未公開小説 「白無垢」
高貴な存在であったエルフ。その森に起きた惨劇。
そして、エルフたちのその後に触れる、短編。
入り組みうっそうと生い茂る森の奥深くにその国はあった。
黄金よりも美しい金色の髪を持ち、白く透き通った肌をし、美しく整った顔立ちにあるツンと尖った凛々しい耳先。
容姿端麗なエルフたちの住む国が。
ゆえに、狙われた。
その美しい肉体を我が物にしようと。
だからこそ、自衛のためにエルフの国には強い騎士団があった。
秀でた魔力をもつエルフたちのなかでより強大な魔力を持ち、戦いに優れたものを集めた騎士団。
さらにその騎士団長ともなると、国中では比肩しうる物がいないほどの魔力を持ち、さらにはレイピアを用いた直接の戦闘もこなすことも出来る上に、より一層美しいエルフであった。
国の中でも頂点とも言える立場にいるそのエルフは、金色の髪をより偉大に見せるために縦にロールアップしてボリュームを増やしたその姿からも分かるように、尊大。高みから弱者を見下しつつ、高らかに笑うお嬢様であった。
しかし、実力で勝ち得たその立場は虚栄のものではなく。
エルフの美しき肉体に欲をそそられ森へと侵入してきたオークの部隊を、魔力と剣技で正面から完膚なきまでに撃退。
良質な苗床としてエルフの高貴な血を欲したゴブリンの集団が、森に火をつけ逃げ出したエルフを捕まえようとしたときは、逆にゴブリンたちを火へと追い込み殲滅。森への延焼も最小限にとどめた。
何度も国から危機を救った英雄であった。
ミスリルのレイピアを佩き、ミスリルの胸鎧を身につけ、ミスリルの糸でできたローブを羽織る。ミスリルの白銀に包まれた煌きと凛と揺らめく金色の縦巻きロールのエルフの姿は国の中で未来永劫に英雄譚として語り継がれる。
はずだった……。