母さんでもいいや/17
「正直に話して、拓実」
里穂は、切り口上で言った。
「何を?」
「どうして、お母さんに、こんなことをしたの?」
「へ?」
拓実はきつねにつままれたような顔をした。それがしばらく続いたものだから、里穂は、自分の方が何かおかしな発言をしたのかと疑ってしまった。
「別に、どうしてってこともないけど」
「ないことないでしょ!」
「ちょっとこっち来なよ、母さん」
「ど、どうしてよ」
「来てくれたら、話すよ」
そう言われたら、近づかなくてはならない里穂が、不承不承、息子の元へと行くと、
「ここに来て」
さらにベッドに上るように促された。やはり、言われた通りに腰を下ろすと、彼は立ち上がって、母親の腕を引いた。ぐいっと腕を取られた里穂は、抵抗する間もなく、体を入れ替えられて、息子の下になった自分を認めた。
「ちょ、ちょっと、拓実」
「別に理由なんて無いよ。母さんがいい女だから、ヤりたいと思っただけさ」
「は、母親に向かって、変だとは思わないの、あなたは」
「ちょっとは思うけど、それほど変ってわけじゃないだろ?」
「変よ!」
「そうかなあ」
あんまり、「変だ」というのも、自分の息子のことなので、里穂はそうは連呼できなかった。母親にとって、自分の息子をおとしめるということは、自分をおとしめることと同義である。
「母さんも気持ちよかっただろ?」
息子が、してやったりと言わんばかりの顔で言ってくるのに対して、里穂は、確かに感じていたことは認めざるを得なかった。感じていたどころか、これまで得たことのないほどの快感だった。あんなにすごい快感があったことをこれまで知らなかったなどと、人生の半分くらい損をしていた気持ちになった。しかし、それを、認めることはできずに、
「き、気持ちよくなんてなかったわ!」
と強がりを言った。
「へえ、本当?」
息子はまるで信じていないような顔で言ってきた。嘘なのだから、そういう顔をされても仕方ない里穂だったが、あえて、
「本当よ!」
と強がりを続けると、
「そうなんだ、じゃあ、今度は、ちゃんと気持ちよくしてあげないとな」
彼はそう言うと、体を重ねるようにして、さらに顔を近づけてきた。
「た、拓実」
やめなさいと言う前に、里穂の唇は息子のそれによって、ふさがれてしまっていた。
里穂は、すぐに口内に舌が侵入してくるのを感じた。にゅるりとした淫靡なものが、舌先をとらえるのが分かったとき、熟した体がぶるっと震えるのを、彼女は覚えた。