投稿記事

セクハラの記事 (14)

羞恥好き。 2024/05/17 16:30

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

羞恥好き。 2024/05/17 16:00

F1:シーフに懇願しながら、パンツを10秒同時に見てもらいましょう!

────あぁ、どうしてこうなってんだ...



 俺は、頭の中で自問することしか出来なかった。



 ゴツゴツとした岩肌の中に、一段と目立つ荘厳な扉。

 地下へと続く階段と、それを封じる謎の透明な障壁。



 その全ては、炎に燃やされ、斬撃に刻まれ、ボロボロの様相を呈していた。



「ったく、おい勇者御一行様よォ...こんなに暴れ散らかしてどうしちまったんだ」



 俺はこれでも気を遣ったつもりで声をかける。



 底辺を這う嫌われ者と大評判のシーフである俺は、ビクビクと怯えながら声を掛けるしか無いのだ。



 しかし、返事は大変麗しい女剣士様の射殺すような視線だけだった。



 一体何があったのか、俺には見当も付かない。

 1つ、分かる事があるとすれば、勇者様方が暴れ出したのは階段を防ぐ様に浮いている障壁、そこに浮かぶ文字を見た時からだ。



 後ろを着いていく事しか許されない俺にその文字を読む事は出来なかったが、よっぽど我慢ならないのだろうか。



 その文字を見た瞬間、御一行は固まり、震え、360度に攻撃を加えたわけだ。(主に女剣士と女魔法使いが)



「え、えっと...ドリーグさn「おい、シーフ!少しの間遠くに離れていろ!チームでの相談だ」



 チッ...このクソッタレた冒険の唯一の癒し、聖女様の声を女剣士が遮りやがった。



 イライラは募るが、力で隔絶した差を付けられている俺は従うしか無い。



 障壁付近に固まっている御一行から離れ、反対の扉付近で腰を下ろす。



「しっかし、すげえ扉だぜこりゃあ...」



 流石はSランクダンジョン、扉まで規模が違う。

 意匠や大きさは然ることながら、1番の特徴は"何があっても壊れない"事だ。あれだけボコボコにされようが壊れてない事が証拠。



 驚くべき事に、俺達はダンジョンに閉じ込められたらしい。入って来たばかりの扉が閉じたっきりどんな攻撃を与えても開きも壊れもしない。

 これでも何百何千とダンジョンを踏破してきたんだが、こりゃ一体──────「おいシーフ!戻って来い!」



 その大声が聞こえた瞬間、思考は途切れる。



 ったく、もうこの扱いにも慣れたつもりでいたが、イラつくものはイラつくらしい。



 舌打ちを1つ、渋々御一行の元へ戻る。



 ここで、俺は漸くもう1つの異変に気付いた。

 ────勇者パーティの全員の顔が、異様に赤いのだ。羞恥、困惑、屈辱に塗れていた。



「あはは、これは流石にちょっと、恥ずかしいな...」



 そう呟いたのは我らがリーダー、女勇者。今この状況に恥ずかしい要素は何一つない。



 俺はシーフだ。空気を読み取る力は人一倍ある。しかし、例え冒険者でなかろうと、今の異常な空気は分かるだろう。



何が起きている....



「おいシーフ、お前はこのダンジョンを出たら絶対に殺してやる!くそ、なんでこんな...」



 普段なら、殺すなんて言われればカチンと来るものだが、今はなんとも思わなかった。なぜなら女剣士が顔を真っ赤にして声を震わせていたからだ。



「ダメだよアリシア。これは彼のせいじゃないんだ。理由もなく命を奪っちゃいけないよ。それに...」



 割り込んで話してきたのは、勇者。

 顔は赤いままだが、瞳には強い意志と決意が現れていた。



「ボクが最初にやるからさ、ね?」



瞬間、目に映ったのは、スカートの中のスパッツを膝下まで下ろした女勇者の姿。



 鎧とスカートが一体化したような装備を着ている勇者がスパッツをおろせば、その下に残るのはもう、下着しかない



「うわぁ、いつもと違ってスースーするなぁ...」



 そう、照れを誤魔化しながら笑う勇者の姿から、目を話せなかった。



「じゃあ、いくよ...見られなくちゃいけないんだけど、あんまり見ないでね...?」



 そう言って勇者はスカートをたくしあげていく。

 1度した決意はどこに行ったのか、手を震わせながらゆっくり、ゆっくりと。



 そうして少しずつ見えた下着の色は、白。純白だ。

 ゆっくりと見える部分が増え、ウエスト部分に辿り着いた時、小さな水色のリボンがちょこんと付いてるのが見えた。



「あはは...そこまでじっと見られると、いくらボクでも恥ずかしいなぁ」



 その言葉を聞いてハッとする。

 自分でも気づかないほど集中していたようだ。

 自分より一回りも二回りも若い女の子の下着、それも絶世の美女のだ。罪悪感など沸く暇もなかった。



「くそ!ネルビアにだけ任せていられるか!」



「死ね、ヘンタイ...」



「わたくしも、仕方ない、ですよね...」



 三者三葉の言葉を吐きながら、彼女たちは下着を見せるために邪魔な服を脱ぎ始める。



 そうして女騎士は健康的なショートパンツをズラし初め、魔法使いは可愛いフリルの着いたスカートをたくしあげ、僧侶は白い修道服のロングスカートをゆっくりと持ち上げ始めた。



 全員の下着が見えそうになる...





