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日輪宮の齋王の記事 (21)

遠蛮亭 2022/12/03 08:42

22.12.03.「日輪宮」メインキャラ7人立ち絵完成です!

おはようございます!

昨日はいつ寝たのかまったく覚えてません…、よっぽと精神を摩耗してるのか、薬を飲みすぎなのか。なので今日からうつ病の薬を減らします。エビリファイ24mgとか、効かない薬の割に量だけやたらと多いのがたぶんよくない。頓服のクリアミンだけあればなんとかなるのではないかということで1日3回の服薬を2回にすることに。

さておきまして今朝、「日輪宮の齋王」メインヒロイン7人の立ち絵が完成しましたのでお披露目。

集合絵。那琴がアンドレ・ザ・ジャイアントみたいなデカさになってますがさすがにここまで巨人キャラではないです。人数7人入りきらなかったのでこんなふうに。

では以下改めて紹介。

神楽坂瑞穂さん。ここをご覧いただいている方々にとってはもう言わずと知れた、感があるかと思いますくろてんと日輪宮とのメインヒロイン。くろてんで語られる「ヒノミヤで受けた凌○」というのが「日輪宮」のストーリーになります。幼少時はアカツ二に等市街区貧民街のスリで、スリをするのに人の心が読めたら、時間を止めることができたら、という願望がもとから強い神力を持っていた彼女にサトリ神やトキジクを呼び寄せました。のち神楽坂相模の養女に迎えられ、修行の日々を経て第49代(ヒノミヤの齋姫は過去「東西戦争」のときに一度途絶しているので、その前も数えると100代を越えますが)齋姫。幼少期は貧相な体だったのですが成長期で一気に巨乳化が進み、異性の目に委縮するもヒノミヤは基本的に女性社会なのでそこまで縮こまる必要もなし。ですが1816年正月以降、ヒノミヤの実権を握った神月五十六、その急先鋒長船言継に攻められると男好きする身体は凌○陵虐の対象以外にはなりえず、ズタズタに犯されてしまう…というキャラ。161㎝55㎏、B121W61H91。領地には神楽坂という山間の土地もありますが、瑞穂さんの統治する封土はその奥の奥津城。

磐座穣さん。通称はみのりん。ヒノミヤ神月派の軍師で国家戦略担当官。神月五十六の秘蔵っ子で愛妾でもある少女。母親は先代姫巫女2位磐座古都、父親はラース・イラのはぐれ騎士リューリク・デア・ベルデ。リューリクに無理矢理侵されて穣たち三兄妹を産まされた古都は子供ら愛情を向けることができず、またヒノミヤという閉鎖された世界において異人の血を如実に表す金髪という身体的特徴は忌み子であり、兄妹は世間から指弾されて育ちました。ここに五十六が手を挿し伸ばして兄妹と古都を救ったので穣としては五十六に強い恩義を感じています。もとから聡明な少女でしたが智謀に磨きをかけたのは五十六さまのお役に立つため。でも作戦力でならともかく、実際戦場での進退は瑞穂さんの方が勝りますがこれは才能というよりも互いの資質の違い。みのりんは参謀型で瑞穂さんは士官型なわけです。瑞穂さんは万人に冠たる名将の器ですが、臆病で圧しの弱い性格ゆえにそこのところを十全に発揮できません。長船言継に呪装機人化の話を持ち掛けて神月派の戦力増強を画策したのもみのりんですが、五十六が言継に信頼を寄せすぎるようになると警戒を強めるようになります。秋津と隣接した神籬の領主であり、常に長船の動静ににらみを利かせています。

晦日美咲さん。名字は「つごもり」と読みます。ヒノミヤ巫女衆ではなくアカツキ皇国諜報部所属の密偵。であり、先代のヒノミヤ姫巫女の以外を接収、その骸から「聖女」の遺伝子を移植した人造聖女。彼女が「祝福」という人間の潜在能力を極限まで引き出す神力を使いこなせるのはそのため。宰相・本田馨紘の命でヒノミヤを内偵、その中で磐座穣と友好を深め穣のために尽力するというキャラ。みのりんの依頼で秋津(長船言継の本領)に潜入、神楽坂瑞穂を救出しようとして失敗、捕らわれて○問調教を受け、運悪しく長船に気に入られて瑞穂・穣ともども徹底的な凌○を受けます。バスト69。

沼島寧々さん。姫巫女としての格は4位ですが最年長20歳なのでおねーさん役。立場的に神官衆(男衆)との折衝役なんかに出ることも多く、そういうことが苦手な瑞穂さんからおおいに頼られています。幼時はヒノミヤの遊女の娘で、母から「巫女になれば儲かる!」と猛勉強を叩き込まれたものの途中でその母が病死(たぶん結核)、幼少にして遊女になるか、それとも自殺するかの二者択一をせまられたところを神楽坂相模の援助を受けて助かり、そのせいで20歳になった現在も相模老人を慕っています。似たような境遇でヒノミヤに迎えられた瑞穂さんに対しては実の姉同然の態度で接し、神楽坂派の頼れるまとめ役。ちなみに相模老との肉体関係はなく(相模老は不犯でないと「神力剥奪」という能力が使えなくなるので、生涯童貞)、処女。交易の盛んな日奈沢の領主を任されています。

鷺宮蒼依さん。いちおう神月派ですがこれは鷺宮さんの領土が神月領と隣接していて攻められるとひとたまりもないため。実質的な心の持ちようは神楽坂派で、なので瑞穂さんに同情的ですし神月派のみのりんや那琴に喧嘩を売ることもよくあります。もともと巫女の血筋というわけではなく、旅の武芸者の娘だったのですがヒノミヤ北奥鬼啾山で崖から落ちて遭難、その際テルケという一頭の大神に救われ、以来強い神力の素養に目覚めました。巫女となっても武人としての色合いが強く、神力より武芸を重んじるタイプ。性格も一本気で腹芸とかできません。現在の所領は封石といわれる霊的な力を秘めた石が採れる南方の鹿ヶ谷。

神威那琴さん。「かむい」ではなく「かむたけ」です。神月五十六の次子で神威家に養子に入った伊央の娘であり、武術・神力ともに非情な才能を持つサラブレッド。でも6歳の時にヒノミヤ入りした瑞穂さんと出会い、本物の才能というやつにぶち当たり愕然として挫折。祖父の叱咤と自らの克己心で立ち直り、瑞穂さんに追いつけ追い越せで修行を続け姫巫女になるも、1816年正月には瑞穂さんは齋姫に就任してしまい追いつけないところに。でもそれで憎悪を覚えるような性格ではなく、瑞穂さんとは幼少期から常に仲のよい親友。通称「なこちゃん」。晦日さんほどではないけれどの貧乳で宝塚的な人気をヒノミヤ内で博していたりします。

