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サークルSBD 2012/07/23 23:30

『さよなら人類』 第四話

第四話:レミングス・著/挿絵



チリトがムキになったおかげで、カイトの命は逆に救われた。すっかり衰弱しきったせいで暫くの間検査の対象から外されたのだ。もちろん後ろにはナプラマージャの指示もあった。
しかしおけげで、カイトは重体のフリを続けて、充分な体力の回復を待つことができたのだ。


「あの人間は死ななかったんだって?」

薄暗い洞窟に似た部屋の中で、不満げな声が浮かんだ。
ゴツゴツした壁面の一部が赤色に光り、血を水に薄めたようなぼやっとした光に包まれていた。
ディーバ・ルは壁から伸びた血管のような管を持ち、ラッパ状になった先端に話しかけた。

「でも死ななくて助かったのは君もでしょチリト?
ナプラマージャの奇妙なこだわりを君だって知ってるはずでしょ?」

うつぶせのディーバ・ルのヒップが、弱い光の中で揺れた。
片手で管を握ったまま、もう片方で前髪を掻き分ける仕草をした。その時ジャンボサイズの胸に半身の体重がのしかかった。
その途端、薄赤い光が床を照らす中で、ディーバ・ルの影になった部分に 苦しそうに荒げる息が聞こえる。

「ふー、」

ディーバ・ルの自慢のバストの隙間から、大岩をこじあけるかのように、筋肉の震える指が這いでた。そして若干間を置いて、少しの隙間から、人間の髪の毛が覗いた。


「ふー、ふー、」
地底から響くような呼吸に気付き、ディーバ・ルは片肘をついて体重を緩めたが、その顔に押し潰した者を思う影は少しもなかった。

「ところであの人間を捕獲した南東エリアに、まだ人間のコミュニティが残ってる話は聞いた?このところ収穫が少ないチリトなら聞き逃せない話だと思うけど?」

管の向こうから喜々とした声が聞こえる。
「あたし?あたしは別にいいよ。あなたとは違うも・・の。」
一息つくような声だった。ディーバ・ルの腰が左右に軽く振られた。

「ぅ・・」

つまるような声。
下敷きになっていた男のぺニスはディーバ・ルの太腿の間にあり、
今の動きで、腿の摩擦を受けたペニスが呼応したのだ。

ムッッチリとした怠惰な感触が続く。

「ぅ・・ぅぅ・・」
ビュビュ・・・

ディーバ・ルの腰が左右した時、部屋の明かりが太腿に反射した。そしてその光が伸長するように白い液が跳ね上がり、周りの太腿や尻に降り掛かると、潮が引くように吸い込まれていった。
ディーバ・ルは、ほんのつまみ食いをしたあと、男の顔をジッと不思議そうに覗き込み、

「・・・・どう?人間君?
私とお友達になれそう?

私?

私はあなたを見てるととってもつらい、
だって食べるの我慢しなきゃならないもの…」
舌舐めずりをしながら男に話し掛けた。
そしてすぐに醒めた表情になり、

「・・・・フン、まじに人間を飼うなんて、そんな奴の神経がわからないわ。こうして食事をする時さえ自分を随分諫めてるっていうのに、意味なく側に置いておくなんて到底私には耐えられない!」


男を飲み込むような胸を少しズラし、今の言葉に恐々とする男の顔を見て、クスっと笑う。

「でも大丈夫よ、人間は一度に搾るよりじょじょに搾った方が出る量が多い事は知ってるの、・・・うーん、でもいっぺん一度に搾ってみようか?」
悪戯っぽく笑い、首を横に振る男の表情を楽しむ。

管の向こうからはチリトの声が返事をしないディーバ・ルを探す。
ディーバ・ルの笑顔は嫌がる相手を見て楽しむ物から次第に好奇心の目に変わっていった。
「そう言えばあたし、もう何年も本気を出したことなかったわ。」
ディーバ・ルの目の変化に気付いた男の反応は激しくなった。肩から上すべてを振って否定の意志を示した。


ディーバ・ルの瞳の輝き方はかわらなかった。じょじょにバストを男の上に降ろし、盛んに暴れる首を制した。周りの弾力に力が分散される事に気付いた男は息をあげて飲み込まれながらディーバ・ルを睨むことしかできない。

「ふーん、怖くていい顔するじゃない、」

男の目はまるで親の仇のような憎悪に満ちていた。
ナイルスネイル達の性技を受けて、本能が砕けるような快感を味わってしまった者の最後の抵抗は、相手を脳の奥から憎むことである。そうすることで快感を紛らわすのだ。

ディーバ・ルはそれも承知しているかのように含み笑いをして男の頬をなぜるようなキスをした。
しかし男は蠅がついたように顔をしかめる。男は自由の利かない体に愛想を尽かすことで返って勇気が沸いたようだ。
男の気持ちを代弁するならば、
「自分は死ぬかもしれない、しかし気持ちでは決して屈しない。どこまでも抵抗してやる!」
憎しみ溢れる瞳が、徹底して目の前の女の愛撫を否定した。


ちょっとしてディーバ・ルは半身を少し上げ、男の顔は少し自由になった。

少し高い所から見下ろすディーバ・ル。あらん限りの憎悪を眼光に乗せてぶつける男。男に心の隙など無かった。
赤く滲む部屋のなかで、曲線に富んだディーバ・ルの体が大きなバストを携えて男の前にそびえ立つ。
しばらくして睨み合いを続けていた男が苦しむような声で呻いた。


