23-03-19.アンケート結果&「くろてん」小説再掲1幕1章1話
おはようございます!
まず、瑞穂さんアンケートの結果を。
A案39票30%
B案15票11%
C案74票57% 総票数128票
となり、C案に決しました。昨日の中間発表でも言いました通り18日朝まではA案独走状態だったのですが、いったん逆転するとC案が圧倒的底力を見せつけてリードを広げ、再逆転を許さずに終わりました。
で、「日輪宮」の進捗ですがまだエロシーン前で足ふみ状態。でも今日ぐらいにはエロシーンに入れそうな気がします。2章脱出ルートは済ませているんですが、なかなか敗北させるのが難しいのでした。戦闘に負けた瞬間、ダイレクトでエロに入るのも少し違うので……ゲーム的に数分にも満たないくらいのシーンを挟むだけなんですけどね。
そして今日もくろてん再掲です。
黒き翼の大天使.1幕1章1話-新羅辰馬
沈魚落雁閉月羞花《ちんぎょらくがんへいげつしゅうか》。
魚は泳ぐことを忘れて溺れ、鳥は羽ばたきを忘れて落ちる。月は姿を隠してしまい、花も恥じらい姿を閉ざす。絶世の美貌の形用であり、新羅辰馬《しらぎたつま》という少年を評するにこれ以上の言葉はない。
光に照り映える、一房横に束ねた長い銀髪に、大粒のルビーのように煌めく緋く大きな瞳。肌はまるで新雪のごとくに穢れなき白であり、頬は紅顔、唇は鮮やかな朱。164センチ、華奢で小柄、男らしいごつごつした隆起にまったく無縁な体つきも相まって、所見で彼を男だと見抜ける者はきわめて少ない。
まるで女の子であった。
それも破格の、傾城傾国の美少女。ぼんやりとした眠たげな雰囲気ではあるもののおよそ人間の理解の範囲を超えるほどの美形であり、当然ながら、モテる。
女の子からもモテるのだが、男にもモテる。
当然だ、どう見ても究極超絶裏美少女である、そりゃあ男どもは放っておかない。
というわけで。
「だからさ~、おれ、男だっての。消えろやお前ら。シバくぞ」
「へっへぇ、なーにが男だよ、男モンの服着て『おれ』とかいっても、どーみても女の子じゃん。おら、あそぼー、ぜ!」
公園で人を待っていた辰馬は、今日も今日とてナンパされていた。
いつもどおりの平常運転。だいたい日に10回ぐらいは、こういう手合いに纏わりつかれる。たいがいの相手は一言いってやればバツの悪そうな顔で退去するのだが、今日の相手はちょっとばかし、いらん方向に根性があった。へこたれない。なにをするつもりか4人ばかりで辰馬を囲み、いやらしい笑みで辰馬の手を取ろうとしてくる。
あーあー、だからこの顔嫌いなんだよ……どーしよーかな、ホントにしばくか……つーて気安くおれが殴ると殺しかねないからなー、よっぽど手加減せんと。
辰馬はげんなりと、疲れたようにため息一つ。そんな表情すら、至高の芸術品、一幅《いっぷく》の絵画である。チャラ男集団はじめ周囲の人々が、うっとり惚けた。
「あのさ、今なら勘弁してやっから、消えろ。そーじゃないと命の保証できねーから」
「はァ? なに言ってんの、ウケるーぅぶっ!?」
辰馬の一番そばで一方的な誘いをかけてきたチャラ男が、辰馬のまったく迫力不足な恫喝を笑い飛ばそうとして、果たせず沈む。
単純にボディブローをぞぶっ、と下腹に叩き込んだだけだが、あまりにも速すぎて誰の目にもとまらない。念力か神通力、そうした超常的・超越的な力の作用にしか思われないほどだ。
「ナオトくん!? テメコラ、な・・!?」
仲間が倒されたのを見た別のチャラ男が、辰馬目がけて腕を振り上げる。次の瞬間ごすっ、という轟音がして、これまたその場に頽《くずお》れ、倒れ伏した。今度は外回し上段蹴り。辰馬としては普通に軽く蹴っているだけ。ただそれがあまりに神速、絶速の域にあり、とうてい常人の目にとまらない。
「あのさ、お前らうるせーわ。襲いたいならそもそも、正面から来んなよ。不意打ちでもなんでもして組み伏せねーと、実力差どーしよーもねーだろーが」
相手の覚悟のなさと実力の不足に、心底うんざりして辰馬は言い放つ。事ここに至って残る二人のチャラ男は自分たちが嬲ろうとした子犬が虎であることに気づいたが、辰馬の方は力を誇るどころか吐き気がしていた。
あー……なんかこれ、おれが弱いモン虐めしてる構図じゃんよ。これだからいやなんだよなー、また家に連絡とか来るか……。親父に殴られるなー……困る。
