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サークルSBD 2012/07/17 23:30

『さよなら人類』 第二話

第二話:レミングス・著



ナプラマージャ・・・

ナイルスネイルという最も人類が憎むべき敵。その一人が今俺に向かって笑顔で語りかける。どういうつもりなのかわからない・・・。その笑顔には地球をここまで追い込んだ侵略者としての自覚はないようだ。人と人の笑顔のように、優しさと安心を与える笑顔だ。
いや、馬鹿野郎!
お前の家族だってあいつらに殺されたんだろう?しかも今俺の命を握っている敵を、許そうとしてどうする!?

自己紹介を終えたあと、笑顔に見とれた俺はボディーに一発もらい、気がついた時には見たこともない建造物の中にいた。

「・・・ここは・・・」
壁は全体が茶褐色で、虫の腹のようにデコボコしている。天井はとても高く、壁自体が赤く光っている。
「・・・俺はあのナイルスネイルに運ばれてここまで来たようだな。しかし奴らの姿が見えないな。」
カイトは部屋の奥まで見渡してみたが、何もめぼしいものはない。漠然と、そこに空間が広がっていた。

すると、

スー・・・
壁の一部がほとんど音を立てずに開いた。

「!!」
次の瞬間、開いた口から触手のような物が飛び出し、カイトの体にグルグルに絡まった。
「う・・・うわ!」
そしてカイトがそれを振りほどこうという気になったとき、触手はカイトを掴んだまま物凄い勢いで部屋の外にひっぱった。

ビュン!

部屋の外に出てもカイトの移動は終わらない。長い虫腹の通路を、口も利けないくらいのスピードで進む。

ゴウ!

やがて再び別な広い空間に出た。その移動スピードの速さを物語るように、部屋中に抜けるような音が響き渡る。
ポーンッ


わけがわからず、放心状態のまま勢いついて転がるカイト、しかしすぐに彼に声を掛ける者がいた。
「起きろ、そして部屋の正面を見ろ。」
揺れる頭を必死に正常に戻し、目をやるとそこにはさっきのナイルスネイルがいた。彼女は部屋の中心を睨んでいる。
「ナ・・ナプラ・・・ナプラマージャ・・・」
拘束されているわけではないが、逃げることは場所を考えても、能力を考えても無理である。カイトは素直に部屋の正面を向いた。
「げ・・・!!」


デコボコ岩のクレータのような場所の真ん中に、一人のナイルスネイルが座禅をくんでいる。
髪は紫色で長く妖美にうねり、体には見慣れぬ装飾品と文様が書き込まれ、肌はナプラマージャとは違い、全体的に白く、うっすらとパールの輝きを放っているように見える。
なにやら瞑想にふけっているようだが、やがてその険しい表情がとかれ、鋭い眼光がゆっくりと開く。
するとナイルスネイルに共通する怪しい美しさがその女にも溢れた。

「・・し・・・しかし・・・」
カイトが驚きツバを飲み込んだのも無理はない。ナイルスネイル達は、通常2メートルぐらいで、すごく背の高い人間、といった程度なのだが、そのナイルスネイルは違った。

「し・・・4、5メートルはあるな・・・」
巨大なダンプカーが人の形をしている迫力である。しかしその透明感溢れる肌、心が自然に吸い込まれるような彼女の香りで、それほどの量感は感じなかった。
「あの御方はシ・ケーニョ様だ。」
ナプラマージャはボソっと言った。
「シ・ケーニョ・・?」

ナプラマージャは「様」と呼んだ、やはりこいつらの中にも身分階級のようなものがあるのだな。まぁ、俺が知ったところで誰に伝える事もできないけど・・。
心の中でカイトがそう呟いた途端に、ナプラマージャはカイトの襟を掴むと、屈んでいたカイトを頭より高く持ち上げた。
「わ!」

気がつくと、その巨大なナイルスネイルを中心に、あちこちにナイルスネイル達が立っている。そして手には自分のように人間を持ち上げている。
「ケーニョ!」「ケーニョ!」
「ケーニョ!」
「ケーニョ!」「ケーニョ!」
「ケーニョ!」

期せずして「ケーニョ」コールが湧き上がる、わけがわからず、抵抗も出来ずにぶらさがるカイト。
やがてその騒ぎの中、中央のシ・ケーニョが一人のナイルスネイルを指さした。
さされたナイルスナイルはそこから、まるでゴミを投げるように掴んでいた人間をほおった。

