投稿記事

捕食の記事 (2)

サークルSBD 2012/07/23 23:30

『さよなら人類』 第四話

第四話:レミングス・著/挿絵



チリトがムキになったおかげで、カイトの命は逆に救われた。すっかり衰弱しきったせいで暫くの間検査の対象から外されたのだ。もちろん後ろにはナプラマージャの指示もあった。
しかしおけげで、カイトは重体のフリを続けて、充分な体力の回復を待つことができたのだ。


「あの人間は死ななかったんだって?」

薄暗い洞窟に似た部屋の中で、不満げな声が浮かんだ。
ゴツゴツした壁面の一部が赤色に光り、血を水に薄めたようなぼやっとした光に包まれていた。
ディーバ・ルは壁から伸びた血管のような管を持ち、ラッパ状になった先端に話しかけた。

「でも死ななくて助かったのは君もでしょチリト?
ナプラマージャの奇妙なこだわりを君だって知ってるはずでしょ?」

うつぶせのディーバ・ルのヒップが、弱い光の中で揺れた。
片手で管を握ったまま、もう片方で前髪を掻き分ける仕草をした。その時ジャンボサイズの胸に半身の体重がのしかかった。
その途端、薄赤い光が床を照らす中で、ディーバ・ルの影になった部分に 苦しそうに荒げる息が聞こえる。

「ふー、」

ディーバ・ルの自慢のバストの隙間から、大岩をこじあけるかのように、筋肉の震える指が這いでた。そして若干間を置いて、少しの隙間から、人間の髪の毛が覗いた。


「ふー、ふー、」
地底から響くような呼吸に気付き、ディーバ・ルは片肘をついて体重を緩めたが、その顔に押し潰した者を思う影は少しもなかった。

「ところであの人間を捕獲した南東エリアに、まだ人間のコミュニティが残ってる話は聞いた?このところ収穫が少ないチリトなら聞き逃せない話だと思うけど?」

管の向こうから喜々とした声が聞こえる。
「あたし?あたしは別にいいよ。あなたとは違うも・・の。」
一息つくような声だった。ディーバ・ルの腰が左右に軽く振られた。

「ぅ・・」

つまるような声。
下敷きになっていた男のぺニスはディーバ・ルの太腿の間にあり、
今の動きで、腿の摩擦を受けたペニスが呼応したのだ。

ムッッチリとした怠惰な感触が続く。

「ぅ・・ぅぅ・・」
ビュビュ・・・

ディーバ・ルの腰が左右した時、部屋の明かりが太腿に反射した。そしてその光が伸長するように白い液が跳ね上がり、周りの太腿や尻に降り掛かると、潮が引くように吸い込まれていった。
ディーバ・ルは、ほんのつまみ食いをしたあと、男の顔をジッと不思議そうに覗き込み、

「・・・・どう?人間君?
私とお友達になれそう?

私?

私はあなたを見てるととってもつらい、
だって食べるの我慢しなきゃならないもの…」
舌舐めずりをしながら男に話し掛けた。
そしてすぐに醒めた表情になり、

「・・・・フン、まじに人間を飼うなんて、そんな奴の神経がわからないわ。こうして食事をする時さえ自分を随分諫めてるっていうのに、意味なく側に置いておくなんて到底私には耐えられない!」


男を飲み込むような胸を少しズラし、今の言葉に恐々とする男の顔を見て、クスっと笑う。

「でも大丈夫よ、人間は一度に搾るよりじょじょに搾った方が出る量が多い事は知ってるの、・・・うーん、でもいっぺん一度に搾ってみようか?」
悪戯っぽく笑い、首を横に振る男の表情を楽しむ。

管の向こうからはチリトの声が返事をしないディーバ・ルを探す。
ディーバ・ルの笑顔は嫌がる相手を見て楽しむ物から次第に好奇心の目に変わっていった。
「そう言えばあたし、もう何年も本気を出したことなかったわ。」
ディーバ・ルの目の変化に気付いた男の反応は激しくなった。肩から上すべてを振って否定の意志を示した。


