【小説】少年ヒーローの敗北~蜘蛛女編~
正義のヒーロー戦隊「ショタレンジャー」が一人、ショタレッドは硬い地面に転がり憎むべき敵に見下されていた。悪の組織の卑劣な罠に掛かり、謎の強固な糸に全身を絡め取られ、その身の自由と力を奪われたのである。
悔しさに歯をぐっと噛みしめ、戒めを解こうとするが、どれだけ力を込めても身動き一つとれなかった。
体を拘束する粘糸は特別なもので、ただ強靭なだけではなく絡みついたところから彼の力の源泉たるエナジーを吸い取っているのだった。動くことさえできず、時間の経過と共にその力が失われていく。レッドにとって絶望的な状況だ。
「無様なものだねぇ、さっきまでの威勢はどうしたんだい? レッドの坊や……」
ウェーブがかった豊かな金色の髪を持ち、きわどいボンデージファッションに身を包んだ女が、濃い化粧に彩られた美貌にサディスティックな歓喜を浮かべてレッドを覗き込む。彼女こそ、悪の組織「ドミナンス」の大幹部ヘカテである。
「くそっ……この……!」
レッドは女幹部を刺す様に睨み付けた。しかし、いくら凄もうとそれが虚勢であることは、痛切に理解していた。だが、それでも瞳から反抗の炎を失わないのは、悪に屈しないという彼の強い意志によるものだった。
「おほほほほっ……糸でグルグル巻きにされて、指一本動かすことさえできないくせに、まだそんな目が出来るなんてね……だけど、全然怖くないわ……その惨めな姿、とってもお似合いよ……おーほっほっほっほ……」
人気のない夜の公園に、悪の女幹部の高笑いが木霊する。
レッドの心に屈辱感が広がり、怒りがこみ上げ憎悪が膨れ上がる。しかし、ヘカテの言う通り指一つ動かすことは出来ない。それでも少年ヒーローは敵を睨め上げることを止めようとはしない。そうしないと彼自身、敗北に対する屈辱感、待ち受ける恐怖、そういったものに飲み込まれてしまいそうだったから。
「こんな糸で縛ったところで! 僕は、負けない! 絶対に!」
自らの生み出した感情に負けまいとレッドは喉が擦り切れるほど声を張り上げる。両腕に力をめぐらせ糸を振りほどこうと体を揺する。しかし、懸命な努力もヘカテの嗜虐心を満たすだけであった。
「おーほっほっほっ!そんな芋虫みたいな恰好したあなたが、何をしてくれるのかしら? 本当におばかなぼうやねぇ、イジメがいがありそう……でも残念ねぇあなたの相手はしてあげられないわ。その役目は彼女にしてもらうことに決めたの。」
ヘカテがそう言うと、右手の木立の陰から、フリルレースがひらめく黒いビスチェ姿の一人の女が現れた。
腰まである長い黒髪、鼻梁はスッキリと高く、切れ長の目は濃いまつ毛に縁どられ、薄い唇には藍色の口紅が引かれている。露わになった胸元には蜘蛛の巣模様の刺青が描かれていた。妖艶な雰囲気を持った絶世の美女――だがしかし、その下半身には、うっすらと毛の生えた黒い6本の節足が犇めいていた。さらに、足の後ろには虫の腹によく似た、斑模様の大きなふくらみを備えている。その在り様は容姿の美しさに相反して、酷く醜悪だった。そのあまりにもおぞましい姿に、レッドの眉根が険しくなる。
「化け物……!」
「化け物だなんて失礼じゃない」
ヘカテは少年ヒーローの怯えた表情を眺め、愉悦に口元を歪ませた。
「彼女の名前はアラクネ。我が組織の生み出した、蜘蛛の怪人よ……坊やを拘束するその強靭な糸は、このアラクネが体内で生成したものなのよ……すごいでしょう?」
「く……そうか、蜘蛛の糸……だから、こんなに強靭なのか」
蜘蛛の糸は、人の力であればすぐに千切ってしまえるほどか弱い。だがそれは、糸の一筋が極めて細いからに他ならない。束ねてより合わせれば、鋼鉄製のワイヤーよりもしなやかで強固な綱となるのである。
「ただの蜘蛛の糸じゃないわ。アラクネの体内で生成された糸は、通常の蜘蛛の糸の約三十倍の強度としなやかさを誇る、最強の拘束縄なのよ……さあアラクネ、そこの惨めな芋虫さんにご挨拶なさい」
ヘカテがそう言うと、アラクネと呼ばれた妖女は「ハイ」、と一言返事をし、哀れな獲物に近づいた。規則正しく六本の足を蠢かせ、音ひとつ立てずに地面を滑るよう移動する様は異様そのもの。レッドの背筋に、生物的な嫌悪感を源泉とする怖気が走った。
「こんばんは。ご機嫌いかがかしら?」
レッドの前まで来たアラクネは、その涼やかな美貌に妖しげな笑みを浮かべて言った。
「改めて自己紹介をするわね。私は「ドミナンス」に命を与えられた蜘蛛の女怪人アラクネ。よろしくね、おいしそうな芋虫さん」
「くっ……」
本能的な危機を感じながらも、レッドには敵意のこもった目で、その不気味な笑顔を睨みつけるほかなかった。
「それじゃあ後はよろしくね。あなたが仕留めた獲物なんだから好きにしていいわ。たっぷりと坊やを可愛がってあげなさい」
そう言って背を向けたかと思うと、アラクネの返事も待たず、悪の女幹部は深い闇へと姿を消した。辺りにはもう、二人の他には誰もいない。風が吹き抜け、梢のざわめきが宵闇のなかに溶けていく。
「ふふふ……」
アラクネはレッドの身体をまたぐようにゆっくりと覆いかぶさると、自らの獲物を値踏みするように彼の全身にじっとりと視線を這わせた。
レッドの額を玉になった汗の滴が熱を奪いながら流れおちる。
「うわっ……!」
突如、レッドの目の前にアラクネの美しい顔が迫った。長い黒髪が額をくすぐる。顔にふうっ……となまぬるい息が吹きかけられると、蕩けるような甘い匂いが、鼻腔粘膜を刺激した。
「うふふふふ……、かわいらしい坊やねぇ、食べちゃいたいぐらいに……」
アラクネは舌なめずりをすると、少年の柔らかい唇や頬にそっと指を這わせた。
「やめろっ!何する気だ!」
