官能物語 2020/12/09 17:00

母さんでもいいや/16

 しばらくの間、里穂は動けなかった。ピクッ、ピクッ、とその熟した体を震わせるばかりで、とても体を動かす気にはなれない。

「やっぱり、こんなところじゃ落ち着かないな」

 息子はそう言うと、ずるりと肉棒を引き抜いた。
 里穂は、喪失感を覚えた。あるべきものが取り除かれたようなその感覚に、悲しみさえ感じたが、肉棒が引き抜かれると、なんとか体が動くようになったようである。

「続きは、ベッドでしようか、母さん」

 そう言われて、何を、と思って振り向いた里穂は、息子に肩を抱かれた。たくましい腕に肩を抱かれると、里穂は、抵抗する気持ちが弱まるのを感じた。体はもっと、このたくましさを欲しがっている。

「じゃあ、おれ、先に出るから。母さんの部屋で待ってるね」

 息子は、気楽な声で言うと、そのまま浴室を出て行った。
 あとに残された里穂は、改めてシャワーを浴びた。水流を浴びていると、少し冷静な気持ちが戻ってきて、体の火照りも冷めたような気がした。やはり息子は、今から、大学の授業に行かせなければならない。これ以上の交わりなどもっての他である。

 里穂は、脱衣所で体を拭くと、洗面台の前で、自分の裸体を見つめた。四十にしては、それほど緩んでいない体は、特別なフィットネスをしているわけではないけれど、自分なりに、ウォーキングやエクササイズに取り組んだ結果だった。片親だからとバカにされないようにした努力の一つである。

 その努力のおかげで、今でも町で男性に声をかけられることがある。これまで誘いに乗ることはなかったのは、息子が大学を卒業して独り立ちするまではという決意によるものだった。自分の色恋沙汰はそれからでいい。それが、まさか、その息子に犯されてしまうとは、なんという巡り合わせなのだろうか。

 本当にこれは夢ではないだろうかと疑ってみても、このありありとした現実感はいなめない。里穂は、下着を身につけようとしたところで、ショーツがないことに気がついた。履きたければ、寝室に行くしかないが、寝室では息子が待っている。

ーーいいわ……。

 全裸を見られているのである。今さら、ノーパンでいっても何も変わらない。里穂は、下に何も身につけないままでワンピースを着た。それにしても本当にどういうつもりなのか、ほとんど唐突に襲われた身としてはやはり、ちゃんと彼の存念を聞いておかなければならない。そう心に決めた里穂は、自室のドアを開いた。

「遅かったね、母さん」

 まるで自分のベッドでもあるかのように、悠然と全裸で横たわった息子が、軽やかな声を出した。

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