 その瞬間、障壁が大きく輝き始めた─────



 

  



 ──────眩い光が収まり、ようやく目が見えるようになった時。

 階段を防いでいた障壁が消え去る。

 そう思いきや....



 ビーッ!と耳障りな電子音が響き渡った。



 これは嫌になるほど聞き覚えのある、ダンジョン階層突破条件未達成の通知音だ。



「なっ!」



 そう、誰かの驚愕の声が聞こえる。



『条件未達成

 未達成理由

 ・アリシアの下着の下半分が見えていない。

 ・下着を同時に見せていた時間が存在しない。



 よって、階層突破条件の難易度を上昇させます。』



 電子音で、そんな声が聞こえた。

 階層突破に失敗した時、難易度が上がるのは常識で違和感はない。

 しかし、明らかに違和感のある文言があった。



「下着...?」



 俺はそう呟いてしまった。すると、キッとアリシアが睨んでくる。





『階層突破条件:シーフに懇願しながら、パンツを同時に10秒見てもらう』



 間髪入れず、そんな電子音が聞こえてきた。



 アリシアの方から、冗談だろ...?と声が聞こえてくる。

 ソフィの方を見ると、顔を赤くして俯いていて、エリカは怒りなのか屈辱なのか、いつもと違い鋭い目をしていた。



「あはは...まぁ、そういう事らしいんだ、ドリーグさん。」



 ネルビアは、スパッツを下ろしたままでスースーするのか恥ずかしいのか、スカートを手で抑えながらそう言う。



「いやぁなんと言ったらいいか...。

 だから扉を破壊しようとしていた訳か。」



 俺は納得と共に、少しだけ話を逸らした。

 いや、怖いよ。なんか役得っぽくなってるけど普通に俺より何万倍も強い奴らに、意に反する事やらせるの怖いよ。



「バカを言うな!唯でさえさっきのでも恥ずかしかったのに、10秒だと!?」



 顔を赤くしてアリシアが言う。



「そのさっきのも、全部見せてた訳じゃないらしいけどね」



 障壁を見つめながらエリカが言った。



「当たり前だ!男に見せるなど...」



「みなさん、1度落ち着きましょう...?」



 動揺を隠せない一同を前にソフィが言う。



「うん、そうだね...。モンスターも出ないようだし、一旦落ち着こう。」



 ネルビアは、ソワソワしながらもそう言った。



「一旦、整理してみようか。入口の扉はおそらく何があっても開かない。障壁も壊せない。唯一進める方法は、下着を見せるだけ...うん、何も変わらなかったね。」



「時間が経てば条件が変わる、とか無いんでしょうか...流石に恥ずかしいですし...。」



 ソフィはモジモジしながらそう言った。



「いやまぁ、袋の中に数年生きれるくらいの食料はあるが...」



 腰に付けている袋をトントンと指さす。



「ありがとうドリーグ。でも私達には無駄にする時間なんて無いんだ。これでも勇者パーティだからね。」



「よし分かったぞネルビア!あのシーフの目を潰そう!目が無くてもこっちを向いていれば条件達成もできるだろう!」



「はいダメー!」



 突然、聞き覚えの無い声が聞こえてくる。

 声のする方向を見ると、黒髪おかっぱで手のひらサイズの、羽の生えた妖精のような者がいた。



「なんだ?お前は...」



 アリシアはそう言った。



「うーん、ダンジョンのお助け役?手伝っちゃうぞー!みたいな?」



 自称お助け役は、首を傾けながらそう言った。



「とにかく、いつまで経っても攻略進めないから来ちゃったよー!」



 元気いっぱいに彼女は叫んでいた。



「そうか。なに、今この男の目を潰して進もうとしていた所なんだがな。」



「それそれ!それがダメなんだよ。このダンジョンでは仲間同士の攻撃禁止!と言うか初めに扉を壊そうとした時、そこのシーフ君も切ろうとしてたでしょ?ここのダンジョンじゃ攻撃が効かなくなってるから意味ないよ!」



 はぁ!?マジかよ、んな事してたのか。全然気づかなかった。

 一応数回の攻撃を無効化する装備を持っていたが、殺そうと思えばいつでも俺を殺せるのか。



「まぁ、本当に殺そうとはして無かったっぽいからいいけどさ~」そう、髪の毛をいじりながら妖精は言う。



「あ、そうだ!自己紹介がまだだったね。私の名前は...うん、ナビとでも呼んでもらおうかな。」



 決めポーズをしながら、ナビは言う。



 

 「そして、兎にも角にもみんなに言いたいのは...