ドサッ

中央に投げ出された人間の男。衝撃で足を痛めたらしい、押さえながらうめく。
立ち上がろうとせず、座ったままの姿勢で、にじりよるシ・ケーニョ。
男は足の痛みも忘れて走り出す。途端にクレーター一帯に地震のような連続した振動が広がった。
ドドドドドドド
男は足を取られて地面に倒れる。その隙に巨大なナイルスネイルが男の足を掴んだ。
ヒィィィィィ・・・・
遠くからか細い悲鳴が聞こえた。男はそのまま、正座を横に崩した姿勢のシ・ケーニョの体に寄せられた。
シ・ケーニョが男に覆い被さると、その豊満な胸も手伝って、男の体は全く見えなった。
大きな白く澄んだ女の体に包まれて、男の悲鳴も聞きづらくなっていく。

カイトにはシ・ケーニョの顔が横からチラリと見えた。恍惚な表情を浮かべ、今恐らく胸から腹の間にいる男を、その冷たく光る体で味わっているのだろう。
怪しい腰の動きが始まる。それは人間の本能に直接響くような、「誘惑」を高純度に絞り上げたような、そんな男にとって最も危険なシグナルだった。
カイトは思わず目を背けた。これ以上見つめていると、そのゆっくり生生しく呼びかける腰に応えて、その肉壁の中に自分も引き込まれそうになるからである。

シ・ケーニョの胸、胸から背中、背中から腰にかけて妖美に蠢く。冷たい肌が重なりあい、擦れあい、つぶしあう。
ウットリした瞳で背筋が凍るような笑みを浮かべる。
どんな精錬された鉄も溶かすような熱く甘い蹂躙。彼女の肌の中で、さっきの彼は何を思う。
地面に押し付けられ、雲のように形を変えるおおきな乳房を見ながらカイトは男の事を考えていた。

「それ以上見るな。お前の命がないぞ。」
見とれるカイトを制したのはナプラマージャだった。彼女はカイトの襟を再び掴むと、ここまで運んできた触手のところへ持って行こうとした。
「ま・・待て」
無言で立ち止まるナプラマージャ
「あ・・あいつはどうなる?あの大きな女は何をしているんだ?」
「知ってどうする」
無駄なことは聞くなと言いたいようだ。ナプラマージャが合図すると触手がこちらに向かってくる。
「言え!俺はお前の命を救った人間だぞ!?今までのような一方的に屈するだけの人間とは違うんだ!」
何ができるわけでもないのに、強い姿勢で出た。
「・・・・フ、いいだろう、知りたければ教えてやるさ。別に隠すことじゃないからな。」
そう前置きしてナプラマージャは説明を始めた
「シ・ケーニョ様は栄養を摂取されているのだ。食事はさっきの男だ。」
ギョ!
「な・・・なんだって?まさかあの女の腹には口がついていて・・・」
「愚かな、私の腹を見ろ、口などついていないだろう。我々は肌から摂取することができるのだ。」
ギョギョ!
襟をつかまれていたが、カイトはとっさにナプラマージャから離れようともがいた。想像もつかないがこの肌に触れるのは危険だ、恐ろしい!
するとナプラマージャはニヤリと笑って、カイトを自分の体に寄せて、その長い腕で抱きしめた。張りのある、何年でもしがみ付いていたくなる肌感。思わず手を腰に巻いてしまう。これまた弾力に富んだ感触。ウットリ・・・
「ハッ!!た、たすけて!!」
一瞬心が溶けそうになるも、肌が触れてる事に気づき叫んだ。
しかし、何もおきなかった。
「愚か者、肌から噛み付くわけではない。お前らから生命のエネルギーを液体として取り出し、それを肌から吸収するのだ。」
「せ、生命のエネルギー??」
見てみろ、とナプラマージャがアゴで指した。
シ・ケーニョは体全体から光る汗を流し、舌をだらしなく垂らして息づかいが荒い。女体が沸騰しているようにも見える。その犇(ひしめ)きはさっきより激しく、乳房が、腰が、太ももが、一体となって中心に向かって押しつぶす。
「ああ・・」
初めてシ・ケーニョが声を漏らす。

