ジョシカツ! 2022/04/16 08:52

【プロローグ】獣人カレシの発情SEX~制服警官はオオカミになる!?~【無料公開】

~プロローグ~

 濃紺の出動服に防弾チョッキを重ねた訓練生たちが、障害物の間を駆け抜ける。みな手には拳銃を持ち、緊張の面持ちだ。
 目の前に、人型の動く的が現れた。
 すばやく発砲したのは月白 凱(つきしろ がい)。鋭く光る銀の目に、伸びやかな体躯を持つ青年だ。
 放たれた弾は立て続けに三発。その三発が、別々に動く三つの的を倒した。
 腹に響く発砲音が消えると、いくつかのため息が訓練フロアを支配する。
「また月白か」
 凱が振り向くと、指導に当たっていた教官が苦笑いを浮かべていた。
「たまには仲間に譲ったらどうだ」
「しかし……いえ。すみません」
 実戦の場で、仲間と手柄を譲り合っていては死人が出る。
 そう思っていると、教官が来て凱の肩を叩いた。
「いや、冗談だ。卒業後の活躍に期待している」

 ここは警察学校。凱とその同期生たちは、ひと月後にはここでの訓練を終え、各地の警察署へ配置されることが決まっていた。

 * * *

「月白くん、今日もすごかったね~」
 訓練を終え更衣室に向かう途中。女友達が“あなた”に話しかける。
「卒業式の総代は他の人に譲っちゃったけど、私は月白くんが同期で一番だと思うな」
「それ、ルックスの加点込みでしょ」
 他のひとりが言って笑った。
「まあ、顔がいいもんねー。背も高いし」
 他の女子たちがしきりにうなずく。それでみんなの意見は一致した。
「……あっ、来たよ!」
 廊下の後ろから、同期の男子たちがやってくる。その中にウワサの月白凱もいた。周囲より頭ひとつ背が高いからよくわかる。
 女子たちが道を譲ると、彼だけがなぜかそこで足を止めた。
 凱はあなたを見て、わずかに口角を持ち上げる。
「配属先の署、一緒だな」
「……え、そうなんだ?」
 そういえは地方にあるその署の採用枠は、同期の中から二名と聞いていた。
「これからもよろしく」
「うん。こっちこそ。頼りにしてるね?」
 あなたが右手を差しだすと、凱ははにかむような笑顔でその手を握る。
 それから彼は仲間を追うように、男子更衣室の方へ去っていった。
「えー、いいなー、もー!」
 凱の姿が見えなくなってから、女友達があなたの腕をつかんだ。
「月白くんと一緒だなんて、前世でどんな徳を積んだのよ」
「もしかして、ふたり一緒になるよう希望してたとか?」
 他の女子が聞く。配属先の希望はほぼ成績順で通るからだ。
「ううん。たまたまだよ! 私、月白くんとはほとんど話したことなかったし」
(あれ? でも……)
 彼の方は、あなたの配属先を知っていた。
 それに優秀な彼なら地方の署でなく、本庁への勤務を希望するのが自然な気がした。
(……偶然? それとも何かあるのかな?)
 あなたは首をかしげ、彼と握手を交わした右手を見下ろした。

 * * *

 その頃、更衣室のドアをくぐった凱は、あなたと握手を交わした右手を握りしめていた。
「~~~……っ、シャア!!」
 先に着替え始めていた仲間たちが、不思議そうに凱を見る。
「どうした? 月白……」
「急にデカイ声なんか出して……あっ! 足の小指でも打ったとか?」
「……いや」
 凱は我に返り、平静を取り繕った。
「なんでもない。気にしないでくれ」
 彼はただひたすら嬉しかった。片想いの彼女と同じ署への配属が叶ったのだ。
 そしてそれを知った彼女も、概ね好意的な態度を示してくれている。
 同じ署へ行けば一緒に行動することもあるだろう。運がよければペアで仕事ができるかもしれない。
 そうなれば話す機会はいくらでもあるだろうし、もしかしたら彼女が凱に好意を持ってくれることも……?
(あり得るのか!? そんなことが……?)
 妄想が膨らんで、頬が緩むのを抑えきれなくなりそうだ。
 もっといえば、違う部分まで膨らんでしまう。
 ロッカーを開けながら、凱はゆっくりと息を吐き出した。
(……いや、気を抜いちゃダメだ!)
 凱は獣人、彼女はどう見ても人間だ。普段隠している尻尾や耳が出てしまい獣人だと知られれば、彼女との交際は叶わないだろう。
 獣人と人間が共に暮らすこの世界でも、異種族間の恋愛や結婚はまれだった。
「……ふう……」
 ロッカーの鏡で自分の顔を確認し、凱は表情を引き締める。
(恋愛なんていい。彼女をそばで守れれば……)

 ふたりの運命が重なるのは、それから四年後のことだった――。


 

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