 ここを出るには、"おパンツ見てください!"ってお願いしながら下着を見せるしか無いんだよ?」



 ナビは、俺達にそう言い放った。



 ♢



「みんな、やるしか無いんだよ。」



 そうネルビアは言った。



「恥ずかしいかもしれないけど、減るもんじゃないしね?緊急時の医療行為でも下着を見せることだってあるでしょ?」



「それとこれとは話が別だろう!それに今までそんな怪我にあったことも見せた事もない。それを、自分からお願いしてなど...」



「アリシアは変なところでビビる。そもそもアリシアがヘタって全部見せなかったから今こうなってる。」



「エリカさん!そんなに突っかからなくても...。」



 勇者パーティ御一行はさっきからずっと似たような話ばかりしている。男にゃわからんが、女にはそんなに屈辱的な話なのかね。まぁ俺でも人前でズボン脱げって言われたらムカつくか。



「あー!もう度胸が無いなぁ。わかったよ。今から制限時間5分にするよ!それまでに出来なかったら進めも帰る事も出来ない。これでどう!?」



 ヤケクソ見たいにナビは叫んだ。



「そんな!心の準備が...」



 そんなアリシアの声が聞こえる中、横から嫌味なくらい音を立てながら透明なディスプレイが出てくる。そこには"4:59"と書かれていた。





「あーもう、分かったよ!やればいいんでしょやれば!」



 覚悟も出来ない内に下着を晒すことになったネルビアは赤面していた。



「やっとやる気になってくれたかい!因みに懇願のセリフは『ドリーグさん、私のパンツを見てください』だからね?みんな同時にしないと開かないよー!」



 ナビは心底楽しそうに言い放つ。



「くそ、下劣な...!」



「はしたないですが、やるしか無いのですね...。」



「屈辱。」



 そんなことを各々言いながら、下着だけを見せられるよつ準備していく。



 いや、俺としては何も負担はないからいいんだけど、後の恐怖がすごいよ。



 俺が怯えている間に、いつの間にか準備が整っていた。



「時間が無い。みんな行くよ、せーの!」





「「「「ドリーグさん、私のパンツを見てください!」」」」





 誰もが心の準備をしていない中見せられたその光景は、まさに絶景だった。



 俺はこの数十年間鍛え上げられた動体視力を無意識下でフル回転させる。





 勇者ネルビアは、先程見た通り純白のパンツに水色のリボンが着いているシンプルな下着だった。

たくし上げられたスカートを持つ手は震えていて、目線をどこに置けばいいか迷うように目を泳がせていた。




 その横で立っているアリシアは、ちゃんとショートパンツを全て下げ、黒い下着を見せていた。



 



