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クモと召喚士 2019/07/21 08:12

とある館での戦い(過去作)

赤いじゅうたんに敷き詰められた大きな部屋。
天井には幕が垂れ下がっており、
シャンデリアの幻想的な揺らめきのほかに明かりはない。

そのほの暗い空間の中で、少年がじっとたたずんでいる。
青いマントに整った美しい顔。
首には金製のペンダント──勇者の勲章がかけられている。
そう、彼はまだ幼いが勇者である。
勇者である彼がこの館を訪れたのは国の命によるものだった。

この館には、悪の女が住まうという。
女は人を惑わし私利私欲のために戦乱を巻き起こす大罪人だ。
多くの国々に大きな損害を与えている。

少年はこの女を討つためにここに来たのだ。

「………」

少年が闇の向こうをじっと睨みつける。視線の先に件の女がいた。
女は邪悪な笑みを浮かべ少年を見つめている。
その女は幼き少年の目から見ても非常に美しかった。
青紫のアイシャドウに真っ赤な唇。緑がかったブルーのロングヘアは光沢を帯びていてツヤツヤと光っている。
豪華なドレスと銀のティアラを身につけており、その姿はまさにお姫様のようでもあった。

「くすくす…♥ ようこそ勇者よ…♥
 そなたのようなかわいい子を待っていたぞ…♥」

少年は目の前に立っただけで魅了されそうな心地になっていた。
 『これは危険な敵である』
歴戦の経験がそう彼に訴えていた。

「さあ、そなたを妾のものにしてやろう…♥」

煌びやかなピンクのドレスを引きずって白肌の女が少年の元へと近づく。
赤い唇がテカテカと光沢を放っており、まるで少年を誘っているようだった。
「………」
少年はゆっくりと剣を構える。
相手が何をするかはわからないゆえ、警戒心が強くなる。

「………♥」

女は少年の瞳をまっすぐ見たまま、無言で近づいてくる。
藍色の瞳がいやらしく揺らめいた。
少年はまだ動かない。

「………!」

…違う、動けないのだ!
少年は女が一歩近づくごとにその強大な力を感じ取っていた。
大きな恐怖が少年の筋肉を硬く縛り付けているのだ。

「………♥」

ついに目の前まで女がやってくる。それでもまだ少年は動けない。
少年の全身から冷や汗が噴き出す。

「……♥」

美しいサファイアの瞳が少年を覗いている。
少年は目を離すことができない。剣がカタカタと震えはじめる。

「…それでは…♥」

「!!!」

恐ろしい気配を察知する。
瞬間、少年は剣を振りかぶっていた。
今までの難敵との戦闘経験が、幾度とも乗り越えてきた死線での成長が、
少年を襲う恐怖を打破させたのだ!

「やああああ!!!」

幼いとはいえど勇者。
幾多もの戦いはその剣技を成長させ、動きに一切の無駄はない!



──されどそれは無意味なことであった。

「…ふふ♥かわいいやつめ♥」

女と勇者の間には深いレベル差が存在していたのだ。
剣よりもさらに素早い動きで、女は少年を抱きしめる。
「な、ああ!」
男殺しの抱擁が幼き勇者を包む。濃厚な匂いが肺を侵し、精神を大きく揺さぶる。
「あ、うああ…」
少年は抵抗するということも忘れ、快感の嘆息を漏らす。
剣を握る掌から力が抜け落ちる。
それほどまでに女の抱擁は心地よいものだった。

少年の緩んだ顔を確認すると、女は顔を近づける。
唇を耳に寄せて熱い吐息を吹きかける。ただそれだけで、少年は絶頂したように身体をこわばらせる。
女は吐息をかけながら、喘ぐ少年に囁く。

「抱擁だけで顔を赤らめるとは初い奴よ♥
 ほれ、顔をよくみせよ…♥」

美しい顔がゆっくりと近づく。
目蓋は閉じられ赤い唇が突き出されている。
あまりに淫靡な光景であった。
少年はじっと見つめることしかできない。
それが何を意味するかを知っていても、抱擁の快楽が抵抗を封じる。
そしてついに諦めたように目を閉じてしまう…