レッドの顔は引きつり青ざめていた。今から自分はどのような仕打ちを受けるのだろう? 目の前で嗤う蜘蛛女に生きたまま体液をすすりつくされ枯れ果てるのではないのか。身動きの取れぬまま体を少しずつ切り刻まれる地獄の責め苦を味あわされるのではないか。そういった恐怖の想像が紙に零した墨滴のようにじわり広がっていく。
「怯えた顔も素敵よ、坊や……そんなに怖がらなくても大丈夫、痛いことは何にもないわ……」
そう言うと、アラクネはレッドの頭を掻い抱き、震える唇にれろりと舌を這わせた。
ぴちゃぴちゃ音を立てながら口の周囲をなめまわし、唇の隙間に舌先を強く押し当てる。唾液で滑った舌はあっさりと口内への侵入を果たした。
「ん……んん……」
息苦しさに喘ぐ口内で、熱い舌が軟体動物のようにうねうねと蠢動する。口蓋をくすぐるように舐め回し、歯茎を万遍なくなぞるいやらしい舌使い。
アラクネの貪欲な唇はレッドの上唇を挟み込み、湿った音を立てながら吸い上げた。口周りの肉ごとしゃぶり回すような貪欲な接吻だ。
彼女から発せられる濃厚な雌の香りが、鼻や口から侵入し、レッドの脳を甘く○す。体中に広がる心地よさに、頬が徐々に緩み思考が蕩けていく。
と、ふいにアラクネは唇を離した。
「あ……んん……はあ、はあ……」
濃厚な口づけから解放されたレッドは肩を大きく上下させ、金魚のようにはくはくと口を動かした。
女怪人ぼんやりを見つめる少年ヒーローの表情は恍惚に色づき、いかにも危うげだ。
「んふふふふ……、坊やったらそんな切なそうな顔して……。そんなに私のキスがよかったのかしら……?」
アラクネは長い舌をべろりと動かし、口元に付着した唾液を舐め取った。
向けられた言葉にはっと我に返ったレッドは2、3大きな瞬きをしてから、再び射るような視線を目の前の敵に向けた。
「そんなこと……あるわけないだろ! あんなもの息苦しいだけで……」
「そうかしら?それが本当ならコレはなんなのかしら……?」
黒いシルクの手袋に包まれたアラクネの手が、レッドの股間をそっと撫で上げる。
「うふふ……とても硬くなっているわね……。ココをこんなにしていてもキスは気持ちよくなかったっていえるの?」
かうように微笑しながら妖しく囁き、嫋やかな指先で少年の性器を糸とスーツの上からじらすようにくすぐっていく。そのもどかしい刺激にペニスは、さらに充血し硬さを増していった。
「こ、これは今触られたからっ……!」
「強情なのねぇ……そういうのって私好きよ……興奮しちゃう。かわいいあなたに、もっとすごいのをあげるわ!」
妖艶な笑みを浮かべると、アラクネは再びレッドの唇に貪りついた。噛みつくように上唇を挟み込み、肉が千切れるほどにずりゅずりゅと吸い上げる。蜘蛛女の濃厚キスが、レッドに鈍い痛みと鋭い快感をあたえる。
快楽にあえぐ口にまたも滑った細い舌がねじ込まれる。濃厚な唾液の味。粘膜が摩擦し合うチリチリとした快美感。むせかえるような甘い吐息が口内を満たし、レッドの思考を再び蕩かしていく。
「ん、んんっ……んふうぅ……」
甘美な口付けに酔いしれたレッドは、アラクネの舌に自らの舌を絡め始めてしまう。舌を伝って粘つく唾液が流し込まれる。甘い味が恍惚を伴って体内に染みわたる。レッドは息苦しさも忘れるほどに、蜘蛛女のキスに魅了されていった。
「はぁっ……いかがかしら、私のキスのお味は? 気持ちいいわねぇ……?」
蜘蛛女は唾液で艶めく唇をそっと耳元へ滑らせ、レッドの耳たぶを優しく噛みながら、熱っぽい息と共に囁きかけた。
「あ、う……ん……いい」
恍惚感と酸欠によりレッドの意識は混濁の中にあった。呂律も回らず、口からはどちらのものかもわからない涎を垂らしている。アラクネを見つめる潤んだ瞳はピントが外れ、危険な薬を打たれたように胡乱げだ。
「やっと素直になれたわね……一度素直になれればどんどん気持ちよくなれる……」
そういってアラクネが自分の掌に唾液を纏わせる。つうっ……と垂れた粘液が放心した少年の顔をさらに汚した。
唾液まみれの手袋がレッドの股間を覆う糸を撫でると、糸が唾液と混ざり、みるみるうちに熱した蝋のようにどろりと溶けた。糸の下から赤いスーツが露出する。
「ふふふっ……」
「あうっ……」
滑った手で、張りつめた股間をそろりと撫で上げられた瞬間、レッドの体がびくっと跳ねた。その反応に気を良くしたアラクネはレッドのスーツに手をかけた。エナジーが失われたスーツは、まるで紙のようにいとも簡単に引き裂さかれてしまった。
たちまち少年の性器が露わになる。その未成熟なモノは、今にもはち切れんばかり膨張していた。
「こんなに大きくしちゃって……少し皮が余っているけど、とっても元気で……とっても、おいしそうよ……クスクス……」
アラクネは口元を卑猥に歪め、両手でペニスを優しく包み込むと、そのままゆっくりと肉を揉みこむように刺激し始めた。
唾液と糸の残滓でヌルヌルになった掌が、亀頭を包み込んでカウパーを肉棒全体に塗り広げる。長い爪の先が、裏筋やカリ、竿の部分に引っかかるたびに、隆起したペニスに甘い官能の電流が走った。
「うあぁ……なんだこれっ、こんな、やめっ!」
強い快感にレッドは目を白黒させた。身をよじって逃れようとするが、蜘蛛の糸に捕まった獲物のあがきは空しい。
「あら? 気持ち良すぎたかしら……さっきの気が抜けきったような間抜け顔、とってもかわいかったのに……」
言いながらアラクネは、休むことなくレッドのペニスに快感を送り込み続ける。鈴口から溢れるとめどなく滑った汁が、掌が亀頭を撫で上げるのを助けている。我慢しようともレッドの口からは熱い息と共に、切ない喘ぎが漏れてしまう。
「そろそろイキそうね……いいの? 化け物女相手にこんなことされて射精しちゃうのよ。恥ずかしくはないのかしら……?」
「こ、こんな、んっ……の……で、イったりなんか……ああっ!」