 この勇者パーティでは最年長のアリシアは、黒い生地に赤い薔薇の刺繍が縫われたオシャレな下着を着ていた。



剣一筋で生きているように見えたアリシアが、人には見せない部分でこんなお洒落をしているとは思わなかった俺は、その秘すべき部分を覗き見る背徳感で胸が満たされた。


下げられたショートパンツと黒い下着の間にある健康的な白い太腿は、コントラストによって輝きを増している。



食い入るように太腿と下着を見つめる俺の視線にアリシアは耐えきれず、何度も手で視線を遮ろうとしていたが、先程の失敗を思い出すのか、手を後ろに組み直していた。





 この世界でおそらく最高峰の魔法の天才エリカは、青色のフリルが付いたスカートをたくしあげていた。



 その中に見える下着は、薄いピンクだった。オーダーメイドでもしない限り見たことの無い、リボンやフリル、少女の理想を詰め込んだ可愛い下着が俺の前に晒されていた。



そんな、夢に溢れたお洒落な下着をオッサンの下劣な視線で穢していく。

肉弾戦を行わないエリカの太ももはとても細く、心配になりそうだったが、そこには少女特有の完成された美があった。



 最後に見たのは、世界を救うべく選ばれた聖女、ソフィだった。

 聖女にのみ着用を義務付けられたロングスカートの修道服を、両手いっぱいに持ってたくしあげた中には、ただ少女の持つ聖域を守る純白の下着だけがあった。

ウェスト部分にだけ、フリルが付いている控えめなお洒落心が、ソフィの性格を現していて何故かとても良かった。



この国に居れば何度も演説で見た事のある、救世の象徴であるソフィの誰も見た事の無いあられもない姿は、ただ下着を見ているだけなのに込み上げるものがあった。


顔を赤くしながら、俺の目を見つめ曖昧に微笑んでいるソフィは、スカートをたくし上げているにも関わらずどこか神秘的に見えた。







 俺は今までの恐怖など忘れて、この絶景の全てを記憶に刻み付けるべく、神経の全てを使って目に焼き付けた。



 この間約3秒。



 残りの時間は少女達が自分のあられのない姿を、見ず知らずの男に晒している羞恥と屈辱を受け止めている反応を堪能していたら、いつの間にか試練の時間は終わっていた。



『・シーフに懇願しながら、パンツを同時に10秒見てもらう

 達成!B1に進む権利を付与します』

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

羞恥好き。 2024/05/17 15:30

S級ダンジョンへ。

王国1のギルドに併設されている酒場で1番単価の高いつまみである、レッドボアのジャーキーをしがみながら、不快な喧騒が止むのを待っていた。



 しかし、どれだけ待てど喧騒が止むどころか、どんどん騒がしくなってくる。

 いい加減怒鳴ってやろうかとそちらに目を向けると、勇者パーティー御一行がこのテーブルに向かってくるのが見えた。



「こんにちは。あなたがS級シーフのドリーグさん?」



 こちらに話しかけてきたのは勇者ネルビアだった。きっと、無表情であれば見られただけで心臓が止まるような美貌は、親しみのある笑顔でより魅力を増していた。



「あぁ、その通りだぜ勇者様よォ。なんか用かい?」



 俺は、小心者故死ぬほどビビり散らかしている心を押さえつけながら、そう皮肉げに応える。



「おっと、自己紹介は必要なさそうだね。じゃあ、手っ取り早く話をしよう。──────仕事の依頼だよ。」



 遠くから、俺のため口を咎め叫んでる女騎士の声を無視して、勇者は可憐なウィンクをしながらそう言った。





 ♢



「なるほど、男が1人必要なダンジョンねぇ...」



 俺達は流石にあの騒ぎの中仕事の話をする事は出来ず、防音機能付きの個室がある高級料理店に移動していた。



 そこで聞いた話は、とある不思議なS級ダンジョン攻略の依頼だ。曰く、普通なら分かる最奥までの階数が分からない。曰く、男が1人いないと入る事が出来ない。

 曰く─────攻略すれば、願いが叶う。



 現代最強のSSランクパーティーで、SSS級ダンジョンにも潜っている勇者様方が何故いまさらS級ダンジョンなんか攻略するのかと思ったが、願いが叶う、ね...。



「なるほど、それがホントなら俺も乗ったも同然だが、信憑性はあるんかね?」



 俺はそう、葉巻を吸いながら言う。

 基本的にダンジョンに潜るやつなんざぁ俺含めて、リスクとリターンの計算も出来ないバカだ。

 どデカいリターンがあればスグに乗る。それでいて、S級まで上がるヤツはどんな手段を使ってでも逃げ生き延びる覚悟と自信がある。



「おいシーフ。お前に許された行動は"快諾する"、それだけだ。平民で、男で、シーフなんて奴が疑問など持つな。」



 そう、射殺すような目付きで言葉を叩きつけるのは女騎士のアリシアだ。なんのコンプレックスがあるのか、同じ空間にいるのも我慢ならないと言う言外の圧が物凄い。

 その顔も肉体も美しすぎるまで美しいんだがなぁ...



「アリシア。貴女のその男嫌いにもボクは理解を示してきたつもりだよ。でも言ったよね、こちらから仕事の依頼をした人に失礼な態度は取らないって。」



 厳しく勇者ネルビアは咎める。ほー、年上のメンバーに対してもちゃんと手網を握ろうとはしてる訳だ。



 まぁ、勇者の言葉以上に、男とシーフに対する嫌悪感が勝ってるようだがな。

 俺はアリシアの納得いっていなそうな顔を見ながら思う。



「ごめんね、ドリーグ。後でちゃんと説得するから。

 それで、願いが叶うと言う根拠の話だったね。それはダンジョンの報酬欄に"願いを叶える"と書いてあったからだよ。」



 ほう。報酬欄か。

 

 報酬欄とは、ダンジョンを踏破した際に確実に貰えると保証された報酬だ。しかし、基本的にダンジョンには報酬欄何てものはなくランダムであり、報酬欄があるダンジョンはなにか特別なダンジョンなのだと考えられている。



 なるほど、報酬にそう書いているなら話に乗ってもいいだろう。"願いを叶える"とだけ書いているのなら、誰が、何個、どんな願いを叶えるか確定はしていないが、こういうダンジョンで損した試しがない。ここはもう、勢いで乗るべきだろう。長年の勘がそう言っている。



「乗った。この仕事、俺も関わらせてもらうぜ。」



 その言葉を聞いて、やった!と無邪気に喜ぶネルビア。喜び方まで素直で可愛い。偏屈な俺でさえそう思う。



「そうと決まれば、改めて自己紹介だね。ボクの名前はネルビア。何の因果か、勇者になっちゃったただの町娘だよ。できる事はそうだね...闇魔法以外の全てかな。」



 そう、光魔法のライトボールを指に灯しながら言う。

 その姿は町娘と言うには神々しい。神に愛されると言うべき様相だ。



 それにしても、闇魔法以外全てが出来るとは...勇者とは本当に末恐ろしい。

 

「私は、ソフィと申します...。救世の聖女をやらせて頂いております。得意な事は聖魔法、でしょうか...。」



 自信なさげに言う彼女は、聖女だ。

 この国に何個もある似非宗教ではなく、本物の神に選ばれし聖女。

 まぁそれまで神の実在など証明されていなかったから仕方ないんだがな...。

 14年前、突然神が世界終末の予言をし、世界を救うべきもの達に力を与えたって訳だ。



 まぁソフィのその伏し目がちな目を見れば、その力が祝福だったか呪いだったかは分かりそうなものだがな。



 しかし、その儚げな雰囲気が彼女の神秘性を押し上げていた。



「エリカ・ホルン。よろしく。」



 そう、死ぬほど無関心そうに呟いた少女は、賢者だ。



 今までの2人は違い、ただ魔法への興味と研鑽のみで世界を救うパーティへと選ばれた。

 どんな戦闘ができるのか聞いていないが、まぁ魔法ができるんだろう。



 人間自体に興味が無いのだろう。普通にしていればぱっちりしていて可愛らしい印象を与えるだろう空色の瞳は、常に眠たそうに細められ、だるそうに野菜をハムハム齧っていた。 



