有坂総一郎 2023/05/12 08:30

弾倉、保弾板、ベルトリンク

弾倉、保弾板、ベルトリンク

それぞれについてちょっと調べ直している。

航空器用装弾方法はほぼベルトリンクで一部がドラムマガジンとかだが、重機関銃、軽機関銃などは保弾板や弾倉、海軍対空機関砲は弾倉......というのが帝国陸海軍の一般的な機関銃の装弾方式の解釈となる。

で、今、現時点で注目して調べ直しているのが保弾板だ。

パッと発想する印象としては旧式な給弾、装弾方式に思えるのだが、よく考えてみると陸軍の重機は保弾板でのそれだが、特に不満が出ていた感じがない。

逆に海軍の九九式20mm機銃は1号銃の装弾数が不足する問題に2号銃などではベルト給弾に魔改造で対処している。エリコン社の純正品ではドラムマガジンでベルト給弾は無理と判断されていたにも関わらずだ。

これは必要だからそうした事例であるが、一式重機などは九二式重機から給弾方式は変化せず30発保弾板のままだ。

これは保弾板であれば、バラ弾を運び込まれても重機班に4名いる弾薬手の誰かがその場で素早く保弾板にバラ弾を再装填することができるというメリットがあるからだ。保弾板も数枚あればバラ弾の弾薬箱から延々と装填準備が可能になるのである。

重機の機動的運用における弾薬の輸送・補給の方法はバラ弾を前送することで成立し、運動戦こそが陸軍の基本戦術である以上は重く嵩張るベルトリンクを採用しないことにメリットがあったと言える。

基本装備としては30発装着済み保弾板を18枚540発の甲箱、同25枚750発の乙箱が定数装備されているが、これらとは別個にバラ弾が調達できれば定数以上に敵陣ないし敵部隊へ7.7mm弾を叩き込めるわけだ。

また軽機は、十一年式軽機が5発挿弾子を横置きで6段装備して30発装填というスタイルで最初に開発した。その後、九六式軽機で30発箱型弾倉に変更されたが、これは満州事変での十一年式軽機の運用実績で砂塵などが機関部へ侵入し動作不良を起こしたことからである。

重機と違い、より運動戦による機動が多い軽機への現実的な対処と言えるだろう。まぁ、繰り返しになるが、帝国陸軍の場合は重機も平気で前線へ突っ込んでいくのだが。

よって、保弾板も積極的に採用するメリットがあり、またそれゆえに他の列強と比べても帝国陸軍の重機は特に攻撃戦時の継戦能力が高いのを特徴を持つことになる。

ベルトリンクという代物が機関銃界隈では最適解ないし現代的という感覚があるけれども、結局は運用やドクトリンに基づいて選択されるべきものと考え直す良い機会になった。

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