やがてディーバ・ルが囁いた。

「フフフ・・どう?ちょと素敵でしょ?」

ナイルスネイルの外観は人間と同じだが機能はまったく違う。人間にはない筋肉が発達しているのだ。

「う・・ぷ、う・・ぷ」

男の口の中に、何かが強引に潜り込もうとしている。男は懸命に口を締めてそれを拒むが、じょじょに歯と歯に隙間ができてくる。

「ぐむむむ・・ぐもおお…!」
「ハハハ、あーん、もう少し、もう少しで私の乳首でお口いっぱいになるわよー♪」

ディーバ・ルが動かしていたのはなんと少し大きめな乳首だった。ピンク色のぷりぷりな乳首が男の顎の力に勝り、その唾液の中に突入した。

「ふもおお!」
「あはははは!」

ディーバ・ルの乳首が男の口の中を逆に舐め回す。柔らかくて弾力ある乳首は口のどんな隙間にも入り込み、丹念に刺激する。

「あっぷああああ!」
「あれ?おやおや…」

ディーバ・ルは溜め息をついてみせた。
男のペニスに再び力が入り始めたのを太腿の間に感じたからだ。

「むあああ!」

メキメキと音を立てて男のペニスはむっちりと締め付ける太腿の間に割り込んでいく。もう男の意思では無い。

「よかったわね?こんなにいっぱい乳首を舐めれて。嬉しいって大喜びじゃない。」

憎むことで悟りを開いたように快楽から逃れたはずだったが、体中を巡る快感のシグナルにもはや心持ちでどうこうできる状態では無かった。

「さっきみたいに睨まないの?」

ディーバ・ルは勝手に自分の太腿で脈を打ちながら、乳首で口を犯される男を、微笑して眺めた。

柔らかいピンク色の塊が唾液に濡れて輝きながら男の口をまさぐる。

「んももお!!」

太腿の締め付けに男の背筋が反り返る。

「あ~ら、素敵だこと。勝手に私の太腿をこじあけて、そのか弱い皮膚が締め付けられるのが
たまらないんでしょ?いいのよ、私にいっぱいちょうだい♪」
「んがうぅぅ!!」

こぼれそうな程に目をひんむいて、男は丸太のような太腿に埋もれた先端から、命の白液を搾り出した。
ビュビュビュビュビュビュ・・

「あー、すごい量ねー。昨日食べ尽くした人間と同じぐらい・・いえ、あなたの方が少ないかも・・。昨日の奴はもっと生きながらミイラに近い顔になってたし。 でも、もっとも表情は気持ちよさそうだったけど。」


人間をどこまでもぞんざいに扱う敵、仲間を思う気持ち、その気持ちが男に火をつけた。

ガブ!!

「!」

男は失いかけていた闘志に火をともし、目の前の憎い乳首に歯を立てた。
ガリガリガリ!!

「キャア!!」

ディーバ・ルは堪らず声をあげた。
「ああ あ!!


いい!

いいわ!!

もっと!もっと!やってぇぇぇぇ!!」



ディーバ・ルの唇から涎がこぼれ、嘲り笑った瞳は、余裕のない恍惚の表情へと変貌した。

ガコォォォ!

凄まじい破壊音が男の脳裏をつんざく。
ディーバ・ルの激情を感じ取った乳首が、その猛烈な押し込みで男の顎を破壊したのだ。


「んが!ゴボォゥォ!」


乳首が這うなどという生易しい物ではなかった。それは男を口から引き裂かんとするほどの勢いだった。

「ああぁぁ!素敵! お前の命は私がもらうからねー!!」

太腿がかつて見た事の無い動き、人間では不可能な振動を始め、男のペニスを下から優しい万力のような矛盾した力で押し上げる。

ムニュゥゥゥ・・・・・・・・
ムニュゥゥゥ・・・・・・・・

男の表情はすでに喜怒哀楽では判別できない物になっていた。
「あはは、・・・わからないでしょ?気持ちいいって言うべきものかどうかも。
無理も無いわ、この星のどんな技術をもってしても表現できない快楽だもの。ところが私の太腿は、こんな涼しい顔でやってのけちゃうの。」

ムニュゥゥゥ・・・・・・・・

ドバ!!!
怪しい光に包まれた小部屋の中で、女が一人伏せっている。
その女の尻の位置から、白い噴水が立ち昇った。

ドバドバドバ・・・・!!!
しばらくその噴水は止まらなかった。
女の体は、落ちてくる雫をキャッチしてその奥に生命エネルギーとして蓄える。
噴出元の男はいるはずなのだが、噴出が始まってから徐々にディーバ・ルの胸の奥に引きずり込まれていった。そしてもう外からは見えない。
ディーバ・ルは完全に噴出が止むまで動かなかったが、やがて止まると同時に立ち上がり、床に張り付いた、小さい人型の干物のような物を拾った。

「・・・・ナプラマージャ、あなたはきっと私の事が嫌いでしょうね、
でも、私もあなたのことが嫌いなの。

シ・ケーニョ様の様子を見る限り、儀式の日は近い・・・
私は負けないわよ・・・・ナプラマージャ・・・・。」

ディーバ・ルは険しい表情で虚空を睨み、儀式の日の事を想像した。
そして手に持っていた人型の干物を口にくわえると、
唇をうごめかして少しずつ口の中に飲み込んでいった。