それが困る。祖父・牛雄は辰馬に対してダダ甘の好々爺《こうこうや》だが、父・狼牙はそうはいかない。『魔王殺しの勇者』である父は公正明大にして厳格、息子を愛する故にその教育には人一倍厳しい。優しさ故の愛の鞭であることは理解しているが、それでも殴られれば痛いものは痛いから、聖人君子でない辰馬としては殴られると父にこなくそ、という感情を覚えるのは間違いない。
「こここ、こっ、こいつ!」
「ツブしてやらぁ!」
完全に怯えきった二人は逃げるかと思ったが、そうはならなかった。女に恥をかかされたと思って、恐怖を怒りが上回り、要するにキレたらしい。女尊男卑《じょそんだんぴ》の気風ある国とはいえ国の舵取りが男系になって久しく、近年は意味なく男性優位を振りかざすバカが多い。
男が偉いとか女が上とか、どっちもどっちだけどな。優秀なのは個人個人の人格であって、性別なんかどーでもいい……。ま、それはておき。かわいそうだけど、ちっと痛い目みてもらうか。とりあえずどーすっかな、血液凍らせたらさすがに殺しちゃうからな……。
怖いことを心の中に呟いて赤い瞳に力を込め……ようとするも。
「そこまでだよ~♪」
なんの気配も感じさせず、場に割って入った脳天気ながらも高く澄んだ声に、高めた気を弛緩させる。
チャラ男や周りの人々に、なにをしたのかまったく見切らせなかった練達の辰馬。その技前をもってして、彼女の接近にまったく気づけない。チャラ男が腕をねじり上げられたところで、ようやく気づいた。
少女の顔を見たチャラ男たちの、顔がびくっと引きつる。
ピンク・ブロンドの長いポニーテールと、青い瞳、そしてアールヴ(妖精=エルフ)特有の長くとがった耳を持つ少女。レオタードにショートパンツという一歩間違えば扇情的な姿にもかかわらず、その容姿は色っぽさやあでやかさよりかわいらしさが強く、またそもそも見た目に幼いためにいやらしさを感じさせない。
辰馬の知り合いであり、チャラ男どもにとっては知り合いではないが、知った顔だった。
……有名人だ。京師太宰のローカルではなく、アカツキという国、むしろアルティミシア大陸全土における有名人。
牢城雫《ろうじょう・しずく》。かつて8年前から3年連続、アカツキ最高の武芸の祭典『煌玉展覧武術会《こうぎょくてんらんぶじゅつかい》』剣術部門を連覇した剣聖。ルールありきの試合でとはいえ、西の大国ラース・イラが要する「世界最強の騎士」ガラハド・ガラドリエル・ガラティーンと互角に渡り合った、怪物剣士。太宰における彼女は英雄であり乙女たちの守護者であり、そして不埒《ふらち》な男どもにとっての死神であった。テレビこそないが色彩写真(カラー写真ではなく、白黒に塗師が色をつけた物)と活版印刷……新聞が存在するこの国で、彼女の活躍は広く喧伝されている。
「キミたちー。この子あたしの連れなんだよね~♪ お引き取り願えるかな?」
「は、はひゅいっ!」
「もちろんであります!」
……雫の言葉に、チャラ男たちは敬礼して去って行く。「あ、ちょっと待った、忘れ物」倒れる二人のチャラ男を、雫は144センチの小柄からは想像もつかないパワーで抱えて投げつける。今度こそチャラ男たちは走り去った。
「ふぅ……。なんとか間に合ったね-、たぁくん♡」
可憐な顔立ちににぱっと明るい笑顔を浮かべ、雫は辰馬の横に立つ。どうしようもなく可憐な童顔だが、こんなんでも23才、辰馬より8才の年長だったりする。
「あぁ。半殺しにせずに済んだ……つーかしず姉が時間通りに来てくれりゃ、なんの問題もなかったんだけどな」
「やー、ごめんねー。服なに着てくか迷っちゃって。デートとか久しぶりだから♡」
「デート違うけどな。つーかいつも通りの服装じゃん……ま、行くか」
……
…………
………………
太宰総合第一病院。
アカツキ33代皇帝、梨桜帝が世界に先駆けて創らせた総合病院である。地上5階、地下2階の七階層という、帝都太宰にも珍しい白亜の大建造物だ。
「ちーっす、辰馬サン」
病院のロビーでは、三人の少年が辰馬を待っていた。
「シンタ。大輔に出水も……おまえら来なくていいっていったろーが……」
「いや、だって謎の美少女だし。俺らもまた会いたいわけですよ!」