「アリシア・アルバーンだ。アルバーン家の長女である私が、お前のような男とパーティを組むなど本当に遺憾だが、勇者に免じて受け入れてやる。」



 ネルビアに肘でつつかれ続け、ようやく挨拶したアリシア。

 おそらく、馴れ合わないスタンスを示しているつもりなのだろうが、まだ若いな。不和を引き起こしかねない態度は何にしろ止めるべきなんだがな...

 俺は大人だからな。優しく受けて止めてやるか。

 決して、見るだけで固まっちまうような美人がこちらを睨んでるのが怖すぎてビビってる訳では無い。決して。

 

「はぁ...まぁ俺も名乗るか。俺はドリーグ。得意な事はトラップ解除、解錠、荷物運びその他諸々冒険が楽になる事はだいたい出来る、しがないシーフだよ。」 



 そしてこんな美人だらけの中にいたら浮いちまう冴えないおっさん。



 やれる事は誰でも出来る事。その水準をかなり上げただけだ。たっけぇ魔法袋を買ったから物をもてる量だけは自信があるがな。



「それじゃあ、自己紹介も終わった事だし予定を決めましょうか。予定は三日後。皆もプロだろうし、必要なものは自分たちで用意する。いいかい?」



 そう勇者は場を取り仕切る。かなり早急だが、まぁS級冒険者にもなれば皆出来るという前提があるんだろう。

 俺もその日程に異存は無いので、頷く。



「よし、決定。それじゃあ、3日後S級ダンジョン探索に行くよ!」



 その彼女の声で、今日の会議は終了した。

 

 





 あれから三日後。俺達はS級ダンジョンへのワープ地点前に立っていた。



「みんな、準備はいい?」



 そういう勇者の声に、それぞれの相槌が聞こえる。



どいつもこいつも一流だ。この3日間であらゆる持ち物もコンディションも整えてきたのだろう。


「それじゃあ、行くよ!」



 気負った様子も無く、ネルビアはそう声をあげながら、ワープホールに手をかざした。



『S級ダンジョン"■■■の夢" 探索条件:ランクS以上 男性1人以上 女性2人以上

 条件達成────それでは、いい探索を。』



 そう聞こえた瞬間、視界が真っ黒に染まった────









 ────「あー、みんな無事?」



 全ての音がぼやける中、そんな声が聞こえる。

 どうやらワープは成功したようだ。



 いつもの癖で、周りの状況をすぐ把握する。

 360度が鬱蒼とした森の中、明らかに人工物の石造りの1本道が遠くまで続いている。



 ワープホールの付近300mは必ずモンスターができないようになっているが、その安全圏を超えればすぐモンスターが出てくるだろう。



「あぁ、無事成功したようだな。」



 状況把握に集中していると、アリシアの声が聞こえた。

 どうやら、無事に転移は成功したらしい。

 ほかの2人も返事をしていた。



「よーし、大丈夫そうだね。だったらもうやることは1つ。この道を抜けて、ダンジョンへ向かおう!」



 そう元気よく言う勇者。なぜだか分からないが、ワープホールはダンジョンの目の前に置けず、こうやって数キロほどダンジョンまで歩いていかなくてはならない。

 そこまでに、D級ダンジョンならDランクモンスター、

 S級ダンジョンならSランクモンスターが湧いて出てくるわけだ。



勇者の掛け声に1つ頷いた俺達は、安全圏を抜け、ダンジョンへ目指し始めた。





 ♢





 あー、なんじゃこれは。

 俺は呆れすぎてため息もつけない。



 仮にもS級ダンジョンへ向かう道中。Sランクモンスターが出るはずなのに、ひとつも相手になっていない。



 もし街中に現れれば都市が1桁じゃ収まらない程破壊されると言われているブラックドラゴンが、ネルビアの光を帯びた一刀で素材が残らないほど蒸発される。



 数え切れないほどの人間を食い殺してきたデーモンボアが、アリシアの唯の一刀で両断される。





 ただ息を吐くだけで、幾つもの森を毒に冒してきたコカトリスは、エリカが無言で手をかざしただけで、酷く圧縮され存在ごと消えた。



「おい!シーフ。お前は何も出来ないんだから素材でも剥ぎ取っておけ。遅かったら置いていくからな!」



 俺に向かって怒鳴るアリシア。



 ったく、わざわざ剥ぎ取る素材を残してるのはお前だけだっつの。

 

