他にも憑依される前と後を知っている人間はいるが
いずれも”元のその人”とは違う振る舞いをしていたし、
記憶もない様子だったー。

”それはね~アレじゃない?”記憶も奪えるタイプ”使ってるんだよきっと”
姉が言うー。

「記憶も奪えるタイプ?」

”そうー。”

姉はそう言うと、

”ほら、例えばコーラにも色々な種類があるでしょ?
 それと同じで憑依薬にも色々あって、
 例えばわたしが使ったやつは、記憶を引き継がないタイプだけどー、
 魁人の彼女さんに憑依した人は、”記憶も奪えるタイプ”
 使ったんじゃないかな?

 記憶と身体を奪えれば、元々の本人として振る舞うことも簡単だしー”

と、説明してくれたー

「ーはぁ~…そんなもんもあるのかー…
 じゃあ、麻由里に憑依したおじさんは、麻由里の記憶を読み取って
 麻由里のフリを続けてるってこと?」

”おそらくねー
 だってほら、魁人以外が相手じゃ、ふつう、本人のフリされちゃ
 気づかないでしょ?”

姉の言葉に「どうしてそんなこと?」と首を傾げる魁人ー

”さぁ…
 他の憑依する人の気持ちは分からないけどー

 たぶんー…
 自分の人生に疲れて、女子大生そのものになりたいとか
 そういう理由なんじゃないかなー?

 わたしの勘だけどー
 たぶん、その人、魁人が何も言わなければ
 ”ずっと彼女さんのフリ”を続ける気がするなぁ”

そう姉に言われた魁人は
「そっかー…遅いのにごめんな 参考になったよ」と、
お礼の言葉を口にするー

”ふふふー 何歳になってもいいお姉ちゃんでいたいし!”
姉のそんな言葉に、
「もう十分、いいお姉ちゃんだよ、姉さんはー」
と、魁人は笑いながら答えたー。

電話を終えた魁人は、ため息をつくー

確かに今まで”親しい人間”が途中から憑依されたケースはあまりなかったー。

”出会った時から憑依されていた”人や
”そもそもあまり親しくない人が憑依された”ケースが多く、
そのため”記憶を維持できるタイプ”があるなんて知らなかったー

「どうすっかなぁ…」

「ーー魁人に大切な人が出来たとしてー
 その人が、”憑依”されちゃったりしたら、どうー?」

彼女ができるちょっと前だろうかー
1年以上前に姉・麗華に言われた言葉を思いだすー

「ーーどうってーーー?」
魁人は静かにそう呟くと、
「ー俺の性格、よく知ってるだろ?姉さんー」と
言葉を一人で口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーー俺、見えるんだー」
魁人がそう言い放つー

麻由里が動揺した様子で魁人のほうを見つめるー

「ーーいや、慌てなくていいー
 別に怒ってないし、追求するつもりもないー

 ”見える”以上、
 1個1個の憑依にキレてたら俺の心が持たないしー
 とっくの昔に俺は割り切って生きてるからー」

魁人は、麻由里が返事をする前に、
そう言い放つとー、
「ー”記憶”残るタイプなんだろ?
 だったら先に確認しておきたい」と、
魁人は言うー。

「ーーいつか、俺のことを捨てようとしてるならー
 離れようとしてるなら、
 この場でさっぱり関係を解消してほしいー

 でもー…そのまま”彼女”として振る舞い続けるつもりならー
 俺はもうこれ以上何も言わないー
 だから、そのまま麻由里として、これからも俺と
 普通に仲良くしてほしいー」

