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近況1/30 また戦争がしたいのか、あんたたちは!?

 『ルリとルナ第二話』DL販売版の書き下ろし分を粛々と進めています。
 バッドエンドルートに新規エッチシーンをひとつ追加したり、あちこち加筆したり。まだ途中なので最終的にどうなるか分かりませんが、大体15000~20000字くらい分量が増える感じになるかなと思います。第一話と同じくらいの加筆ですかね。
 まぁもっとも、特に本編は第一話の時ほど大改築工事をしなくても良さそうなので、もうちょっとスムーズに進められるんじゃないかと思ってます。もろもろの準備込みで、今年前半に出せれば良いなという感じですが。まぁ、順調にいけば。

 で、本日は『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』見て来ましたので、その感想でも。
 ネタバレ全開部分はブランクの下にしますが……とりあえず、私はめっちゃ楽しんだ。SEEDシリーズ見て何らか心に引っかかってたところのある人は、ぜひ見に行った方が良いと思う。思いのたけ全部吐き出して、やりたいこと全部やって、ファンサービスもてんこ盛りでやって、とにかく完全燃焼した映画でした。見終わってこんなにお腹いっぱいな気分になったの久しぶりw
 そんなわけで以下、またぐだぐだと長文を書き散らすので、興味ない方とネタバレ見たくない方はまた来週。ではでは。









 思ってた以上に、かつて見たSEEDの味がして、「うわ、そうだったこんな感じだった、懐かしいなぁ」ってなったんスよ。メロドラマ色強めの展開、隙あらば大量破壊兵器ぶっ放したい人たちで満ちているサツバツ世界、などなど。
 そういうSEEDらしい味を20年経ってもブレずに出してくるの、なるほどそう来たか……と思って見てたら、進むごとにそのSEED味が濃くなっていくんだよねw
 懐かしい味だなぁって言いながら具材山盛りの鍋食ってたら、そこにSEED味の原液をさらにドバドバ注がれ続けて、「え、あれ、これさらに味濃くなるんスか? え、ちょ、待って」ってなったw
 まぁでも、変に一般向け意識して薄められるより、もうとことん持ち味を煮詰めて煮詰めて凝縮して突き抜けてくれたんで、逆に「ここまでやられたらむしろ清々しいな」って感じでした。

 とりあえず、序盤のダンスパーティー前後の場面で、爆速で人間関係がこじれていく手際、もはや職人芸だよね、みたいな感じで笑ってしまった。あの短い尺の中で、後半のバトル盛り上げる対立軸と関係性(既存キャラと新キャラの)を突貫工事で組み上げていく手際、すごかったっスね。この辺、全部メロドラマの文脈で組み立てるのがSEED流なんだよねw

 序盤でシンたちと組んでたアグネス、下敷きにしてたのは『逆襲のシャア』のクェスなんでしょうね。アムロに言い寄って邪険にされたからシャアについていったクェスと、キラに言い寄って邪険にされたからファウンデーションの隊長に乗り換えるアグネス。でもラストでルナマリアと対決するのはZのレコアとエマだったな。
 けっこうZとか逆シャアとかのオマージュ多かった気がしますね。
 あとそうそう、映画冒頭で、武力衝突鎮圧のために、宇宙のミレニアムから発艦したキラたちの機体が航空機形態に変形して大気圏突入、そのまま現地で作戦行動に入るの、あれ熱かったですね。あれこそ本来のZガンダムの運用法なんだよな。宇宙から直接、大気圏突入して電撃的に作戦の急所に降下してそのまま作戦行動に入る、というのがZガンダムのウェイブライダーが当初想定していた運用方法だったとどこかで読んだ記憶がある。Z劇中ではジャブロー攻略戦とかで使われてたけど。今回のキラたちの運用法、少数精鋭の鎮圧部隊が短時間で事態に即応するために宇宙から降下する、というのは、おそらく大気圏突入機能を持ったウェイブライダーになれる可変MSの一番理想的な運用法なんだと思う。コンパスという組織の目的と合致してて、メカ考察的にも熱かった。SEEDで見せてもらえるとは、って感じでした(感想内容が重度のガンオタすぎる