ディーバ・ルの瞳の輝き方はかわらなかった。じょじょにバストを男の上に降ろし、盛んに暴れる首を制した。周りの弾力に力が分散される事に気付いた男は息をあげて飲み込まれながらディーバ・ルを睨むことしかできない。

「ふーん、怖くていい顔するじゃない、」

男の目はまるで親の仇のような憎悪に満ちていた。
ナイルスネイル達の性技を受けて、本能が砕けるような快感を味わってしまった者の最後の抵抗は、相手を脳の奥から憎むことである。そうすることで快感を紛らわすのだ。

ディーバ・ルはそれも承知しているかのように含み笑いをして男の頬をなぜるようなキスをした。
しかし男は蠅がついたように顔をしかめる。男は自由の利かない体に愛想を尽かすことで返って勇気が沸いたようだ。
男の気持ちを代弁するならば、
「自分は死ぬかもしれない、しかし気持ちでは決して屈しない。どこまでも抵抗してやる!」
憎しみ溢れる瞳が、徹底して目の前の女の愛撫を否定した。


ちょっとしてディーバ・ルは半身を少し上げ、男の顔は少し自由になった。

少し高い所から見下ろすディーバ・ル。あらん限りの憎悪を眼光に乗せてぶつける男。男に心の隙など無かった。
赤く滲む部屋のなかで、曲線に富んだディーバ・ルの体が大きなバストを携えて男の前にそびえ立つ。
しばらくして睨み合いを続けていた男が苦しむような声で呻いた。


やがてディーバ・ルが囁いた。

「フフフ・・どう?ちょと素敵でしょ?」

ナイルスネイルの外観は人間と同じだが機能はまったく違う。人間にはない筋肉が発達しているのだ。

「う・・ぷ、う・・ぷ」

男の口の中に、何かが強引に潜り込もうとしている。男は懸命に口を締めてそれを拒むが、じょじょに歯と歯に隙間ができてくる。

「ぐむむむ・・ぐもおお…!」
「ハハハ、あーん、もう少し、もう少しで私の乳首でお口いっぱいになるわよー♪」

ディーバ・ルが動かしていたのはなんと少し大きめな乳首だった。ピンク色のぷりぷりな乳首が男の顎の力に勝り、その唾液の中に突入した。

「ふもおお!」
「あはははは!」

ディーバ・ルの乳首が男の口の中を逆に舐め回す。柔らかくて弾力ある乳首は口のどんな隙間にも入り込み、丹念に刺激する。

「あっぷああああ!」
「あれ?おやおや…」

ディーバ・ルは溜め息をついてみせた。
男のペニスに再び力が入り始めたのを太腿の間に感じたからだ。

「むあああ!」

メキメキと音を立てて男のペニスはむっちりと締め付ける太腿の間に割り込んでいく。もう男の意思では無い。

「よかったわね?こんなにいっぱい乳首を舐めれて。嬉しいって大喜びじゃない。」

憎むことで悟りを開いたように快楽から逃れたはずだったが、体中を巡る快感のシグナルにもはや心持ちでどうこうできる状態では無かった。

「さっきみたいに睨まないの?」

ディーバ・ルは勝手に自分の太腿で脈を打ちながら、乳首で口を犯される男を、微笑して眺めた。

柔らかいピンク色の塊が唾液に濡れて輝きながら男の口をまさぐる。

「んももお!!」

太腿の締め付けに男の背筋が反り返る。

「あ~ら、素敵だこと。勝手に私の太腿をこじあけて、そのか弱い皮膚が締め付けられるのが
たまらないんでしょ?いいのよ、私にいっぱいちょうだい♪」
「んがうぅぅ!!」

こぼれそうな程に目をひんむいて、男は丸太のような太腿に埋もれた先端から、命の白液を搾り出した。
ビュビュビュビュビュビュ・・

「あー、すごい量ねー。昨日食べ尽くした人間と同じぐらい・・いえ、あなたの方が少ないかも・・。昨日の奴はもっと生きながらミイラに近い顔になってたし。 でも、もっとも表情は気持ちよさそうだったけど。」


人間をどこまでもぞんざいに扱う敵、仲間を思う気持ち、その気持ちが男に火をつけた。

ガブ!!

