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2020年 10月の記事 (1)

クモと召喚士 2020/10/31 23:21

色仕掛け文庫 第三巻 サンプル

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色仕掛けまとめブログ様より発売の、色仕掛け文庫 第三巻 に参加させていただきました!
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以下、サンプルになります。




依頼をしてきたのは、金髪のショートヘアをした可愛らしい少女だった。名前はリア。遺跡荒らしを主な稼業としていて、手に入れた宝を売って生計を立てているという。
 普段は一人で遺跡へと潜っているが、今回の目的地は危険が多く、護衛が欲しいとのことだった。
 報酬は宝の半分。彼女が言うには、数年は遊べるほどの価値の宝が眠っているという。そのため山分けしても十分な額になるとのことだった。

 最初、その依頼を断るつもりだった。彼女とは面識がなかったし、何よりも怪しかったからだ。こういう依頼を受けていい目を見たことはほとんどない。だから僕は他を当たってほしいと伝えた。
 しかし、彼女は引き下がらなかった。
 「えー、そんなこと言わないでよぉ、一緒に冒険しよーよぉ」
 柔らかそうな唇に指を二本当てたまま、上目遣いでこちらを覗いてくる。瞳は潤んでいて、懇願するように熱い視線をぶつけてきた。
 「こんな可愛い女の子と歩けるんだよ? それだけでお得なのに、さらに宝の半分までついてくるんだよ♡」
 悩まし気に唇を突き出すと、わざとらしくちゅぱっと鳴らす。思わず視線が唇に集中する。ぷるぷるの質感の唇が、僕に向けられていた。
 「ねえ、いいでしょ?」
 とどめとばかりに、リアはウィンクを送る。
 怪しい。怪しすぎる。絶対に断ったほうがいいと、僕の勘が言っている。だけどリアから目を離せない。誘惑するように突き出される唇から視線を外せない。
 「依頼受けて、ね♡」
 気が付けば、僕は頷きを返していた。リアはありがとうと言って、二コリと微笑んだ。
 
 

 リアに連れられたのは、古代に繁栄したと噂される王家の墓所だった。
 地下は至るところが土埃に覆われ、長い年月の間放置され続けていたことが見てとれる。視界はうす暗くはあるが、松明がいらない程度には明るかった。石壁に取り付けられたロウソク台のおかげだ。道の向こうまでずらりと並べられたロウソクは、オレンジ色の炎をちりちりと揺らしながら道を照らしていた。
 道はずっと先まで一本道に伸びている。先のほうは薄っすらとしか見えず、ここからではどれくらい距離があるかはわからない。だが道に迷う心配はしないでよさそうだ。
 「ここからがあなたのお仕事だよ、私の傭兵さん」
 リアはにこりと笑いながら、道の向こうを指さした。
 「見た感じだと何もなさそうだけど──ここには罠がたくさん仕掛けられているの。アタシは宝箱の開錠は得意、でも罠とかは専門外。だからこれを傭兵さんに何とかしてほしいな」
 何とかしてほしい。その言葉だけで、この仕事が割に合わないものだと察知した。
 僕だって罠の専門家などではない。冒険者としての経験から罠を察知できても、確信まではできない。つまりこれの意味するところは一つだ。
 「先導役、よろしくね♡」
 身体を張って、安全な道を見つけろという命令だった。 

 自分の勘を総動員させて進む。不自然に綺麗な床、少し色が違う壁、隙間が見える天井──何度もダンジョン探索をしてきた知識で何とか安全ルートをつかんでいく。しかし王家の墓というだけあって、如何せん怪しい箇所が多すぎる。
 進み始めてから数分経った頃、僕はついに罠の一つを踏み抜いてしまった。
 右側の壁からガタンと無機質な音が鳴った。同時に僕はほぼ反射的に背中を後ろへと反らす。次の瞬間、胴体の前を何かがすごい速度で横切った。
 「わーお、おみごと」
 伸びてきたのは鉄の槍だった。切っ先は反対側の壁のギリギリにまで到達している。しばらくすると槍はゆっくりと引かれていき、何事もなかったように元の壁の中へと戻っていった。
 どっと冷や汗が流れる。後もう少し身体を反らすのが遅れていたら串刺しになっていた。そうなれば大怪我を負うのは確実、下手をすれば命を落とした可能性もある。
 「さすがは私の傭兵さん。身のこなしもばっちりだね~」
 一方のリアは僕の数歩後ろで楽しそうに見ているだけだった。もし僕が罠にかかっても、被害を受けないよう距離をとっているのだ。僕を心配するような素振りすら見せなかった。
 ひどい頭痛がする。これでは傭兵というよりは生贄だ。危険を引き受けるのはすべて僕のほう。なのにもらえる報酬は宝の半分。残り半分は安全地帯で見ているだけのリアに持っていかれるのだ。得られるものに対して、危険が大きすぎる。そして何よりも扱いが悪すぎる。
 苦々しい気持ちで背後を盗み見る。歩き始めてから数分、まだ入り口は近くに見えていた。今すぐに依頼を断ち切れば安全に帰れる距離だ。
 「あはは、今ので気が引けちゃった? そりゃあそうだよね、あんなの当たったら超痛そうだし」
 リアは軽い口調でケラケラと笑いながら、僕に近づいてきた。目の前で人が死にかけたとは思えないような態度だ。
 「でも、傭兵さんに辞められたら困るんだよね。だから頑張れるように応援するね」
 リアはニタリと目を歪めると、薄く口紅の引かれた唇をツンと尖らせた。そのまま桃色の唇が迫り、僕の頬にぷにっと触れる。柔らかい感触と一緒に、砂糖菓子のような甘い匂いが鼻をかすめる。
 一瞬の後、頬に濡れた感触を残してリアの顔が離れた。そこに浮かんでいたのは、こちらをからかうような意地悪な笑みだった。 
 「お兄さんが私の傭兵さんでいる間、こうして応援したげる。だから私を守り続けてね?」
 リアが口元を吊り上げながらニッと笑う。ぷるぷると潤った唇が目にはいり、さっき唇が触れたところが熱くなる。心臓がバクバクと鼓動を打っている。
 「さあ、このまま進んでいこうか。私にいっぱい応援されたいなら命がけで生き残ってね。私の傭兵さん♡」

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