アラクネの挑発にレッドの目に怒りの色が浮かぶ。だがその怒りは興奮を呼び、快感は却って増幅されてしまう。
欲望の熱いマグマが出口を求めて下半身で渦を巻く。レッドのペニスは、今にも破裂しそうなほど、赤く張りつめていた。
「うふふ……どんなに強がったふりをしても、私にはすべてお見通し。さぁ、これでとどめ……私の手の中で無様にザーメンを撒き散らしなさい!」
声を上ずらせそう言うと、アラクネはまたもレッドの唇を奪った。舌を絡ませ唾液を流し込み、貪るように口内を○す。淫靡なキスを受け、少年の目がどろりと快楽に濁っていく。その間もペニスを弄ぶ手は休むことを知らぬように、一層激しさを増して亀頭や竿を撫でまわし扱きあげる。甘い快美感がレッドの脳を蕩かしていく。
亀頭が真っ赤になりはち切れんばかりに膨れ上がる。その表面をカウパーでまみれたアラクネの掌がぐりっと押し込むように包み込んだ。瞬間、少年ヒーローの体の芯を激しい絶頂感が突き抜けた。
「ああっ、あぐっ……あっあうううぅ……」
レッドの喉からつぶれた喘ぎが漏れ出る。ペニスの先端から精液が噴水めいた勢いで飛び、アラクネの身にまとう漆黒の衣服を汚していく。
「すごい量……私の体、こんなにべちゃべちゃにしちゃって……とっても気持ちよかったわね……坊や……」
アラクネは蠱惑的な笑みを浮かべ、体にかかった白濁液を指で救い取って口へ運ぶと、精緻な顎をゆっくりと動かし、濃厚な味をかみしめた。その様子を眺めるレッドはただ肩を喘がせ、荒い息を吐くばかりだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
口から涎を垂れ流し、涙や汗で顔をぐしょぐしょに汚しながら魂の抜けたような表情を浮かべるレッド。胡乱げに揺れる彼の瞳には、妖艶な笑みを浮かべるアラクネの姿が映っていた。その蜘蛛女の姿さえ、視界から消えて行き、やがて彼の意識は、暗い世界に沈んでいった――
(ここは……、僕はどうなったんだ? それに、なんだ? このにおい……)
汗ばむような熱い空気と鼻の奥に纏わりつく淫らな匂いの中で、レッドは目を覚ました。
戦いに敗れた少年は、抵抗できぬまま、蜘蛛女アラクネに弄ばれ、激しい射精の後、眠るように意識を手離した。それから――悪の組織「ドミナンス」の本拠地にある蜘蛛女の住処に運ばれたのである。
辺りは深い闇に包まれている。暗闇になれぬ目には自身の状態さえも把握できない。耳を澄ませるが物音一つしない暗い世界。自分の呼吸音さえも闇に吸い込まれていくような感覚に、不安が募っていく。
(ココはおそらく敵の基地だろう……どうにか、脱出しないと……)
レッドは起き上がろうと体に力を込めた。しかし、何かに拘束されているらしく、四肢を動かすことができない。
「動かない……!? エナジーが回復していないのか……?)
レッドの表情に焦りの色が浮かぶ。
汗をにじませ息を乱しながら必死に体をよじる。それでもやはり身動きは取れず、焦りが一層募っていく。
と、ふいに少年は黒い空間の一点に、鋭い視線を投げかけた。暗闇の中に何者かの気配を感じたのである。
「本当におバカねぇ……蜘蛛が捕まえた獲物を自由にさせておくと思うの? 目を凝らしてみなさい……あなたの手足がどうなっているのかを……」
闇の中から侮蔑の言葉が投げかけられる。その粘つくような妖しい声音を彼の耳はハッキリと覚えていた。アラクネ――少年ヒーローを敗者に貶めた蜘蛛の女怪人だ。レッドの脳内に先刻の記憶がまざまざとよみがえる。その中にわずかに感じている恐怖を読み取られてはいけないと、表情を強張らせた。
「アラクネ……そうかお前がここに……あっ、これは……!」
暗闇になれたレッドの眼に、部屋の床に大の字になるよう粘糸で幾重にも固められた自らの手足が映る。
数刻前体を縛っていたものよりも強靭で弾力性に富んだその糸は、いくらレッドがエナジーに満ち溢れた状態にあっても、断ち切る事は敵わぬ強力なものである。
「く……んんっ! ふんっ! はぁ……はぁ……」
いくら力を込めようとも、強靭で弾力のある糸により脱出の試みは徒労に終わる。この戒めからは逃れられない、その事実は彼自身が理解しようとも、承知のできるものではない。レッドは四肢が断裂せんばかりの力を込めて糸を引きちぎろうとした。
「ふぅ……無駄なのが分からないほど馬鹿じゃないでしょうに……本当にイライラさせる坊やだこと……さっきみたいに屈伏してしまった方が楽になれるわよ……」
アラクネは深いため息を吐くと、音ひとつ立てずレッドの元まで滑るように移動した。
「なっ!?」
突如として視界に飛び込んできたアラクネの姿に、彼は驚き声を上げる。
完全に闇になれぬ眼では彼女の姿をとらえることができなかった。
アラクネの黒い髪は周りの闇に深く溶け込み、露出した肌が仄かに白く浮かんでいる。暗い色の紅を刷いた唇が吊り上る。ゾッとするほど妖艶な笑みだった。
「ふふ……また私がかわいがってあげる……」
そういうとアラクネは床に貼り付けになったレッドの体を6本の節足でまたぐ。そして、自らの青白い手をレッドの頬に添えると、震える唇を奪おうと顔を近づけた。レッドの顔に温い吐息がかかる。アラクネの呼気に含まれた甘い匂いが、鼻の粘膜を蕩かす。
レッドは唇を奪われまいと顔をそむけるが、アラクネの手に込められた力に、その抵抗はたやすくねじ伏せられてしまった。
「んふふっ……いただくわね……」
「んっ……んんんっ……」
少年の唇を貪りつくす、蜘蛛女の濃厚な口付け。口内に甘い香りが広がり、後頭部の辺りが恍惚で痺れていく。口から喉の奥にまで染み渡るその香りと瑞々しい唇の感触が、先刻アラクネに与えられた快楽の記憶をレッドの心の内に呼び覚ましていた。
(だめだ…またあんなふうにされたら……僕は……)
―――ずりゅ、ずりゅりゅ、ずずっずずずずずっ!