「今、ケーニョ様の体は食事前の最高の状態に仕上がったのだ。」
「なに、今食事しているのではないのか?」
垂らしていた舌で、その唇を舐めまわす。熱い熱い吐息が空間に溶ける。
汗にまみれた壮大な肉体が、今、獲物を一気に搾り出さんと締め付けた。
ギュゥゥゥゥ・・・
「ぁぁぁ・・・」
聞き逃すほど小さい悲鳴が聞こえ、彼女の肌と肌の隙間から、白い液体が勢いよく飛び出した。

ブシュウゥゥゥ!!!
「な、なんだあれは!?」
「あれが生命のエネルギー体さ。さっきの人間から出されたものだ。我々は、特にシ・ケーニョ様は相手の生命体に制御しきれぬほどの快感、絶頂感を与えて、一瞬のうちに命を具現化するのだ。」

シ・ケーニョは飛び散った白い液体を丁寧に集め、手ですくうと自分の胸に塗りたくった。
「そして、あのように皮膚から吸収するのだ。相手の生き物は、それが死への道のりだと知っていてもその快感から逃れることはできない、こちらがやめない限り。ま、我々にとっては最高のご馳走だから見逃す気もないがな。」

胸に塗られた液体は、女の皮膚に吸われて消えていった。満足そうなシ・ケーニョ。
「し、食事が終わったわけか。・・・男は?」
「あそこにある皮がそうだ。」
「う、・・・もういい。・・・ところで、シ・ケーニョというナイルスネイル、さっきから俺を見ているようなのだが・・・」
「御気に召されたかな」
「ひ・・・・」
「だからさっさと行けと言ったのだ。」
「お・・俺も、俺もああなるのか???」
泣きそうなカイトの表情を一瞥して
「そうならないようにしてやろうと考えている。だから大人しくしていた方が身のためだぞ。」
「・・・・・・・・」
大人しくしていてどうなる?どちらにしろここは出れない。助からない。抵抗すればああなってしまう・・・

「ナプちゃーん。」
落ち込んだカイトとは別に、明るく弾ける声が、ナプラマージャを呼び止めた。
「・・おお、チリト。獲物は取れたかい?」
ナプラマージャが親しそうにもう一人現れたナイルスネイルと話始めた。
「んん・・・ぜーんぜん。いいな、ナプちゃんは才能があって、あたしてんでダメェ。」

そのナイルスネイルは他の者とは違い、少し小ぶり・・・子供のように見える。
「ナプちゃんのオチチ相変わらずでかーね!」
「こら!」
緊張感もまるでない。ナプラマージャにじゃれ付く。
「ははは・・・・」
こちらも見ているだけで緊張が抜ける。絶望的な状況なのに、細々と笑うことができた。

ガシッ
カイトはその瞬間、自分の体がその子供に持ち上げられたことが信じられなかった。
「!?え?」
「チリトやめな。」
「こいつが今アタシを笑ったよ?ただの食い物のくせに。食われたいか?」

ぞっとするほど冷たい目。さっきまでの子猫のような瞳はカイトを串刺しにする危険な瞳に変わっていた。カイトの首は、その細い指で締め上げられている。

「やめな、人間はすぐに死んでしまう。」
「アタシに頂戴よ、この人間、アタシが食べたい。」

小さな口から小さな舌が這い出して唇を濡らした。
呼吸が苦しい。カイトの顔が青ざめていく。
「チリト、私の言うことが聞こえないのか?」
「・・・・・・・」
その女の子はカイトを下ろした。並んでみて気づいたのだが、ナプラマージャが大きいから小さく見えただけで、小さい女の子というにはやっぱり大きい・・・

「ごめぇーさぁーい、ちょっとふざけましたー!」
殺伐とした雰囲気を強引にゼロに戻す口調。睨みつけるナプラマージャに擦り寄る。
「ナプちゃん、怒っちゃやーだよ?チリトはこういう子なんだから、大人なナプちゃんが我慢しなきゃ!!」
ナプラマージャはチリトを押しのけた。
「あーあ。じゃ、またね! ナマイキな人間君もまたね! ばーい!」

軽快なステップで走り去って行く。
ナプラマージャは呆然とするカイトをさっさと触手に絡ませ、部屋に戻した。


続く

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サークルSBD 2012/07/15 23:30

『さよなら人類』 第一話

第一話:レミングス・著



時は21XX年。地球上のほとんどは不毛な砂漠と化していた。
至る所に建物の名残りのような物が転がっていたが、ただのコンクリートの塊とも呼べる有り様で、昔のような機能を果たすことはまったく無い。

