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2024年 03月の記事 (77)

刹那綜合経済研究所 2024/03/08 18:00

C12:聖者の行進

「天前麗華編 ~叛逆の報い~」

C12 聖者の行進


「行くぞ、来い」
 安全地帯であるはずの自分の聖域がいとも簡単に制圧され麗華は刑場へと連行されていく。麗華にとっては自分の聖域での惨禍を回避することに一心であったが、いざ女としてはおろか人間としての一切の尊厳を喪失するであろう境界線である扉を目の前にするとあの長い一日での責め苦を再び、いやそれ以上の○問を受けるであろう事を考えると今にも気を失してしまいそうで既に悪心さえ起こしていた。

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刹那綜合経済研究所 2024/03/07 18:00

C11:牙を抜かれた虎

「天前麗華編 ~叛逆の報い~」

C11 牙を抜かれた虎


 バツの悪そうに俯き気味に戻ってきた麗華は明らかにいつもこの店での立ち振る舞いとは異質なものであった。
「すごくお似合いですよ、麗華様、きちんと戻ってこられたのは立派ですけどいつもの威勢や覇気がまったくありませんねえ、どうしたんです?」
 カミヤの意地の悪いヤジじみた問いかけをしてもカミヤにだけは黙殺を貫き通している。

「麗華、ここにいる間、今日だけはお前の顔を立てて躾けた奴○の所作は免除しておいてやるが、店の外へ一歩でも出たらケジメをきちんとつけろ、わかったな?」

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刹那綜合経済研究所 2024/03/07 12:00

C7 蛇に睨まれた虎:C8 ○問師見参:C9 蟻地獄:C10 北回帰線

「天前麗華編 ~叛逆の報い~」

C7 蛇に睨まれた虎


 無言でそのやりとりを見ていた刹那がここぞとばかりに麗華に詰め寄る。
「麗華ぁ~、あれだけ手厚く教育してやったのになんだこのザマは~?少しばかり時間と自由を与えて泳がしてやったらやっぱりか!また元の鞘に戻れるとでも思ったのか!裏切ったのはお前の方だろうがっ!」
 麗華は無念の思いで下を向き混乱する現況を改めて懸命に整理する。やれやれとばかりに刹那はスマホに何かしらのメッセージを送信した。
「お前の今回の振る舞いに調教師どももえらく悲しんでいてな」
 パニックを通り越して完全にフリーズした麗華は為す術無く再び刹那の掌中に引きずり込まれるしかなかった。

C8 ○問師見参


「いい店だなァークソブス便器ぃぃい」
 待機していたのであろう、刹那の合図を待って麗華が最も畏怖するあの○問師が背後から現れその姿を麗華は確認するとさらに激しく動揺する。
「やらかしやがって、オレはとっても悲しいぞ。覚悟できてるんだろうなあ?」

C9 蟻地獄


 ○問師はソファーに座ると麗華の腰を掴み自分の膝の上に引き寄せた。
「警察にでも駆け込むか?いいぞ、通報しても。やってみろ。でもな、オレの代わりはいくらでも居るぞ、加えてオレはどれだけ時間がかかってもまたお前の前に現れるぞ」
 麗華の耳元に囁くように諭すように追い詰めていく。
「ダンマリか?まあいいだろう。この店でも公開調教しないとなあ、何なら今すぐやってもいいぞ、お前の部下や客が居る前でまた惨めに泣き喚くか?ん?」
「……」

「少しだけ日常に戻れて魔が差したんだよな?あの日のことも晒されてもないし元に戻れると勘違いしたんだよな?そうだろ?」
「……」
「いいんだ、お前は悪くない、これは調教師である我々の責任だ。本当はもう少し元の世界で泳がしてやる予定だったけどこうなった以上仕方ない、とてもとても辛い再調教だ、わかるな?」

 今までの○問師とは思えない穏やかな口ぶりに虚を突かれたのか、この場所でもっと修羅場になることさえ危惧していたことを逃れることができるのではないかとの安堵なのか、カミヤに寝返られてから沈黙していた麗華が蚊の鳴くような小さな声で漸く口を開く。
「ここでは……どうか他の場所で…お願い…します…」

 ○問師はその瞬間ニヤリと笑みをこぼすが麗華にはそれは当然に感じることはできない。
「そうだな、ココで一気に堕としてやりたいところだがお前の素直な態度に免じてそれはまたの機会にしてやる。」
「ありがとう…ございます」