櫻香。女神ホノアカの分御霊。ホノアカから欠けた存在ということでホノカです。もともとホノアカという女神は女神には珍しく親人間的かつ献身的な存在(大体の女神は人間を搾取の対象と思っています)で、人間の願いを聞いてあげて人間が幸せになることが大好きな女神でしたが、それで自分の神力をガンガン削って人を救っていたために自分の存在が希薄になっていきます。そんな折ひとりの人間の男と出会い、尊大ながら高潔なその男に惚れて最後に自分の力を分かった分御霊を託したものがこの櫻香ということになります。当然ながら男というのは神月五十六。あのジジイは若いころから今に至るも、かなりモテる男でした。まあ、ホノアカの望みとは裏腹に五十六は櫻香に手を出さない(ホノアカの分御霊、転生体とはいえ自分の娘にも等しい存在なので)のですが。女神ホノアカ消滅の事実を公にするわけにも行かず、櫻香は現在紫宸殿の奥に幽閉されて存在を秘匿されています。

……以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/12/02 06:49

22-12-02.くろてん3幕5章7話+鷺宮蒼依さんお絵描き

おはようございます!

昨日は午前中Javascriptの勉強、午後からゲーム制作でしたがあまり効率よくはいきませんでした。体力が続かずにすぐ疲れてしまいます。教本5冊購入中、一番初歩の入門書すら読み終わってません。もともとが文系でプログラムとかまったくわからないというのもありますが…、でも人にできて自分にできないことがあるのは嫌なのできっとできるようになるでしょう。プラグイン自在に作れるようになったらすごい楽しそうですし。

ゲーム制作のほうもやっぱり進捗ほとんどなく。昨日は椅子に座った状態で寝ちゃったりしてたので自分はいったい何をしたのやら…。シナリオとシステムをちょろっと弄ってSLGシステムを使わずにゲームを進行させるように、と弄ったのですが、目に見えることにはなってないです。やったことはお絵描き。

これが昨日唯一の成果、鷺宮蒼依さん立ち絵。これまでかなり前の立ち絵に表情1種のみという状態でしたから、頑張って描きました。なんか別キャラになった感じもありますが。

差分、戦闘モード。

差分、裸。

これは数日前にあげましたけども、鷺宮さんイベント①です。敗北して剥かれてボコボコ。娼館イベントもこれ。

これも以前に上げたもの。鷺宮さん②、出産イベント用。種族「獣」はみのりんのはずだったんですが、「狩の姫巫女」だし獣はやっぱりこっちだよなぁと。

鷺宮さん③。これは昨日描いたやつ。①~③全部表情がちょっと立ち絵にあってない感じがしなくもないです。

以上、それでは以下くろてんです。気が付けば3幕ももうすぐ終わりです!
………………
黒き翼の大天使.3幕5章7話.神と人と魔の相克-1

 魔王の5将星、デックアールヴ、オリエの一矢で負傷した混元聖母だが、いったん戦線を離脱した彼女はおとなしく療養に専念するわけがなかった。坤地幡を燃やされたことで圧倒的優位を崩されたが、この状況で防御に徹してはじり貧になると知る彼女としては、攻勢を継続せざるを得ない。本来兵法の常道としては兵力に最も劣る混元聖母の陣営こそ人間か魔族のどちらかと盟を結んでの各個撃破を取るべきなのだが、そこは彼女のプライドが許さない。いちど魔王クズノハの膝下に身を置いたことからしてがかなりの屈辱であり、二度同じ思いを味わうつもりはなかった。

 といってすぐさま魔軍に攻めかかっても今の、優秀な魔将に率いられた意気軒昂な魔族たちには敵し得ない。となるといきおい、対すべきは人間の連合軍ということになる。

 混元聖母は油断なく戦場を選定し、25万でゴーラム・ウェール(緑の丘)の丘陵の高地に布陣。対する反神魔連合軍の総力は40万だが、高低差による地形効果があるうえ、霊力の低い一般兵ではまず天使や神使を倒せない。聖母にとって敗北の目はなかった。
………………

「というわけで、拙者たちの出番でゴザルな」
「……なんでわたしの隣にいるのが、旦那様ではないのかしら……」
「まあまあ。出水さんもご立派なお力を持つようになられましたし……どうです、今夜わたしと……」
「い、嫌でゴザル! 拙者はシエルたん一筋でゴザルよぉ~ッ!!」
 アトロファにズボンの前をなでられて、出水は恐怖にすくみ上がる。ともかくも、出水秀規、女神サティア、聖女アトロファの三人は前線に派遣されていた。彼らに期待されるのは部隊の指揮官としての能力ではなく、大規模魔術による敵の一斉薙ぎ払い役。ここにラース・イラ騎士団副団長セタンタ・フィアンと極大火力の持ち主三人を投入したことで総大将エーリカ・リスティ・ヴェスローディアの本気が知れる。

 エーリカは軍を中翼、右翼、左翼に分けた。中翼にエーリカと、教皇ルクレツィア、近衛としてインガエウ・フリスキャルヴ、そして実戦指揮官として神聖騎士団長スキピオ。右翼にはラース・イラ国主エレオノーラと、その副騎士団長セタンタ・フィアン。左翼はクーベルシュルト国王フィリップと、将として王妃ジャンヌ、軍師トクロノフ。遊撃にはヘスティア皇帝オスマンとトルゴウシュテの小領主シュテファン・バートリ、後詰予備兵として北嶺院文のアカツキ軍5万。


 戦前、教皇ルクレツィアの訓示。
「相手が天の眷属であるといっても、臆することはありません! われわれの前に立ちはだかる神は真実の神ではないのですから! 正しき信仰の名のもとに、狂神を打ち払います!」
神力が豊かなわけではない彼女だが、むしろそれゆえに。彼女の言葉は持たざる兵士たちの心を奮い立たせ、実力以上を引き出させる。兵士たちの士気は十二分だった。

 エーリカは連合軍を雁行(斜陣)、東側に偏らせて陣する。

 これはセタンタの案で、彼は必勝を期していた。いまラース・イラが大陸に誇る最強騎士ガラハド・ガラドリエル・ガラティーンが不在なのはただの偶然や行き違いではなく、本国における宰相ハジル派と騎士団長ガラハド派の相克がある。ガラハドの威勢を削ぎたい宰相派は先だっての東方三国同盟でガラハドが混元聖母を取り逃がしたことをあげてガラハドを拘留、審問にかけた。副団長でありガラハドの師匠でもあるセタンタとしてはなんとしてもガラハドを救出せねばならず、そのためにここで武功を上げる必要があった。最強の騎士を慕う女王エレオノーラが前線に出張っているのも、そうした事情である。

 逆落としの突破力にも対応すべく、トクロノフの進言を入れて騎兵の前にワゴンブルクを並べて突撃力を削ぐにつとめた。騎士たるものがワゴンブルクという民兵の戦術をあえて採用するあたり、決死の覚悟である。

 にもかかわらず。

戦端が開かれるや終始優位に立つのはやはり神軍。こちらの通常武器が自分たちには通用しないと知って、天使と神使は遠慮無く猛然と突っかかってくる。しかも逆落としの勢いはワゴンブルクの防衛をも押し返し、そして本来なら混戦で足を絡め取られるはずのところ天使というふよふよ浮く軟体触手には足がない。むしろ迎え撃つこちらが同士討ちでもつれ合い、良い的になった。

「坤地幡はなくても……わたしは負けない」
 混元聖母は勝利を確信して呟く。いま状況は東大外に連合、それを圧し倒す勢いで中翼に魚鱗の神軍。そして左翼、西側は開けており、そこに出水、サティア、アトロファの三人は移動する――!