アラクネの柔らかい唇が彼の唇を千切れんばかりにすすりたて、口内に侵入した舌が卑猥な音を立てながら舌に絡みついてくる。長い舌を伝って流し込まれた熱い唾液は、否応なしに少年の味覚を刺激しながら喉を伝い体の奥へと侵入する。自身の口を容赦なく蹂躙される強烈な快感にレッドの反抗心は徐々に薄れ、思考さえも蕩けていく。
(あ…頭がぼーっとして……き、気持ちいい……)
いつの間にかアラクネの手がレッドの胸や首筋をくすぐるように撫でまわしていた。フェザータッチの丹念に愛撫。それに応えるように少年はもどかしく体をくねらせた。
しだいにレッドの下半身には血液が流れ込み、先刻無残にも破り去られたスーツから露出するペニスは硬く膨張し、時折物欲しそうにビクリ、ビクリと跳ねた。
「んちゅ……れるれるっ……んふ、ふううぅ……」
「んっ、んん、んっ……」
舐めまわし、吸いたて、ねぶり啜るその不規則な刺激にレッドはただ身を震わせ自らに与えられる快感に没頭するほかなかった。
「んっ……ふふふ……ごちそうさま」
不意にアラクネはその唇をレッドから離し、大きく息をついた。快感の源泉を失ったレッドはだらしなく伸ばした舌を虚空に彷徨わせ、蜘蛛女の柔らかな唇を、滑やかな舌を求めていた。脳はぬるま湯につかったような心地よさにふやけ切っていた。レッドは、自らの無意識の行動に疑問を抱けないほどに、快楽の余韻に陶酔していた。
自身を求める少年の切なげな顔を見つめ、アラクネは妖艶な笑みを浮かべる。妖しく輝く赤い瞳からは、獲物を自らのものとした、捕食者の愉悦が見て取れた。
「うふふふふ……キスだけでこんなにも硬くさせちゃって、本当に私のことが大好きなのね……うれしいわ坊や……」
甘ったるい声で囁くとレッドの股間にその長く細い腕をゆっくりと伸ばす。
「あっ、それはっ! や、やめろっ……!」
アラクネの青白い指がペニスに絡みつく。艶めかしい刺激にレッドはびくりと顎を逸らせた。少年の悶えをおかしそうに眺めながら、アラクネは細い指をゆっくりと上下に動していく。さらに、唾液に滑った長い舌で、少年の首筋や耳、乳首といった性感帯をネロネロと、くすぐるように舐めまわし始めた。
「はぁっ、あああ……ううっ……」
ゆっくりとペニスを扱かれ、過敏な個所にねっとりと舌を這わされ、レッドの口から甘い喘ぎが止まらない。絶頂するには足りない刺激であったが、確実に体に快感を刻んでいく。やがて腰にじわり、と甘い痺れが広がりはじめた。
(気持ちいい……でも流されちゃダメだ……何か別のことを考えないと)
レッドは不自由な身をくねくねとよじりながら、快楽の奔流に意識をさらわれまいと必死に抵抗する。しかし、少年はそのドロドロとした流れに徐々に意識をさらわれ、果てにある深い闇の官能へと、じわりじわり、引きずり込まれていく。
「うふふっ……感じやすい坊やって可愛いわ……そんな可愛いボクちゃんには、もっと気持ちいいことをしてあ・げ・る」
歯を食いしばり快感に耐えるレッドの耳の穴に舌先を舐りながら、アラクネはねっとりとした囁きと甘い吐息を吹き込んだ。その美しい手は休むことなく淫らな動きを続け、ペニスの先端から先走の汁を絞り出す。滑った液体は手の動きをスムースにし、さらなる快感をレッドに与えている。
「あっ、んんっ……くっ、な、なにを……?」
濡れたまつ毛を小刻みに震わせながら、レッドはアラクネの動きを目で追った。何をしようとしているのかは分からないが、さきほどのアラクネの言葉に、彼は不安と微かな期待を抱いていた。
アラクネは蜘蛛の腹部を丸めその先端をレッドのペニスに向ける、突端には出糸突起がひくひくとまるで呼吸をするかのように蠢いていた。その動きを目の当たりにしたレッドがすべてを悟った時には、もうすでに彼の陰茎には彼女の突起からべっとりと粘つく糸が大量に吐きかけられていた。
「ああっ! ナニコレっ、こんな……んんっ」
絡みつく糸の与える甘い快感刺激をレッドは額にしわを寄せて耐える。吐きかけられた糸は、レッドの体を縛っているものとは異なるもので、水糊のように柔軟だが、触れている部分をじわりと締め上げ、そこに麻痺した様な心地いい感覚をもたらしてくる。
あまりの快感にペニスはビクビクと上下に震え、その動きによりさらに糸が纏わりいたるところを締め付ける。
「はぁっ、はぁっ、は……つうっ! くうぅ……」
未知の快感にあっという間に限界近くまで追い詰められ、少年は肩を喘がせる。快楽に流されてはいけないと必死に射精をこらえようと腰に力を入れる。だがしかし、快楽を塞き止める堤防は、あっけなく崩れ去ってしまった。
「ぐっ、ぐうぅっ! あっああああぁ……」
粘性の糸に塗れたペニスに手袋に包まれた細い指がそっと絡みついた瞬間、あられもない声を上げてビクビクと腰を震わせた。勢いよく飛び出るはずの精液は粘つく糸によって、受け止められ、糸と混ざりあいながら淫靡な匂いを辺りに撒きちらす。
「あら……、触れただけで逝っちゃうなんて……、ふふっ、情けない坊や……」
涎を垂らしながら焦点の合わない目で射精の感覚に打ち震えるレッドを、切れ長の目を上限の月のように細めて嘲笑い侮辱する。
獲物いたぶるうちにサディスティックな性癖が目覚めたのかもしれない。アラクネは情欲の赴くまま、射精したばかりのペニスを握り、精液の混じった糸を塗りたくるように竿を強く扱き始めた。