「!」

男は失いかけていた闘志に火をともし、目の前の憎い乳首に歯を立てた。
ガリガリガリ!!

「キャア!!」

ディーバ・ルは堪らず声をあげた。
「ああ あ!!


いい!

いいわ!!

もっと!もっと!やってぇぇぇぇ!!」



ディーバ・ルの唇から涎がこぼれ、嘲り笑った瞳は、余裕のない恍惚の表情へと変貌した。

ガコォォォ!

凄まじい破壊音が男の脳裏をつんざく。
ディーバ・ルの激情を感じ取った乳首が、その猛烈な押し込みで男の顎を破壊したのだ。


「んが!ゴボォゥォ!」


乳首が這うなどという生易しい物ではなかった。それは男を口から引き裂かんとするほどの勢いだった。

「ああぁぁ!素敵! お前の命は私がもらうからねー!!」

太腿がかつて見た事の無い動き、人間では不可能な振動を始め、男のペニスを下から優しい万力のような矛盾した力で押し上げる。

ムニュゥゥゥ・・・・・・・・
ムニュゥゥゥ・・・・・・・・

男の表情はすでに喜怒哀楽では判別できない物になっていた。
「あはは、・・・わからないでしょ?気持ちいいって言うべきものかどうかも。
無理も無いわ、この星のどんな技術をもってしても表現できない快楽だもの。ところが私の太腿は、こんな涼しい顔でやってのけちゃうの。」

ムニュゥゥゥ・・・・・・・・

ドバ!!!
怪しい光に包まれた小部屋の中で、女が一人伏せっている。
その女の尻の位置から、白い噴水が立ち昇った。

ドバドバドバ・・・・!!!
しばらくその噴水は止まらなかった。
女の体は、落ちてくる雫をキャッチしてその奥に生命エネルギーとして蓄える。
噴出元の男はいるはずなのだが、噴出が始まってから徐々にディーバ・ルの胸の奥に引きずり込まれていった。そしてもう外からは見えない。
ディーバ・ルは完全に噴出が止むまで動かなかったが、やがて止まると同時に立ち上がり、床に張り付いた、小さい人型の干物のような物を拾った。

「・・・・ナプラマージャ、あなたはきっと私の事が嫌いでしょうね、
でも、私もあなたのことが嫌いなの。

シ・ケーニョ様の様子を見る限り、儀式の日は近い・・・
私は負けないわよ・・・・ナプラマージャ・・・・。」

ディーバ・ルは険しい表情で虚空を睨み、儀式の日の事を想像した。
そして手に持っていた人型の干物を口にくわえると、
唇をうごめかして少しずつ口の中に飲み込んでいった。


続く

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

サークルSBD 2012/07/17 23:30

『さよなら人類』 第二話

第二話:レミングス・著



ナプラマージャ・・・

ナイルスネイルという最も人類が憎むべき敵。その一人が今俺に向かって笑顔で語りかける。どういうつもりなのかわからない・・・。その笑顔には地球をここまで追い込んだ侵略者としての自覚はないようだ。人と人の笑顔のように、優しさと安心を与える笑顔だ。
いや、馬鹿野郎!
お前の家族だってあいつらに殺されたんだろう?しかも今俺の命を握っている敵を、許そうとしてどうする!?