「ちゅぅ…♥」

額にとろけるくちづけを施される。
それは魔性の唇であった。魅惑の魔法が少年を蝕み、身体から一気に力が抜けていく。

「あ、ああ……」

口から甘い嘆息が漏れ出し、快楽の嬌声をあげる。それは幼き少年の経験したことのない、尋常ならぬ魅了の快楽だった。
女は邪悪な笑みを浮かべ、少年に気味悪いほどに優しく声をかける。
「ふふ…♥どうかな?妾のくちづけは…? 心が蕩けて夢心地であろう…♥」
「あ、ああ……」

少年の額には真っ赤なキスマークがこびりついていた。
剣が手から抜け落ち、甲高い金属音を響かせる。

「さあ、妾のものになるといえ♥
 そしたらもっと気持ちのいい思いができるぞ♥」

それは今の少年には恐ろしい問いかけであった。
少年の身体がガタガタと震えだす。葛藤ゆえであった。
勇者としての使命と魅了の快楽。この二つが心中で争っているのだ。
「むぅ?どうした? 妾のものになりたくないのか?」
「う、ぐぐ…うぐぐ…」
もう喉のところまで言葉が出ていたが、少年は勇者の矜持で押しとどめていた。
口にすればどうなるかは分かりきっている。それだけは防がねばならなかった。

されど人を惑わす悪の女にとって、
勇者の決死の努力も子供のかわいいあがきでしかなかった。

「ほぉ…?妾のくちづけを受けて耐えるか♥
 面白い♥さすがは勇者ということか♥」

真っ白な肌の掌が勇者の顔を包む。
女はいつの間にかに少年の眼前に迫っていた。

「それでは次は口にしてみようかな?
 光栄に思うがいい♥ 妾と接吻できるものはそういないのだから♥」
「……!」

少年に魔性の赤い唇が近づいてくる。
それは確実な魅了を与えるもの。
禁断の赤い果実である。
しかし少年は抵抗することができない。
両頬に感じる掌の柔らかさと鼻腔をくすぐる香水の匂いが、少年の心を縛り付ける。

「さあ、そなたに褒美だ…
 悦んで受け取るといい…♥」

ついに勇者は禁忌を○す。
ちゅぅっと音がして、赤い唇が接吻を与えたのだ。
幼い身体に魅了の魔力が急激に流れ出し、鍛え上げられた肉体が討つべき女のものへと変わっていく。

「あ…ああ…」
「さあ、言うがいい♥ 妾のものになると♥
 そうすれば妾の寵愛を与えてやろう♥」

少年は勇者であり、あらゆる困難を超えてきている。
ゆえにその精神も並の大人よりずっと強靭であった。

されど女の接吻はあまりに強力だった。
いくら強靭な精神を持つ勇者といえど、全身を蕩かす魅了に抗うことは不可能だった。

「は…はい…なります…
 僕は…あなたのものに…」

瞳の奥にハートを浮かべたまま嬉しそうに返事をする。
少年の唇にはくっきりと赤いキスマークが付着していた。それはまさに女のものとなった証である。

「よかろう…♥
 では一つ命を与えよう。
 そなたの愛する妾の討伐を命じたもの。
 その全員の首をとってこい。さすれば今夜一晩中かわいがってやろう♥」

「はい、わかりました…」

「それと…おまえの懐にあるものを出せ
 …うむ、その勇者のペンダントだ♥」

「これをな…んうぅ…ちゅぅっ♥」

金のペンダントを受け取ると、上から唇を押し付ける。
そこに真っ赤なキスマークが残されてしまう。

「これは…勇者が妾のくちづけに堕ちた証だ♥
 しっかりと身につけるがいい♥」

少年は再びペンダントを受け取る。
それはもはや勇者のペンダントではない。
悪の女のキスマークの施された堕落のペンダントだった。
「それでは行くがいい♥
 良い報告を期待しておるぞ♥」
少年は恍惚とした笑みを浮かべ豪華な館の外へと出ていく。
額と唇には真っ赤なキスマーク。女の寵愛を受けた証であった。

少年は躊躇なく命を果たすだろう。
彼はもはや勇者ではない。女を愛する下僕の一人に過ぎないのだ。

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クモと召喚士 2019/07/18 00:20

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クモと召喚士 2019/07/16 23:04

時間探偵ミライ(過去作)