 で、ストーリー感想に戻りまして。
 シン・アスカきゅん可愛すぎたよね!!!w
 Destiny時代の鬱屈から抜けだしたら、なんですか、あんなに可愛くなるんですか彼。ズルくない?w パーティーでモリモリご飯食べてるところも、潜入員のふりしてルナマリア脅して逆にボコされるのも、感極まったルナマリアにビンタ張られまくるところも、とにかくあらゆるシーンで可愛すぎた。
 キラとアスランがケンカしてるところに無駄に割って入って、なぜかパンチ入れられてるところ、笑いすぎて呼吸困難になってたw なんにでも首突っ込んで、そのたび痛い目にあってる残念な子っぷりで、一気に愛着湧いてしまった。
 で、そこから終盤のあの大活躍でしょ。Destinyで割を食ったのを取り返すかのように無双してくれたの良かったよなー。しかも、愛機デスティニーに乗った途端に戦力バランス逆転するの、もう最高のファンサービスで良かったよなぁ。あそこは素直に気持ち良かったです。
 劇伴も良いよねぇ、デスティニーでシンの見せ場になった途端にSEED Destinyの曲流すのズルい。今回、ここぞというところでちゃんと「分かってる」曲流してくれたのも、最高に気持ちよく見れた要因でしたね。20年前のSEED2作品を見た人がちゃんと報われる盛り上げ方が随所にあって、素朴に「この作品に付き合ってきた自分」に対して報酬が返って来たような気分になれたんだよな。


 で、ですよ。アスランさんですよ。何なんですかあの人w
 主人公が最大のピンチに陥ったところに、かつてライバルでもあった親友が助けに駆け付けるって、最高に盛り上がって最高にカッコ良いシーンなのに、乗ってる機体がアレなせいで面白さが上回るのおかしいでしょw お腹よじれるかと思ったよ。
 ちょっとあのズゴックはね、伝説ですね。私の中ではハマーン様が颯爽とアッガイに乗って現われたのに比肩するレベルの面白レジェンドだった。
 しかもポッと出のネタじゃなくて、なぜかあの機体で後半まで活躍しまくるのも凄いし、隙を生じぬ二段構えなのもズルい。もういや、何なのあの人……w
 しかも、凹みまくってメンタル面倒くさいことになってるキラに直球ストレートで喝入れられるのも良かった。
 劇場版『まどか☆マギカ 叛逆の物語』で「絶好調のマミさんはすごいぞ」って言われて「これが……絶好調のマミさんか……」となったりしましたが、今作のアスランさんも「これが……絶好調のアスランさんか……(何だこの人」ってなりました。


 なんだろな、今回の劇場版を見て、ようやくラクスの、超然とした顔とは違う、普通の女の子らしい側面が見えて、それに合わせてキラも「最強のコーディネーター」から一転して「アコードから見たら出来損ない」みたいな相対化を食らったことで人間らしい側面が目に入ってきて。ようやくこの2人を生身の人間として見れた気がしましたね。そこも良いところだった。
 まぁ、いきなり全身ぴっちりエロ戦闘スーツで出撃するところまでは読めませんでしたが……w

 Destinyの時、バルドフェルドが単機で死にそうになりながら敵に応戦してるのに、キラとラクスがイチャイチャしてるシーンがあって思いっきりツッコミ入れてしまったことがあったけどw 今回も戦場でイチャイチャしておったね。けど今回に関しては、イチャイチャするほど敵が煽られてムッキーってなる局面だったので、戦術的にも正しいw

 愛ですよ。愛。そこが落としどころになるというの、SEEDらしいと言えばSEEDらしい。もともとメロドラマ基調の珍しいガンダム作品だったからね。花嫁を結婚式から強奪するなんて昼ドラ展開をやったのは後にも先にもSEEDシリーズだけだからな!w
 でも、そこに落ちてくるの、個人的には納得感もあったんですよね。
 テーマ的には宮崎駿の『ハウルの動く城』とも近いと思う。いくらスーパーコーディネーターだからって、世界中の戦争全部たった一人で背負いこもうなんて無茶が過ぎるよね、って。先日『水星の魔女』感想でも書きましたけど、なまじガンダムなんてすごい機体で無双できるから、世界から戦争なくそうなんて大それた理想にも手を伸ばせてしまう気になるけど、しかしそれでもやっぱり、個人が世界の戦争を止めるって身の丈に合わない理想なんで、どこかで破綻するんですよね。
 世界から戦争が無くならないことを「仕方ないこと」として諦めろ、ってわけじゃないのよ。でも、闇雲にデカすぎる目標に飛び込んでって疲弊するのと、自分にできることをやる、というのは違うんで。