人間同士が憎み合い、結果としてこうなってしまったのか?
いや、
世界的な緊張が高まったこともあったが、我々が恐れていたような終末戦争は、各国の首脳の間で何度も行われたサミットにより、奇跡的に免れることができた。人間は話し合いによって平和を導く事が出来る、そんな誇らしいニュースが世界中を駆け巡った。

しかし、いくら人類がほんとうに兄弟の契りを交わしたとしても、人類の滅亡は現実の物として起こってしまった。

それは、巨大な飛行物体が晴れた日の太陽を隠した時から始まった・・・・。


「まったく今思い出しても背筋が凍るよ・・・そして現在の人類は・・・」
いつもの昔話が始まった。古く朽ちた感じのベレー帽の下から白髪がはみだす、太いまゆ毛が人間の奥深さを感じさせるラーク教育官は、うんざりしている教え子の前で話を続けていた。

「・・・・ちっ」
反抗的な態度が気になると、上官との折り合いが悪いハムサンは聞こえないように舌打ちをした。
「ふぁ・・・・」
優等生だったカイトも、そのアクビを止めることはできなかった。

「コラ!カイト!聞いているのか!?」
「イ、イエッサー!聞いております!!」

ふいを突かれ、慌ててカカトを打ちつけるカイト。
「では! お前達の任務は何か?答えよ!」
「イエッサー!我々人類から地上を奪った、憎き異星の者、ナイルスネイル共を駆逐する事であります!」
「うむ!」

満足そうなラークを横目に、ヤレヤレとため息をつくハムサンだった。


ここは地下120メートルにある、人類希望の基地。
巨大な飛行物体が上空に現れてから、何千年も積み重ねてきた人類の歴史は、その圧倒的な火力によって屑のように吹き消されてしまった。その後にも人類は抵抗を続けたがついに追いやられ、現在は世界に数カ所あるホコリ臭いシェルターが最後のトリデである。

一通り、地上の物を破壊しつくし、抵抗もだいぶ小規模化したのを見計らって飛行物体を操っていた本人達が地上に現れ始めた。
人類は彼等をナイルスネイルと呼んで恐れた。彼等は残った少ない人間を、しらみつぶしに捕獲していった。彼等に捕まった人間は、誰ひとりとして帰ってこなかった。

「とくにお前らのような若い者が危ない。」
歯茎を見せながらラーク教育官の説教が続く。
「はいはい、わかってますよ、そのナイルスネイル共は見た目は美しい女の形をしていて、俺達みたいな発情期の若者はついフラフラと捕まってみたい気になっちゃう、って言うんでしょ?」
「バカモン!!そんな浮ついた話ではないわ!!だいたいなんだ貴様の態度は・・・」
「ラーク教育官!我々はあなたの御指導により、あなたが言われるような軽率な行動を取るようなことは無いでしょう。我々は大変感謝しております!!」

カイトは、話に合わせ、部下の心得まで語り出そうとしたラークの言葉を止めた。



上官の熱い声援を背に、二人は久しぶりに開かれる地上への出口の前に立っていた。
二人のりりしい姿をモニターが写し出す。
二人にはそれぞれショットガンが渡されていた。
「やれやれ、大いなる任務を背負って、持たされるのがこんなショットガン一丁かよ・・・」
「文句を言うなよハムサン。これでもたいしたもんだ。見ろ、弾が入ってるぜ。」
「ホントだ、こないだ出てった奴なんか、オドシに使える、っていう理由で弾を抜かれてたからな、おれたちは幸せ者だよ。」

古惚けたシャッターが金属音を放ちながら少し開く。これ以上は開かない。
二人はそれをくぐった。シャッターはすぐに閉る。二人は指示どおりにその上に砂を運んでかけた。

「フウ、これでナイルスネイル達からは見つからないと・・・・」
「はあ、人類の技術も最後にはかくれんぼと同じだな・・・・」
「よし、いこうか。」

二人の任務は背負いきれないほど多かった。
「ナイルスネイルを殺すこと、生存者を見つけること、使える武器を探すこと、食料を探すこと、そして・・・・」
ハムサンは首を振ってつなげた。
「食い扶持を減らすこと。」
「・・・・・・・・・・」

人間に出来ることは、食べ物を確保する事ぐらいだった。
こんな御時世でも、権力を握っている人間の考えることはいかに自分の分の食料を多く残すかという事で、食べ盛りの若者は邪魔なのだった。