時間探偵ミライ
僕は時間探偵ミライ。名探偵だ。

 実はちょっとした能力を持っている。そのおかげでどんな難事件でも解決できるのだ。

 その名も過去体験。名前だけじゃ意味がわからないだろうから、詳しく説明しよう。

 この能力は簡単に言えば『他人の経験を追経験できる能力』だ。

 人が経験してきたこと、つまり目で見たこと、耳で聞いたこと、触った感触などなど

 そういったもろもろを追経験できる。三日内という制限はあるけど。

 使い方は簡単。対象の人間に触れるだけだ。

 その人に触れるだけで三日間の生活全てを知ることができる。

 例えば、アイスを食べたとか、テレビを見たとか、風呂に入ったとか。

 そういうものの全部を丸ごと経験できるのだ。

 

 そしてこの能力は『死人』にも使える…もうおわかりだろう。

 そう、僕は被害者が殺されるまでに体験したこと──そのすべてを追経験することで犯人を導き出すのだ!

 視覚から犯人の姿を割り出し、聴覚から犯人の肉声を知り、触覚から犯人への手がかりを得る。

 嗅覚からにおいだってわかるし、味覚は──あまり使うことないけど当然わかる。

 五感全てを使って犯人の正体を割り出すのだ。証拠だってたくさん見つけられる。

 被害者が犯人を認識している限り──僕に解けない事件はない!

 さあ、今日も見事に解決してみせよう!迷宮入りしている難事件を──!



「ガイシャは毒殺されたそうです」

 

 警部補が僕に伝える。目の前には男性が横たわっている。どこにでもいそうな普通の男だ──死んでいること以外は。

「我々が調べる限りでは一切の証拠が出てきませんでした…

 犯人の姿を割り出すどころか手がかり一つすらもありません」

「それで僕の出番というわけですか」

 僕は伊達メガネをくいっとあげる。やっぱり探偵はメガネだ。こういう仕草が恰好つく。

「はい…申し訳ないです。いつも頼りっぱなしで…」

 友人である警部補が心苦しそうにうなだれる。僕はそれを優しくなだめる。

「よいのです。僕はこういう悪辣な事件を解決するために能力を授かったのだと思っています。

 だから気にしないでください」

「ありがとうございます…それでは、さっそくですが」

「ええ…始めましょう」

 警部補はいそいそと部屋から出ていって鍵をかける。

 追経験している間は僕は完全に無防備になる。誰かに邪魔をされたら困るのだ。

 そこで誰もいない完全密室の中で能力を使うことにしている。

 倒れる男に触れる。

 男は死んだように死んでいる。もう見慣れた光景だ。

 身体に手を触れ意識を集中させる──男の中に──入り込んでいく──

 揺れる精神世界の中で男の体験を手繰り寄せる。

 映画のフィルムのように長く伸びている男の体験。それがある部分で途切れている。男の死の部分だ。

 僕はその少し前の部分を選ぶ。ここから死ぬ瞬間までを体験するのだ。

 また意識を集中させ、男の体験の中に入り込む──

 手足の感覚が──感触が──嗅覚が戻って──僕は──男に───

 



 僕の視界に映し出されたのは怪しげな事務所の中だった。

 男が発見されたのは森の中だったはず。ここで殺されたあとに運び出されたのか。

「………?」

 ふと身体に違和感を覚える。手足が動かせないのはいつものことだ。なぜならば追経験だから。あくまで男の経験通りにしか動かない。

 しかし今感じているのはそういうものではない。手足に『力が入っていない』のだ。

 というか身体全体に力を感じず、ついでにやけに身体が熱い。

 もしや…もう毒を飲んでいる…?

 ただ毒にしては──なんというか、酔っているような心地よさというか…

 泥酔しているのか?でもそれもなんとなく違う気がする。

 僕はアルコールは飲まないが追経験したことはある…だからこれは違う。
『─て、そ─────うかし─』 

 女の声が聴こえた。まさか──犯人か!?