「ひさしぶりに命の巫女の神髄、お目にかけましょうか……。まさか天の御使いを相手にこの力を使うことになるとは、思っていませんでしたけど」
 と、まずアトロファが中陣に居座って暴れ回る天使どもの生命力を一気に吸い上げる。存在のほとんどが霊質であるゆえにそれを吸い上げられると天の眷属は脆い。すさまじい消耗と虚脱で浮いていられなくなるほどに弱体化した天使たち。そこに連合の兵はすわ、と反転逆撃に移ろうとするが、セタンタは鋼の意思でそれを制する。いま中陣に飛びこむことは巻き添えで死を意味する。

「じゃ、合わせるとしますか……はぁ~、合わせる相手がこのデブじゃなくて、旦那様だったらなぁ~……」
「うっさいでゴザルよ性悪女神! 手ぇ抜いたらあとで主様に報告するでゴザルからな!」
「手なんか抜かないわよ。ていうか、あんた生意気じゃない? あたし仮にも創世女神の娘神よ?」
「知っているでゴザルよ。主様に負けて、そのあとニヌルタに土下座した情けない女神サマでござるよな」
「殺されたい?」
 出水とサティアの間で、プレッシャーがぐんぐんと高まる。敵にぶちかますべきエネルギーは目の前にいる相手に向けられ……

「はいそこまで。敵はあちらですよ、出水さん、サティア様。……出水さん、和を乱す行為は、メッ♡、ですよ?」
「うひっぃう!? わ、わかっているでゴザル!」
「まあ、ひとまずはアトロファの顔を立てて上げる。でも出水、あんたあとで覚えてなさいよ。旦那様のお気に入りだからって調子に乗りすぎ」
「なんでゴザル? ニヌルタの次は拙者に土下座するでゴザルか!?」
「あんたホント殺す」
「「でもまぁ、その前に……!」」
 無数に生ずる断罪の鎌《反逆断罪》と、サティアの爆ぜる光の剣。どちらも天使の異常なほどに旺盛な生命力を、易々と刈り取る。それはもちろん術者の力が優れているのもあるが、やはりアトロファの力で基礎能力を減衰させられていることが大きい。2,3回打撃を加えてから、3人はサティアの転移魔法でその場を待避。立ち去り際、出水があげた発煙筒で機の到来を告げられたセタンタは、手綱を御すのも限界だった麾下の兵たちにここぞとばかり突撃命令を下す!

 勒した馬に跨がり、一斉に突撃を敢行するラース・イラ騎士団の鋭気、ウェルス神聖騎士団の整然、クーベルシュルト傭兵騎士団の奔放。そしてなによりヘスティア重装騎兵隊の重厚。それらが混然一体となり、怒涛の勢いで中翼へと襲い掛かる。

 いまや戦況は逆転した。セタンタがギリギリまで敵を引きつけて釘付けにしてくれたおかげで、出水たちの火力は最大限十二分にその破壊力を発揮した。

………………
「……やって、くれる……」
 混元聖母は衝撃にうめく。前線で陣頭指揮中、側面からぶつけられた神力と盈力。とっさに【混元幡】で受け流したはいいが、衝撃までは殺せずかすかなダメージを負う。

「この盈力……この前の……男……。やはり、殺しておくべきだった」
 瞳に剣呑なものを乗せて呟く聖母。混戦乱戦の中でも冷静に諸事をさばいて過たない彼女だが、出水秀規が盈力に覚醒したのは計算違いだった。本来ならつよい神力を注ぎ込まれた時点で死んでいるはずであり、魔力で相殺しようとしても反発し合う力のせめぎ合いでやはり死ぬはずであり、そこから復活する可能性など万に一つより低い。盈力使いの能力者の出生率というのはそれほどに天文学的なのだ。それがまさかあの凡庸そうな少年に発現するとは。

 しかしそれですらも、なお優位にあるのは神軍、混元聖母。すでに天使の優位はほとんどなく、にもかかわらず彼らが優勢であるのはひとえに聖母の卓越した……まさに神がかった……指揮統率能力による。自軍が弱体化しているなら敵のもっとも弱いところを突き、ほころびを作り、そのほころびを広げて解き、麻糸を解く様にして連合を崩したてていく。並大抵の指揮官であればすでに何度も軍を壊滅させているだろう、セタンタや大陸指折りの指揮官たちだからこそかろうじて残していられる。しかしそれにも限界があった。

「わたしが……!」
「陛下、なりません」
 セタンタの横、神王剣クラウ・ソラスを抜こうとするのは女王エレオノーラ。クラウ・ソラスの威力はセタンタのブリューナクやインガエウ・フリスキャルヴの王者の剣以上、威力絶大にして必中・必殺。しかし所有者の命を削る魔の武具でもあり、それがためにラース・イラの先王は若くして死んでいる。女王を慕うものとしてセタンタはクラウ・ソラスを抜かせるわけに行かなかった。

 こうして神軍の優位。出水たちの魔術砲撃も、開幕で全力をぶっぱなした以上連発は出来ない。手詰まり。

 この状況で。

 背後から迫る大軍。

「魔軍襲らーい!!」
 シンタが叫ぶ。

「味方!? 敵!? どっち!?」
「先頭に辰馬サンいる! 味方!!」

………………

 少し前、王城ヴァペンハイム。

 辰馬たちがローゲに敗北して遁走したあの頃はあちこち穴だらけで名城の見る影もなかったものだが、今大幅な改修工事を済ませみごとな白亜の城を築きあげている。城の東西南北にそれぞれ建てられた尖塔が見事だ。

やけにおどおどした少女の先導で、玉座の間に通される。そこには魔王クズノハ、その腹心デックアールヴのオリエ、ローブを被った謎の人物、そして魔神ローゲとその旗下なる魔竜ニーズホッグ、魔鷲フレスヴェルヴらがずらりと並ぶ。魔軍のかなりの戦力を削いだとはいえ、その中核となるメンバーはこうして無傷で健在であった。