「やってらんねえや!!こうなったら意地でも死なんぞ!」
「ハムサンそのいきだよ、これは頼もしい仲間だ・・・・・ナ」

カイトの言葉がつまった。ハムサンはカイトの視線の先見た。
「ナ・・・ナイルスネイル・・・・」

遠く離れた砂山の上に、髪が靡くシルエットが見える。それは二人を確認すると、恐ろしいスピードでこちらに向かってきた。

「いそげ!急いで走るんだ!!」
「ハムサン・・・・・」
「あ!?なんだこんな時に!?」
「ハムサン・・・さようなら・・・」
「カ・・カイト」

カイトはハムサンとは逆の方向に走りだした、それは基地とも逆の方角で、ハムサンがそのまま基地に逃げ帰れるようにと考えての行動だった。もちろんナイルスネイルがハムサンを襲いにいけば捕まるのはハムサンだが、どちらか一人は確実にいき残れるのだ。
そのカイトの考えを素早く察知したハムサンは基地に向かって走り出した。

二人は全く後ろを振り返らなかった。砂が足を掴む、息がすぐにあがる、訓練の時より緊張感が高いせいで疲れが早い。それでもカイトとハムサンは走りつづけた。

人間の走るスピードよりも、ナイルスネイルの方が早い。彼女達は、運動神経に関しては人間を遥かに凌駕していた。二人のうち一人は生き残れる。しかし確実に一人は捕まる。

「ハァハァハァ・・・」
カイトは恐怖で押しつぶされそうだった。今、自分の後方で砂を駆ける音が聞こえているからだ。
(こ・・・・こっちに来たか・・・ハムサン・・・お前は助かる。よかったな・・・・)

砂をわける音はどんどんと近付いてくる。カイトの呼吸ももはや限界だ。
砂漠の丘の頂上に着いたとき、
ガチャ
引き金に指をあて、後ろを振り返りつつ特訓されたフォームを一瞬のうちに作った。

バン!バン!

すでに女の顔は銃の横にあった。バランスを崩したカイト、とびかかる異星の者、ナイルスネイルはその人間を押し倒した。

「うげ!」

カイトが背をついた場所にはちょうど人の大きさの鉄板の破片があった。カイトとナイルスネイルは、丘の上からソリのように一気に滑りおちた。

ザザザザザーーー・・・・
ガッシャーン!!!

丘の梺にあった廃虚にそのままつっこんだ。交通事故のように跳ね上がる二つの体、その衝撃でカイトは気を失ってしまった。

ナイルスネイルはこれくらいの衝撃では気を失わなかった。フラつきながらホコリを払い、立ち上がるとカイトを見下ろし、ニヤリと笑う。
「フゥ、人間のくせに私から逃げられるとでも思っていたの? ックックック・・・」
ナイルスネイルが呟いて、カイトの体にその手を伸ばそうとしたとき、

ガラガラガラガラ・・・・!!!

二人がぶつかった衝撃で廃虚の不安定なバランスが崩れた。高い場所から大きな鉄塊がいくつも降ってきた。
突然のことでさすがのナイルスネイルも避ける間がなかった。人間の比にならないパワーを持ったナイルスネイルが、身動きがとれないくらいに鉄塊の下敷きになってしまった。

しばらくホコリが立ち篭めていたが、やがて人間が起き上がった。

「うう・・・・痛てぇ・・・。 そ、そういえばナイルスネイルは!?」
カイトは銃を構えて周りを見回したが、女の姿は見えなかった。
「ど・・・どこだ、どこにいやがる!??」
時計周りに体を回す。ガレキひとつひとつに神経を尖らす。わずかな動き、物音を探す。
・・・・・・・・ガラ、

「!!」
バンバンバンバン!!! バンバンバンバン!!! バンバンバンバン!!!

恐怖のせいであらんかぎりの弾を撃った。
「うわーーー!!!!」

ナイルスネイルが埋まっていた鉄の山に向かって弾の嵐が吹く、その中から声が聞こえる。
「ちょっと、腕に刺さっている鉄芯が邪魔で力が入らないの、こいつをなんとかしてよ」
しかし銃を乱射するカイトの耳にはそんな声は聞こえない。ガレキの中から腕が見えて、刺さっていた鉄芯がショットガンの弾で弾け飛んだことにも気がつかなかった。

バンバンバンバン!!! バンバンバンバン!!! カチカチカチ・・・・
「あ・・・そ、そんな・・・・」
今さらに自分の愚行に気付いた。弾を全て打ち尽くしてしまったのだ。