 耳をじっと澄ませる。よぉく集中しろ…一言だって聞き漏らすものか……

 全神経の意識を集めて──いつでもこい──

『…ふぅ~~~♥』

「!?」

 あ、あああ……き、気持ちが良い……まさかそんなことするなんてぇ…

 耳に集中してたもんだから…脳に響くぅ……

『ふふ…♥ こんにちは…♥ はじめまして…だよね♥』

 あっ、喋り始めている…意識を集中させろ…ミライ…

 突然の耳ふーにびびってる場合じゃないんだからな…

 はじめまして、といったな…つまり被害者はこの女と初対面──

 それか女だけ被害者を知っていたかのどちらか、かな。

『ワタシ…あなたのことずっと気になっていたの…♥

 ねえ、キスしても…いいかしら…♥』

 ふむふむなるほど…この男はこの女に気に入られていたのか…

 そして今からキスを──って、は?キス?

『うふふ…♥ いいわよね♥ あなたは受け入れてくれるわよね…♥』

 女が目の前に回り込んで来る──うわ、すごい美人だ…

 紅いチャイナドレスに真っ赤な唇。長い黒髪がとても艶やかなすごく美人なお姉さんだ…

 ていうかさっき、キスって言ったよね?嘘、本当に?

 こ、この男、こんな美女にキスされたのか…?うらやましい…じゃない!

 なぜこんな普通の男にいきなりキスをしようとするのだろうか…待てよ。

 そうか、もしかして『毒のくちうつし』──か!?それなら納得がいく。

 これはしっかりと確認する必要があるな…別にキスされたいとかじゃなくて…犯人の証拠を集めるために…!

『ねえ…しっかり感じてね…ワタシのキス…♥ 心身全部トロトロに溶かしてあげるから…♥』

 女の唇が近づく。熱い吐息が漏れ出ている。やばい、緊張してきた。

 今までもキスシーンがなかったわけではないけど、こんな美人初めてだ。

 しかも雰囲気が無駄にエロティック。すごく興奮して──じゃない、すごく興味深いものだ。

『それじゃ、いくわよ…んぅ…♥』

 顔が近い。こんな美女の顔を間近で見るのは初めてだ。

 やばい。唇が近づいてくる。うわ、まつ毛すっごく長い。じゃない。どうしよ。頭が回らない。ドキドキする。

 ──あ…唇が触れ…柔らか…

『…♥』

「…!?」

 唇がつながった瞬間、ぬめった舌が入り込んでくる。いきなりディープキスとは…

 というかこの舌の動き──なにかおかしい──なんで、こんなに気持ちよく──!

「!??」

 身体がびくんと跳ねる。急な絶頂感が全身を満たす。なんだこれ。おかしい。

 股間に湿った感触を感じる。え、もしかして射精したのか。なんで。キスしか受けてないのに。

『♥♥♥

 ♥♥♥』

 舌が口内をかきまわす。恐ろしいくらいの技巧だ。まるで反応できていない…というか、あれ。

 何かおかしい。男の身体に違和感がある。だけどだめだ。また快感が昇って、

「───」

 また射精する。頭がぽわぽわする。なんでキスだけで射精してるんだ。…この女が上手いから?

 違う。いくら上手いからってキスだけでイくものか。そう、これはもっと…

『♥♥♥♥♥♥

 ♥♥♥♥♥♥』

 ダメだ。思考がまとまらない。気持ち良さ過ぎる。ああ、またイく…!

『♥♥♥♥♥♥♥♥

 ♥♥♥♥♥♥♥♥

 ♥♥♥♥♥♥♥♥』

 キスがこんなに気持ちがいいなんて知らなかった。だめだ。虜になる。

 もっとキスしてほしい。もっと舌を絡めてほしい。またイく…イく…

『…♥♥♥ ちゅぷぅ…♥ ふふ…♥』

 

 何度目かの絶頂でようやくキスから解放された。頭が回らない。もっとキスしてほしい。もっとあの快感がほしい。

『ワタシの虜に…なってくれたかしら? ふふ…なってるわよね♥ わかるわ♥』

 女は舌なめずりをする。すごくエッチな仕草だ。

 あんなキスをされたんだ。どんな男だって虜になるに決まっている。

 追経験をしている僕だって──もう、正直魅了されかけている。

『次はセックスをしましょう? あなたももう準備できてるわよね…♥

 ええ、わかってるわ♥ 気持ちの良いキスのあとだもの…ね♥』

 女が僕…じゃない男のズボンとパンツを脱がせて下半身をさらけ出させる。
男はまるで抵抗しない。というか身動き一つとらない。キスの快楽でぼーっとしているのか?