自己紹介を終えたあと、笑顔に見とれた俺はボディーに一発もらい、気がついた時には見たこともない建造物の中にいた。

「・・・ここは・・・」
壁は全体が茶褐色で、虫の腹のようにデコボコしている。天井はとても高く、壁自体が赤く光っている。
「・・・俺はあのナイルスネイルに運ばれてここまで来たようだな。しかし奴らの姿が見えないな。」
カイトは部屋の奥まで見渡してみたが、何もめぼしいものはない。漠然と、そこに空間が広がっていた。

すると、

スー・・・
壁の一部がほとんど音を立てずに開いた。

「!!」
次の瞬間、開いた口から触手のような物が飛び出し、カイトの体にグルグルに絡まった。
「う・・・うわ!」
そしてカイトがそれを振りほどこうという気になったとき、触手はカイトを掴んだまま物凄い勢いで部屋の外にひっぱった。

ビュン!

部屋の外に出てもカイトの移動は終わらない。長い虫腹の通路を、口も利けないくらいのスピードで進む。

ゴウ!

やがて再び別な広い空間に出た。その移動スピードの速さを物語るように、部屋中に抜けるような音が響き渡る。
ポーンッ


わけがわからず、放心状態のまま勢いついて転がるカイト、しかしすぐに彼に声を掛ける者がいた。
「起きろ、そして部屋の正面を見ろ。」
揺れる頭を必死に正常に戻し、目をやるとそこにはさっきのナイルスネイルがいた。彼女は部屋の中心を睨んでいる。
「ナ・・ナプラ・・・ナプラマージャ・・・」
拘束されているわけではないが、逃げることは場所を考えても、能力を考えても無理である。カイトは素直に部屋の正面を向いた。
「げ・・・!!」


デコボコ岩のクレータのような場所の真ん中に、一人のナイルスネイルが座禅をくんでいる。
髪は紫色で長く妖美にうねり、体には見慣れぬ装飾品と文様が書き込まれ、肌はナプラマージャとは違い、全体的に白く、うっすらとパールの輝きを放っているように見える。
なにやら瞑想にふけっているようだが、やがてその険しい表情がとかれ、鋭い眼光がゆっくりと開く。
するとナイルスネイルに共通する怪しい美しさがその女にも溢れた。

「・・し・・・しかし・・・」
カイトが驚きツバを飲み込んだのも無理はない。ナイルスネイル達は、通常2メートルぐらいで、すごく背の高い人間、といった程度なのだが、そのナイルスネイルは違った。

「し・・・4、5メートルはあるな・・・」
巨大なダンプカーが人の形をしている迫力である。しかしその透明感溢れる肌、心が自然に吸い込まれるような彼女の香りで、それほどの量感は感じなかった。
「あの御方はシ・ケーニョ様だ。」
ナプラマージャはボソっと言った。
「シ・ケーニョ・・?」

ナプラマージャは「様」と呼んだ、やはりこいつらの中にも身分階級のようなものがあるのだな。まぁ、俺が知ったところで誰に伝える事もできないけど・・。
心の中でカイトがそう呟いた途端に、ナプラマージャはカイトの襟を掴むと、屈んでいたカイトを頭より高く持ち上げた。
「わ!」

気がつくと、その巨大なナイルスネイルを中心に、あちこちにナイルスネイル達が立っている。そして手には自分のように人間を持ち上げている。
「ケーニョ!」「ケーニョ!」
「ケーニョ!」
「ケーニョ!」「ケーニョ!」
「ケーニョ!」

期せずして「ケーニョ」コールが湧き上がる、わけがわからず、抵抗も出来ずにぶらさがるカイト。
やがてその騒ぎの中、中央のシ・ケーニョが一人のナイルスネイルを指さした。
さされたナイルスナイルはそこから、まるでゴミを投げるように掴んでいた人間をほおった。

ドサッ

中央に投げ出された人間の男。衝撃で足を痛めたらしい、押さえながらうめく。
立ち上がろうとせず、座ったままの姿勢で、にじりよるシ・ケーニョ。
男は足の痛みも忘れて走り出す。途端にクレーター一帯に地震のような連続した振動が広がった。
ドドドドドドド
男は足を取られて地面に倒れる。その隙に巨大なナイルスネイルが男の足を掴んだ。
ヒィィィィィ・・・・
遠くからか細い悲鳴が聞こえた。男はそのまま、正座を横に崩した姿勢のシ・ケーニョの体に寄せられた。
シ・ケーニョが男に覆い被さると、その豊満な胸も手伝って、男の体は全く見えなった。
大きな白く澄んだ女の体に包まれて、男の悲鳴も聞きづらくなっていく。