 SEED世界の戦争は、お互いへの高まったヘイト故に和解も和睦も和平もへったくれもない、大量破壊兵器ぶっ放しまくりの対立世界です。
 TV版放映当初は、「いや、戦争ってそんなもんじゃないだろ」ってけっこう冷淡に受け取られた面もあったのよね。バルドフェルドが「お互いが滅ぶまで戦争を続けなきゃならんのかね?」みたいに言った時に、「何言ってるんだ、戦争はお互いに停戦合意して条約締結した時が終わりだ、作者は戦争を知らないのか」みたいな批判が出てた。
 ところがその後、長引く「テロとの戦争」とか、アメリカで進む「分断」とか、我々も日々XなどのSNSで見せつけられている、とうてい和睦できそうにない「分断」を見せられるにつけ、当初は鼻で笑えたかもしれないSEEDの世界の描かれ方が、だんだんリアルに感じられるようになってきた。
 憎悪が駆動する対立と戦争をどうしよう、っていうのが、SEEDというガンダムシリーズがずっと取り組んできた課題なんですよね。
 これはなおのこと、一人で背負い込むのはムリです。大国同士の利権目当ての戦争なら、まだどこかで手打ちにして停戦する見込みもあるかも知れない。けど、憎悪感情は人々の間に広く蔓延するもので、変えようったってそう簡単に変わるはずもない。
 そういう世界を、無理やり変えようとすると、デカい政府が人間全部を管理しようみたいな、強権的な、極端な力技で解決するしかない。デスティニープランはその象徴ですよね。
 たった一人で世界中の憎悪感情と戦うなんて出来るはずがない。デスティニープランのようなトップダウン式の強引な解決法も否定する。なら出来ることは何か? と言った時に、とりあえず自分の身の周りで、憎悪に負けない愛を育むことから始めよう、ってのはそんなに不誠実な答えでも無いと思う。

『リコリス・リコイル』で、結局あの世界の不誠実な社会構造、社会問題は解決してないじゃん、ってツッコミ入れる人もいたけどさ、なんか作中に出てきた「世界全体の問題」はラストで解決してめでたしめでたしするのが当然みたいな感覚ありますけど、現実に我々を悩ます社会問題がそんなにスッパリ綺麗に解決したら苦労はないわけでさ。むしろ、そういう問題を無理やりスッパリ解決しようとすると、過激派になるしかないんだわ。そこに釘を差すのも大事だと思うのよね。
 憎悪感情にまみれたこの世界を平和にするために、「愛」を育むことから始めようとか言われても、それで自分が生きてる間に当の問題が解決するのを目にできる期待なんてまったくないですよ。ないけど、それでも解決に向けて、自分の身の丈にあった方法で少しでも漸進していく取り組みの大事さっていうのもあるやん?
 今回の劇場版SEEDにしても、ハッピーエンドにはなったけど、あれであの世界が変わるのか? って言われたら相も変わらず隙あらば大量破壊兵器ぶっ放そうとする人たちはうじゃうじゃいるだろうし、小競り合いも止まらんでしょう。そこが完全に解決したって結末じゃない。
 でも、キラたちの物語に一つの決着はついたと思うのよね。それはそれで大事だよなって。

 私、劇場版『ガンダムW』でさ、五飛が逡巡の果てに、最後に平和を求めるデモの中にアルトロンガンダムを立たせて「これで俺も戦いを捨てられる」って述懐するシーンが大好きなのよ。
 民主主義ってのは、そんなインスタントに社会問題をさっぱり解決できるような政治体制じゃないですよ。社会問題が綺麗さっぱり解決する国に住みたいなら全体主義国家に引っ越すしかないよ。喧々諤々、あちら立てればこちらが立たない状況で、あっちを調整しこっちを調整し、消化不良感を抱えながらもちょっとずつ変わっていくのが民主主義社会じゃないですか。
 めちゃくちゃ隔靴掻痒、もどかしい社会体制だけど、その代わり何万人も死んだりせずに済む。
 このもどかしい感じと付き合うのが、つまり平和ってことなんだよな。