続く

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サークルSBD 2012/07/20 23:30

『さよなら人類』 第三話

第三話:レミングス・著/挿絵



「ナプラマージャ・・・・」
カイトを送ったナプラマージャの背後から、威厳に満ちた声がかけられた。
「シ・ケーニョ様。」
ナプラマージャはそびえ立つ自分のボスを見上げた。
「わたしはお前の貢物には特に期待しておるよ。」
一礼するナプラマージャ。
「フム、ついさっきまでお前の人間がここにいたようだが・・・」
クンクンと鼻を利かせる。人の匂いがするらしい。
「は、申し訳ありません。たった今部屋に戻したところです。」
表情を変えないナプラマージャ、シ・ケーニョは横目でそれを確認した。
「・・・・・・・お前はなんのために人を集めておるのだ?」
「は、シ・ケーニョ様の溢れる命と支配のためでございます。」
「よろしい・・・。」
シ・ケーニョは薄い笑みを浮かべてナプラマージャのアゴを人差し指ですくった。
「しかしながら、あの人間については申し上げなければならない事があります。」
アゴを向けられながら話を加えた。シ・ケーニョから笑みが消える。
「・・・・・ナプラマージャ・・・よく考えて喋りなさい。」
警告するようにシ・ケーニョは言った。それに構わぬ様子でナプラマージャは続けた。
「は、あの人間は何らかの病原菌に犯されている疑いがあります。」
「・・・・わたしにそのような物の影響があるというのか?」
「わかりません、しかし宇宙にはまだ未確認の宇宙病が存在します。どんな惑星でも用心はすべきかと。」
「で?」
シ・ケーニョは冷たくうながす。
「はい、我々のチームで現在もこの星の菌に関する研究を進めております。より確かな安全を確認するまでは、今少しお待ちください。」
ナプラマージャの表情をじっと伺って、
「フ・・・・、それではその研究とやらを進めるがいい。もっともその研究はいつ終わるか知れない、私もいつまで我慢できるかわからないがな・・・」
最後まで表情を変えなかったナプラマージャを置いて、シ・ケーニョは立ち去った。


巨大な影が消えたころ、再び背後から声がかかる。
「さすがね、ナプラマージャ。」
「覗き見とは趣味がよくないな、ディーバ・ル」

ナプラマージャと比べると少し肌の色が薄く、髪は短いパールブルーのナイルスネイルが、ゴツゴツした壁の陰から現れた。
大きく純粋な瞳の奥には、薄いブルーが光っていた。ナプラマージャより二周りも大きな胸が、歩みに合わせて悩ましく揺れる。

「あなたの行動は一つ一つ興味があるわ、シ・ケーニョ様に従順かと思えばやたら反抗的なところもある。どっちが本当のナプラマージャなのかしら?」
「ちゃかすな、ディーバ・ル。私は忙しいから失礼するぞ。」
「あの人間を食べる気?」
通り過ぎようとしたナプラマージャを遮って聞いた。
「あの人間はシ・ケーニョ様が目をつけられた。病原菌が無いことをハッキリさせたら、シ・ケーニョ様に献上する。」
「フフフフ・・・、あなたってホント嘘が下手ね。」
「なんのことだ。」
「でも、その無骨さが好きよ、あなたのその何事にも動じないお顔が。」
指先でうっすらとナプラマージャの顔を撫ぜる。
「いい加減にしろ、貴様には付き合っていられない。」
「フフフ、随分お気に入りのようね。かわいいペットといったところかしら? かわいそうにシ・ケーニョ様に目をつけられてしまって・・・・・」
「失礼するよ。」
無理やり通過するナプラマージャ。
「あきらめがつくように、シ・ケーニョ様の前に私が食べてあげる。」
どうしてもナプラマージャの気をひきたいようだ。翼をたたむように、バストを両手で挟みながら言った。
「シ・ケーニョ様が相手だと、怒るに怒れないけど私なら躊躇なく怒れるでしょ?」
「・・・・・・」
ディーバ・ルは壁にすりそって、鬱っぽくひたいを付けて上目遣いで挑発した。

あきれた表情でナプラマージャは切り返した。
「・・・私は気狂いに剣は向けない。」
ナプラマージャには再び振り返る気配は無かった。
「・・・・・・・ふん、あなたも器用な人よね。昨日までの食料が今日は愛しい玩具だなんて。」
ナプラマージャを見送るとつまらなそうに腕を後ろで組んで、ディーバ・ルは通路の暗闇に消えて行った。



その日からカイトの地獄と天国をごちゃまぜにしたような日々が始まった。

死を予感したかと思えばほとばしる快感に狂い、そうかと思えば再び死の淵を覗く。

「く・・・狂いそうだ・・・。」
全裸でちぢこまった姿勢で、独り言を呟いた。
カイトは現在部屋を移され、小さな穴ぐらの中に閉じ込められていた。中は暗く、光がささない。
しかし数時間に一度入り口が開き、目の慣れないカイトを少しだけ苦しめる。



この日も、入り口には、ツインテールの女性のシルエットが浮かんでいる。
チリトだ・・・

カイトはここ数日繰り返されてきた○問を振り返り、決して心が折れてしまわないよう、一息のんで強く心を張った。


「毎日毎日、お役目ご苦労だね」
立たない足腰に力を込めて、サメザメとしたまなざしのチリトに精一杯皮肉った。

入り口に仁王立ちのままチリトが応えた。
「私だって好きでやってるんじゃないもん」
「よく言うぜ、人間が美味そうなご馳走にみえるんだろう?ヨダレがでてるぜ?」
そんな挑発をチリトは無視してカイトに寄って来た。太腿から伸びる細く長い足がカイトの目線上に見える。
2、3歩でカイトに辿り着く。

チリトはカイトの病原菌の疑いを調査するために、体液の摂取役を任命されたのだ。
しかしチリトの顔は浮かなかった。

彼女達は人をイカせて命を得る。チリトにとって人をカラカラになるまでイカせることなど造作もないことだったが、先日のナプラマージャの反応から、この人間を勢いに任せて出ガラしにすることは賢くないと考えていた。
「ホントはお前なんてこの手にもう少しだけ力を込めれば骨と皮にしてやれるのにな・・。」

いつものように抵抗するカイトを押し倒して馬乗りになって呟いた。
片手でカイトの両手をガッチリ掴み、片手でカイトのペニスを包んで生めかしい手首の動きを見せていた。

この快楽に素直に従ってはならない。
いつ命を奪われても不思議ではないのだから。
それに、さっきの哀れな男もそうだが、数え切れない人間の命を奪った奴らなのだ。喜びを感じることなど、考えてみれば何と不義であろうか。