「やめっ! いまイったばかりだから! ひあああぁっ……」
敏感になった性器を襲う快感に、レッドは激しく身悶えた。しかし、糸に絡め取られた状態ではアラクネの手から逃れられない。少年ヒーローは凄まじい快感に脳を焼かれながら、情けない声を蜘蛛女の巣に響かせた。
「あ、頭が変になるっ、こんなのダメッ! ダメだからぁ……!」
悲痛な叫びが蜘蛛女の嗜虐の本性をくすぐる。昂ぶったアラクネは余った左の手で自らのふくよかな乳房を、指が食い込むほど強く揉みしだいて、官能の声を上げた。
「ああぁ……必死な顔で悶えて……可愛いわ坊や……食べちゃいたいくらいに、ね……」
ほおを紅潮させ、濡れた瞳でレッドを見つめる彼女の顔には、妖艶な美女と恐ろしい化け物とが混在していた。
「うふふ……ほぉらたまらないでしょう? もっともっと……オチンチンを糸でぐちゃぐちゃに犯してあげる……そぉら……」
そう宣言すると、アラクネは一層ねちっこくレッドのモノを嫐り始めた。粘つく糸がたっぷりと絡んだ指を竿に絡め、全体を万遍なくこすりあげる。人差し指で裏筋を押さえながら丹念に扱きあげられ、掌で亀頭に糸を揉み込むようにぐりぐりと撫で上げられる。ペニスが痺れるような快感に、レッドはあられもない声を上げて悶え狂った。
「あ、ああっ! うぁぁっ! ぎいっ、んひあああぁ……」
強烈な快感が背筋をゾクゾクと駆け上り、脳内でスパークする。扱かれ、撫でられ、揉まれ、締め上げられ――少年は何も考えられなくなるくらい感じてしまう。
おこりの発作のように身をよじり、腰をくねらせる。そうしないと快感によって精神が壊れてしまいそうだった。
「おほほほほっ! 悩ましく悶えちゃって……誘ってるのかしら……それにその顔、エッチで素敵よ、ぼ・う・や……」
レッドの醜態に興奮したアラクネがサディスティックに笑う。少年の顔は涙や涎や鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。
アラクネは精神の高ぶりのままに、手の動きを一層激しくする。
「そうれ……また私の手の中で、昇天しちゃいなさい……」
「あ、ああぁぁぁ! 出るっ、出ちゃうぅっ!」
糸に捲きつかれたまま快感に屈伏するかのようにペニスをびくびくと脈動させる。竿から亀頭までびっしりと締められ、扱かれては、いかに射精をしたばかりであろうとこみ上げるものをこらえることはできなかった。どくどくと鈴口から漏れ出す精液は飛散することなくすべて糸に絡め取られ、淫靡な匂いはさらに色濃くなっていく。激しい射精にレッドは全身を激しく痙攣させ呼吸もままない。
「あははっ! 気持ちよさそうにイっちゃって! そんなに気持ちいいの? もっとおチンチンぐちゃぐちゃにしてあげるわ!」
息つく間もなくアラクネの手は動き続ける。強い力でペニスを扱き上げ、暴力的なまでの快感をレッドの脳に刻んでいく。射精直後の過敏なペニスを激しく責め立てられながら、レッドは涙を流して、喘ぎ続けるほかなかった。
「うああっ、あっ、ああっ……あ゛あ゛あ゛っ……」
もう少年の喉からはつぶれた声が漏れ続けるばかりだ。何も考えることができず、痛みや息苦しささえも快いものに塗り替えられていく。全身に湧き上がる異常な快感に飲み込まれ、あっけなく彼の体は3度目の限界を迎えた。
「あ˝、あ˝あぁぁぁ!あ゛っ、あ゛あ゛~~~~」
柔らかな掌と糸でペニス全体を締め付けられた途端、こみ上げるものはドクドクと鈴口から漏れ出ていた。精液とともに自分のすべてが漏れ出てしまうような感覚に襲われながら、レッドの意識は闇の中に沈んでいった。
「あっははははははははっ!! こんなに早く出しちゃうなんて、あなた最高ね! 最高に無様! はぁんっ……私も感じる、気持ちよくなっちゃう……」
絶頂し、意識を失うレッドを眺めながらアラクネの興奮は極限まで高まっていた。脳内に電流が迸り心地よい感覚で全身が満たされる。下腹部に剥いた女性器からは、淫靡に香り立つぬらぬらとした液体がレッドの体を濡らすほどに滴り落ちていた。
「ふふふ……本当にいっぱい出して……あなたのおいしい精液、また食べさせてもらうわね……」
アラクネは手袋に包まれた自らの手に唾液たっぷりと吐き掛け、その掌でレッドのペニスを締め付けている糸に触れた。精液と混ざった糸がドロリと蕩ける。アラクネは掬い上げたそれを自らの鼻先に運び、その濃厚な雄の匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。涼やかな美貌がうっとりと弛緩する。匂いを堪能し尽したアラクネは、両手に湛えた精液まじりの糸をすすり始めた。そして、歯や舌、頬の内側などをゆっくりと動かし、ねちゃねちゃと粘つく音を立てながら、口全体でその食感や味、匂いを堪能する。喉を鳴らしてドロリとしたそれ嚥下すると、アラクネは掌の湛えたものをまた啜り上げていく――
レッドの陰茎が萎え始めたころには、その両手いっぱいに溜まっていた糸と精液の混合物は、いつの間にかすべて蜘蛛女の腹の中に納まっていた。
「ん……はぁ、おいしい。最高よ、あなたの精液……」