 細かいところ。
 メカニック担当のアルバートさん良かったよね! あの異様に早口な技術者、画面に映る時間は短いのに「あ、この人めっちゃ優秀なんだ」という印象をしっかり残すキャラ立てで素晴らしかった。ほんと、端役にまでキャラ立てが行き届いてて、丁寧に作ってあって良かった。
 イザークとディアッカ来てくれたのもめっちゃテンション上がりました。既存キャラ、なんだかんだ見せ場あってありがたい。ムウ兄貴も相変わらず「なんで生きてるんだアンタ」という芸風健在でな。
 ほんと、2時間くらいの映画の枠に、こんだけ多い登場人物を活かしてシナリオ組んだのお見事だった。
 また、そんだけ詰め込んだからこそ、ストーリー展開の疾走感がすごいことになってましたな。多分、歴代ガンダム映画の中でも展開の疾走感についてはトップクラスなんじゃないかしら。不動のトップオブザトップは逆シャアだろうけど……w


 ……さてと。どうもガンダムについて語り始めると長くなっていけないねw
 そんな感じで、個人的には大満足でした。
 シリアスになり過ぎそうなところで笑える小ネタ挟んだりして重くし過ぎないところとか、現代的なシナリオだよね。その辺も勉強になった。

 いやぁ、最近映画視聴が楽しくて、ありがたいことですね。
 受けた刺激を作品に還元するべく、また頑張りましょう。ではでは。


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近況1/23 祝福を君に

ルナVS全身淫紋 聖光少女が屈服するまで

 先週、こちらを投稿しました。11月の支援者さん向け「陰核淫紋に悶えるルリ」の補完エピソードにあたります。敵の能力の詳細とか、どうやってルナが負けたのかとかがはっきりしない話になってしまってたので、ルナサイドで書いてみたら結局また長くなってしまったヤツですね。18000字以上ございます。
 当初予定になかった、野外露出で強○的に歩かされるみたいなシチュも思い付きで書き加えたりしてたら長くなりました。でもまぁ、思いついてしまったら書くしかないよね?(睡眠不足になりながら

 ノクターンの方で「ヒロインのコスの脱がせ方が毎回同じ」というツッコミをいただいたことがありまして、「言われてみれば確かに……全然思い至らなかったぜ……」となって以来、たまにドレス全部脱がしちゃうシチュとかも意識して混ぜるようになってます。
 まぁ私自身、かつては「半脱ぎこそ至高! コス全部脱がすなんてミルクの入ってないカフェオレみたいなものだ!」みたいなタイプだったんですが、最近「一周回って全裸にも良さを感じる……」みたいになりつつあり。股間が反応するならそのシチュで書けるということなんで、そういうのも混ぜられるようになりましたね。
 変身ヒロインが全裸に剥かれちゃうの、「完全に反撃の余地を潰され無力化されてしまった」的な意味が乗ると良い味が出ると思うの。

 この活動も3年半ほどやっておりますが、その間に私自身、いろいろ性癖が開拓されてる感じがあります。「これはこれでエロいじゃん」みたいな。
 そういうのを取り入れて、幅を広げていきたいですね。もちろん、独りよがりになっては意味ないので、作品化する際に、エロ描写が新発見した良さのプレゼンテーションにもなるような、そんな広げ方が出来たら良いね。


 さて、来月の支援者さん向けを決めるアンケートも設置しております。

https://ci-en.dlsite.com/creator/15436/article/1051602

 2月といえば節分、節分といえば豆、ということでクリ責めシチュだけで4つ、新しく項目を立ててみました。
 とは言っても、実際に作品として仕上がるのはおそらく2月半ばで節分時期は過ぎているので……要するにただ単にクリ責めシチュをやりたかっただけっスw
 というわけで、300円コース以上でご支援いただいている方は、ぜひご参加ください。

