【小話】【BL】【箱庭生活】ラズとクリスの小話2本
- 作品本編
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拡張機能でキャラデータ消さずに性転換出来るようになったら?
「できればすぐにでもそうしてほしい……」
「えー? めんどくさい。今のままでも不自由してないし……うーん、ラズはやっぱおっぱい好きなのか? ちんこ嫌?」
「ばっ……!!! 今更だろ! そうじゃなくてだな……やっぱり、お前を男として見れないんだ。なんか、女扱いしてしまうというか……違和感が拭えない。言い方は悪くなるが、なんというか、気持ち悪いんだよ。噛み合ってなくて」
「別にオレはかまわないけど……そうだなあ、どうしてもっていうならその前に一発やらせてよ」
「は」
「だってオレも入れてみたい。無くなっちゃうなら一回はやってみたい」
「……(目反らし)」
「あー! ラズずるい!」
「ずっ、るくなんか! 大体俺は初めから言ってるだろう。お前を女だと思ってるって! だからその、男同士のやり方を調べはしたが、自分が女側に回るなんてこと全く考えてなかったに決まってるだろ!」
「えー……なんかすっきりしないなあ……」
クリスの由々しき悩み
箱庭生活というゲームは基本的に『行動に対し一定の経験値が得られる』仕様だ。例えば調合をしていればそれに関するスキルである『薬草鑑定』や『効果増幅』、あるいは調合の成功率が上昇する。戦闘の場合でも使う武器の種類に応じてそれぞれのスキルが伸びるようになっており、熟練度が高まればクリティカル率が大幅に上がったりする。そうやって溜めたスキルへの経験値が定められた数値を超えるとレベルアップと相成るわけだ。このレベルが高ければ高いほど、このゲームを長く経験しているという証になる。
ジョブと言うのも特にはなく、特定の『呪《のろ》い』イベントをこなすことで溜めた経験値をリセットし、スキルを振り直すことが出来るようになっている。一度も取得したことの無いスキルには触れないけど。箱庭生活においてのジョブチェンジとはこのステータスの振り直しなのだ。
そのため同じレベルのプレイヤーでもステータスやスキルには大きく差が出る。ただ、箱庭生活におけるダンジョン攻略と言うのはおまけ要素のようなもののため、戦闘狂でもない限りステータスが極端に傾く例はあまりない。と、いうのが公式掲示板上の情報だ。
さて、つまり何が言いたいのかと言うと、ここのところ休み前の日はラズと一緒にホームで熱い恋人同士の交わりをしていた私のスキルは、ここにきてその手のものばかり伸びていた。柔軟とか舌使いとか感度上昇とか。
おかしい。そこそこ戦士よりに育てていたはずなのに。
筋力が上がってるのはまあ、戦闘においても全く役に立たないこともないため見逃すとしても、『舌使い』って! 普段の使いどころなさ過ぎて! あと、すればするほど気持ち良くてたまらなくなってたのは感度上昇のせいか……!
しかもプレイヤー特権で相棒《ラズ》のステータスもチェックしたらそっちはそっちで愛撫だとか……『射精コントロール』ってなんだよ……焦らされるのってこれが上がってる所為?
ええと、とにかく性技関連のスキルがかなり高くなっていた。
「どうすんだよこれ……」
一度リセットして振り直すか。
ラズとするのは嫌いじゃないし、気持ちいいし、……まあ、好きだけど。でもこのままじゃそういう欲求を解消することが第一になりそうな気がする。それは本意じゃない。もっとラズといろんな所へ行ったり、いろんなイベントを楽しみたい。肌の触れ合いはその一つであって、それが全てになるのは嫌だ。
でも、一方で現状、このステータスこそ私が箱庭生活においてどんなふうに過ごしてきたかを示すもので、軌跡なのだ。それはラズとの思い出であり、発禁スキルの有り様なんて特にその筆頭でもある。それを消すというのはラズと肉体関係にあることをなかったことにしたいという後悔の現れのようにも思えて、私は頭を抱えた。
そんなことは無い。ちゃんとラズのことは好きだ。それにスキルリセットしたところで私とラズの関係が変わることは無いわけで、だったらリセットに意味はあるのかということになる。別にこっちのスキルが伸びたところで、他のノビシロがなくなるわけでもないのだし。
結局、悩みに悩んだ私はラズに仕様のことを話してみたのだけど、ラズはと言うとどうせ振り直しが出来るのならと一層やる気を出してしまい、その場はうやむやになってしまった。ステータスへのこんな執着はプレイヤー特有のものなんだろうか……温度差に少し戸惑ったものの、起きてからはいい加減盛ってないで冒険者稼業をメインに据えようという結論に達することとなった。その分、一度の内容が非常に濃密で長いものになったのは完全に予想外だったけれど。
そんなわけで、以前までそうだったように討伐クエストだのなんだのとやってはいるものの、相変わらずそっちのスキルの上がり方はなかなかに早いままだ。どうやったら効率よく経験値入手できますかね、という新規プレイヤーの相談に、何とも気恥ずかしくなってしまう日々はまだ終わりそうにない。