『よいしょ…それじゃ始めましょうか…♥』

 女が跨ってくる。対面座位の体勢だ。目の前に女の顔がある。

 いやでも唇が気になる。真っ赤な唇。さっきあんなにイかされた魔性の唇…

『ふふふ…♥ 唇が気になるかしら? 安心して…♥ キスもたっぷりしてあげるから…♥』

 頬にキスをされる。それだけでもう心臓がバクバクだ。いや、僕の心臓じゃないんだけど。

 とにかくエロティックだ。なんだこの体験。こんなのセクシーなの初めてだ。

『それじゃ挿れるわね…♥ うぅん…♥ あぁぁん♥♥♥』

「!!!!」

 挿入した瞬間、僕は射精していた。膣内にびゅーびゅーと思いっきり射精する。気持ち良さ過ぎる。

 まだ入れただけだ。なのに我慢ができなかった。──いや違う、我慢できなかったのは男のほうだ。

 僕はそれを追経験しているだけで。

『うふぅん♥ 動かすわよ…♥ あん♥ あん♥ あぁぁん♥♥』

 動かされるだけでまた射精する。激しく膣内射精をする。

 精神が揺さぶられる。目の前で喘ぐ美女。絶頂し続ける身体。自分と男の境目が分からなくなる。

 意識が女の身体に奪われていく。

『あぁぁん♥♥ もっと射精してぇ♥♥ ああっはぁぁん♥♥♥』

 女の身体の味が染みついていく。僕の身体がこの女なしでは生きていけなくなるのを感じる。

 いや、これは僕の身体ではない。あれ。そうだっけ。そうだ。これは追経験だ。

 だから僕はまだ大丈夫。

『好き♥♥ 好き♥♥ 大好き♥♥ だして♥♥ だしてぇえ♥♥♥』

 あまりに射精し続けてもう何も分からなくなってくる。

 僕か男かなんてどうでもいい。ただ気持ちが良い。こんな美女に犯されて、こんなに射精して。

 まるで天国だ。こんな気持ちの良い体験、生きているうちに絶対にない。

『大好き♥♥♥ 好きだから♥♥ もっと♥♥ もっと射精してぇ♥♥』

 ああ、僕もこの女の人が好きになっていく。愛してしまう。

 追経験とかそんなのどうでもいい。この交わりにすべてを───

    

『好きよ♥♥ 愛してるわ♥♥♥ ミライくん♥♥』

 全身に冷や水を浴びたような寒気を感じる。

 『ミライ』…くん?どうして、僕の名前を…?被害者は違う名前だ。ミライなんて仇名をつけられる名前でもない。

『うふぅぅ♥♥ キスしましょ♥♥ もっと虜にしてアゲル♥♥♥』

  

 唇を奪われる。頭が真っ白になって猛烈に絶頂する。身体が跳ね上がりっぱなしで止まらない。

 だがだめだ。意識を奪われるな。考えろ。考えなければ、ヤバい。

『ぶちゅぅぅ♥♥ ミライくん♥♥ 好き♥♥ 大好き♥♥♥』

 こんな美女にキスされながら、名前を呼ばれて、好きと言われて。

 意識が朦朧とする。思考力が奪われる。だめだ。いったん退こう。理性がない状態では危険だ。

 このままじゃマズい。この男から離脱して意識を元に──

『ちゅるるる♥♥♥ ねえ、ミライくん♥ この男、どうなると思う♥♥』

 女が「僕に」話しかける。耳を傾けてはいけない。はやく逃げないといけない。

 なのに意識がとらえられて逃げ出せない。だめだ。逃げるんだ。

『死因は毒…辺りに偽装されているかしら…♥

 でも、違うのよ…♥ 毒じゃないの…♥

 

 もっと気持ちの良い、死に方よ…♥』

 分かっている。これはこの女の罠だ。僕をおびき寄せるための罠だ。

 だから逃げなければならない。この先は危険すぎる。

『うふぅ♥♥ 最後にトドメのディープキスをして全身をキツく抱擁するの♥♥

 膣を思いっきり締めあげてものすごい絶頂が来ちゃうの…♥』

『そしてね…♥♥ 気持ち良さ過ぎて…死んじゃうの♥♥』

 耳元で囁かれる。だめだ。離脱しろ。そんなの経験したら終わりだ。

 間違いなく──この女の虜にされてしまう。

『ほら…次のキスがそのト・ド・メ♥ ワタシの唇みて…♥ ぷるぷるの赤い唇…♥

 この赤い花弁がミライくんの唇に吸い付いた瞬間、膣内でもディープキスしてあげるの…♥

 子宮口と亀頭でエッチなディープキッス…♥♥♥ 

 そして…最高の絶頂をしながら…死ねるのよ…♥♥ 体験したいでしょう…♥』

 