 私は現在、『ルリとルナ』第二話のDL販売版作業をやっております。新規書き下ろしのエッチシーンをば。
 第一話のDL版作業も1カ月じゃ終わらなかったので、今回もどうかな……仮にテキストが仕上がったとしても、そこから挿絵の発注・製作という工程が入りますので早くて今年の春、遅ければ梅雨頃までズレ込むかもですね。書き上がって即出しの自転車操業状態であるWEB連載版と違って、やはり準備に時間がかかります。まぁその分、クオリティ上げて出せるよう頑張ります。


 さて、以下余談。
 実は周回遅れでようやく『水星の魔女』を最後まで見終えたので、軽く感想でも書き散らしておこうかと思います。
 放映から時間経ってるし、ネタバレ注意とかそんなに神経質に言わなくてもいいよね? 一応、これから見る予定の人は気を付けてくださいまし。


 全体の印象として、「間が悪かったよなぁ」ってのはありましたな。
 ∀、00、鉄血とかもだけど、「国家同士が大規模な戦場を作ってやる戦争」っていう感覚が平成終盤から令和にかけて薄らいでて、あんまり実感湧かなくなってたんですよな。なのでアニメの中で戦争を描くにしても、テロとか内戦、PMC(民間軍事会社)とか、戦力を持った企業とか、そういうところにクローズアップする流れがずっと来ててさ。鉄血のオルフェンズなんかは主人公たちが会社やってるっていうのが、見てて「マジか、そういう描かれ方になってくるのか」って驚いた部分もあったんですが。
 『水星の魔女』もそういう流れの中で、株式会社ガンダムだったと思うんだよね。
 ところがほら、そこにウクライナ戦争が起こっちゃったんで。
 大国が、領土獲得のために、陣取り合戦みたいな戦争をやるなんて、21世紀に入ってからあんまり目にしなかった、なんかもう20世紀の亡霊みたいな戦争なんですよな。急に時代背景がそういう感じになっちゃったんで、『水星の魔女』の空気感とズレちゃった感じはあったのかなと思いました。
 そういうのって、案外作品を読み解く感覚にも影響するんですよね。本作の公開があと2年早かったら、もうちょっと作中世界への没入感は高まってたんじゃないかと思う。


 一方、現代の問題としてヴィヴィッドなのは、やっぱり差別の問題なんですよな。21世紀になってからのガンダムは、この差別問題と向き合うというのがテーマ的に避けられなくなりつつある。
 初代やZにも、宇宙と地球の格差問題っていうのはあって(とはいえ、UCでは地球にいるのがエリートで宇宙移民したスペースノイドの方が苦しかったのに、本作では地球の方が貧しくて宇宙が優越してるという逆転が起こってるのは面白いですね)、たとえばブラン・ブルタークがスペースノイドを「宇宙人」と呼ぶような描写はあるんですけど、差別問題みたいなのにはあんまり深入りして来なかった。
 それが一気に表面化したのがSEEDで、ナチュラルとコーディネーターの感情的反目は、単に社会構造的な問題というのを超えて、相手側を大量破壊兵器で殲滅しちゃおうってレベルで高まってたんですよな。SEED放映当時はその過激な描写がリアリティ無いって言われがちだったんだけど、トランプ大統領就任以降のアメリカの「分断」具合とかを見せられた現在の視点からだと、あの描写も違和感あんまり無くなりつつあって、なんかSEEDに時代が追いついて来たな感はありましたな(このタイミングでSEED劇場版が来たの、まるで時代が追いつくのを待ってたみたいだなぁと思ったりして)。
 富野監督も「こりゃあ一度差別問題をちゃんとやっとかなアカン」と思ったのかどうか、Gレコで「クンタラ」という差別階級を出してメインテーマにしたり。すっかりこの差別の問題はガンダムシリーズのメインテーマの一つになった感があります。