魁人は”先”に相手がどうしたいのかを確認だけしておきたかったー。

大事な麻由里が憑依されても、
ドライな対応なのはー
”小さい頃からずっと”見える”環境に生きて来た故”に
身についてしまった対応ー

”憑依されている人間”はそれなりにいるー。

ひとつひとつの事案にキレていたら、
魁人本人が言う通り、心が持たないー

それに、姉のように
”話せば良好な関係を築ける”人はそれなりにいるー。

「ーーーー……わたしはーー
 これからもずっと、魁人のこと、大好きでいるつもりだよー」

麻由里は、魁人の意を受け取ったのかー
”素の自分”を出すことなく、
麻由里として振る舞い続けたー

姉の言う通りー、
”ごく普通の女子大生”としての生活を
楽しむことだけが、目的なのかもしれないー

「わかったー。じゃあー…
 この話は終わりだー。」

魁人は、それだけ言うと、
それ以降、二度と麻由里のことを追求することはなくー
麻由里を麻由里として、そのまま扱い続けたー

やがてー
大学を卒業して、社会人になり、
麻由里にプロポーズをした魁人ー

麻由里は目に涙を浮かべるー

「ーーい…いいのー?だ、だって、わたしー」

”中身はー”、
そう続けようとした麻由里ー

だが、魁人はその言葉を止めて
「約束ーしただろ?」
と、”その先は言わないように”と、促すー。

麻由里は目に涙を浮かべながらー
静かに頷いたー

”憑依して乗っ取った女”の彼氏がー
こんなに優しい人で、本当によかったー

今やー、麻由里に憑依した男は、
元々の自分が何者か、など関係なくー
魁人のことを、心の底から好きになっていたー。

「ーーーーーありがとうーー」
麻由里の言葉に、魁人は静かに頷いたー

二人は無事に結ばれー、
結婚式の日も近付く中、魁人は姉と久しぶりに会うことになり、
近場のカフェで会話を交わしていたー。

「ーじゃあ、来週の式の話は、そんな感じかなー」
姉がそう呟くと、
魁人は「ああ」と、頷くー

「ーーーそれにしてもー…」
姉はそう呟くと、魁人のほうを見て
「ー何で、魁人には”見える”んだろうね?」と、
ココアを口に運びながらそう呟くー。

「ーーさぁー?
 他にも”見えてる”やつはいるのかもしれないけどー
 俺は会ったことないしなー」

魁人はそう呟くと、
姉は心配そうに言うー。

「辛くないー…?
 
 …してる側の当事者のわたしが言うのもアレだけどー」

そんな言葉に、魁人は
「ーいやー…もう割り切ったよー。
 だってさー”見える”状況で回りの誰かが憑依されるたびに
 騒いでたら、絶対心が持たないしー…

 それにーこうやって姉さんともいい関係ー…っていうのかなー
 姉と弟として上手くやっていけてるしー」
と、少し自虐的に笑いながら言うー

「そりゃ麻由里だって、”本当の麻由里”は絶対怒ってるだろうなーとか、
 今ももし、意識があれば
 ”どうして助けてくれないの”って思ってるかもだしー」

間もなく妻になる麻由里のことを口にしてそう呟くー

「でもさー…やっぱ小さい頃から”見える”と
 割り切って生きなきゃ、やっていけないからさー。
 
 理想で、飯は食えないだろ?」

魁人の言葉に、姉の麗華は少しだけ申し訳なさそうな表情を
浮かべながらもー
「ーー魁人は、ホントに辛い人生を送ってきたんだねー」と、
静かにそう呟いたー

「ーでも、”今の”姉さんにも麻由里にも、怒ったりはしてないー
 特に姉さんは、ずっと昔から俺のこと支えてくれてたしー

 本当に、ありがとうー

 そして、これからもよろしくなー」

魁人の言葉に、姉の麗華は
「ーーうんー。わたしこそー」
と、嬉しそうに頷いたー

”ホントはーー”
この身体からいつか出ていくつもりだったー。
麗華に憑依した男が使った憑依薬は”移動”も可能なタイプー

けどー

「ーーーー…(身も心も、お姉ちゃんになっちゃったー)」
麗華はもう、身体を移動する気はなかったー

永遠に魁人のー
この子のお姉ちゃんでいようー、
何年も前に、そう、決めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”憑依されている人間が見える”ー

どうして、”俺だけが”そんな風に生まれたのだろうかー。

そのなぞは解けないー。

だが、普通の人間とは違う特徴を持って生まれる人間もいるこの世界ー。
魁人も”たまたま”そういう力を持って生まれただけなのかもしれないー

「ーーー俺が、正義のヒーローだったら、
 ”憑依されてる人間”を見破れる力で
 色々な人を救おうとしたのかなー」

魁人は自虐的に笑いながらー
「でも、俺はそういう人間じゃないからー」
と、”見える”けど”見ない”ようにー
そう、生きて来た自分は正しかったのかと、自問自答するー。

「ーーー…まーーー…」
魁人は式場に向かうための準備を終えて、
自宅を出ようと、最後に身だしなみを確認するため、
洗面台の方に向かうー。

「ー俺は、これからもこうして生きていくんだろうなー」

そう呟きながら、洗面台の前に立ち、
自分の顔を見たその時だったー

鏡を見た数秒後ー
”ふっ”と、自分の背後に
見慣れない年配の女の”霊体”が出現したー

”えっー?”