という赤髪ロン毛はシンタこと上杉慎太郎。辰馬の一の舎弟を自認し、ついでにゲイであると公言し、辰馬のことを性的な意味で好きだと言って憚らない危険な男である。辰馬と同じ冒険者育成校【蒼月館】2-Dの学生で、冒険者としてランクはC級の盗賊(ちなみに辰馬はA級魔法剣士)。アホタレだが実は子爵家の4男坊だったりする。趣味は音楽でギターをやっているが、その演奏と歌声はつねに聞くものの眠りを誘う。
「そーそー、主様(ぬしさま)ばかりいい目を見るのはズルいでゴザルよ!」
横合いから口を挟む眼鏡のデブは出水秀規。これまた辰馬の舎弟を自認する男。デブのキモオタゆえに三次元女子からは蛇蝎のごとく嫌われており、二次元に嫁を求めてエロ小説家というおかしな扉を開いてしまった変態でもある。なぜかシエルという妖精の少女に気に入られており、今日も肩に30㎝の妖精を乗せていた。こいつも蒼月館2-Dで、Cランクの霊術士。
「すいません、新羅さん。止めたんですが、こいつらどうしても行くと聞かず……」
と、頭を下げるツンツン頭の茶髪は朝比奈大輔。同じく辰馬の舎弟をもって自任する、筋肉質な体躯の少年である。三人のなかでは一番まともな常識人だが、所詮「三人の中では」まともなだけなので案外ぽんこつなのは変わらなかったりする。ちなみに、筋肉質ではあるが三バカの中では一番背が低く、身長169㎝しかないのがコンプレックス。とはいえ164の辰馬よりは長身なわけだが。蒼月館2-D、ランクC拳士。
「というか、でゴザルな。昨日、あの子と最後に目が合ったのは拙者。あの子はきっと拙者に惚れたに違いないのでゴザルぅ~っ!」
出水が身悶えするように身をくねらせると、シンタがやれやれというようにため息をついた。
「お前、あんだけ女子に嫌われてまぁーだ自分がモテるとか思ってんのか? いい加減現実と鏡をみろや、な?」
「ふごーっ! 拙者はイケメンでゴザろーが!」
「ブタが世迷い言ほざいてんじゃねーよ! あの子はオレに惚れてんだよ!」
「フハハハハッ! 笑わせるなでゴザル、赤ザル!」
「お前ら大概にしろ。新羅さんに迷惑がかかる」
「あぁ゛? 良い子ちゃんしてんじゃねーぞ、筋肉ダルマ!」
「全くでゴザル、筋肉ダルマはプロテインでも飲んでるがいいでゴザルよ!」
「……るせぇーんだよ、クソダボがアァ!!」
キレた大輔の実力行使が炸裂、剛拳でガスガス殴打されたシンタと出水はやむなく静かになったが、懲りたわけではまったくなさそうだった。
「……お前らいつもユカイだよなぁ。にしても、あの子相当憔悴《しょうすい》してただろ、大人数でおしかけていいもんかな・・?」
辰馬が首をひねったところに、近くを通りかかった金髪の少女がスタスタと寄ってくる。2-Dの同級生であり、雫とともに辰馬の貞操を虎視眈々と狙う少女、エーリカ・リスティ・ヴェスローディアだった。
「なにしてんの、アンタら? 怪我? 病気? まさか性病じゃないでしょーね?」
「違うわ。お前こそなにやってんだよエーリカ、バイトは?」
「今は休憩。もうね、ずっとカメラ向けられててずっと作り笑い続けてたから、顔の筋肉凝っちゃって……」
「はー……」
「で、だれか病気?」
「いや、見舞い。きのう盎山でな……」
……
…………
……………
「ふーん。姫さま、かぁ。まあアタシだって姫さまだけど!」
「知ってるよ。貧乏姫」
「うるせーわね。しかたないでしょーが、国に帰るわけに行かないんだから」
エーリカは西方の商業大国、ヴェスローディアの第4王女だ。父王の死後、正統後継者に指名されながら叔父と兄の政争に巻き込まれるのを避けてアカツキに亡命してきたのだが、道中宝石やらなにやらを切り崩して破産し、今はシンタの紹介でグラドルのバイトをして生計を立てている。
「つーか、なんやかんやでいつものメンバーが揃ったな……」
「んじゃ、みんなで行こっか?」
「そーね、アタシも辰馬の新しい女に興味あるわ」
「新しい女、とかゆーな。けが人拾っただけだっての」
……
…………
………………
「すんませーん、見舞いです。保護者連れてきました」
「あぁ、はい……保護者さんは?」
「はーい、あたしでーす!」
「……は?」
婦長さんらしき恰幅のいいおばさんは、首をかしげ胡乱《うろん》げな顔であン? とすごむ。馬鹿にしてんのか、という言外の言葉が、雄弁に語っていた。なにしろ雫はこの一行の中で一番小柄であり、一番童顔である。成人していると思えないのは間違いないが、