 『水星の魔女』は特に、このテーマを意欲的な方法であぶり出そうとした感触がありましたね。物語の序盤で、我々が日常で遭遇してもおかしくないような、つまらないミクロレベルの「いじめ」の原因として描かれてたアーシアンとスペーシアンの感情的対立・差別問題が、第二期に入って学園崩壊の大惨事の原因となったノレア・デュノクの暴走と直接的につながっているわけです。
 戦争の原因になるような差別って一部の過激派だけの話じゃなくて、私たちが日常生活で抱くちょっとした「蔑み」「排他的感情」の延長線上、地続きにあるんだぜ、っていうことを描いたんだなぁと私は解釈しました。むしろ、本作が学園を舞台にしたガンダムであることの一番の意図は、この「地続き感」を出すためなんじゃないかとさえ思ってます。お話の規模の接続として、学園と武力衝突ってやっぱりちょっとアンバランスだし、そういうテーマ的な狙いを透かして見ないと、なんでこういう設定で物語を組んだのか不分明になる気がしましたし。
 20話くらいまでの『水星の魔女』は、SEED以降のガンダムシリーズが積み上げてきたテーマをより深めるという意味で、けっこう面白い試みをしてたように感じますね。


 そしてもう一つ。非富野ガンダムで、始めてガンダムに関わる監督や作者が、巨大になり過ぎてしまったガンダムブランドをどう飲み下すか、みたいな「ガンダムの脱構築」みたいな側面も多分にあった気がしますね……w でも、実はそこに一番感動したっていうところもあって。

 本作で私が一番印象に残ったの、20話で、両手をすり傷だらけにして瓦礫の下の生徒を助けようとしてたスレッタだったんです。
 エアリアルとエリクトに決別されて、ガンダムに乗れないただの1生徒の立場に戻ってしまったという、ガンダム主人公としてはまったく良いとこ無しな状態なんだけど、そんな中で改めて、自分の身一つで出来ることをやろうとするところに、逆にすごい主人公性を感じたんですよね。スレッタはその後も、避難した生徒たちに毛布配ったりトマト配ったり、「今の自分にできること」を探して実行していくキャラになってて。エアリアルに乗って強大な力を行使してた前半の彼女より、ずっと主体的な主人公になれてた気がする。

 誰の解釈だったかな。日本のロボットアニメにおいて、ロボットは主人公の身体の拡張だって話をしてて。
 普通、ロボットという言葉は原義的には自律的に動く機械労働力のことなんだけど、日本でだけ、人が乗り込む巨大人型兵器を「ロボット」と呼ぶようになった。それも、親の世代から受け継いだ、主人公の力を拡大する「身体の延長」としての巨大な機械であると。
 その強大な力は確かに、主人公を主人公たらしめる力なんだけど。けどさ、逆に強大な力を行使できてしまうから、見失ってしまうこともあると思うんだよね。
 それこそ、00のソレスタル・ビーイングみたいに、ガンダムという破格の強大な力があるからこそ「世界から戦争を根絶する」みたいな途方もない活動に手を伸ばすこともできるわけだよね。それは確かに凄いことでもあるけど、一面で怖いことでもある。自分という個人は世界数十億人の中のたった一人に過ぎないのに、まるで世界全体を背負えるかのような巨大なものと錯覚して、自分を肥大化させてしまう可能性もあるわけだよね。
 テレビで放映された戦争を見て、心を痛めて、自分の手でそれを解決できれば良いのにと願う。その願いは優しいけれど、等身大の自分にできる事から大きくはみ出た願いを抱いてしまってもいる。
『デスノート』の夜神月みたいにさ、世界を自分が思う理想の姿にしようっていうのは驕りでもあるわけでな。最近の作品だと『リコリス・リコイル』の真島もそういうヤツで、千束にたしなめられてたわけなんだけど(彼女の「世界を好みの形に変えてる間に、おじいさんになっちゃうぞ」って言い回し、すっごい好き)。

 序盤のスレッタは、確かにめちゃくちゃ強いんだけど、でも主体性は感じなかったよね。プロスペラという親から与えてもらった力と意図から逃れられない。ガンダムエアリアルが強ければ強いほど、スレッタという主人公が主体性を発揮する機会がやってこない。
 いちどガンダムと決別して、等身大の、身一つの自分っていう立場になったことで、ようやくスレッタが自分の頭で考えて動き始めた、そこが良かったと思うんですよな。手を傷だらけにして、人を救うために瓦礫の山をどかそうとしてた。ガンダムという巨大な力があれば瓦礫なんかもっと簡単にどかせたかも知れない、けどそうじゃないんだよな。自分の手で、痛みをこらえて、ままならない非力さで現実に向き合ってさ、そういう形でしか手に入らない世界との向き合い方っていうのがあると思うの。

