#主計くんと純名さん：あの頃のこと【R18】

（ぜんぜん気持ちよくなかったな……）

　うなじを流れる髪をそっとかき上げると、首筋から安っぽいボディソープの残り香が、ふわりと立ち上った。視界に入る後れ毛は、シャワーの湿気でうねりを取り戻しはじめている。出かける前はまるで別人のように、アイロンであんなに真っ直ぐ伸ばしていた髪が自分を取り戻していくようだ。
　帰路の電車に乗り込んで、窓に映し出された姿は、そんな中途半端なものだった。

「ん……」

　もうじき23時に差し掛かるがらがらの車内で、端の席に座る。それと同時にスマートフォンが震えた。

『今日はありがとう。体の相性よかったですね。都合あえばまた……』

　届いたメッセージを流し読みして、純名は迷いなくブロックボタンを押す。

（どこが……）