「ようこそ、わが弟‥‥‥さて、まずは……シッ!」
 一呼吸で、玉座から立ち上がり、間を詰め、そして一撃をくれる。美咲が「辰馬さま!」と間に入る暇もない。

 が。

「なにすんのねーちゃんアンタ」
 辰馬はその絶速の一撃を、軽くいなしてさばいてのける。

「ふふ、そうでないとね!」
 クズノハはさらに踏み込む。焔の陽炎をまとって分身、分身すべてに実体を持たせて、同時に複数の急所を狙う。

 しかし。

「だからさ。やめろって」
 実にあっさりと、当然のことのように辰馬はさばく。これにはオリエやローゲたちが驚き、息を飲んだ。クズノハも楽しそうにしているが、やはりその瞳には驚きの色が濃い。

「まさかここまで成長しているなんてね。じゃあ、これはどうかしら!? 七星罡天! 那由多無限之黒焔燐火!!」
 城ごと消し飛ばさんばかりの、轟炎と炎熱。

 けれど。

「だから。話聞けっての」

 辰馬が煩わし気に腕を振るだけで、その猛火は焼失する。光の黒翼を発するまでもなかった。もはや明白。新羅辰馬という少年の力は、すでに魔王クズノハのそれを大きく凌駕している。おそらくは地上に並ぶものがないほどに。

「ここまでの成長……素晴らしいわ、予想以上ね」
「なんでもいーから話聞いてくれ。いま、混元聖母が‥‥‥」
「同盟でしょ? いいわよ」
「人類存亡の危機でな、だから……って、へ?」
「同盟は了承。それで、ひとつ条件というか、お願いがあるのだけど」
「? なんよ?」
 トントン拍子過ぎる話に、少し身構える辰馬。次に続くクズノハの言葉は、辰馬を驚かせるものだった。

「わたしを殺してくれないかしら?」

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/12/01 07:05

22-12-01.くろてん3幕5章6話.聖女敗走

おはようございます!

アリアンロッドのルールブックに続き、今度はjavascriptの教本を購入しました! プラグインが完全に自分の望み通りのものにならないのであれば、自分で作るしかないかなと。今のところは5冊買ったうちの一番入門編を半分くらいしか読めてないのですが、少しずつ理解はできてきました。問題としてはゲーム制作をやめるわけにはいかず、一気に根を詰めてプログラムの勉強、というわけにはいかないのが少し…ですが確実に実になるものなのでOK。

こちら昨日描きました大番長・京堂扇奈。突き飛ばされてる形。

もうひとつ。魔神系出産図。モンスター名洋式に直すと決めたので非情に気楽。でもサマエルとサタンって同一存在だよなぁとかやっぱり気になっちゃったりしますが。ところで瑞穂さん、みのりん、晦日さん、寧々さん、蒼依、那琴、櫻香の7人以外はエロなしにしてもかまわない気がしてきましたが……やっぱりあったほうがいいでしょうか? この辺どうなんでしょうね。

それではこの辺で、以下くろてんです。本日もよろしくお願いします!

……………
黒き翼の大天使.3幕5章6話.聖母敗走

「はぁ~ぁ゛―、行きたくねぇーなぁ~……」
 思いっきりやる気なさげに、新羅辰馬は気怠さを表明する。エーリカからご下命された「魔王クズノハとの同盟」、それ自体は大いにやるべしと思うものの、今回自分に白羽の矢を立てたエーリカに「正気か?」といいたい。

 まず、辰馬はアカツキを発つ前、永安帝に「魔王クズノハを殺す」よう命ぜられている。おそらく魔軍の間諜はこの情報を知っているはずであり、当然クズノハの耳にも入っているだろう。あの場で辰馬はクズノハを「殺さない」と断言したわけではあるが、しかし事態が大きくなった現在、実姉を殺したくないという感情論で全人類を危険にさらすわけにもいかず殺すべきか殺さざるべきか、二律背反した感情に悩まされているところだ。そこにあっさり「行ってきて♡」とのたまってくれたエーリカのことは、多少恨めしくもある。

「まぁどげんにせよ、おれが決めんといかんことなんやが……」
「南方方言ですか?」
「……あれ、また方言出てたっけ? まぁ、うん。おれはばーちゃんが南方なんでな」
 隣に並騎する晦日美咲(つごもり・みさき)の問いにそう答えて、またしばらく沈思。しかしすぐに頭の中がこんがらがり、せっかくの美しい銀糸の髪をぐしゃぐしゃに掻き回す。
「あーあー、どげんしよか、ちゃっちゃくちゃらや(あーあ、どうしようか、二進も三進もいかん)」
 天に向かって詠嘆する。実姉と人類と、どちらかを取れといわれているも同然であって、簡単に結論が出るものではない。こういう問題に直面してひたすら悩み懊悩するからこその新羅辰馬であり、だからこそシンタや大輔や出水は辰馬を慕うし、瑞穂や雫やエーリカは辰馬を愛するのだが、どれだけ美質をたたえられようと本人が苦艱から解き放たれるわけではない。まったくもってちゃっちゃくちゃらだった。

 悩みながらも、二人は着実にヴァペンハイムに向かい進む。途中上位の魔族や天使が立ちはだかったこともあるが、この二人を苦戦させるほどの相手はついぞない。辰馬が魔王継嗣としてほぼ完璧に完成されているだけでなく、美咲は糸使いの武芸者としてその武技雫に伍し、さらに【人造聖女】としての能力……主として「祝福」の力……持ちでこちらも相当凄絶に強い。上位魔族や天使が一個大隊をなしてかかってきても返り討ち、というレベルであった。

 今日も二人は苛烈な神軍、魔軍の攻撃を蹴散らし、そして適当なところで野営する。有事即応のためテントは一つ。辰馬も美咲も蒼月館卒業からこっち同じ下宿に起居していたわけで今更恥ずかしがるはずもない……かといえばまったく逆で美咲はいわゆる新羅家の女性たちの中でもとくに男ずれしていない。下宿では辰馬の正妻、美咲の主君小日向ゆかがほとんど常に間にいたから平気だったが、ここ数日の、とくに悩みを抱えて夜の営みが激しくなっている辰馬の相手は美咲にとって少々、酷だった。事を致している最中「大丈夫かー?」と何度も問いはするものの、大丈夫ですとけなげに答える美咲は間違いなく無理をしている。

「……とにかく、仲よくしましょうとだけお伝えすればよいのではないでしょうか? わたしにはクズノハ先生がそこまで邪悪な存在とは思えません」
 かつて葛葉保奈の名で蒼月館の教鞭を執ったクズノハに対して、教え子の立場から美咲はそう言ってみる。場はテントの中、状況は事後の睦言で、赤毛の少女は絶世の美少女なれど身体の起伏乏しく、以前はそのことを気にもしていなかったが最近どうも瑞穂やエーリカと自分を引き比べてコンプレックスを感じることもあるらしい。貧相な体を隠すように毛布を引き寄せる。