 それでまた、そういうスレッタの姿が、「明らかに巨大すぎるガンダムブランドで作品づくりをすることになった、非冨野ガンダム作品の監督や製作者たち」ともちょっと被る気がするw ガンダムシリーズ新作っていうだけで、注目されるのも話題になるのも確約されてるようなものだしな。等身大で一からオリジナル作品をやってたら、そんなレベルに上がるまでにどれほど苦労することか!w
 めちゃ強のエアリアルに、エリクトのサポートのお陰でノーリスクで乗り続けられたスレッタが、一度ガンダムを降りる展開って、そういう「巨大すぎるガンダムの力を一回キャンセルして、自分たちの物語として仕切りなおす」みたいな読み方もできちゃいそうだよなーとか思ったり。実際、復帰後のスレッタが乗るキャリバーンには機体名に「ガンダム」という名前がついてないわけだしな。

 
 スレッタが親の呪縛を破るのと、ガンダムシリーズがガンダムの呪縛を破ることをオーバーラップさせようとしてた、そんな部分はあるのかなーと思って見てました。

 Twitterで、スーパーの食品担当の人がスナック菓子エアリアルのトマト味を大量に仕入れたら、ちょうどそのタイミングで第一期ラストの手の平バーンのシーンが来てしまって「仕入れるタイミングを間違えた……」って言ってるのが回ってきて爆笑してしまったというのがありましたがw
 ∀ガンダムの序盤にもあったよね、ディアナ暗殺未遂があって、容疑者が逃げるのをとっさにロランが∀で捕まえようとするんだけど逃げられちゃって。ハリ―に「わざと逃がしたのか?」って疑われて「潰しちゃったらまずいでしょ」みたいに言うの。
 例のシーンを直接言うとグロすぎるので、隠語で「トマト潰れたシーン」って言ってる人たちもいたけどさ。示唆的だよね。人間もトマトも同じで、潰すのは簡単なんだ。
 一方で、生きているものを、潰さずに育てるのって、なんて難しいんだろうって。

 ガンダムはどんなにカッコよくデザインされていても兵器なので、壊すことに特化している。
 ガンダムがシリーズとして続く限り、壊すことが宿命づけられている。
 でも本当はそうじゃなくて、命を未来につなぐためにガンダムを使いたいなって、そういう模索はされてきたんですよな。初代ガンダムで脱出に使われたコアファイター、宇宙に投げ出されたセシリーを探すために使われたF91、汚れたシーツを洗濯するために使われた∀ガンダム。∀は家畜の牛を運搬するとかにも使われたりしてて、そういう願いが特に託されたガンダムでしたよね。
 ガンダムが医療技術に転用されていくっていうのは、ロボットアクション活劇として見れば地味だけど、そういう「ガンダムに託された願い」を展開させた、とても美しい帰着点の一つだったと思います。
 ガンダムにかけられた呪縛を解く、意欲的な結末だったかなと。


 非冨野ガンダムってさ、シリーズの一つとして「ガンダムらしさ」を出すことと、過去作とかぶらないよう毛色を変えて「ガンダムのセオリーを外す」ことを両方求められる、「ガンダムっぽくないことをしつつガンダム作品にする」っていう禅問答みたいな難問に取り組まされる宿命を負ってるわけですけれどもw
 めちゃくちゃプレッシャーあるだろうし大変なんだろうけど、でもその重圧と難問に立ち向かって悪戦苦闘する中から、新しい試みも出て来るんで、個人的にはこれからも応援したいですね。
 うん、楽しかったです。遅くなっちゃったけど、見れて良かったよ。


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【締め切りました】支援者限定アンケート2月 豆スペシャル!