 俺はそう思いながら、素材用のナイフを取りだし剥ぎ取りを開始する。

 頭を落とし、内臓を消し飛ばし浄化魔法を使い皮と肉と角と骨だけにする。この間3秒。



 シーフとか言う不遇職でSランクになるにはこれぐらいの雑用力を持ってなければならない。



 その様子を見たアリシアはふん、と1つ鼻を鳴らして前へ歩いていった。



「ドリーグさん、凄いですね!あんなに手際よく捌いてしまうなんて...」



 そう話し掛けてきたのはソフィだった。

 鬱蒼として森の中、彼女は微笑みを絶やさず歩いている。



 「こんなもん、慣れだ慣れ。」と俺はぶっきらぼうにあしらう。30超えても褒められ慣れてない俺は照れ隠しにこうするしかないんだ。



「それでも、凄いです。皆さんの役に立てているのですから。私はいつも皆さんの後ろを着いて歩いているだけなので...。」



 そうやって曖昧な笑みを浮かべるソフィ。

 まぁ、確かにあの様子を見れば回復役のソフィがする事はほとんどないのか。



「まぁ、回復の名手である聖女様が後ろに着いてるってのはそれだけで安心に繋がるだろう。

 それに、後ろを着いて回ってるってのは俺も同じだからな。」



 それについちゃあ俺の方が年季があるぜと、情けないカッコつけをする。



 すると、ソフィが初めてふふっと声を出して笑った。

 可愛い。天使かよ。



「みんな!着いたよ!」



 俺がソフィに悩殺されている間に、いつの間にか着いていたらしい。早すぎるだろ。

 

 前を見ると、荘厳な門が見えた。

 高い塔が無いということは、地下に向かう階段型のダンジョンなのだろう。



「よし、みんな。これから本格的なダンジョン探索が始まる。ボク達の最優先事項は、生きて帰ること。その次が報酬さ。だから、気を引き締めていこう。」



 その言葉に一人一人、返事をする。



 ネルビアは、パーティメンバーの意志を確かめ、静かに門を開いた。





 ♢





 緊張感を持って、ゆっくりとダンジョンの中に入る。

 中は、ゴツゴツとした岩に囲まれた広い密室だ。

 目の前には目立つ半透明の障壁があり、他には何も無い。



 入った瞬間モンスターに奇襲をかけられた事もあったので、なかなか拍子抜けだ。



「うーん、かなり特殊なダンジョンだね。これは試練系かな?」



 こういうダンジョンの場合、突然ボス級のモンスターが召喚され、倒したら進めるようになったり。

 指定された呪文を唱えれば進めるようになったり。



 何かをこなす事で進める場合が多い。



 俺達は明らかに意図して置いてあるだろう、白い板状の障壁に近づく。その瞬間。



「まずい!扉が閉まる!」



 地面と擦れる重い音を鳴らしながら、あの大きさでは考えられない速さで門が閉まっていく。

 ダメだ、ここからでは誰も間に合わない。



「チッ、間に合え!」



 そう言ってアリシアが自分の持つ長剣を投げ付ける。

 Sランクだけあってそのスピードは凄まじく、左右の門が閉じる瞬間に長剣が挟まった。



 しかし、ゴリッと言う音と共に剣は虚しくも折れてしまった。



「ダメだったか。油断したな。」



 固定観念って奴か。ダンジョンの扉が閉まることなんてこの数十年1度も無かったんで青天の霹靂である。一筋縄じゃ行かないようだ。



「ダメだ、これは開かないね。」



 馬鹿力のネルビアとアリシアが力いっぱい押しても、エリカがどんな魔法を使っても空くことは無かった。



「みんな。障壁。」



「そうだね、それしかないか...。」



 エリカの足りな過ぎる言葉を即座に理解したらしい俺以外の皆が、障壁に向かって歩いていく。



 息があってんなぁ。そう呟きつつ、置いていかれた俺も追いつこうとしたその瞬間。



『イグニッション』



 そんな声と共に、障壁付近から全てが爆発した──。

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

羞恥好き。 2024/05/17 15:00

プロローグ

─────あぁ、どうしてこうなってんだ...



 俺は、頭の中で自問することしか出来なかった。



 ゴツゴツとした岩肌の中に、一段と目立つ荘厳な扉。

 塔の上へと続く階段と、それを封じる謎の透明な障壁。



 その全ては、炎に燃やされ、斬撃に刻まれ、ボロボロの様相を呈していた。



「ったく、おい勇者御一行様よォ...こんなに暴れ散らかしてどうしちまったんだ」



 俺はこれでも気を遣ったつもりで声をかける。



 底辺を這う嫌われ者と大評判のシーフである俺は、ビクビクと怯えながら声を掛けるしか無いのだ。



 しかし、返事は大変麗しい女剣士様の射殺すような視線だけだった。



 一体何があったのか、俺には見当も付かない。

 1つ、分かる事があるとすれば、勇者様方が暴れ出したのは階段を防ぐ様に浮いている障壁、そこに浮かぶ文字を見た時からだ。



 後ろを着いていく事しか許されない俺にその文字を読む事は出来なかったが、よっぽど我慢ならないのだろうか。



 その文字を見た瞬間、御一行は固まり、震え、360度に攻撃を加えたわけだ。(主に女剣士と女魔法使いが)