「んー……個人としては善人だけど集団のトップになるとどうしても悪、ってのはいるんだよなぁ。魔族の王って時点で世間的にはそーいう認定だし……ほんと困る……」
 美咲の横で、辰馬はズボンを上げながらそう言ってまたため息。クズノハが完全な悪でないのはわかっているが、だからといって敵対しなくて済むという理屈でもない。

「とはいえ、話が通じるのは混元聖母よりクズノハなのは間違いねーからなぁ……。聖母のほうは完全に明確に人類を敵……つーか駆除対象と見てるし。神より魔族の方が話が分かるとか、皮肉なもんだけどな」
「神も魔も、関係ないのでしょう? 辰馬さまは」
「あー、うん。神も魔も人も、みんな平等で傷つけ合わない世界が来れば最高だな。けど、それが無理で神や魔がこの世界を、人間の舞台を台無しにするってんなら……おれが魔王としての力のすべてをかけて神魔をたたきつぶす」

 それは蒼月館の卒業論文に辰馬が書いた理想論。あらゆる存在がただあるがままに存在できて互いに尊重し合える世界。神への信仰ではなく自助努力によってひとが自らを救済する、そうあればよいという思想は今日の我々の世界にある仏教思想に通ずるものがある。奇態なことだがアルティミシア大陸にこれまで仏教思想に似た思想はなかった。なぜなら仏教は神が実在する世界には根付きにくい思想だからだ。現実に神がいるのでは自助努力より祈って救って貰う方が100倍速く、万倍簡単。そのうえで、仏教思想的なものは「持てるもの」からは生まれにくい。魔術的な力を持たないところから自分を人々を救おうとする故にあの思想は尊く、新羅辰馬は持てるものであるために仏教開祖ではありえないのだが、後世クールマ・ガルパのナガル・ジーナが始めた新思想・慈教(この世界の仏教)開闢の恩人といわれることになる。神魔排撃の英雄、九大国統一の皇帝、そして精神世界の王。「三重に偉大な赤帝」と呼ばれる所以であった。

 それから数日。ついにヴァペンハイムの城壁を、辰馬たちは指呼の間に捕らえる。

 ちょうどそこでは神軍と魔軍の会戦が行われていた。神軍は八万、魔軍は一五万。総力戦ではない前哨戦というところで地形は平地、しかし混元聖母にはあまたの宝貝があり、ことに坤地幡は地形を自在に変えていくらでも自軍優位の形勢を作りうる。2倍の兵力差があっても突然左右に隘路を作られ、その上に崖を生み出され、その崖上からつぎつぎと大岩を落とされて魔軍の兵は次々と粉砕される。圧倒的に神軍優位、かと見えた。

「下がりなさい」
 臈長けた声。それまで整然さに欠けた魔軍が、彼女の言葉の前に一糸乱れぬ後退を見せる。長弓を携えたデックアールヴ(黒エルフ)の少女、そしてもう一人、全身を灰色のローブに包んだ性別不詳の存在を従えた、燃える銀髪の美女こそ。

 魔王クズノハ。

「ずいぶんと、煩わせてくれること。でもこれでおしまい、その玩具は没収よ」

 クズノハはそう言って虚空に火をともす。それはボッ、と一瞬なにかを焼き尽くす様に燃え上がり、そして消える。

 いったん進み出たクズノハは指揮をデックアールヴの少女オリエともう一人の謎の人影に任せ、自らはヴァペンハイムへ引き下がる。神軍はそれを追撃、しかしここで魔軍の反撃が凄絶を極める。混元聖母は地形を操作して状況を優位に……できなかった。なぜならば坤地幡は謎の炎に灼かれて使用不能になっている。平地で兵力差2倍、そして有能かつ勇猛な2人の指揮官に率いられた魔軍は、それまでの緩慢で連携のとれない集団ではなかった。今やかれらは洗練された軍隊であり狩人であり、数に劣る神軍の天使や神使を紙を裂くように引き裂いていく。

「これは……いったん退いて立て直す……」
 引き際を見誤る混元聖母ではない。戦線に利なしと見るやすかさず撤退を全軍に令した。しかし混戦に持ち込まれた状況、しかも天使は単純な戦力としては優秀だが知性という点において到底秀逸とは言えず、それを補うべく人間に寄生させた天使、すなわち神使も、ベースは平凡な町娘たちでしかなく戦術的才能などない。大いに崩れ立った。

「………………」
 聖母は八万の収拾を諦めた。ぐすぐずして自分が害されては元も子もなくなると判断した彼女は単身、戦場からの離脱をはかるが、その右肩にどこから飛んできたのかまったく分からない矢の一撃が突き刺さる!

「く……!? 次元を越える矢……オリエ……」
 魔軍の五将星、オリエにとっていっさいの距離は障害にならない。混元聖母は敗北の痛みと屈辱にほぞをかみながら、飛んでくる二の矢を障壁で防ぎかろうじて落ち延びた。

………………

戦闘の推移を見守っていた辰馬たちは、驚きの結果に息を呑む。これまで地形を自在に操って敵に一切の仕事をさせなかった混元聖母の神軍が、まさかの敗北。その要因としては坤地幡を破ってのけたことがなにより大きいが、神話級の【遺産(桃華帝国的な言い方をすると、宝貝)】である坤地幡をあんなにも易々と破壊してのけたクズノハの魔力がすさまじい。そしてオリエともうひとりの指揮官の統率力。

「あの灰色の身ごなし、どっかで見た覚えがあんだけどな……?」

辰馬はそう言うも、明確に誰かは分からない。

「んー……」
 首をひねっていると、突然横合いから袖を引かれた。

「んん? って、誰!?」
「わ、わたしもびっくりです。ここまで完全に気配を消して……」
「シァーギ、タァーマさま、ですね?」
 相手は人間の少女だった。使う言葉はアルティミシア共通語ではなく、ヴェスローディア公用語。ふだん辰馬たちは共通語で会話しているため大陸のどこに行っても意思の疎通に不便を感じることはまずないのだが、この少女は共通語の会話ができないらしい。身なりからしてあまり上等でなく、教育も受けることが出来ていないのだろうと知れた。

「へ? あぁ、シラギ、タツマな。うん」
 一瞬、誰のことかわからなかった辰馬だがすぐに理解すると首肯する。相手の少女はあきらかにホッとした顔になると、言葉を続けた。

「クズノハ様がお待ちです、こちらへ……」
 言うや身を翻し、ついてこいとばかり歩き出す。これは罠か? と辰馬と美咲は顔を見合わせるも、どちらにせよここで誘いを断る選択肢はない。ならばどうせなら誘いに乗って上手い具合やってのけようと、二人は少女のあとを追って歩きだした。

………………
以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/11/30 07:17

22-11-30.くろてん3幕5章5話+しろばんイラスト(嘉神狩人さま)!

