ヤンデレの女の子に(耳の奥まで)死ぬほど愛されて眠れないASMR~もしくはヤンデレCD Re:Turn プレリュード 第1楽章
いつからだろう?
岬ちゃんがあたしに笑顔を見せてくれなくなったのは。
ううん、笑顔自体は見せてくれてる、笑っては……いる。
あたしに対して、顔だけは笑ってるの。
でも……、それは……、もっと……異質、いや、歪……異形……?
あっくんと岬ちゃん。
あたしの家の隣に住んでいる、あたしの昔からの幼なじみ。
あっくんの妹である岬ちゃんは、あたしにとっても本当の妹と同じくらい、大事な女の子だった。……違う、今でも大事だよ。だって、あっくんの妹なんだもの、あんな酷いことがあっくんの家に起きて……、おじさんとおばさんが……死んじゃうなんて……。
突然の交通事故。
お隣のおじさんとおばさん、あっくんたちの両親は、夫婦水入らずの旅行中に不慮の交通事故で帰らぬ人となった。もともと忙しかった二人に、「僕が岬のことを見てるから、一泊でも二泊でもいいから、二人で楽しんできてよ」と提案したのは、あっくんだったらしい。
あっくんも自責の念で耐えられなかったはずなのに……、それ以上に岬ちゃんは傍からも見ていられなかった。
両親の突然の死に、現実に向き合うことも出来ず半狂乱になり手が付けられず、そして自分の世界に閉じ籠る道を選んだ岬ちゃん。たぶん岬ちゃんは、そのまま死んでしまうつもりだったんだと思う。それを救ったのは……もちろん、あっくんだった。
「ねえ、元気ないけどどうかした?」
「え?……あ、ごめんシッキー、何でもないの、あはは」
親友のシッキーの声に我に返る。あぶないあぶない、考え込み過ぎちゃった。
「なーに? またあっくんのこと考えてたの? そんなに気になるならさっさと告っちゃえばいーのにー。でも夢乃、今さらだけどなんでまた彼のことがそんなに気になるの? 私はもっと理知的な感じが好みかなー、白衣にメガネとかさ、あーん、もうサイコー、ふひひ……じゅるり」
「あー、はいはい。シッキーは好きなだけ乙女ゲーの世界で生きてなさい」
「なにそれー、差別はんたーい。乙女ゲーのヒーローキャラ以上にかっこいい男がいたら、弓亜だって本気だしちゃうもんねー」
親友の四季島弓亜はいつもあたしとあっくんの関係を茶化してくる。乙女ゲーにしか興味がない喪女めぇ……。
シッキーは外人みたいな色素の薄い長い髪に、白磁みたいな綺麗な肌、おっぱいはあたしとタメ張るくらいでっかい超美少女のくせして現実の男に微塵も興味ない、そのくせ人の恋バナには興味津々とか、どういう性格してるんだっつーの、もう。
「ねえ、最近多いよ、夢乃がぼーっとしちゃうこと。心配事だったら弓亜に言ってよね」
「あ……違うの、ホントに……大丈夫だって」
「ならいいけど。あっくんが振り向いてくれないなら、そのおっぱいで悩殺しちゃえばたいていの男はイチコロだぞ☆」
「ほーほーほー、経験があるのかねシッキーくん?」
「もちのろん♪ 夢乃ほどおっぱいおっきくないけど、配信でそれやったら大儲けナリー♪」
「……シッキー、ホントにそれやるのはやめなよね……」
シッキーはたまに冗談かホントかわからないことを言う。さすがにそんな危ないことはしてないと信じたい……信じさせてちょーだい。でも、あたしのことを心配してくれるのはすごくわかる、ありがと親友。
さてと、アタマを切り替えないと。シッキーに様子を疑われるなら、あたしかなりトリップしちゃってたっぽい。とにかく、今日も学校が終わったらあっくんの様子を見に行ってやるとしますか。
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※このミニストーリーは、2020年7月下旬配信予定の『ヤンデレCD Re:Turn』プレストーリーです。読まなくても本編には全く関係ございませんのであしからず。