下半身に集められるテンポのよい快感。顔つきはまだ少女ではあるが、その手つきはみるだけで男に性的な興奮をもたらす。きっとペニスを握っていなくとも、この手の平の舞を見るだけで勃起してしまうだろう。

「チリトの手って綺麗でしょ?細くてスベスベでしょ?」

漏らしそうな吐息を舌を噛んで我慢した。
苦しそうな顔を、顔の筋肉を無理して普通な表情にしているカイト。

「ハハ、無理してるんだ。ほんとはチリトの手、大好きなんでしょ?近づいてキスしたいでしょ?」
「ね・・・寝言いうなよガキ。ただ近づきたいのは確かだぜ、その鶏肉みたいな手を噛み千切りたいからな。」
ざまあみろ、といった表情をしてやった。体力も気力もないがイタチ屁をしてやった。

「・・・・そう。」
ブルーの瞳が薄目になって、小さな口が笑みに歪んだ。

ニッチュウゥウゥウゥ・・・
ペニスを上からすっぽりとつぼみのように手の平が覆った。そして不自然なほどヌルっとした汗をかき、きつく握り締めた。

「はぁうわ!!」
指と指の間から逃げ場を失った空気が、汗をかきわけて吹き出る音が聞こえる。
チュウウウウゥゥゥ・・・

ば・・・ばけもの・・・
大きく仰け反りながらカイトは恐れた。

「ウソ、気持ちいいの?じゃあこれは?」
その圧迫するヌルヌルしたつぼみは、カイトの物を強引に滑りあがり、チュポンっという音とともにカイトから離れる。離れる際にカリ、亀頭部分に凄まじい快感を受けた。

「・・・・・・・・・・・」
「お?」
カイトは声を漏らさなかった。
(フーン、がんばるじゃん。)
実際には声にならなかっただけな上、立て続けの刺激に腰が動かなくなっていただけなのだ。

ドクドクドクドク・・・
「ああ!?」
チリトは慌てた。反応のないカイトから射精が始まったからだ。
「なーんだ、感じてたんじゃん。ちょっと感心してあげてたのになー。」

噴出す白濁の液体、左右に暴れる男根。それを見つめていたチリトは再び手を差し伸べた。

キュッ
再び窮屈なつぼみにカイトを収めた。
「・・・・!!!!」
ジュルルル・・・
つぼみがカイトの全体を刺激しながら走る。
「・・・・・・・!!!!」

ギュ・・・・ッポンッ!
「んあああ!!!!」
「あ、やっと声が出たね。」
「おめでとーう、おめでとーう、おめでとーう、おめでとーう・・・・♪」」
どういうつもりか、おめでとうと言う度に、カイトのペニスはつぼみに吸われ、ギュッポンッという破裂音のような音で放たれる。

ギュッポンッ・・ギュッポンッ・・・
ギュッポンッ・・・・

「おめでとーうー♪」
ギュッポンッ

動きがランダムになる。チリトの瞳は弱って死んでいく獲物を見守るライオンのように冷たい。
つぼみの運動がカイトの射精のブレーキをはずしている。ついにカイトの体が痙攣を起こした。
「んんー♪大漁である、大漁である。」
噴水のように沸き立つ射精。止まらない。チリトの手も止まらない。
「あはぁー、さいっこう。お前の今の顔、すっごい好きだよ。」
視点が定まらず、ヨダレと涙を噴出しているカイトの表情をウットリと覗いた。

(もう・・死ぬ・・・?)
カイトのかすかな脳細胞が一瞬だけ考えた。
(強がったのがよくなかったか・・・おとなしくしてればよかったのか・・・?)

「あっははははは!そういえばさっきの態度は何だったのかなー? 今のお前見てると、どうしたかったのかサッパリ意味わかんなーい!!」
これ以上ない嘲笑が大きく響いた。




「そこまでだ!!」



絶好調のチリトの手が止まった。
「ナ・・・ナプちゃん。」
入り口が開き、ナプラマージャの姿が見えた。
「チリト、どういうつもりだ?お前は研究を台無しにしたいのか?」
「ご、ごめーん。ちょっとがんばりすぎちゃったー、エヘ。」
笑顔でごまかすチリト。しかし厳しい表情のナプラマージャはごまかせない。
「さっさとサンプルを持っていけ。それだけあれば暫くは十分だ!」
「・・・え? えーー? しばらくってぇ?」
「こいつが回復するまで暫くだ。さっさと行け。」
「んもー、どうしてナプちゃんはコイツの肩を持つわけ?」
「気に入った物は、サンプルだろうと食料だろうと大事にするもんだ。お前に私の趣味をつべこべ言われるいわれはない。 行け!」

納得いかない膨れっ面で立ち上がり、部屋を出るチリト。
カイトはここで助かったことを知り、意識を失った。

嵐が去って小さな部屋は静かになった。
ナプラマージャは腰を下ろしてカイトのペニスを握り、まだまとわりいている精液をきれいに舐め取った。
そして手についた精液を舐めとりながら部屋をでて、入り口を閉めた。


続く

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サークルSBD 2012/07/17 23:30

『さよなら人類』 第二話

第二話:レミングス・著



ナプラマージャ・・・

ナイルスネイルという最も人類が憎むべき敵。その一人が今俺に向かって笑顔で語りかける。どういうつもりなのかわからない・・・。その笑顔には地球をここまで追い込んだ侵略者としての自覚はないようだ。人と人の笑顔のように、優しさと安心を与える笑顔だ。
いや、馬鹿野郎!
お前の家族だってあいつらに殺されたんだろう?しかも今俺の命を握っている敵を、許そうとしてどうする!?