「え、えっと...ドリーグさn「おい、シーフ!少しの間遠くに離れていろ!チームでの相談だ」



 チッ...このクソッタレた冒険の唯一の癒し、女僧侶様の声を女剣士が遮りやがった。



 イライラは募るが、力で隔絶した差を付けられている俺は従うしか無い。



 障壁付近に固まっている御一行から離れ、反対の扉付近で腰を下ろす。



「しっかし、すげえ扉だぜこりゃあ...」



 流石はSランクダンジョン、扉まで規模が違う。

 意匠や大きさは然ることながら、1番の特徴は"何があっても壊れない"事だ。あれだけボコボコにされようが壊れてない事が証拠。



 驚くべき事に、俺達はダンジョンに閉じ込められたらしい。入って来たばかりの扉が閉じたっきりどんな攻撃を与えても開きも壊れもしない。

 これでも何百何千とダンジョンを踏破してきたんだが、こりゃ一体──────「おいシーフ!戻って来い!」



 その大声が聞こえた瞬間、思考は途切れる。



 ったく、もうこの扱いにも慣れたつもりでいたが、イラつくものはイラつくらしい。



 舌打ちを1つ、渋々御一行の元へ戻る。



 ここで、俺は漸くもう1つの異変に気付いた。

 ────勇者パーティの全員の顔が、異様に赤いのだ。羞恥、困惑、屈辱に塗れていた。



「あはは、これは流石にちょっと、恥ずかしいな...」



 そう呟いたのは我らがリーダー、女勇者。今この状況に恥ずかしい要素は何一つない。



 俺はシーフだ。空気を読み取る力は人一倍ある。しかし、例え冒険者でなかろうと、今の異常な空気は分かるだろう。



何が起きている....



「おいシーフ、お前はこのダンジョンを出たら絶対に殺してやる!くそ、なんでこんな...」



 普段なら、殺すなんて言われればカチンと来るものだが、今はなんとも思わなかった。なぜなら女剣士が顔を真っ赤にして声を震わせていたからだ。



「ダメだよアリシア。これは彼のせいじゃないんだ。理由もなく命を奪っちゃいけないよ。それに...」



 割り込んで話してきたのは、勇者。

 顔は赤いままだが、瞳には強い意志と決意が現れていた。



「ボクが最初にやるからさ、ね?」



瞬間、目に映ったのは、スカートの中のスパッツを膝下まで下ろした女勇者の姿。



 鎧とスカートが一体化したような装備を着ている勇者がスパッツをおろせば、その下に残るのはもう、下着しかない。



「うわぁ、いつもと違ってスースーするなぁ...」



 そう、照れを誤魔化しながら笑う勇者の姿から、目を離せなかった。



「じゃあ、いくよ...見られなくちゃいけないんだけど、あんまり見ないでね...?」



 そう言って勇者はスカートをたくしあげていく。

 1度した決意はどこに行ったのか、手を震わせながらゆっくり、ゆっくりと。



 そうして少しずつ見えた下着の色は、白。純白だ。

 ゆっくりと見える部分が増え、ウエスト部分に辿り着いた時、小さな水色のリボンがちょこんと付いてるのが見えた。



「あはは...そこまでじっと見られると、いくらボクでも恥ずかしいなぁ」



 その言葉を聞いてハッとする。

 自分でも気づかないほど集中していたようだ。

 自分より一回りも二回りも若い女の子の下着、それも絶世の美女のだ。罪悪感など沸く暇もなかった。



「くそ!ネルビアにだけ任せていられるか!」



「死ね、ヘンタイ...」



「わたくしも、仕方ない、ですよね...」



 三者三葉の言葉を吐きながら、彼女たちは下着を見せるために邪魔な服を脱ぎ始める。



 そうして女騎士は健康的なショートパンツをズラし初め、魔法使いは可愛いフリルの着いたスカートをたくしあげ、僧侶は白い修道服のロングスカートをゆっくりと持ち上げ始めた。



 全員の下着が見えそうになる...





 その瞬間、障壁が大きく輝き始め─────



 

 もう一度言う



 ────あぁ、どうしてこうなってんだ...





 ♢





 

シーフ。それは、薄汚いハイエナと忌み嫌われてる冒険者のジョブだ。

 

 冒険者のランクを上げるには、自分のランク以上のダンジョンを攻略する事や、規定値以上の報奨金を稼ぐ事、その他諸々の条件がある。



 シーフは、言うなればその殆どの条件を寄生で達成できるのだ。

実力のある冒険者パーティーに入れてもらいダンジョンに潜れば、身の丈に合わないランクも付与される。報奨金も、戦闘しない分割合は悪いがそれでも低ランクダンジョンで雑魚を狩るより何倍、何十倍も貰える訳だ。