ガラガラガラ・・・

立ち篭める硝煙とホコリの中から、背が高く、褐色の肌を持った美しい女が、マゼンダの髪をなびかせて立ち上がった。

「あ・・・あ・・・」
初めてみる人類の敵、そして自分には頼みの綱である武器はもう無い。カイトはすっかり戦意を喪失していた。
「クックック・・・・。やあ、人間。」
女は笑っていた。なびく髪の間から尖った耳が見える。
見なれない装飾物で身を飾っているが、露出が多く、思わず唾を飲むように抜群のプロポーションを持っている。太ももを伝う汗が、魅力的に光っていた。

呆然とするカイトに構わず、その女はカイトの目の前まで寄ってきた。
(も、もうこうなったら逃げることすら不可能だ・・・)
カイトは心のなかであきらめた。
その女が近寄ると、カイトは見上げた。自分の身長は確か177cm、非常に大きいというわけではないが、こんなに女を見上げたのは初めてだ、いや、女といってもコイツらはそういう異星人なのだ。

「人間よ、ありがとう。」

・・・・・・・・・・・・・・え?
想像もしなかった言葉をかけられ、とまどうカイト。
「お前のおかげでガレキの下から脱出することができた。まさか獲物の人間に助けられるとは思わなかったぞ。しかも、銃を持っているのに、今だって私を撃たないじゃないか。」

カイトは思わず銃を背中にまわした。(もう弾がないだけなんだが・・・・)

「フフフ・・・面白い人間もいたものだ、捕獲する我々を救おうとするとは・・・」
ハッキリ言ってカイトに自覚はなかった。何を感謝されているのかまったくわからなかった。
「うん、面白い、実に気に入ったぞ。」
女はガッシリとカイトの両肩を掴んだ。
「お前、名はなんという?」
「カ・・・カイト。」
「カイトか。私の名はヘレンニソ・ゾ・ナプマラージャだ。」
「ヘ・・・レ?」
「ナプラマージャでいい。本当はもっと人間には発音しにくい名前なのだが、簡単に言えばそうなるのだ。」

実に意外な自己紹介となった。しかしあくまで相手は危険な人類の敵である。命の心配はしなければならない。


続く

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サークルSBD 2012/01/08 00:00

Fatal Fate 紹介画像 途中経過⑤ 完成(?)

おなら責め特化型ボイスドラマ作品『サイレント・バット・デッドリー ver.M フェイタルフェイト』が、この度無事発売の運びとなりました。
いろいろ詰め込んだ結果、容量250MB越えの特盛りとなってしまいました。そう・・今回は試しに、あれやこれやともういろんなオマケを同梱してるのです。容量食ってるのはほぼwaveファイルですが・・。
できればまだまだ、より一層フェチった作品を各種出していきたいと思いますので、今後とも当サークルを何卒宜しくお願い致します!

ちょっとおトク情報
DLsiteさんの場合ですと、ご購入後90日以内に「評価」を行った場合、買い物に使用できるポイントがもらえます。また、販売ページ下部の「レビューを投稿する」ボタンから投稿したレビューが採用された際にはもれなく50ポイント、先着3名様までのレビュアーに限ってはなんと150ポイントがもらえるようです。
ポイントは1ポイント=1円として換算し、100ポイント以上からご利用頂けます。


※7月7日注: ポイントの配分に若干の変更があり、現在では「レビュー掲載で50ポイント」「販売開始から一週間以内の作品へのレビューの場合更に+50ポイント」「レビュー掲載先着3名様までは更に+50ポイント」となっています。

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サークルSBD 2011/12/05 00:00

フェチサイト探訪 TTLさん

常日頃より当ブログを御愛顧下さっている皆様にはもう御周知の通り、私SBDは極めて重度のおなら責めフェチ且つドMな人間なわけですが、そうした"ドM男性向け""ドS少女萌え""臭い責め"のジャンルにおいて熱い注目を集めておられる絵師様、「TTL」さんのサイトについてご紹介をさせて頂きます。

『苦しむには死ぬことよりも、もっと勇気がいる』(ナポレオン・ボナパルトの言葉)
『生まれた時から地獄に慣れているから、天国へ行けなんて言われると恐怖で震え上がってしまう』(映画監督・黒澤明の言葉)