自己紹介を終えたあと、笑顔に見とれた俺はボディーに一発もらい、気がついた時には見たこともない建造物の中にいた。

「・・・ここは・・・」
壁は全体が茶褐色で、虫の腹のようにデコボコしている。天井はとても高く、壁自体が赤く光っている。
「・・・俺はあのナイルスネイルに運ばれてここまで来たようだな。しかし奴らの姿が見えないな。」
カイトは部屋の奥まで見渡してみたが、何もめぼしいものはない。漠然と、そこに空間が広がっていた。

すると、

スー・・・
壁の一部がほとんど音を立てずに開いた。

「!!」
次の瞬間、開いた口から触手のような物が飛び出し、カイトの体にグルグルに絡まった。
「う・・・うわ!」
そしてカイトがそれを振りほどこうという気になったとき、触手はカイトを掴んだまま物凄い勢いで部屋の外にひっぱった。

ビュン!

部屋の外に出てもカイトの移動は終わらない。長い虫腹の通路を、口も利けないくらいのスピードで進む。

ゴウ!

やがて再び別な広い空間に出た。その移動スピードの速さを物語るように、部屋中に抜けるような音が響き渡る。
ポーンッ


わけがわからず、放心状態のまま勢いついて転がるカイト、しかしすぐに彼に声を掛ける者がいた。
「起きろ、そして部屋の正面を見ろ。」
揺れる頭を必死に正常に戻し、目をやるとそこにはさっきのナイルスネイルがいた。彼女は部屋の中心を睨んでいる。
「ナ・・ナプラ・・・ナプラマージャ・・・」
拘束されているわけではないが、逃げることは場所を考えても、能力を考えても無理である。カイトは素直に部屋の正面を向いた。
「げ・・・!!」


デコボコ岩のクレータのような場所の真ん中に、一人のナイルスネイルが座禅をくんでいる。
髪は紫色で長く妖美にうねり、体には見慣れぬ装飾品と文様が書き込まれ、肌はナプラマージャとは違い、全体的に白く、うっすらとパールの輝きを放っているように見える。
なにやら瞑想にふけっているようだが、やがてその険しい表情がとかれ、鋭い眼光がゆっくりと開く。
するとナイルスネイルに共通する怪しい美しさがその女にも溢れた。

「・・し・・・しかし・・・」
カイトが驚きツバを飲み込んだのも無理はない。ナイルスネイル達は、通常2メートルぐらいで、すごく背の高い人間、といった程度なのだが、そのナイルスネイルは違った。

「し・・・4、5メートルはあるな・・・」
巨大なダンプカーが人の形をしている迫力である。しかしその透明感溢れる肌、心が自然に吸い込まれるような彼女の香りで、それほどの量感は感じなかった。
「あの御方はシ・ケーニョ様だ。」
ナプラマージャはボソっと言った。
「シ・ケーニョ・・?」

ナプラマージャは「様」と呼んだ、やはりこいつらの中にも身分階級のようなものがあるのだな。まぁ、俺が知ったところで誰に伝える事もできないけど・・。
心の中でカイトがそう呟いた途端に、ナプラマージャはカイトの襟を掴むと、屈んでいたカイトを頭より高く持ち上げた。
「わ!」

気がつくと、その巨大なナイルスネイルを中心に、あちこちにナイルスネイル達が立っている。そして手には自分のように人間を持ち上げている。
「ケーニョ!」「ケーニョ!」
「ケーニョ!」
「ケーニョ!」「ケーニョ!」
「ケーニョ!」

期せずして「ケーニョ」コールが湧き上がる、わけがわからず、抵抗も出来ずにぶらさがるカイト。
やがてその騒ぎの中、中央のシ・ケーニョが一人のナイルスネイルを指さした。
さされたナイルスナイルはそこから、まるでゴミを投げるように掴んでいた人間をほおった。

ドサッ

中央に投げ出された人間の男。衝撃で足を痛めたらしい、押さえながらうめく。
立ち上がろうとせず、座ったままの姿勢で、にじりよるシ・ケーニョ。
男は足の痛みも忘れて走り出す。途端にクレーター一帯に地震のような連続した振動が広がった。
ドドドドドドド
男は足を取られて地面に倒れる。その隙に巨大なナイルスネイルが男の足を掴んだ。
ヒィィィィィ・・・・
遠くからか細い悲鳴が聞こえた。男はそのまま、正座を横に崩した姿勢のシ・ケーニョの体に寄せられた。
シ・ケーニョが男に覆い被さると、その豊満な胸も手伝って、男の体は全く見えなった。
大きな白く澄んだ女の体に包まれて、男の悲鳴も聞きづらくなっていく。

カイトにはシ・ケーニョの顔が横からチラリと見えた。恍惚な表情を浮かべ、今恐らく胸から腹の間にいる男を、その冷たく光る体で味わっているのだろう。
怪しい腰の動きが始まる。それは人間の本能に直接響くような、「誘惑」を高純度に絞り上げたような、そんな男にとって最も危険なシグナルだった。
カイトは思わず目を背けた。これ以上見つめていると、そのゆっくり生生しく呼びかける腰に応えて、その肉壁の中に自分も引き込まれそうになるからである。

シ・ケーニョの胸、胸から背中、背中から腰にかけて妖美に蠢く。冷たい肌が重なりあい、擦れあい、つぶしあう。
ウットリした瞳で背筋が凍るような笑みを浮かべる。
どんな精錬された鉄も溶かすような熱く甘い蹂躙。彼女の肌の中で、さっきの彼は何を思う。
地面に押し付けられ、雲のように形を変えるおおきな乳房を見ながらカイトは男の事を考えていた。