カイトにはシ・ケーニョの顔が横からチラリと見えた。恍惚な表情を浮かべ、今恐らく胸から腹の間にいる男を、その冷たく光る体で味わっているのだろう。
怪しい腰の動きが始まる。それは人間の本能に直接響くような、「誘惑」を高純度に絞り上げたような、そんな男にとって最も危険なシグナルだった。
カイトは思わず目を背けた。これ以上見つめていると、そのゆっくり生生しく呼びかける腰に応えて、その肉壁の中に自分も引き込まれそうになるからである。

シ・ケーニョの胸、胸から背中、背中から腰にかけて妖美に蠢く。冷たい肌が重なりあい、擦れあい、つぶしあう。
ウットリした瞳で背筋が凍るような笑みを浮かべる。
どんな精錬された鉄も溶かすような熱く甘い蹂躙。彼女の肌の中で、さっきの彼は何を思う。
地面に押し付けられ、雲のように形を変えるおおきな乳房を見ながらカイトは男の事を考えていた。

「それ以上見るな。お前の命がないぞ。」
見とれるカイトを制したのはナプラマージャだった。彼女はカイトの襟を再び掴むと、ここまで運んできた触手のところへ持って行こうとした。
「ま・・待て」
無言で立ち止まるナプラマージャ
「あ・・あいつはどうなる?あの大きな女は何をしているんだ?」
「知ってどうする」
無駄なことは聞くなと言いたいようだ。ナプラマージャが合図すると触手がこちらに向かってくる。
「言え!俺はお前の命を救った人間だぞ!?今までのような一方的に屈するだけの人間とは違うんだ!」
何ができるわけでもないのに、強い姿勢で出た。
「・・・・フ、いいだろう、知りたければ教えてやるさ。別に隠すことじゃないからな。」
そう前置きしてナプラマージャは説明を始めた
「シ・ケーニョ様は栄養を摂取されているのだ。食事はさっきの男だ。」
ギョ!
「な・・・なんだって?まさかあの女の腹には口がついていて・・・」
「愚かな、私の腹を見ろ、口などついていないだろう。我々は肌から摂取することができるのだ。」
ギョギョ!
襟をつかまれていたが、カイトはとっさにナプラマージャから離れようともがいた。想像もつかないがこの肌に触れるのは危険だ、恐ろしい!
するとナプラマージャはニヤリと笑って、カイトを自分の体に寄せて、その長い腕で抱きしめた。張りのある、何年でもしがみ付いていたくなる肌感。思わず手を腰に巻いてしまう。これまた弾力に富んだ感触。ウットリ・・・
「ハッ!!た、たすけて!!」
一瞬心が溶けそうになるも、肌が触れてる事に気づき叫んだ。
しかし、何もおきなかった。
「愚か者、肌から噛み付くわけではない。お前らから生命のエネルギーを液体として取り出し、それを肌から吸収するのだ。」
「せ、生命のエネルギー??」
見てみろ、とナプラマージャがアゴで指した。
シ・ケーニョは体全体から光る汗を流し、舌をだらしなく垂らして息づかいが荒い。女体が沸騰しているようにも見える。その犇(ひしめ)きはさっきより激しく、乳房が、腰が、太ももが、一体となって中心に向かって押しつぶす。
「ああ・・」
初めてシ・ケーニョが声を漏らす。

「今、ケーニョ様の体は食事前の最高の状態に仕上がったのだ。」
「なに、今食事しているのではないのか?」
垂らしていた舌で、その唇を舐めまわす。熱い熱い吐息が空間に溶ける。
汗にまみれた壮大な肉体が、今、獲物を一気に搾り出さんと締め付けた。
ギュゥゥゥゥ・・・
「ぁぁぁ・・・」
聞き逃すほど小さい悲鳴が聞こえ、彼女の肌と肌の隙間から、白い液体が勢いよく飛び出した。