魁人がそう思ったその直後ー
魁人の意識は薄れていくー

魁人は、最後に思うー

”あぁー…
 誰かがー
 俺に憑依しに来たのかー”

最後に”見えた”ものが、
”自分に憑依した女の姿”だとはー。

魁人はそう思いながら、
自虐的に笑みを浮かべたー

”誰のことも、助けようとしなかった代償なのかなー”

そう思ったのを最後に、
魁人は、年配の女性に憑依されてしまったー

「ーーふふ…イケメンの子の身体…ゲット~…」
憑依された魁人はそう呟くとー
”婚約破棄”するために、早速笑みを浮かべながら
歩き出したー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ラストシーンがが最初に浮かんで
思いついたお話がこの作品デス~笑

最後は一気に転落…!
恐ろしいですネ~!笑

お読み下さりありがとうございました~!

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無名@憑依空間 2024/05/05 11:39

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無名@憑依空間 2024/05/04 16:25

★無料★”見える”男①~中身が見える~

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…またかよ」

男子大学生の里野 魁人(さとの かいと)は、
ため息をつきながら、そう呟いたー

”お母さんの背中に知らないおじさんがいる”

小さい頃、そう思ったー。

最初は何を意味しているのか分からずー
「お母さんの背中に何かいる?」と、
驚いて、思わずそう言葉を口にしたー

だが、母親は少し気まずそうな様子で、
誤魔化すようなことを言うだけで
それが何かは教えてくれなかったし
「わたしには、何も見えないケド?」などと言っていたー

その後ー”姉”の背中にもおじさんの幽霊のようなものが
見えるようになり、
まだ小さかった魁人はその意味が分からず、困惑したー。

しかし、やはり姉も「ーそんなことないよ~!」と笑うだけでー
父親に聞いても「ー幽霊みたいなものがついてる?」と
首を傾げるだけだったー。

そしてー
”母”と”姉”にだけ幽霊のようなものが背後に見える理由も
よく分からなかったー。

やがてー
幼稚園に入り、”同じクラスの中にも何人か、母や姉と同じ状態”の子ー、
つまり”背中に幽霊のようなものが見える”子がいることに気付いたー。

だがー、やはりその子たちに指摘しても、
「気のせいでしょ!」と言われたり中には怒り出すような子もいて、
その理由は分からずじまいー。

幼稚園の仲間や、先生に聞いても
”そんなものは見えない”と言われるばかりで、
この頃、魁人は”僕にしか幽霊みたいなものは見えないんだ…”と、
困惑の表情を浮かべたー。

その後ー
小学校ー、中学校と進んでいくにつれてー
”背後に幽霊が見える同級生”が増えたー。

何故だか、特に女子に多いことに魁人は気づくー

”俺にしか見えない幽霊ー
 これは、いったい何なんだー?”

相変わらず母親と姉にも”幽霊”が見えるしー
父親には見えない状況もそのままー

しかしー
ある日、魁人は高校生になって”あること”に気付くー

入学してすぐ、座席が隣だったこともあり、
一人の女子生徒と親しくなったー

その子の名前は麻美(まみ)ー。
とても真面目で優しい子だったー。

お互いに周囲には知らない子が多い状況で、
色々相談したりするような場面も多くー
1学期が終わるころには、結構仲良くなっていたー、
と、そう思うー。

だがー
2学期になって、その子はまるで別人のように
”豹変”したー。

黒かった髪は茶色になりー
制服の着こなしもだらしない感じになりー
何より派手になったー

言動も、何もかも別人のようで、
最初、魁人は”悪い彼氏でもできたのかな?”と思うほどだったー

だがー
最大の異変はそこまではなかったー

麻美の背後に”見えた”のだー。
小太りのおじさんの幽霊のようなものがー。

”1学期の時、この子には幽霊は見えなかったはずー”と、
考える魁人ー。

確かに、中学時代や小学生時代にも
”途中から”幽霊のようなものが背後に見えだした子もいるー。

だがー
麻美のように”幽霊が見えはじめたタイミングで豹変した子”を
見るのは初めてだったー

”どういうことなんだー?
 幽霊に取り憑かれているー…、なんてことはないよなー”