「それ以上見るな。お前の命がないぞ。」
見とれるカイトを制したのはナプラマージャだった。彼女はカイトの襟を再び掴むと、ここまで運んできた触手のところへ持って行こうとした。
「ま・・待て」
無言で立ち止まるナプラマージャ
「あ・・あいつはどうなる?あの大きな女は何をしているんだ?」
「知ってどうする」
無駄なことは聞くなと言いたいようだ。ナプラマージャが合図すると触手がこちらに向かってくる。
「言え!俺はお前の命を救った人間だぞ!?今までのような一方的に屈するだけの人間とは違うんだ!」
何ができるわけでもないのに、強い姿勢で出た。
「・・・・フ、いいだろう、知りたければ教えてやるさ。別に隠すことじゃないからな。」
そう前置きしてナプラマージャは説明を始めた
「シ・ケーニョ様は栄養を摂取されているのだ。食事はさっきの男だ。」
ギョ!
「な・・・なんだって?まさかあの女の腹には口がついていて・・・」
「愚かな、私の腹を見ろ、口などついていないだろう。我々は肌から摂取することができるのだ。」
ギョギョ!
襟をつかまれていたが、カイトはとっさにナプラマージャから離れようともがいた。想像もつかないがこの肌に触れるのは危険だ、恐ろしい!
するとナプラマージャはニヤリと笑って、カイトを自分の体に寄せて、その長い腕で抱きしめた。張りのある、何年でもしがみ付いていたくなる肌感。思わず手を腰に巻いてしまう。これまた弾力に富んだ感触。ウットリ・・・
「ハッ!!た、たすけて!!」
一瞬心が溶けそうになるも、肌が触れてる事に気づき叫んだ。
しかし、何もおきなかった。
「愚か者、肌から噛み付くわけではない。お前らから生命のエネルギーを液体として取り出し、それを肌から吸収するのだ。」
「せ、生命のエネルギー??」
見てみろ、とナプラマージャがアゴで指した。
シ・ケーニョは体全体から光る汗を流し、舌をだらしなく垂らして息づかいが荒い。女体が沸騰しているようにも見える。その犇(ひしめ)きはさっきより激しく、乳房が、腰が、太ももが、一体となって中心に向かって押しつぶす。
「ああ・・」
初めてシ・ケーニョが声を漏らす。

「今、ケーニョ様の体は食事前の最高の状態に仕上がったのだ。」
「なに、今食事しているのではないのか?」
垂らしていた舌で、その唇を舐めまわす。熱い熱い吐息が空間に溶ける。
汗にまみれた壮大な肉体が、今、獲物を一気に搾り出さんと締め付けた。
ギュゥゥゥゥ・・・
「ぁぁぁ・・・」
聞き逃すほど小さい悲鳴が聞こえ、彼女の肌と肌の隙間から、白い液体が勢いよく飛び出した。

ブシュウゥゥゥ!!!
「な、なんだあれは!?」
「あれが生命のエネルギー体さ。さっきの人間から出されたものだ。我々は、特にシ・ケーニョ様は相手の生命体に制御しきれぬほどの快感、絶頂感を与えて、一瞬のうちに命を具現化するのだ。」

シ・ケーニョは飛び散った白い液体を丁寧に集め、手ですくうと自分の胸に塗りたくった。
「そして、あのように皮膚から吸収するのだ。相手の生き物は、それが死への道のりだと知っていてもその快感から逃れることはできない、こちらがやめない限り。ま、我々にとっては最高のご馳走だから見逃す気もないがな。」

胸に塗られた液体は、女の皮膚に吸われて消えていった。満足そうなシ・ケーニョ。
「し、食事が終わったわけか。・・・男は?」
「あそこにある皮がそうだ。」
「う、・・・もういい。・・・ところで、シ・ケーニョというナイルスネイル、さっきから俺を見ているようなのだが・・・」
「御気に召されたかな」
「ひ・・・・」
「だからさっさと行けと言ったのだ。」
「お・・俺も、俺もああなるのか???」
泣きそうなカイトの表情を一瞥して
「そうならないようにしてやろうと考えている。だから大人しくしていた方が身のためだぞ。」
「・・・・・・・・」
大人しくしていてどうなる?どちらにしろここは出れない。助からない。抵抗すればああなってしまう・・・

「ナプちゃーん。」
落ち込んだカイトとは別に、明るく弾ける声が、ナプラマージャを呼び止めた。
「・・おお、チリト。獲物は取れたかい?」
ナプラマージャが親しそうにもう一人現れたナイルスネイルと話始めた。
「んん・・・ぜーんぜん。いいな、ナプちゃんは才能があって、あたしてんでダメェ。」

そのナイルスネイルは他の者とは違い、少し小ぶり・・・子供のように見える。
「ナプちゃんのオチチ相変わらずでかーね!」
「こら!」
緊張感もまるでない。ナプラマージャにじゃれ付く。
「ははは・・・・」
こちらも見ているだけで緊張が抜ける。絶望的な状況なのに、細々と笑うことができた。

ガシッ
カイトはその瞬間、自分の体がその子供に持ち上げられたことが信じられなかった。
「!?え?」
「チリトやめな。」
「こいつが今アタシを笑ったよ?ただの食い物のくせに。食われたいか?」

ぞっとするほど冷たい目。さっきまでの子猫のような瞳はカイトを串刺しにする危険な瞳に変わっていた。カイトの首は、その細い指で締め上げられている。

「やめな、人間はすぐに死んでしまう。」
「アタシに頂戴よ、この人間、アタシが食べたい。」

小さな口から小さな舌が這い出して唇を濡らした。
呼吸が苦しい。カイトの顔が青ざめていく。
「チリト、私の言うことが聞こえないのか?」
「・・・・・・・」
その女の子はカイトを下ろした。並んでみて気づいたのだが、ナプラマージャが大きいから小さく見えただけで、小さい女の子というにはやっぱり大きい・・・

「ごめぇーさぁーい、ちょっとふざけましたー!」
殺伐とした雰囲気を強引にゼロに戻す口調。睨みつけるナプラマージャに擦り寄る。
「ナプちゃん、怒っちゃやーだよ?チリトはこういう子なんだから、大人なナプちゃんが我慢しなきゃ!!」
ナプラマージャはチリトを押しのけた。
「あーあ。じゃ、またね! ナマイキな人間君もまたね! ばーい!」