おはようございます!

昨日1日で新しいプロジェクト作ってどれだけできるかやってみましたが、これがほとんどできなかったです。ゲーム用の立ち絵1キャラ作って必要なファイルをプルジェクトフォルダに入れてプラグインやらなんやらが動くよう設定して、をやるとあっという間に深夜。ずっと毎日自分用エロゲ作ってる時間もないので今日からしばらくはまた「日輪宮」ですが。そういえばコモンイベントって100個までなのですねー。101作ると限界を超えた、と表示されるので驚きました。

で、アリアンロッドRPGのルールブック群購入しました。スキルとかステートの製作参考用ですね。タイミングがマイナーアクションとかのスキルはツクールと親和性低いのですが。変数によってダメージが変動する魔法とかも考え中、これはコモンイベントに乱数を作って、乱数1ではファイア、2だとファイア2、3だとファイア3が発動、みたいにすればできそうなんですが…このスキルを敵がちゃんと使ってくるかどうかまだ不明。あと、スキルやモンスターの名前はやっぱり西洋名で統一しようかなと。とくに錬金アイテムの名将なんですけども、「アクア・ウィタエ(命の水)」とか「メルクリウスの蛇翼」とか設定する…さすがに東洋練丹術用語の知識がないので…のであればモンスターの名前もスキル名も、カタカナ語を増やしていいかなと。アカツキという国はとっくに文明開化して横文字も普通ですし、閉鎖社会ヒノミヤがどんだけ開明的か、なんですがもうめんどくさいから馬腹=スライム、并封=オークでいきます。たぶんそっちのほうがユーザーフレンドリー。

そして今日は「しろばん」の方の速報。嘉神狩人さまによるイベントCGが75枚中50枚越えましたので、一部を公開。

ゴリアテの愛妾・淫魔の姫エリンのパイズリ。愛妾といっても立場低いですが。

「聖女」アイオーンの触手凌○。このひとが主人公・ゴリアテに負けたところから、作品のメインストーリーが始まります。

聖女の妹アイテール。姉を助けに来てみたらあっされ負けて犯され、しかもセックス依存症の淫乱になってしまう妹。

アイオーンが神殿の奥に隠してあった魔導書から召喚された天使ラシャも半殺しにボコられて凌○。

女神ロイア降臨するもゴリアテに敵わず、敗北、凌○を受けたあとは家畜のつがいに。

というわけでロイアだったりその上位・創世の竜女神グロリア・ファル・イーリスなんかはくろてんにも登場しますが、作品自体は別個。最終的にグロリアがゴリアテに平伏するのもあくまでパラレルな展開です。

昨日つくった新規自分用エロゲのキャラクターとして、スワティ立ち絵。20年以上昔のキャラであろうと一番凌○したいキャラと言えば彼女を置いてほかになしです。当分こっちは凍結ですが。

そのあとまた「日輪宮」に戻って、鷺宮蒼依凌○①。なんだか髪型が失敗したような気もしますが、たぶん大丈夫。いちいち修正してたら時間が足りなくなるので、まず全素材完成を優先します。

では、くろてん参ります! 読んでいただけている方々には本当に、いつもながら感謝です!

………………
黒き翼の大天使.3幕5章5話.諸侯会盟

 ハウェルペンの衆議堂には13名の、各国のトップあるいはそれに準ずるビッグネームが貌を連ねた。

 第1席、盟主としてヴェスローディア女王、エーリカ・リスティ・ヴェスローディア、18才。ヴェスローディアという国家の陥落を許しはしたものの、若き不屈の女王は自ら艱難に身をさらして復興を目指し、いまここにある。軍隊指揮の巧拙に関してはしばしば「一流ではあるが、超一流ではない」と言われる彼女だが、彼女の真価は兵に将たる、ではなく将に将たる能力にあり、幕下の優秀な人材軍を知るにつれ各国諸侯は賛嘆と羨望を禁じ得ない。

第2席に座るのはウェルス=グロリア神教の『聖女』教皇ルクレツィア・アウレリオス・チェーサル28才と、第3席はその忠実な従僕たる神聖騎士団長テオドールス・アウレリオス・スキピオ36才。ルクレツィアは先代教皇クロートーの愛弟子であり、先代聖女アーシェ・ユスティニアの後継としてアトロファやラケシスの上位に当たる。聖女として神力の技巧はむしろ凡庸だが、人のために自分を捨てることの出来る献身的な人格は「彼女こそ真の聖女」といって支持される。彼女を信仰するものには祖帝シーザリオンの妻(シーザリオンとルクレツィアが結婚することはなく、シーザリオンの妻は女神グロリアから下賜された竜種の娘であったが、実際に祖帝が愛した女性はルクレツィアひとりであったという説は根強い)・聖母ルクレツィアに彼女を重ねる向きが多い。スキピオはルクレツィアと同じアウレリオスを氏族名とする点で推測がつくかと思われるが、ルクレツィアとは従兄弟に当たる。優秀で有能な指揮官であり、優れた才覚の騎士でもある。個人戦闘力では魔王殺しの勇者・新羅狼牙、世界最強騎士ガラハド・ガラドリエル・ガラティーンに一歩譲るが、堅実な防衛戦の指揮能力は極めて高い鉄壁である。

遅れてきながら堂々と第4席に座ったのはヘスティア皇帝オスマン33才。これに目を剥いたのはこの席は自国の女王エレオノーラにこそ、と思っていたラース・イラ「騎士団」の歴々は色めき立ったがエレオノーラは平然と譲り、オスマンも悪びれることなく端座する。その挙措の洗練、鋭い眼光、短い言葉からも察せられる叡慮。そうしたものがたちまちに彼をこの場の主役とするほどで、オスマンという男は歴史の表舞台に現れた瞬間からすでにほかの主役たちを喰うほどの存在感を発する。

第5席にはオスマンに弾かれた形のラース・イラ女王エレオノーラ・オルトリンデ19才と、その隣6席に「騎士団」の副団長セタンタ・フィアン。「真聖剣」クラウ・ソラスを佩くエレオノーラは華奢ではかなげな、一見すると守られるだけのお飾りの女王というふうがあるが、それは彼女の本質を見ていない。愛国の念、世界平和への希求というものであれば彼女は歴代の「聖女」たちにも劣らず、その心底を知る故にラース・イラの騎士たちは命を捨てて彼女に尽くす。また剣士としての彼女は世界最強の騎士、ガラハドに師事しており、身ごなしを観察すれば彼女がただ聖剣を吊しただけのお飾りでないことは知れる。副団長セタンタ・フィアンもアカツキ内乱(ヒノミヤ事変)で竜の魔女相手に負った傷を完治させて、腕を鍛え直しての参戦だった。