毎月恒例の、来月の限定読み切り小説の内容を決める300円コース支援者さん向けアンケートです。



票の多かったものを採用します。

300円以上ご支援の方はこの機会にぜひご参加ください。



2月といえば節分、節分といえば豆、ということで

今回はクリトリス責め特化のシチュを4つ新規にご用意しました。

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ルナVS全身淫紋 聖光少女が屈服するまで

 pixiv、およびノクターンノベルズで連載したシリーズ
『ルリとルナ:ふたり魔法少女』

https://www.pixiv.net/novel/series/1350671
https://xmypage.syosetu.com/x2763bq/

こちらのヒロインたちの読み切り敗北エッチシーンが読めるシリーズです。

ADVエロゲーの回想シーンのように、前後のストーリー少なめで手軽にエッチシーンだけ読めるようにというコンセプトで毎月投稿しています。

 今回は、11月公開した「陰核淫紋に悶えるルリ」の補完エピソードとなります。

【 100円コース 】プラン以上限定 月額:100円

プランに加入すると、この限定特典に加え、今月の限定特典も閲覧できます 有料プラン退会後、
閲覧できなくなる特典が
あります

月額:100円

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近況1/16 しゅうるれありすむ

 今月の支援者さん向けSSですが、ちょっと遅れ気味につき、公開が1/18くらいまで後ろ倒しになりそうです。もう少々お待ちください。
 毎年、1月はちょっと後ろ倒しになりがちっスね。まぁお正月ゆっくり期間あるからなんだけど。
 年末年始も容赦なくお仕事が入ったりしてあんまり年越しした実感は無いんだけど、それでもやっぱり年が切り替わったことでスタート切りなおす感じがあるのかもですねぇ。もう2024年も始まって世間は動いてるんだし、エンジン温めていかないといかんですな。


 とりあえず近日中に支援者さん向けSSを出す予定で頑張ります。
 で、その後、1月下旬の予定ですけれども。

 年初に立てた目標(年内にDL販売版を2本以上作成)というのを元に、スケジュール逆算してみたところ、FGO二次創作完結後に取り掛かったのでは最悪間に合わないっぽいというのが分かってきました。
 というわけで、今月後半はルリルナ第二話電子版の作業期間に充てることとさせていただきます。エル・アマルナの続きはもうちょっとお待ちください。

 というわけで年初からバタバタしてて申し訳ないですが、キリキリ執筆がんばりますー。
 で、以下余談。


 昨年末公開したFGOエル・アマルナのアナちゃん陵○回ですけれども。
 敵役として、頭の部分が巨大な花になってる使い魔というのを出しました。
 実はあれにもインスピレーション元がありまして、サルバドール・ダリの絵画「薔薇の頭の女」だったりします。

https://motanmozo.hatenablog.com/entry/2014/11/27/071934


 ダリの絵、好きなんですよね。
 中学か高校くらいの時に、テレビのCMでたまたま映って「なんじゃこれ!?」ってなって。それから、たまたま東京でダリ展やってた時に見に行って、すっかり魅了されてしまった時期がありました。まだお小遣いも少なかった頃に、会場で図録まで買ってね。私が画集を複数冊所持している唯一の画家さんです。

 その後、シュルレアリスム全般にも興味が行って、アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』とか無駄に読んだりしてました。マグリットはじめ、他の画家さんの絵とかも見たんだけど、やっぱり個人的にダリの絵に対する愛着が一番深いです。

 まぁやっぱ、単純に変なモノが好きなんだろうねw ダリの絵に出てくるヘンチクリンな人物や生き物、あの異様に足の長い象とか、やたら引き出しがいっぱいついてる人物とか、ああいうヘンテコ感が私の感性に響くんだと思います。
 妖怪が好き、とかと完全に同じカテゴリーの箱に入ってる感じw

 ダリ、あの人を喰ったパフォーマーなところもすっげぇ好きなんよね。
 ご興味のある方は、Google画像検索で「サルバドール・ダリ ヒゲ」で検索してみてください。ダリが自分のちょび髭の形を変えて遊んでる写真が大量に出て来ますのでw こいつ髭で遊んでる写真何枚撮ってるんだよ……w


 そんなわけで、なんやかや、過去に見聞きしたことをかき集めて必死にエロネタに流用しつつこのアカウントを運営しております。
 今年も、何でもかんでも貪欲に取り込んでエロに仕立て上げていきますよ、っと。
 ではでは。


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