 故に、嫌われる。燻ってる冒険者ほど、忌み嫌うわけだ。



 それでも、シーフというジョブが無くならないのは、冒険に無くてはならないから。



 ダンジョンにある罠を見分け、宝箱を開ける。

冒険に必要な物資を全て持つ。



 ダンジョンが高ランクになればなるほど、罠解除の難易度は上がり、ミスしやすくなる。

 1フロアの空間は広くなり階層の数は増え、物資の量も増える。

他にもやることはあるが、あえて挙げる程のものでもない。





 一つ一つは誰でも出来る簡単な仕事だが、それを全て高水準でこなすのは、それこそ誰でもできる事じゃない。

 だがしかし、そう言う仕事は伝わりづらいもんだ。

 特に、ランクの低いうちはな...。



「おい、あのシーフまた呑んだくれてやがるぜ」



「いつまで冒険者にしがみついてやがんだ、アイツ...」



今日もブツブツと愚痴が聞こえる。揃いも揃って低ランクの冒険者共だ。

 聞こえないように喋ってるつもりかもしれないが、五感を研ぎ澄ます事を半ば強要されているシーフと言う職の俺には普通に聞こえる訳だ。



 聞かせるつもりが無かったとしても、悪意のある愚痴は聞いてて気持ちいい物じゃない。

 それでも文句を言いに行かないのは、腕力で勝てるわけが無いのもあるが...俺が、Sランクのシーフだからだ。



 齢は35。冒険者を初めて20年の程々にベテランだ。

 冒険者を始めたのは、15の頃。スラム街の孤児で金がなかったってのもあるが、スラムにも流れてくる冒険譚のような、剣士や勇者、魔法使いになってみたかったと言うのが始めた理由だ。



 まぁ、そんな幻想は速攻潰えるわけだが。

 剣の才も、魔法の才も無かった俺は、誰でも出来てそこそこ金も稼げるらしいシーフになった。

 昔から手先が器用だった俺は多少シーフに向いてたらしく、着々とシーフに必要な技能を身に付けていった。

 そんなこんなで20年、気づけばSランクになってた訳だ。



 まぁ長々と過去を思い浮かべていた訳だが、何を言いたかったと言えば...



 愚痴しか吐けねえ低ランク冒険者より、何百倍も稼いでるって事だッ!!!



だからちょっとの悪口を聞こうが聞き逃せるのさ。そう自分に言い聞かせてる訳じゃあない。そうに違いない。



 そんなこんなでいつも通り、そしてあの冒険者たちの言う通り昼間から呑んだくれていた。訳だが...



「...ん?」



 迷宮都市1のこのギルド、その扉付近がやけにザワついているのが耳に届いた。



 さっきまで俺の話をしていたあの冒険者共も、他のみんなも入口を見つめている。



「おい、あれって...」



「嘘だろ、現代最強のパーティー...!?」



 そんな喧騒に釣られ、俺も入口に目を向ける。



 ────そこには、今をときめく最強の勇者パーティーがいた。



先頭に立つのは勇者。

腰まで伸びる黒い髪は陽の光を反射し、冒険者とは思えないほど輝いている。身長は女性には珍しく高く167くらいだろう。シーフは目測が上手いのである。



 黒曜石のように美しい右目とは裏腹に、真っ赤に燃える左目は、勇者として選ばれた瞬間に宿ったらしい。



 名前はネルビア。平民だった為姓はないが、勇者に選ばれた時に貴族のような扱いになっている。齢は16。

 元々は、運動が好きな美しい町娘だったらしい。





 その勇者の後ろに控えるようにたっているのは、女騎士だ。

 薔薇のように煌めく赤髪は、後ろに結び背中まで流している。

真っ赤な髪と瞳、そして鎧は戦場で更に朱に染まる事から、鮮血の騎士と呼ばれている。身長は173程か。



 名前はアリシア・アルバーン。この王国で一番の武闘派と言われるアルバーン伯爵家の長女であり、近衛騎士志望だったが、勇者誕生に伴い勇者の補助についているらしい。齢は18だったか。





 その女騎士の横を無表情で歩いているのは、魔法使いだ。

 

 晴天の空のような色をした髪はボブカットに整えられ、髪とおなじ空色をした瞳には僅かな苛立ちの感情だけが浮かんでいる。身長は153程で、前のふたりに比べかなり小さい。

 

名前はエリカ・ホルン。この王国で1番魔法を研究しているホルン侯爵家の3女であり、そのホルン家が設立したこの世界で1番規模の大きい、ルドールヴ魔術学院の中等部を首席卒業した才女である。齢は15。





 最後に、その後ろをてとてとと着いて行くのは僧侶。



 純白の髪を長く伸ばし、その青い目は自信なさげに伏し目がちだ。

身長は149程か。この中で一番小柄である。



 名前はソフィ。産まれる前から神託により選ばれた、本物の聖女だ。主神サーシャから、産まれる直前に世界を救うべく特別な力を授かったらしい。

 平民だったソフィはすぐに教会に引き取られ、様々な教育を施されたようだ。齢は14。



 



俺はそんな勇者パーティを睨め付ける。

 どいつもこいつも特別なやつばっかりだ。強い力をもてなかった俺からすれば、本当に嫌になる。



 俺は、憎たらしいくらいに輝いている勇者パーティから目を逸らし、いつの間にかぬるくなってたエールを渋い顔で喉に流し込んだ。

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

1 2 3 »

月別アーカイブ

記事を検索