7席、クーベルシュルト新国王フィリップ28才、8席はその守護騎士にして妻である女王ジャンヌ23才、さらに9席、クーベルシュルト宰相ヤン・トクロノフ57才。つい先日まで虜囚として獄中にあった王太子はすっかり立派な国王となり、精神的支柱、師父トクロノフを軍師に、尽力してくれた姫騎士ジャンヌを妻にはせ参じた。ジャンヌはウェルス・グロリア神教会が認めた正式の聖女ではないが実力は折り紙付き、ヤン・トクロノフがヤン・ウィクリフから継承した軍事的才能、とくにワゴンブルクはいまやアルティミシア大陸の防衛戦の主流となりつつある。頼れる存在であった。

10席、エッダ共和政府副総裁カール・グスタフ・オクセンシェルナ47才。冷静で怜悧な政治家であり、軍人ではないが剛胆放胆で知られる。18年前の魔神戦役当時も若手官僚として国防に辣腕を発揮した人物であり、魔王殺しの勇者・新羅狼牙一行がエッダから海を渡って暗黒大陸に向かう際、その船を手配したのがこの人物であった。まさか勇者が魔王の息子をかくまって自分の養子にしたとは思いもしなかっただろうが。

その隣の11席はインガエウ・フリスキャルヴ。エッダ北方をまわって慰撫した結果、彼らの「旧エッダ王家残党連合」の総領に推戴され、ここに着席。「王者の剣」に選ばれただけあり優秀な剣士であり指揮官としても優秀、先日新魔の軍に追い立てられて全軍が壊滅させられそうになったとき、馳せてそれを持ち直させたのはすべて彼の手腕による……のだが、おごりやすく調子に乗りやすい彼はその功を誇り、他者に対して尊大に振る舞うのが瑕瑾となる。それをいさめることもなく主君をあおりたてる三人の従者に、問題があるのであるが。

12席、アカツキ少将・北嶺院文。一少将のごときが、という声もアカツキ三大公家次席、北嶺院家の家門を押し立ててねじ伏せ着席。率いる兵がわずか5万と少ないためにやはり軽んじられがちだが、彼女は学生時代模擬戦無敗の天才。混元聖母とルーシ・エル・ベリオールの東方戦線による被害を最小限に食い止め、返す刀ですかさず西方にやってきた彼女の功はもっと評価されてよい。

そして13席。本来用意されていなかったこの席に、エーリカとオスマンの強烈な推薦で座ることになったのが新羅辰馬、18才。魔王の継嗣にして聖女の息子である。史上、新羅辰馬という少年がヒノミヤローカルではないアルティミシア九国史に明確に姿を現したのが、まさにこのときであったと言える。各国のトップ……トップの大概は人格者であったり、辰馬と面識があったりなので問題ないが、むしろその後ろに控える高官たち……はアカツキにおける地位は学生士官で中尉に過ぎない無名の少年に怪訝な顔をした。そこを弁護するのは褐色の肌のヘスティア皇帝。

「かの少年は余に勝った者である。彼を侮辱する者は余と余の帝国の名誉に喧嘩を売る者と見なすぞ?」
 高圧でもなく、実にすらりと。そんなふうに言ってのけるオスマン。この一言でひとまずしわぶきは已んだ。

「そーいうことよ。あと、そいつはあとあとヴェスローディアの国王になるんだから、あんまし馬鹿にするんじゃねーわよ」
 エーリカもオスマンに続けて鼻息淡く。しかしこれはむしろ反感を買う。エーリカ女王をたぶらかしたか、浅学非才が寵をたのみおって、と辰馬言われ放題。

「っせぇよ、ボケ! テメぇらに辰馬サンのなにがわかんだっての!」
「そーそー。あんましたぁくんのこと悪く言うとおねーちゃんも怒っちゃうよ~?」
 あまり政治的な見識がないうえ、辰馬に対して妄信的なシンタと雫がそう吠えるが、そういうのがまた逆効果になる。

「お前ら……ちょっと黙ってろ、な?」
「でもさぁー、たぁくん」
「いーからいーから。なんもわからんばかたれどもには言わせとけ」
 と、素でこんな事を言ってしまうのが辰馬の正直さであり、困ったところ。各国文武の官は色めき立ち、それを見てオスマンは面白そうとにっこり。

「おやめなさい」
 と。一騒動持ち上がりそうな所、立ち上がったのは教皇ルクレツィア。白と赤を基調とした法衣姿の女教皇はしずかだが有無を言わせない声と態度で、今が内輪もめをしている場合でないこと、そして

「その少年は教会の至宝といわれた先代聖女、アーシェ・ユスティニアさまのご子息ですよ。……そうですよね、新羅さん?」
「ああ、うん……」
「ほらね。というわけで、彼を無名の有象無象、と決めつけることは教会の権威に傷をつけることになるのですが」
 
 この言葉にはとくに地方の領主たちが苦呻を上げた。うっかり辰馬=聖女の息子を侮辱して瀆神罪で教会から破門→信徒領民が離反→反乱→収入激減と考えた彼らは、たちまちに掌をくるり。揉み手せんばんかりの愛想良さを辰馬に向け振りまく。

「なんだろね、これ……ま、いーけど」
「そんなことより。今の戦況分析が必要であろう? 余とヘスティアの軍勢はこちらに来たばかりで戦況も土地勘もない。このまま戦っても勝てんぞ」
「当然の質問です、ヘスティア皇帝。ではわたしが説明を」

 オスマンの言葉に、エーリカの隣から穣と瑞穂が立ち上がった。穣が指示を出し、瑞穂が穣の告げた言葉をかみくだいてマジックペンでホワイトボードに書き記していく。ホワイトボードはたちまち地形と地勢と兵力、各部署の指揮官能力などの概要でいっぱいになった。穣の正確すぎる洞察力と分析力、それを理解して衆人にわかりやすく図面化してのける瑞穂の表現力、どちらも尋常のそれではなく、人々は驚嘆に息をのんだ。

「まず、このハウェルペン。20万と北嶺院先輩の5万を合わせて25万でしたが、スルタンの30万が加わって55万」
 瑞穂が言う。

「対する神軍と魔軍ですが、一度に一面を相手にするのであれば、数はこちらが勝っています。神軍30万、魔軍50万というところ」
 ついで穣。そこで辰馬が疑問を挟む。
「神軍って……そんなにいたか? 5万とか10万とか、おれらがトルゴウシュテに行く前はそんなくらいだった気が……?」
「増えました」
「ふえた?」
「はい、人間の娘を苗床にして、混元聖母は天使を増やしました」
「………………吐き気のするやり方だなぁ……」
「彼女たちを救うためにも、敗北は許されません。……続いてですが、魔軍にはおそらく、魔王クズノハが前線に出ました」
「「「……!?」」」
 穣の言葉に、人々の目に恐れと動揺が走る。魔王クズノハ、先代魔王オディナ・ウシュナハが殂してわずか18年で、暗黒大陸を統一して人類に挑む英傑。本人は暗黒大陸に隠れたままでその実力未知数であったが、5将星といわれる一人で一国を滅ぼしうる力を持つ5人の魔神を従え、彼らの力から類推してやはり、魔王と言うにふさわしかろうと畏れられる存在。