そんなことを思いながらも、当時の魁人は
意を決して二人きりになったタイミングでー

”試しに”聞いてみたのだー

「ーーーーー誰なんだ?」
とー。

もちろん”幽霊に取り憑かれている”などと
本気で思っていたわけではないー。

麻美が1学期の頃とガラリと変わってしまったことを
皮肉る意味でも、そう呟いたー

「1学期の時とは、まるで別人だしー
 同じ人間とは思えないー」

とー。

すると、麻美は表情を歪めながらも、笑みを浮かべたー

「ーー背後に見える幽霊は何なんだ!?」
魁人は、麻美の”背後霊”のような感じで見えている
おじさんを指さすー。

今までのように、麻美に”見えないけど?”と言われたり
”何のこと?”と言われると、そう思ったー

けれどー

麻美は言ったー

「なぁんだ…バレちゃったのかぁ」
とー。

「ー!?」
魁人は表情を歪めるー

「ー麻美ちゃんはね、ぐへへへ…もう、僕のものなんだー
 僕好みにアレンジされた麻美ちゃん、すごいだろ?」

麻美の言葉に、魁人は「え…な、何を言ってー?」と、
逆に驚いてしまうー。

麻美はニヤッと笑うー

「ーー”憑依薬”を使って
 麻美ちゃんに憑依したんだよー
 へへへー」

ペラペラと”憑依薬”について喋り出す麻美ー。

この世界には、”憑依薬”なるものが
裏社会を中心に出回っていて
結構な人数がそれを購入、使っている、とー。

「でもーーーお前ー”僕”が見えるのか?」

背後にいるおじさんは何だ?と言われた麻美は、
不思議そうにそう呟くー

魁人は震えながらも、”麻美の背後に見えるおじさんの幽霊みたいなもの”の
容姿の特徴を伝えると、
麻美は笑ったー

「ーえへへ…それは僕の姿だなー」
とー。

魁人は、その時初めて知ったー。

”背後に幽霊が見える人間は、
 他人に憑依されている”

と、言うことをー。

もちろん、その時点では半信半疑だったー

けれどー
自宅で”小さい頃から背後に幽霊が見える姉”を
しつこく問い詰めたところ、姉が認めたのだー。

「ーーた、確かにわたしは、”この子”に憑依したけどー
 それはこの子が5歳の時のことだしー…
 ーー魁人のことは本当の弟だと思ってるからー…
 お願い、見逃してー」

既に大学生だった姉は、そう申し訳なさそうに言うー。

”姉さんは5歳の時から憑依されていたー”

つまり魁人は、本当の姉とはほとんど話していないことになるー。

しかし、魁人はそれ以上は問い詰めなかったー
5歳の時から憑依されていた姉ー。
今頃正気に戻すことも難しいだろうしー
少なくとも”今”は、魁人を傷つけるつもりなどなくー
本当に弟として愛情を注いでくれていることは理解できたー

これ以上、問い詰めれば姉との関係に亀裂が入り、
厄介なことになるかもしれない、と考えてー
「ー俺の心の中にしまっておくよー」と、だけ魁人は言い放ち
それ以降は”普通”に姉と弟としての関係を続けているー。

そして今ー
魁人は大学生になったー。

高校時代の”麻美”に憑依したおじさんのおかげで、
魁人は”背後に幽霊のようなものが見えている人間は
憑依されている人間”なのだと、確信を持っていたー。

麻美と姉以外にも何人か”認めた”人間がいるー

背後に幽霊のようなものが見える人間は憑依されているー。

そう考えれば
”幽霊のようなものが憑いている人・憑いていない人”がいる理由も、
”ある日突然それが背後に出てくる人”がいる理由も、
”妙に女子の方が多めだった”理由も、
”幽霊がおじさん系が比較的多い”理由も
何となく納得できたー

「ーにしてもあのおっさんー…おしゃべりだったんだろうなー」

姉も含め、何人かの”憑依した人間”と会話したが
あそこまでペラペラと色々喋ったのは
高校時代の隣の座席の女子・麻美に憑依したあのおじさんだけだったー

あのおじさんのおかげで、”憑依”について
詳しく知れたー、と言ってもいいー。

結局、麻美のことは助けてあげられず、
2年生になったころには麻美は学校にほぼ来なくなり
そのまま退学になってしまい、今はどうしているのかは知らないが、
魁人は”他人に憑依している人間の霊体”が、
何故自分にだけ見えるのか、と困惑しながら日常生活を送っていたー

そして今ー、
学園祭の打ち合わせのため、一緒に作業をすることになった子の背後に
おじさんが見えることに”またかよ”と呟いたのだったー

「ーーーどうしたの?」
その女子が微笑むー

「あ、いやー、なんでもないよー」
魁人はそう答えるー

”俺は正義のヒーローじゃない”