 耳を傾けるな。逃げろ。逃げろ。逃げるんだ。射精感に騙されるな。

 だめだ。逃げなきゃおかしくなる。逃げなきゃ虜にされる。
『んぅ~♥ ワタシの唇…♥ 目を逸らさないで…♥ 最後まで見ていて…♥』

 ああ、駄目だ…!逃げないといけないのに…!意識が逃げられない!

 心があのキスを、望んでしまっている…!

『さあ、トドメのキスよ…♥♥ 

 ミライくん…あ・い・し・て・る♥♥』

 赤い唇が!真っ赤な唇が迫る!来る!すごく気持ちの良いキスが!僕に!僕の唇に──!!!!


『むちゅぅぅぅぅぅぅ♥♥♥♥』


「!!!!!!!!!」

 唇に思い切り吸い付かれる!その瞬間豊満な身体が僕を抱きしめ膣内が締め付けられる!

 僕は絶頂する!絶頂する!絶頂する!絶頂する!絶頂する!絶頂する!絶頂する!絶頂する───!!!















 意識が 途切れかけていた。

  死の  間際の  光景。

  目の前では  女が   笑っている。


『ミライくん…♥ もしワタシに会いたいなら…ここに来なさい…♥』


 女は  僕にそう言った。

  会いたい。  この 女に  会いたい。



『それじゃぁ、おやすみなさい…♥ 最後の光景は…ワタシのくちづけよ…♥♥』



 僕の  目に  女の唇が  近づく。

   赤い クチビル が  大きくなって  

  そして  僕の目は  視界は

 大きな唇で   埋め尽くされて──




 

  ぶちゅぅぅぅぅぅぅ♥♥♥♥♥♥







「うわあああああああ!!!!!!」

 僕は目を覚ました。そこは暗い密室の中だった。目の前には男がいる。死んでいる男だ。

 

「…はぁ、はぁ、はぁ……」
股間に湿った感覚がある。何度も絶頂していたようだ。当たり前だ。あんな経験したのだから。

 

「…………」

 ゆっくりと立ち上がる。まだふらふらする。だが僕は歩く。やらねばならないことがあるからだ。

「……………」

 鍵をあけて扉を開く。外では警部補が待っていた。今から彼に手伝ってもらわないといけないことがある。

 はやくしなければ…間に合わなくなる。









 ~~ とある事務所の中にて ~~



「…やっと来たわね♥ ミライくん」

「はぁ…はぁ…」

「でもさすがね…あれだけの情報からここを割り出すなんて…♥」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「…さて、それじゃお話しましょうか♥」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「あなたの力は素晴らしいものよ♥ 表のつまらない世界で使うにはもったいないくらいに♥

 ワタシなら、もっとあなたを有用に使ってあげられるわ♥♥」

「はぁ…はぁ…はぁ…!」

「ワタシのものになりなさい♥ 報酬は弾むわよ♥ 

 一生遊んで暮らせるくらいのお金…凡人には決して手にできない地位…そして♥」

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

「…ワタシのカ・ラ・ダ♥♥ 望むなら妻になってあげてもいいわ…♥

 毎日気絶するまで愛してアゲル…♥♥ キスだけで射精するくらいに犯してあげる…♥♥」

「あ、ああ、あああ…!」

「さあ、こっちにおいで♥ さっそく愛し合いましょう♥♥

 ファーストキッスに童貞卒業…♥♥ 全部済ませちゃいましょうか…♥♥」

「お、お姉さん…!!!」

「そう…こっちよ…♥♥ ふふかわいい子…♥♥ もう離さないからね…♥

 うふふ…♥ ミライくん…♥♥ 死ぬまで愛してあげるわよ…♥♥♥♥ うふ♥♥ うふふふふふ♥♥」

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クモと召喚士 2019/07/16 22:52

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