そして、辰馬にとっては異母姉。

「わたしの構想では、まず魔軍と手を組みます」
「魔軍と!? 相手は魔族だぞ、話が通じるものか!?」
 穣の言葉にどこかの国の門閥貴族がそう吠えるが。

「いえ、大丈夫だと思います。むしろ話が通じないのは神軍。とくに混元聖母は人間を心の底から憎悪しています。理解しあえないというならこちらでしょう」
「それに、上位の神族は普通の人間には見えないし、触れません。強い神力魔力の持ち主でないとそもそも戦いにならないんです。魔族のかたにこれをなぎ払っていただけるなら非常に助かります」
 穣の反駁、そして瑞穂の補足に、むうと呻いてうつむく。心情的に魔族と結ぶのは承服しかねるが、理性は納得したというところだろうか。

「んじゃ、クズノハ先生に同盟、申し込みましょうか」
「教義的には反対すべきなのでしょうが、人類存続を神のご意志とあきらめる気にはなれません。教会はエーリカ女王の決断を尊重します」
「余としても異存はない」
「ラース・イラは人類を守護する剣として戦うのみです」
 エーリカの言葉にルクレツィア、オスマン、エレオノーラが同意し、ほかの面々も内心はともかく同意。

「そんじゃたつま、戻ってきたばっかで悪いけど、おつかい行ってきてー」
「え゛ぇ? なんでおれ……?」
「そんなん、アンタが一番クズノハ先生と親しいからよ、さ、行ってこい弟くん!」

………………
「追い出された……。ま、行くか」
「ご案内します、辰馬さま」
「あー、晦日。サンキュ」
 かくて。エッダのトルゴウシュテから戻った新羅辰馬は今度はヴェスローディア王城ヴァペンハイムを目指す。次の目的は魔王クズノハとの同盟締結。神族撃破のため、これは決して失敗するわけに行かない。

「そういう交渉に不向きなんだがなぁ、おれは……」
「大丈夫、辰馬さまならできます!」
「いや、根拠なく励まされても……」
 新羅辰馬と晦日美咲の二人きりという、珍しい取り合わせはこうしてヴァペンハイムを目指した。

………………
以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/11/26 12:25

22-11-26.ゲーム進捗動画

おつかれさまです!

昨日一日かけてSLGシステムで「日輪宮」を動かす目途が…まだ動かないパートとか多々ありますが…立ったのでひとまずここで動画公開です。現状シナリオはとばしてシステム先行。

まず一番最初にタクティカルコンバット。SLGシステム上は動かないんですがタクティカルコンバット単体でなら動きますということでお披露目。各キャラごとに設定してあるパッシブスキルの中から4~8個(スキルごとに必要ポイントは異なる)を選択して戦います。とにかく重要になるのは「カブト割」と「次元斬撃」。カブト80は攻撃力を5倍、次元75は4倍するのでこの二つを両方持ってると攻撃力は5×4で20倍になります。さらに強化したい場合集約攻撃もちだったらこれ持たせると、1.5~4倍がかかることになりますが…その場合範囲攻撃は捨てることになります。あと、次元もたせるとイベイド持ちの相手にあたらなくなるんですが、序盤の敵にイベイド持ちはいませんから大丈夫。ほかのスキルで大きいのはやっぱり「愚者の嘘」。敵パッシブスキルをツクールに登録してある順に上からスキル値数打ち消します。今回長谷部に愚者3を持たせたので、敵はほとんどスキル丸腰でした。ちなみに「遠隔攻撃」「次元斬撃」を持たないキャラは目の前以外攻撃できないので、悪精は攻撃手段がなく置物になってました。大火炎陣とか開幕火炎砲とか持たせられるんですが、これ持たせると戦局が一発で決まってしまうので動画的には使えませんでした。

SLGシステム本編に入ってまず注目いただきたいのは「現在の曜日は土です」という表示。1~7の変数を作ってターンごとに変数1を加算して、7になったらまた1に戻す、という処理で順番に土・水・火・風・光・闇・無にしてます。これをタクティカル戦闘および首尾く設定に当てはめて曜日ごとに強い種族、弱い種族を設定可能。水と光に女性が強く、男性は土と闇で強くなるとかそんな具合です。竜は火と闇のときに強いとかできるんですが、困ったことに竜種には水属性っぽいのもいるのですよね…。ただ今はSLGシステム上で戦闘できないのでそこのところご紹介できないのですが。

次は辞書プラグインで画像表示できるようになりました、というパート。これあるとないとでは大違いだと思います。やっぱり視覚的に確認できるのは大きい。並列でコモンイベントを作って「アイテム○○を保有していれば表示」「モンスター○○が仲間にいれば表示」というふうに作っているのですが、モンスター80体分作るのでかなり消耗しました。もっと簡単に設定できる方法がありましたらどなたか教えていただきたいです。

次は会話プラグインのテスト。テストなのできわめて簡素にセリフ3、4個で流しましたが、長くすることも当然、可能です。ただまあ、長文はメインシナリオのイベントに気合入れて、会話・出産・娼館ではおのおの台詞10個ぐらい流したら終わりにする方がいいだろうとは思ってます。ちなみに瑞穂さんのパイズリフェラはボコボコ殴打イベントが下手すると発売停止とかになるかも? ということで、であれば差し替えお願いしますと描いて広輪さまに提出、差し替えOKいただきました。

そのあとがコンピュータのアルゴリズム。ここに10秒以上かかってます。というかSLGプラグインに登録してないキャラまで全部の思考パターンが表示されてるわけですが…しかも表示はされますが実際のキャラの移動はされてないのでまだ未完成。先述の通りこの画面から敵の領土に攻め入ることができないので現状手詰まりだったりします。

ついでノンマップ冒険システム。20歩進行するとボスキャラ(同階層のエネミーの色違い)が登場、これを倒すと錬金強化用のアイテムが手に入り、次の階層に進めてまた20歩、5階層制覇するか途中で「拠点に戻る」を選ぶかでSLG画面に戻れます。1ダンジョン1階層ごとにモンスターが2種しかいないので登場のバリエーションが少ないのですが…。昨日エネミーのパラメータがデフォな段階で5階100歩踏破しましたのでダンジョンの挙動は確認済みです。正式なパラメータを入力するとまったく勝てなくなりましたが。あと、戦闘背景が変更し忘れでした。

というわけで、手持ちの機能をかなり使いこなせるようになってはきました。それでは、以上です!

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