ブシュウゥゥゥ!!!
「な、なんだあれは!?」
「あれが生命のエネルギー体さ。さっきの人間から出されたものだ。我々は、特にシ・ケーニョ様は相手の生命体に制御しきれぬほどの快感、絶頂感を与えて、一瞬のうちに命を具現化するのだ。」

シ・ケーニョは飛び散った白い液体を丁寧に集め、手ですくうと自分の胸に塗りたくった。
「そして、あのように皮膚から吸収するのだ。相手の生き物は、それが死への道のりだと知っていてもその快感から逃れることはできない、こちらがやめない限り。ま、我々にとっては最高のご馳走だから見逃す気もないがな。」

胸に塗られた液体は、女の皮膚に吸われて消えていった。満足そうなシ・ケーニョ。
「し、食事が終わったわけか。・・・男は?」
「あそこにある皮がそうだ。」
「う、・・・もういい。・・・ところで、シ・ケーニョというナイルスネイル、さっきから俺を見ているようなのだが・・・」
「御気に召されたかな」
「ひ・・・・」
「だからさっさと行けと言ったのだ。」
「お・・俺も、俺もああなるのか???」
泣きそうなカイトの表情を一瞥して
「そうならないようにしてやろうと考えている。だから大人しくしていた方が身のためだぞ。」
「・・・・・・・・」
大人しくしていてどうなる?どちらにしろここは出れない。助からない。抵抗すればああなってしまう・・・

「ナプちゃーん。」
落ち込んだカイトとは別に、明るく弾ける声が、ナプラマージャを呼び止めた。
「・・おお、チリト。獲物は取れたかい?」
ナプラマージャが親しそうにもう一人現れたナイルスネイルと話始めた。
「んん・・・ぜーんぜん。いいな、ナプちゃんは才能があって、あたしてんでダメェ。」

そのナイルスネイルは他の者とは違い、少し小ぶり・・・子供のように見える。
「ナプちゃんのオチチ相変わらずでかーね!」
「こら!」
緊張感もまるでない。ナプラマージャにじゃれ付く。
「ははは・・・・」
こちらも見ているだけで緊張が抜ける。絶望的な状況なのに、細々と笑うことができた。

ガシッ
カイトはその瞬間、自分の体がその子供に持ち上げられたことが信じられなかった。
「!?え?」
「チリトやめな。」
「こいつが今アタシを笑ったよ?ただの食い物のくせに。食われたいか?」

ぞっとするほど冷たい目。さっきまでの子猫のような瞳はカイトを串刺しにする危険な瞳に変わっていた。カイトの首は、その細い指で締め上げられている。

「やめな、人間はすぐに死んでしまう。」
「アタシに頂戴よ、この人間、アタシが食べたい。」

小さな口から小さな舌が這い出して唇を濡らした。
呼吸が苦しい。カイトの顔が青ざめていく。
「チリト、私の言うことが聞こえないのか?」
「・・・・・・・」
その女の子はカイトを下ろした。並んでみて気づいたのだが、ナプラマージャが大きいから小さく見えただけで、小さい女の子というにはやっぱり大きい・・・

「ごめぇーさぁーい、ちょっとふざけましたー!」
殺伐とした雰囲気を強引にゼロに戻す口調。睨みつけるナプラマージャに擦り寄る。
「ナプちゃん、怒っちゃやーだよ?チリトはこういう子なんだから、大人なナプちゃんが我慢しなきゃ!!」
ナプラマージャはチリトを押しのけた。
「あーあ。じゃ、またね! ナマイキな人間君もまたね! ばーい!」

軽快なステップで走り去って行く。
ナプラマージャは呆然とするカイトをさっさと触手に絡ませ、部屋に戻した。


続く

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索