軽快なステップで走り去って行く。
ナプラマージャは呆然とするカイトをさっさと触手に絡ませ、部屋に戻した。


続く

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サークルSBD 2012/07/15 23:30

『さよなら人類』 第一話

第一話:レミングス・著



時は21XX年。地球上のほとんどは不毛な砂漠と化していた。
至る所に建物の名残りのような物が転がっていたが、ただのコンクリートの塊とも呼べる有り様で、昔のような機能を果たすことはまったく無い。

人間同士が憎み合い、結果としてこうなってしまったのか?
いや、
世界的な緊張が高まったこともあったが、我々が恐れていたような終末戦争は、各国の首脳の間で何度も行われたサミットにより、奇跡的に免れることができた。人間は話し合いによって平和を導く事が出来る、そんな誇らしいニュースが世界中を駆け巡った。

しかし、いくら人類がほんとうに兄弟の契りを交わしたとしても、人類の滅亡は現実の物として起こってしまった。

それは、巨大な飛行物体が晴れた日の太陽を隠した時から始まった・・・・。


「まったく今思い出しても背筋が凍るよ・・・そして現在の人類は・・・」
いつもの昔話が始まった。古く朽ちた感じのベレー帽の下から白髪がはみだす、太いまゆ毛が人間の奥深さを感じさせるラーク教育官は、うんざりしている教え子の前で話を続けていた。

「・・・・ちっ」
反抗的な態度が気になると、上官との折り合いが悪いハムサンは聞こえないように舌打ちをした。
「ふぁ・・・・」
優等生だったカイトも、そのアクビを止めることはできなかった。

「コラ!カイト!聞いているのか!?」
「イ、イエッサー!聞いております!!」

ふいを突かれ、慌ててカカトを打ちつけるカイト。
「では! お前達の任務は何か?答えよ!」
「イエッサー!我々人類から地上を奪った、憎き異星の者、ナイルスネイル共を駆逐する事であります!」
「うむ!」

満足そうなラークを横目に、ヤレヤレとため息をつくハムサンだった。


ここは地下120メートルにある、人類希望の基地。
巨大な飛行物体が上空に現れてから、何千年も積み重ねてきた人類の歴史は、その圧倒的な火力によって屑のように吹き消されてしまった。その後にも人類は抵抗を続けたがついに追いやられ、現在は世界に数カ所あるホコリ臭いシェルターが最後のトリデである。

一通り、地上の物を破壊しつくし、抵抗もだいぶ小規模化したのを見計らって飛行物体を操っていた本人達が地上に現れ始めた。
人類は彼等をナイルスネイルと呼んで恐れた。彼等は残った少ない人間を、しらみつぶしに捕獲していった。彼等に捕まった人間は、誰ひとりとして帰ってこなかった。

「とくにお前らのような若い者が危ない。」
歯茎を見せながらラーク教育官の説教が続く。
「はいはい、わかってますよ、そのナイルスネイル共は見た目は美しい女の形をしていて、俺達みたいな発情期の若者はついフラフラと捕まってみたい気になっちゃう、って言うんでしょ?」
「バカモン!!そんな浮ついた話ではないわ!!だいたいなんだ貴様の態度は・・・」
「ラーク教育官!我々はあなたの御指導により、あなたが言われるような軽率な行動を取るようなことは無いでしょう。我々は大変感謝しております!!」

カイトは、話に合わせ、部下の心得まで語り出そうとしたラークの言葉を止めた。



上官の熱い声援を背に、二人は久しぶりに開かれる地上への出口の前に立っていた。
二人のりりしい姿をモニターが写し出す。
二人にはそれぞれショットガンが渡されていた。
「やれやれ、大いなる任務を背負って、持たされるのがこんなショットガン一丁かよ・・・」
「文句を言うなよハムサン。これでもたいしたもんだ。見ろ、弾が入ってるぜ。」
「ホントだ、こないだ出てった奴なんか、オドシに使える、っていう理由で弾を抜かれてたからな、おれたちは幸せ者だよ。」

古惚けたシャッターが金属音を放ちながら少し開く。これ以上は開かない。
二人はそれをくぐった。シャッターはすぐに閉る。二人は指示どおりにその上に砂を運んでかけた。

「フウ、これでナイルスネイル達からは見つからないと・・・・」
「はあ、人類の技術も最後にはかくれんぼと同じだな・・・・」
「よし、いこうか。」

二人の任務は背負いきれないほど多かった。
「ナイルスネイルを殺すこと、生存者を見つけること、使える武器を探すこと、食料を探すこと、そして・・・・」
ハムサンは首を振ってつなげた。
「食い扶持を減らすこと。」
「・・・・・・・・・・」

人間に出来ることは、食べ物を確保する事ぐらいだった。
こんな御時世でも、権力を握っている人間の考えることはいかに自分の分の食料を多く残すかという事で、食べ盛りの若者は邪魔なのだった。

「やってらんねえや!!こうなったら意地でも死なんぞ!」
「ハムサンそのいきだよ、これは頼もしい仲間だ・・・・・ナ」

カイトの言葉がつまった。ハムサンはカイトの視線の先見た。
「ナ・・・ナイルスネイル・・・・」

遠く離れた砂山の上に、髪が靡くシルエットが見える。それは二人を確認すると、恐ろしいスピードでこちらに向かってきた。

「いそげ!急いで走るんだ!!」
「ハムサン・・・・・」
「あ!?なんだこんな時に!?」
「ハムサン・・・さようなら・・・」
「カ・・カイト」

カイトはハムサンとは逆の方向に走りだした、それは基地とも逆の方角で、ハムサンがそのまま基地に逃げ帰れるようにと考えての行動だった。もちろんナイルスネイルがハムサンを襲いにいけば捕まるのはハムサンだが、どちらか一人は確実にいき残れるのだ。
そのカイトの考えを素早く察知したハムサンは基地に向かって走り出した。