掌や口の内外に残るべたべたした残骸を、長い舌でこそぎ取るように舐めると、気を失ったレッドに妖しく囁いた。当然のことながら少年はなにも答えない。
「だらしないわね……まだ私は満足していないのに……」
残念そうにそう呟くと、アラクネはレッドの首筋に顔を近づけ、ぱっくりと口をあけた。真珠のような歯が並ぶ中に、鎌状の鋭い二本の牙が伸びており、そこからは透明な毒液が滴っていた。
「んっ……」
アラクネの鋭い牙が、スーツの上からぶすりと突き刺さった。この牙からは様々な毒を分泌させることが可能で、その毒は筋肉を溶かすものや体を麻痺させるものなど用途に応じて使い分けられる。しかし、今しがたレッドの体内に流し込まれた毒は、そういったものとは少し種類が違っていた。
アラクネがゆっくりと口を離す。少年の首筋に小さな穴が二つ並んで開いていた。10秒ほどで、レッドの体は変化を見せ始めた。沸騰したように熱くなった血液が体中を駆け巡り、萎えきっていた陰茎が熱を帯び硬く怒張し反り返る。少年ヒーローに打ち込まれた毒の正体――それは、死人をも昂ぶらせるほど強烈な媚薬なのであった。
「ふふふ……硬くなってきたわね……でも、まずは下準備」
そういうとアラクネは淫靡な笑みを浮かべて舌なめずりをすると、両の掌にどろりとした唾液をたらした。レッドの手足を拘束している糸は唾液に濡れた手に撫でられると蝋のように溶け出した。ヒーローが渾身の力を出しても解くことができなかった拘束糸は見る間に融解し白い粘々とした液体へと変わっていった。
そのころにはレッドのペニスは一段と硬さを増し、猛々しく隆起していた。すでに先端からは新たな先走りが漏れ出していた。
「うふふ……頃合いね。それじゃあ、いよいよ坊やを食べてしまおうかしら……」
不敵に笑いながらそう囁くと、レッドの体を六本足で抱え込んだ。そして、下腹部に露出した女性器を指で押し広げ、怒張したペニスに狙いを定めてゆっくりと腰を落としていく。
―――ぐちゅり。
分泌液でドロドロになった秘唇は、少年の張りつめた亀頭をやすやすと受け入れた。肉同全体がいやらしく蠕動しながら、がちがちに勃起したペニスを奥へと運んでいく。
「はぁ……いいっ……」
アラクネは膣内に硬く膨張した肉棒を深々と飲み込むと、その愛おしい存在を確かめるように優しく締め上げる。自身の内部で震えるペニスの感触を恍惚とした表情で味わいながら、硬くしこった乳首を細い指でつまみ、柔らかい乳房を丹念に揉み始めた。
「う……ん……」
先程から気を失っていたレッドの目が薄く開いた。強い媚薬とペニスに与えられた甘い刺激により意識を呼び起こされたのであろう。体の感覚はしばらくはっきりとせず、おぼろげな思考のまま、淫らに自分と繋がる不気味な妖女の姿を呆然と眺めていた。
「あら、お目覚めかしら? ちょうどよかったわ」
少年が目覚めたことに気が付き、アラクネが嬉しそうに声をかける。
「うわっ! なにしてる!? や、やめろっ……ぬ、抜けよ!」
アラクネと繋がっている部分を目の当たりにし、レッドは気を失っていた間に自分何をされていたのか、おぼろげながら理解した。それと時に咥え込まれたペニスから、得も言われぬ心地よさが伝わってくる。
膣内はとても暖かく愛液でヌメヌメ、膣壁には無数の柔突起が犇めいていて、その一つ一つがみっちりと亀頭に吸い付き、甘美な刺激を刻み込んでくる。
ただ挿入しているだけ、それだけのはずなのに、下半身が溶けてしまいそうなほど気持ちがいい。それは、先程注入された媚毒の力に依るところも十分にあろうが、気を失っていた彼にはそれがわからない。理解できるのは、今までの人生で味わったことがないほど素晴らしい肉悦、ただ、それだけだった。
「なにって、あなたとセックスしてるのよ。見たらわかるでしょ、本当にお馬鹿さんね……でも、ちょうどよかったわ、意識のないあなたを○すのもステキだけど、悶えるあなたを○すのはもっとステキ……」
そう言って妖艶に微笑んだかと思うと、アラクネはレッドに蜜壺の快感を教え込むようにゆっくりと腰を上下に動かし始めた。上下運動に合わせてペニスを柔らかく包んでいる肉壁がうねうねと躍動する。愛液で濡れた肉襞が生命を持っているかのようにいやらしく蠢き、亀頭や竿を入念に舐め上げる。
―――ぬちゅっ、ぬちゅ、ちゅっ。
いやらしい水音を辺りに響かせながら、アラクネの膣は咥え込んだ雄を貪るように犯し抜き、甘く痺れる快感を刻み込んでいく。
「ううっ……!あっ、ああっ、やめろぉ……」
全身を駆け巡る強烈な快感から逃れようとレッドは激しく身をよじった。しかし、いくら暴れようとも身体は蟲の足にがっちりと抑え込まれ、蜘蛛女の濃厚な抱擁から脱け出ることは出来ない。そればかりか、身をよじる際のわずかな動きによって、ペニスが膣肉に擦れてたまらない心地よさを生み出すのである。
「あ、ああぁ……こんなにされたら……くううぅ……」
早くも腰の奥から熱いものがこみ上げてきた。ペニスが小刻みに震えだし、甘美な痺れが下半身を支配する。
「もう逝きそうなのね……いいわよ、イって。私のなかにあなたの濃厚な種汁たっぷり吐き出しなさい……」