C10 北回帰線


「では連行してやる、その前に今日はお前の元パトロンさんも居るんだ。このお方達が喜ぶようないつもの麗華様らしいコスチュームに着替えてこい、意味はわかるな?」
「はい……」
 麗華はゆっくりと頷いた。
 
「まるで別人のようで麗華様とは思えませんなあ。ならば是非先日私が献上したモノに着替えていただいて披露してもらいましょうかね」
 カミヤの茶化すような呟きを背中で聞きながら麗華はドレッシングルームへ歩みを進めた。

「刹那君、裏口から外へも出れますぞ?一人で着替えさせて大丈夫かね?」
「心配ご無用です、コイツは逃げたりはしません。むしろなんなら逃げて欲しいくらいですけどね」
「これはたいへんおもしろいもんですな、ハッハッツハ」

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刹那綜合経済研究所 2024/03/06 23:00

C5 雄弁な羊:C6 杞憂ではない現実

「天前麗華編 ~叛逆の報い~」

C5 雄弁な羊


「麗華様、こちらです!」
 得意満面な表情でカミヤが手招きするボックス席には刹那が既に黙座している。心の準備をしたにも関わらず麗華は激しく動揺してしまうがそれを決して悟られないように一歩一歩悠然と歩みを進めた。
 
「カミヤ、忙しいので手短に済ませてちょうだい。それとお客様、ここではその奇妙な被り物はご遠慮ください」
 毅然と麗華はそう言い切り刹那を睨みつけた。
 
 少しばかりの沈黙を破るようにカミヤが口を開いた。
「麗華様、少しばかり状況が変わりましてね…」
「カミヤ、何度も言わせなるな。雑談は後回しにしてどうでもいいから早くやるべきことを終わらせてすぐにお引き取り願いなさい」

C6 杞憂ではない現実


「実はですね、この刹那君もそうですがこの方のクライアントさんがとても私の手に負えるような方じゃないんですよ」
「……」
「でね、それもあってこの刹那君にも今回の経緯をお伺いしたのですが彼が言っていることが本当ならこれまで私が麗華様に尽くしていたことが馬鹿馬鹿しくなったことを通り越して腹立たしくさえ思えてきましてねえ、それも確認する必要があると思いまして、ええ」
「は?何言ってるのお前?」
「麗華様が心配されてた個人情報データというのも刹那氏の話と合点がいくんですよ。麗華様からも説明していただけますか?」

「この男が何を言ったのかはどうでもいい、カミヤ、お前はただ私の指示を忠実に実行しなさいっ」

 半ばヒステリックな麗華を諫めるようにカミヤは畳みかける。
「麗華様、サブにもドミナントを選ぶ自由はあるんですよ。実はもう私は刹那君の話が真実であることを確信しているんですよ。そんな貴方に愛想を尽きたどころか今は怒りさえ湧き起こっていますよ。それで貴方に対峙する刹那君に大変興味が沸きましてね、是非応援したいと早速支援することにしましたよ」

「カミヤ、お前、裏切ったな!私を嵌めたのか!」
「忠告です。『お前』ではなく『カミヤ様』ですので今後注意してくださいね」
 必死に虚勢を張っていた麗華の表情がみるみる急変していくのが誰の目から見ても明らかであった。
 

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刹那綜合経済研究所 2024/03/06 18:00

C2 混乱:C3 決起:C4 吉報と杞憂

「天前麗華編 ~叛逆の報い~」

C2 混乱


 どうにか平静と若干の落ち着きを取り戻した麗華であるがいつまでも現実逃避を続けるわけにもいかない。未だ刹那らに支配されているという現実が重くのしかかり彼等に木っ端微塵に破壊された日常生活と向き合い、その中で生かされているに過ぎないのである。
 勇気を振り絞り阿鼻叫喚に成り果てたであろう日常生活の象徴でもある自分を取り巻くSNSをチェックする。
 しかし予想に反してそこには今までとなんら変わりない世界線が構築され続けており麗華は混乱に陥る。

「いったいどうなっている?あの撮影はライブ配信されていない?晒されてもいない……」
 自分に関するありとあらゆる情報をどれだけサーチしてみても「あの時」の前と今で何ら変わりは無かった。
 どうにか平静と若干の落ち着きを取り戻した麗華であるがいつまでも現実逃避を続けるわけにもいかない。未だ刹那らに支配されているという現実が重くのしかかり彼等に木っ端微塵に破壊された日常生活と向き合い、その中で生かされているに過ぎないのである。
 勇気を振り絞り阿鼻叫喚に成り果てたであろう日常生活の象徴でもある自分を取り巻くSNSをチェックする。
 しかし予想に反してそこには今までとなんら変わりない世界線が構築され続けており麗華は混乱に陥る。