二人は全く後ろを振り返らなかった。砂が足を掴む、息がすぐにあがる、訓練の時より緊張感が高いせいで疲れが早い。それでもカイトとハムサンは走りつづけた。

人間の走るスピードよりも、ナイルスネイルの方が早い。彼女達は、運動神経に関しては人間を遥かに凌駕していた。二人のうち一人は生き残れる。しかし確実に一人は捕まる。

「ハァハァハァ・・・」
カイトは恐怖で押しつぶされそうだった。今、自分の後方で砂を駆ける音が聞こえているからだ。
(こ・・・・こっちに来たか・・・ハムサン・・・お前は助かる。よかったな・・・・)

砂をわける音はどんどんと近付いてくる。カイトの呼吸ももはや限界だ。
砂漠の丘の頂上に着いたとき、
ガチャ
引き金に指をあて、後ろを振り返りつつ特訓されたフォームを一瞬のうちに作った。

バン!バン!

すでに女の顔は銃の横にあった。バランスを崩したカイト、とびかかる異星の者、ナイルスネイルはその人間を押し倒した。

「うげ!」

カイトが背をついた場所にはちょうど人の大きさの鉄板の破片があった。カイトとナイルスネイルは、丘の上からソリのように一気に滑りおちた。

ザザザザザーーー・・・・
ガッシャーン!!!

丘の梺にあった廃虚にそのままつっこんだ。交通事故のように跳ね上がる二つの体、その衝撃でカイトは気を失ってしまった。

ナイルスネイルはこれくらいの衝撃では気を失わなかった。フラつきながらホコリを払い、立ち上がるとカイトを見下ろし、ニヤリと笑う。
「フゥ、人間のくせに私から逃げられるとでも思っていたの? ックックック・・・」
ナイルスネイルが呟いて、カイトの体にその手を伸ばそうとしたとき、

ガラガラガラガラ・・・・!!!

二人がぶつかった衝撃で廃虚の不安定なバランスが崩れた。高い場所から大きな鉄塊がいくつも降ってきた。
突然のことでさすがのナイルスネイルも避ける間がなかった。人間の比にならないパワーを持ったナイルスネイルが、身動きがとれないくらいに鉄塊の下敷きになってしまった。

しばらくホコリが立ち篭めていたが、やがて人間が起き上がった。

「うう・・・・痛てぇ・・・。 そ、そういえばナイルスネイルは!?」
カイトは銃を構えて周りを見回したが、女の姿は見えなかった。
「ど・・・どこだ、どこにいやがる!??」
時計周りに体を回す。ガレキひとつひとつに神経を尖らす。わずかな動き、物音を探す。
・・・・・・・・ガラ、

「!!」
バンバンバンバン!!! バンバンバンバン!!! バンバンバンバン!!!

恐怖のせいであらんかぎりの弾を撃った。
「うわーーー!!!!」

ナイルスネイルが埋まっていた鉄の山に向かって弾の嵐が吹く、その中から声が聞こえる。
「ちょっと、腕に刺さっている鉄芯が邪魔で力が入らないの、こいつをなんとかしてよ」
しかし銃を乱射するカイトの耳にはそんな声は聞こえない。ガレキの中から腕が見えて、刺さっていた鉄芯がショットガンの弾で弾け飛んだことにも気がつかなかった。

バンバンバンバン!!! バンバンバンバン!!! カチカチカチ・・・・
「あ・・・そ、そんな・・・・」
今さらに自分の愚行に気付いた。弾を全て打ち尽くしてしまったのだ。

ガラガラガラ・・・

立ち篭める硝煙とホコリの中から、背が高く、褐色の肌を持った美しい女が、マゼンダの髪をなびかせて立ち上がった。

「あ・・・あ・・・」
初めてみる人類の敵、そして自分には頼みの綱である武器はもう無い。カイトはすっかり戦意を喪失していた。
「クックック・・・・。やあ、人間。」
女は笑っていた。なびく髪の間から尖った耳が見える。
見なれない装飾物で身を飾っているが、露出が多く、思わず唾を飲むように抜群のプロポーションを持っている。太ももを伝う汗が、魅力的に光っていた。

呆然とするカイトに構わず、その女はカイトの目の前まで寄ってきた。
(も、もうこうなったら逃げることすら不可能だ・・・)
カイトは心のなかであきらめた。
その女が近寄ると、カイトは見上げた。自分の身長は確か177cm、非常に大きいというわけではないが、こんなに女を見上げたのは初めてだ、いや、女といってもコイツらはそういう異星人なのだ。

「人間よ、ありがとう。」

・・・・・・・・・・・・・・え?
想像もしなかった言葉をかけられ、とまどうカイト。
「お前のおかげでガレキの下から脱出することができた。まさか獲物の人間に助けられるとは思わなかったぞ。しかも、銃を持っているのに、今だって私を撃たないじゃないか。」

カイトは思わず銃を背中にまわした。(もう弾がないだけなんだが・・・・)

「フフフ・・・面白い人間もいたものだ、捕獲する我々を救おうとするとは・・・」
ハッキリ言ってカイトに自覚はなかった。何を感謝されているのかまったくわからなかった。
「うん、面白い、実に気に入ったぞ。」
女はガッシリとカイトの両肩を掴んだ。
「お前、名はなんという?」
「カ・・・カイト。」
「カイトか。私の名はヘレンニソ・ゾ・ナプマラージャだ。」
「ヘ・・・レ?」
「ナプラマージャでいい。本当はもっと人間には発音しにくい名前なのだが、簡単に言えばそうなるのだ。」

実に意外な自己紹介となった。しかしあくまで相手は危険な人類の敵である。命の心配はしなければならない。


続く

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