自らのコケティッシュな肉体やそこから発散される強烈な臭気を武器に、獲物となった男の子を嬲り、汚辱し、蹂躙する女子様(主にJS。たまにおねーさんも。)たち・・・・・。苦悶する獲物の、何とうまやらしいことか。
そうしたフェチにはたまらないシチュエーションを、美麗なイラストと妄想を刺激して止まない文章とで表現し続けられてきたTTLさんの作品群には、かねてより私も大変お世話になっています。

個人的な趣味からくる見解ではありますが、やはり何と言ってもオナラ責め描写のあるイラストの破壊力は凄まじいものがあり、獲物くん頼むからそこを代わって下さいよと心底願わざるを得ません。
特に、得意技がガス責めという設定のある少女・・・長めのショートヘアといいますか短めのミディアムの髪を、こめかみ辺りに髪留めでちょっと留めているあの娘。
名前は「寺島みずき」ちゃん(11)というそうですが、みずきちゃん萌え。何度でも言います。みずきちゃん萌えー!自分の好みの髪型は定番ながら黒髪のストレートロングヘアだったのですが、みずきちゃんによってそれが覆された気が致します。


TTLさんはpixivでの御活躍のほか、最近ではブログも開設しておられ、今後ともますますの御発展が期待されます。
TTLさんのブログ「加虐少女」のトップページはリンク集欄またはこちらからどうぞ。
pixivページのトップ(プロフィール画面)はこちら。(要pixivログイン)
また、本日発売のムック『別冊秘性 女神の愛』にも書き下ろしのイラストとSSが掲載されているとの事です!私も当然予約しております!早く届かないかな~。
それにしても、ドM業界にこの人ありというあの春川ナミオ先生たちと同じ土俵で競演されるとは、何と羨ましいのでしょうか。くぅっ!
私ももっと絵を描くぅ!そんでもって、激アツいコンテンツをいっぱい出すんだぁ!
そんな私の指針であり目標な方の一人が、TTLさんなのです。

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サークルSBD 2011/09/23 23:30

フェチサイト探訪 ピラーさん

他のオナラフェチ系作家さん方のグッドなジョブの数々を御紹介させて頂きます。

『他者の喜びの中に自分の喜びを見出せること
そこに幸福の秘訣がある。』 (作家ジョルジュ・ベルナノスの言葉)

今回はピラーさんです。ピラーさんのHP『ピラーのおんぼろ小屋』は運営開始からもうかれこれ7年目になろうという老舗のサイトですから、熱心なオナラフェチの方は既に御存知の向きも多いことでしょう。
サイト内には、大別して三種のコンテンツと、BBSやリンク集などが収められています。

コンテンツ三本柱のうち一つめは、ピラーさん自作の絵や小説、アニメーション、ゲームなどです。
絵にはイラスト形式とCG形式の物があり、同じ作者の手になる作品ながら、その両方で各々異なる味わいがあります。サイトのマスコットキャラクターもここで見る事ができます。
小説は、甘い恋愛ものを基本としてオナラする女の子とそれに翻弄される男の子を描くタイプのものですが、特筆すべきは、放置プレイもしくは焦らしプレイがフィーチャーされている事です。オナラフェチな男の子が好きな女の子のオナラを聴いて劣情を催してしまうのを必死で耐えたり、女の子の方もその事を知っていて、オナラしながら妄想を膨らませて興奮していたり。他ではなかなか見られない新鮮なシチュエーションで、面白いですよ。
アニメーションは、自作イラストの女の子にオナラをさせているもので、爆音系のサウンドも付いています。ぶっ放されるオナラのリアルな気体表現に加え、女の子の表情が放出後には恥じらうように変化したり、姿勢を変えて再度放屁したりと、毎度凝ったものに仕上がっています。
ゲームは、製品版を現在鋭意製作中とのことで、置かれているのは試作品のみとなりますが、短いながらもきっちり遊べる物となっています。基本的には選択肢で分岐するオーソドックスなADVタイプですが、画面の女の子の体のあちこちを触ってフラグを立てる、タッチャブルビューという一風変わった方式を一部に採用。また、オナラの出やすい女の子として前述の小説のキャラ、摩希ちゃんが再登場してくれています。摩希ちゃん可愛いよ摩希ちゃん。