射精の予兆に感付いたアラクネは嬉しそうに声を上ずらせ、腰の動きを加速させた。互いの分泌物が混ざった透明な液とぬめった音を辺りに撒きちらしながら、勢いよく抽送が繰り返される。唯一自由な首を左右に激しく振りながらレッドは精一杯の抗議を見せるが、しかし、肉壺から与えられる激しい快楽の前に彼はあっさりと屈伏してしまった。
「あ、ああっ、あああああっ……もう、ダメ、出ちゃううぅ――!」
膣内の締りがきつくなった瞬間、ペニスから熱い雄汁が迸った。
―――どくっ、どくっ、どくっ。
「んんっ……いいわ……」
膣内に満ちる精液にアラクネは目を細め恍惚とした表情を浮かべる。射精の余韻に震えるペニスを膣内でギュッと締め上げ、搾り取るように尿道に残った精液を吸い上げていく。達したばかりの敏感なペニスを執拗に刺激され、レッドあられもない喘ぎを漏らした。
「あ、くぅ……」
「ふふっ、すぐに出しちゃって……それに、こんなにいっぱい……そんなに私との交尾は気持ちよかった?」
頬を赤く染め快楽に悶えるレッドに嬉しそうに問いかける。
「き、気持ちよくなんか……! おかしな薬でも使ったんだろう!」
「使う必要がないでしょ、この期に及んで素直じゃないのね。そんなことしなくても、あなたはとってもエッチだからすぐ気持ちよくなっちゃうじゃない……」
平然と嘘を吐くと、アラクネは再び上下させ媚薬の効果により萎え知らずになった少年のモノを刺激し始めた。膣内で先程出した精液と愛液とが混じり合い、ペニスが出入りするたびに粘った音が結合部から溢れだす。
「ああっ、つぅっん……はぁっ」
アラクネが腰を振る度にレッドは体をビクビクと震わせる。いくら感じるまいと気を張っても、その努力は空しかった。
蜘蛛女の性器は、まるで精液を搾り取る機械のようだった。膣道がグネグネと蠢き、ペニス全体を締め付けて射精を促してくる。肉イボの犇めく最奥の肉壁が亀頭に密着し、腰砕けの快感を刻み込んでくる。凄まじく心地いい。睾丸に溜まったドロリとした熱い塊が、こみ上げていく感覚にレッドは唇をかみしめる。
「くっ……んっ……ああっ! でっ、出るっ! あ、あれ?」
レッドは突然のことに目をぱちくりさせた。絶頂に達しようとした瞬間、アラクネが腰の動きをぴたりと止めたのである。寸前でペニスへの刺激を取り上げられたもどかしさに少年は身をわななかせる。その様子をニヤニヤ笑いで見下ろしながら、アラクネは腰を再び動かし始めた。ゆっくりと大きなストロークでペニスを引き抜くように腰を持ち上げると、カリのところでいったん動きを止める。そして、その感触を愉しむようにゆっくりとペニスを飲み込んでいく。
「う……くぅ……はぁ、ん……」
焦らす様な動きにレッドの喉から切ない喘ぎが漏れる。何度も抽送は繰り返されるものの、与えられる快楽は微々たるもので、昂ぶりきったペニスでさえ放精には至らない。それでも、時折絶頂を予感するが、その度にアラクネは見計らったようにピタリと動きを止めてしまう。そのため、予感は決して現実のものとはならなかった。もどかしい感覚だけが膨れ上がっていく。
(出したい……出してしまいたい。でも……)
少年の衷心にあるヒーローたらんとする意志が最後の砦となって膨れ上がる射精欲求を抑えつけていた。
「あらあら辛そうな顔しちゃって……もうたまらないでしょう? 逝ってしまいたいでしょう? だったらわたしにおねだりしてごらん……ちゃんと私におねだりできたら、気持ちよーく射精させてあ・げ・る」
アラクネが妖しい声でレッドを誘惑する。悪魔のささやき。決して、誘いに乗ってはいけない。それがわかっていながら、普段の彼なら邪であると打ち捨ててしまうような後ろ暗い感情が、心を蝕んでいく。
欲望のままに女怪人に屈服し懇願し、すべてを解き放ってしまいたい――
「うっ、るさいっ!そんなことするわけないだろ……絶対に……絶対に!」
倒すべき敵に負けまいと、自らが生み出した感情に負けまいと、レッドは声を振り絞る。しかし、どんなに心を強く持とうともこの○問のような責めは終わることはない。そして、がっちりと体を抱え込まれ、腕一本動かすことができぬようでは、決して逃げることなど敵わないだろう。そのことはレッドも十分に理解していた。だが、彼はヒーローなのだ。
「強情ね……素直になったらもっと気持ちよくなれるのに……それなら、思い出して、さっき私の中に出した時の快感を……おちんちん締め付けられて漏らしてしまったあの快感を……」
ゆっくりと言い聞かせるように、蜘蛛女はレッドの耳元で妖しい言葉を紡ぐ。それを追いかけるようにレッドの脳裡に絶頂した時の心地よさが甦る。過去の幸福が現在の欲望に変化していく――
「そして想像するの、ぬるぬるのおまんこでおちんちん擦りあげられたら……締め付けられたら……そして射精してしまったら……どれほど気持ちいいか……ああ、凄い、気持ちいい……考えただけで、射精しちゃいそう……」
アラクネの巧みな心理誘導により思い描いた快楽が、レッドの心を染めていく。極上の膣肉でペニスを包み込まれ、ゆっくりと扱き上げられ、締め付けられて――暖かい膣内でどくどくと自らの子種を漏らす感覚を鮮明にイメージしてしまう。彼の口から吐き出される息はさらに荒くなり、心臓は張り裂けんばかりに拍動し、燃えるような情欲の熱を全身に送り出す。
(出したい、出したい、出したい、だしたい、だしたいっ! でもっ! でもっ!)