この人、『剣聖』牢城雫を知らないのか……ふぅん、そー言う人もいるんだな……。と、変に感心する辰馬。
「あー、間違いないですよ、この人23才だし。しず姉、教員免許」
「はいはい。えーと、これです、教員免許! 2年目!」
「拝見しますよ・・えーと、ロウギさん? ロウシロさん?」
「ロウジョウです。読みにくくて済みません」
「ふむ……帝暦1792年生まれ……確かに。はい、じゃ、ロウジョウさん、こちらに記入を。面会希望者のお名前は?」
「名前? はれ、聞いてないよ、たぁくん?」
「えーと、なんだっけ、神坂とか神崎とか、そんな感じの……」
「神楽坂瑞穂(かぐらざか・みずほ)、宗教特区ヒノミヤの齋姫猊下ですよ、新羅さん」
言いあぐねる辰馬の前に、小柄な、赤毛のメイド少女が立ってそう告げた。「ああ、それ!」辰馬が得心したところで、婦長のおばさんは腰を抜かす。
「う、うひいいいい!? ヒ、ヒノミヤの、齋姫さまあぁ!? ははは、はい、はい、わかりました。すぐに! マッハで問い合わせてきますのですこしお待ちを……!」
それまで辰馬たちを「怪しげな少年団」と見なしていた婦長さんは、「齋姫」の名を出したとたん態度を180度変える。こけつまろびつ退場していく婦長さんを尻目に、辰馬はぼんやりと思索を巡らした。
ああ、齋姫って、聖女さまか。……聖女が、あんなとこであんな目に……。んー……なんかわからんが、やっぱアレは単純な誘拐事件ってわけじゃない、か……。
さっきの婦長さんとは違う看護師さんに連れられて、病室(501号室)に。
4階までのどちらかというと質実剛健で飾りのない造りに対し、この階層は異質な感がある。そこかしこに絵画が架けられ、花が飾られ、全体に派手であきらかに金と手間がかけられている。政治家やら資産家の隠れ家として使われるのだ、と教えてくれたのは子爵家の息子で金持ちのシンタだった。血統的には雫も大貴族の流れなのだが、こちらはだいぶ前に本家から切られている。
「神楽坂さん、入りますよ」
まず看護師さんとメイド少女がそう言って入室。しばらく応答があって、メイド少女の「どうぞ」という声に従い、部屋に入る。
「どうも、みなさん……昨日は、ありがとうございました……」
青紫の髪の少女、神楽坂瑞穂はそう言って、儚く微笑った。魂の憔悴が看て取れて痛痛しい。さておいてパジャマの胸元を強烈に内側からせり上げる爆乳……というか魔乳に、舎弟の3バカがごきゅ、とつばを呑む。
「う、見てはいかんと思っても、やはり圧倒的な……」
「いやもうホント、でっけぇーよなぁ。雫ちゃん先生も小柄な割におっきいけど、この子と比べたらぺぺぺのぺだわ、こりゃホントにたまらん!」
「ダルマ、赤ザル、瑞穂ちゃんは拙者のものでござるぞ! 許可なく性的な目で見ないでいただこう!」
「あァ!? いつだれがお前のモンになったよ、馬鹿たれが。ブチ殺すぞ!?」
「そっちこそ、土の底で窒息したいようでゴザルな!」
「あー、お前ら黙れ。うるせーからな。あと本人の目の前で胸の話とかすんな。いろいろ困るだろーが」
「……辰馬サンがやめろっつーならやめときますけど……命拾いしたな、クソオタ!」
「こっちの台詞でゴザルよ、赤ザル! 脳みそ引きずり出して、かわりに泥水詰めてやろーかァでゴザルァ!」
「だから喧嘩すんなや。なんなら帰っていーんだぞ」
「「は、すんません」」
「騒々しくてすまん。……で、あんたのことだが……なんであんなとこにいた? たぶん言いにくいことを聞くことになると思う、済まん。だが、教えておいてもらわんと後々、困ることになりそうだからな、言えることは全部教えておいて欲しい」
辰馬たちは昨日、山賊退治のついでに瑞穂を助けたが、山砦の玄室に半裸で転がされ汚液にまみれていてたという状況を鑑みるまでもなく、すでに手を付けられたあとだった。そのことを追求することになる、と辰馬は頭を下げたのだが、瑞穂は相変わらず穏やかながら覇気も生気も感じられない、なかばうつろな瞳でうなずく。
「わかりました。全て、お話しします。6月12日から19日までの1週間にわたしの身に起きたすべてのことと、わたしが知る限りのヒノミヤの陰謀の全て……」
瑞穂はわずかに遠い目をして、淡々と語り出した。それは聞くに堪えないほどの陵○の連続、その記憶であった。