ゲームといえば、ピラーさんはDLsite.comにて『ピラーのがらくた箱。』というオナラフェチ向け作品のダウンロード販売もしておられまして、こちらも要注目です。
内容は、簡単に言いますと、脱衣ブロック崩しゲームが12本入った詰め合わせです。1本100円がコンセプトとのこと。
基本的な遊び方は、マウスで画面下部のパッドを左右に動かして、動き回るボールが画面下に落ちないように跳ね返していくというポピュラーなタイプで、画面内の女の子の衣服などにボールが当たるとその分だけ服が脱げていきます。
そして脱がした量がある一定値を超えると、画面が変化して・・・・・・!
単純に打ち返していくだけではなく、難しいですが角度とタイミングさえ合えば、必殺技とも呼べる貫通弾をいつでも打つ事ができ、これが狙って決まった時は一気に女の子の肌が露わになっていくのと合わせて、かなりの爽快感があります。
ゲーム中に使われている女の子の画像にはイラストのものとCGのものがあって、突き出したお尻がだんだん露わになっていくものや、徐々に透けていく巨乳が見られるものなど、各々エロいシチュエーションとサウンド付きのオナラに彩られていますが、中でも特に、格闘ゲーム『餓狼伝説』シリーズのキャラ、”不知火舞”っぽい娘が”アンディ・ボガード”っぽい青年に幸せ投げを仕掛けているものが、女の子の表情も一番可愛いですし、個人的には最もお気に入りです。
”舞”だけでなく”アンディ”の服まで脱げていくのには最初戸惑いましたが、しかし、悲惨なダメージをたたき出しそうな技をかけられてる最中にも関わらず大きくなってしまったちん○が丸見えになった図は、エロさをMAXまで引き立てるのに間違いなく一役買っていると思います。どんだけエロ気持ち良・・いや、臭くて苦しいんだろう・・・と、見てるこっちのうらやまし・・いや、緊張感もMAXです。完全にクリアすると、最後に紙芝居風の一幕が展開されるのですが、それも放屁音付きで素晴らしくえちぃ出来でした。
シンプルながらも、ゲームとして面白く仕上がっていると思います。女の子の服を少しずつ脱がせていくという行為には、本能レベルでの麻薬的快感があるのかも知れません。ブロックが崩れると表情が変わっていくのも萌えますし、良い具合にやる気を刺激してくれます。オナラフェチの方で、ブロック崩しが得意な方、脱衣という言葉に反応する方には特にオススメです。

さてサイトの話に戻りますが、コンテンツ三本柱のうち二つめは、ピラーさんによる成人向けPCゲームのレビューです。
このレビューが他のサイトのPCゲームレビューと一線を画しているのは、基本的に放屁シーンのあるゲームのみが対象であること、また、その条件さえ満たせば同人ゲームも対象に含まれるということです。
各々のゲームについての簡単な内容紹介はもちろん、システム面の使い勝手や、現在の入手難易度、放屁シーンを見る為の分岐のさせ方などもまとめられていたりして、非常に読みごたえのある、実用性の高いレビューとなっています。オナラフェチ向けのエロゲを探しておられる方は、ここを見ればどんなゲームにどんなシチュエーションでどんなオナラが登場するかがよく分かり、自分好みの一本をゲットするのにきっと役立つはず。
また、放屁シーンが主眼となってはいますが、それに付随して他のスカトロ系描写やアナルSEX、SMなどの描写の有無にも触れられている場合が多く、そちらが目当ての方にもオススメいたします。

コンテンツ三本柱の三つめは、他のオナラフェチ系作家さん達から寄せられた作品群です。
10名近い方々の手になる、オナラRPG、小説、イラストなどが、ピラーさんからのコメント付きで丁寧に保管されており、作者が変われば作品の雰囲気も放屁表現もまた変わり、作品毎にも様々な味わいがあり、賑やかにして華やかです。
また、中にはもう御本人とのコンタクトが完全に取れなくなって久しい作者さんもおられるので、Windさんの「おなら倶楽部」やsniffさんの「FartyParty」、@gakiさんの「しゅーのーけーす」や「オナラする女の子ろだ」等々と共に、二次元系オナラフェチ作品の非常に貴重なショーケースと言えるでしょう。
当ブログでも、塗り師さんに着色していただいた絵や、有難い頂き物の小説などを現在掲載させていただいておりますが、ピラーさんが実現されておられるように、このブログをなるべく長く存続させることで、これからもそれらを多くの方に楽しんでもらえますよう、また、後から来る方々の目にも止まりますよう、そして微力ながら私にもこうした文化を後世まで伝えることができますよう、願っております。

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