劣情が心を支配していく。最後の砦である魂が何とか感情を声にするのを防いでいる。しかし、声に出すのを止めているばかりで淫らな欲望は胸を突き破らんばかりに膨れ上がっていく。彼はもう、限界だった。
「ねぇ、坊や、あなたはよく頑張ったわ。いっぱい我慢したじゃない……だからもういいのよ、我慢なんてしなくて。気持ちよくなりましょう、ね? だから、あなたの口で私にちゃんとおねだり、聞かせてちょうだい……」
悪魔の甘い誘惑がレッドの脳で木霊した。まるで母親に許しを得た子供のように彼の表情は緩み、瞳に涙をにじませる。子供をあやすような優しい囁きに最後の砦はもろく崩れ去ってしまった。
「い……イかせて……お願い……イかせて、射精させてぇ……」
幼児のようなレッドの懇願に、アラクネはニヤリと口角を歪め、しかし不満を漏らした。
「だめよ……お願いするんだからもっとはっきりどうしたいのか言わなきゃ。さぁ、言ってごらん……どこを、どうしてほしいの?」
心の折れたレッドをアラクネはさらに追い詰めていく。そうすることでサディスティックな性癖をもつ彼女は満たされるのである。
「はぁ……くぅ……お、お願いします……いやらしい……おまんこで、僕のおちんちん気持ちよくしてください……もう我慢できません!射精したいんですっ!おねがいします……!」
胸につかえたわだかまりを出し切るように、欲望に屈服した少年ヒーローは涙まじりに声を振り絞り精一杯の懇願をした。その瞬間、背中にぞくぞくと妖しい怖気が駆け上がっていくのを感じた。もう二度と戻れない、そんな悔悟すらも屈服の言葉とともに闇の中に消えていくような気がした。
「ちゃんとお願いできるじゃない、えらいわねぇ……いいわ……望み通り私のおまんこであなたを無茶苦茶に犯して……気持ちよく……壊してあげる!」
喜悦に満ちた言葉を発すると、アラクネは膣肉の締め付けを強めて激しい動きで腰を振り立て始めた。水気のまじった肉同士ぶつかる音が蜘蛛女の巣に響き渡る。
「あ゛あ゛っ、あ゛っ、あああ、い˝いっ!」
待ち焦がれたペニスへの凄まじい快楽刺激にレッドは狂ったように悶絶した。巧みな力加減で締め付けながら肉壁がペニスを縦横無尽に擦り立てる。魔性の柔突起が犇めく膣奥で亀頭を締め上げられた瞬間、レッドは絶頂に登り詰めた。
―――どくっ、どくっ、どくっ、どくっ、どくっ
「あ、ああ゛っ、あ゛っ、あ゛ああ!いくっ、いっぐぅっ!」
張りつめたペニスがびくびくと躍動しながらアラクネの膣内に精液を注ぎ込んでいく。自分のすべてをかなぐり捨てて得た快感に彼は、涎を垂らした締りのないない顔で飲み込まれていく。
「ああ……坊や、いいわ! 素敵よ……」
レッドの迸りを内部に受け、興奮の極致にあったアラクネ自身も絶頂を迎えた。口をだらしなく開き、瞳を蕩かすその表情は雌の悦びに満ち溢れていた。
結合部から精液はとめどなく溢れ、二人はしばしの間快楽に打ち震えた。
レッドはすべてを放出し脱力したまま快感の余韻に浸っていた。全身がけだるく何も考えることができない。瞳を潤ませ見下ろすアラクネの表情をただただ見つめ続けている
不意にレッドの動きを封じていた六本の節足の力が緩まり、拘束が解れた。
「よかったわよ……坊や……でもまだまだ、私としたいんじゃない?」
優しげな口調でそう問いかけられると、レッドは目を少し伏せゆっくりと頷いた。
―――じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ。
肉のぶつかる音や、上ずった喘ぎ声が響く。汗や愛液や精液の混ざりあった嫌な臭いが充満している。そんな暗い闇の中、二人の男女が絡み合っていた。
女の方は人間ではない、上半身は人間のそれと変わることはないが、腰から下に蜘蛛の体を携えた恐ろしい化け物である。男の方は年端もいかない少年だ。女が化け物であることなど意に介していないように必死で女の全身を愛撫し腰を突き上げ悦ばせている。あどけなさの残る少年は、かつては正義のヒーローであった。しかし、自らの欲望をぶつけ、蜘蛛女を悦ばせる少年にその面影はまるでない。
「あっ、ああっ、でるっ! アラクネ様っ!」
レッドは敵であった女怪人の名前を様付けで呼ぶと、体を痙攣させ蜘蛛女の膣内に自らの白濁液をぶちまけた。同時に蜘蛛女も体を小刻みに震わせる。彼女も絶頂を迎えたのだろう。快楽の余韻に浸るように二人は互いの緩み切った顔を見つめ合った。
レッドはもう蜘蛛女の虜だった。アラクネに屈服させられた日からずっと、暗い闇の中延々交尾を繰り返している。
もう何も分からない、考えることができない。それでも彼は幸せだった。アラクネに、快楽を与えてもらえる。ペニスを可愛がってもらえる。それだけで、少年は幸福に酔いしれることが出来るのだ。
やがて、束の間の休息が済むと、彼は再び腰を動かし始めた。
妖艶な蜘蛛の女怪人と、元少年ヒーローの交尾はいつまでも続く――