「いったいどうなっている?あの撮影はライブ配信されていない?晒されてもいない……」
 自分に関するありとあらゆる情報をどれだけサーチしてみても「あの時」の前と今で何ら変わりは無かった。


C3 決起


 事態が飲み込めないまま一ヶ月近く経とうとしていた。身体の傷は癒え幾分か本来の自分を取り戻しつつもあった。それどころか恐れていた刹那らからのアプローチも全くなく何か悪い夢でも見ていただけなのではないかとさえ錯覚しそうなほどであった。
 いつまでもこうして引き籠もっているわけにはいかない、「あの時」を無かったことにすればいい、無かったことにはできなくとも封印することさえできればそれでいい、いやなんとしてもそうしなければいけない……麗華は逡巡するもある行動を実行することを決意する。

C4 独裁者と適任者

 麗華はある男を呼び出した。半年ほど前から麗華に魅了され傾倒するこの男は麗華に群がる他のマゾ男達のように己の歪んだ欲望を前面に出すわけでも無いものの麗華とその界隈に豪快に金を落とす、麗華にとっては自分の脚さえ触れさせて餌を与えておけば不気味な男であることを差し引いても扱いが楽ないわゆる太客であり優良なスポンサーでもあった。それだけでなくこの男が裏社会にも顔が利くこともこれまでの関係で把握しており、刹那たちを封じ込めるために適任でありそれが必然でもあった。
 
「カミヤ、お前にやってもらいたいことがあるの」
 麗華はカミヤにいつも通りに脚をマッサージさせながら問いかけた。
「いかがなされたのですか?麗華様。何なりと申しつけください」

「最近、タチの悪いストーカーにつきまとわれていてね、かなり手を焼いているの」
「それは不届きな輩ですね。いかように処理したらよろしいのです?」

「二度と私に近づかない、できるだけ大事にはしたくはない。それでいいわ。あと……」
「あと何かあるのですか?」

「厄介なことに私の重要な個人情報をデータとして持っているみたいなの。それを破棄させることを確約させて欲しいの」
「それは困りましたね。私にお任せください。その輩の情報を教えてください。麗華様はご安心してお過ごしください」

「ではカミヤ、頼んだわ、確実にね」
「麗華様、承知いたしました」
 
 麗華はいざ自分がその気になればどんなことでも出来る、今までの日常の世界に戻って本気でそう実感していた。


C4 吉報と杞憂


 カミヤの仕事は早かった。翌日には早々に麗華のもとに連絡が入った。
「麗華様、話しはつきました。もう心配はいりません」
「カミヤ、よくやったわ」
「麗華様、ただ…」
「ただなに?」
「相手はかなり厄介でタチの悪い輩でした。これ以上麗華様に近づかないことは問題ありません、個人情報のデータに関しては相応の金銭で折り合いをつけることになりそうです。これに関しても私の方で準備しますので問題はありません。ただ輩はこれ以上お互いに何ら干渉しないことを約する念書を直接会って交わすことが条件としてきました」

「カミヤ、詰めが甘いんじゃない?私に近づかないこととデータの破棄の確約のみの指示のはずよ」
「麗華様、お言葉ですがここまででも相手に最大の譲歩をさせています。それに念書を交わすのは麗華様にとっても悪い事ではありません。これだけのことは警察でもできませんよ」
「……」

「今夜、開店前の麗華様のお店で交わすことになります。もちろん私も同席します」
「アンロワで!?カミヤ、無断で話を進めすぎじゃないの?」
「相手の指定で条件でもあります。相手もいろいろな保身を考えているのでしょう」
「私は会わないし、アンロワに立ち入ることも許さない」
「それではこれ以上の交渉は決裂しますよ。それが麗華様のご意志ならそのように進めることは可能です。今からすぐにそのように返答しますがそれで本当によろしいですか?」

「……カミヤ、わかったわ。お前に任せる、でも今夜できっちり片付けるのよ」
「麗華様、承知いたしました。ではそのように進めます」

 この期に及んで振り出しに戻ることは麗華には選択出来得なかった。よくよく考えれば上出来の落とし所である。これであの長かった一日は悪い夢だったと元の日常に戻ることができる。
 ただ、カミヤの態度言動がこれまでと比してどことなく違和感があるのが麗華の職業S女としての嗅覚がどことなくそれを感じとっていた。しかしカミヤに賭けるしか無かったのである。

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