だから、魁人は
”憑依されている人間”が分かっても、
積極的に救おうとすることは、あまりしなかったー

確かに”他人の身体を奪う”なんて許されないことだろうし、
自分ではそれをするつもりはないー

けど、だからと言って、”憑依された人”を助けようとは
あまり、思わなかったー。

どうすれば良いのかも分からないしー、
無難に付き合っていれば、大半の相手の場合、
それほど悪いことはしてこないー。

”憑依された人間が見えるけど、別に救わないー”

そんな生活を、魁人は送り続けていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーそういやさ、”憑依薬”ってどこで手に入るんだー?」

魁人が久しぶりに会った姉とそんな会話を交わすー

今では社会人になって、すっかり大人の女性、という感じになった
姉が「え~?魁人も憑依したいの?」と、苦笑いするー

「いや、そうじゃなくてさー…
 普通に生きてたら、憑依薬の話なんて全然聞かないし、
 俺だって”見えなかったら”気づいてないまま
 生きてると思うしー」

その言葉に、姉は「確かにそうかもねー」と、笑うー。

”姉が憑依されている”そんなことを知った魁人ー。
けれど、物心ついていたころから、姉が憑依されていた以上、
”憑依されている姉”こそ魁人にとって姉さんであり、
憑依される前の姉は、魁人にとっては”ほぼ知らない人”も同然ー。

姉に憑依したおじさんが”誰”なのかは知らないし、
聞くこともしなかったー。

そうやって、魁人は”見える男”として
割り切って生きているー。

姉も今では、魁人が割り切ってくれていることに感謝しながら
そのまま”姉”として生きていたー。

「ーーわたしはー
 ネットの”裏オークション”ってところで入手したけどー…
 入手ルートは人によって異なるんじゃないかなー」

姉の言葉に、魁人は「ふ~ん」と呟くー。

「ー憑依薬撲滅!とかしちゃうわけ?」
姉が苦笑いしながら言うと、魁人は「まさか」と首を横に振るー。

「俺一人が動いたところで、何かできるわけじゃないし、
 別に何もしないよー

 姉さんに対してだって、何もする気はないし」

魁人がそう言うと、
姉は「魁人が弟でよかった」と、笑うー。

「ーでもさー」
姉は、ふと呟くー

「ーー魁人に大切な人が出来たとしてー
 その人が、”憑依”されちゃったりしたら、どうー?」

姉の言葉に、魁人は少しだけ考えるー

確かに、母親と姉は物心ついたころから憑依されているからー、
”姉さんを返せ!”とか、そんな風にはならなかったー

だが、例えばー
彼女が出来たとして、
知り合った時点では”憑依されていなかった”としても、
ある日急に背後に”おじさん”が見えたりするようになったらー…?

今までは
”気づいた時点では既に憑依されていた大切な人”と、
”そこまで親しくなる前に憑依された人”ーー
”そもそも別に親しくない人”
ぐらいしか、魁人は遭遇していないー。

「ーう~ん…それは、この先そういうことがないと
 分からないんじゃないかな」

魁人が苦笑いしながらそう言うと、
姉は「そっかー」と、頷くー

「ーーーーっていうか、ちょっといじわるな質問だなぁ」
魁人はそれだけ言うと、
「ーー俺がもし”憑依なんて許せない”って言いだしたら、姉さんはどうする?」
と、少しいじわるな質問を返してみたー

「ーーーーふふー
 何十年も”お姉ちゃん”やってるとー
 もう、気持ちは本当のお姉ちゃんだしー

 わたしは、何があっても、
 魁人がどんな選択をしても、魁人の味方」

姉の言葉に、魁人は「姉さんが姉さんで本当に良かったよー」と、
少し微笑みながらそのまま歩き出したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから半年ー
魁人には、同じ大学に通う彼女が出来たー

さらにそれから1年の月日が流れー
魁人は彼女の麻由里(まゆり)と楽しい日々を過ごしていたー

だがー
ある日ーーー

それまで、麻由里の”背後”に見えなかった”それ”が
見えるようになったー

「ーーーー!」

魁人にはいつものように”見えて”しまったー
麻由里が憑依されてしまったことを示すー
”麻由里の憑依した人間の霊体の姿”がー…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

”憑依されている人間”を見ると、憑依者が見える…
そんな男の人のお話デス~!

続きは明日掲載予定デス~!
(無料でスタートしたので、最後までもちろん無料なので安心して下さい~!)

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無名@憑依空間 2024/05/02 11:23

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