近況1/30 また戦争がしたいのか、あんたたちは!?

 『ルリとルナ第二話』DL販売版の書き下ろし分を粛々と進めています。
 バッドエンドルートに新規エッチシーンをひとつ追加したり、あちこち加筆したり。まだ途中なので最終的にどうなるか分かりませんが、大体15000~20000字くらい分量が増える感じになるかなと思います。第一話と同じくらいの加筆ですかね。
 まぁもっとも、特に本編は第一話の時ほど大改築工事をしなくても良さそうなので、もうちょっとスムーズに進められるんじゃないかと思ってます。もろもろの準備込みで、今年前半に出せれば良いなという感じですが。まぁ、順調にいけば。

 で、本日は『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』見て来ましたので、その感想でも。
 ネタバレ全開部分はブランクの下にしますが……とりあえず、私はめっちゃ楽しんだ。SEEDシリーズ見て何らか心に引っかかってたところのある人は、ぜひ見に行った方が良いと思う。思いのたけ全部吐き出して、やりたいこと全部やって、ファンサービスもてんこ盛りでやって、とにかく完全燃焼した映画でした。見終わってこんなにお腹いっぱいな気分になったの久しぶりw
 そんなわけで以下、またぐだぐだと長文を書き散らすので、興味ない方とネタバレ見たくない方はまた来週。ではでは。









 思ってた以上に、かつて見たSEEDの味がして、「うわ、そうだったこんな感じだった、懐かしいなぁ」ってなったんスよ。メロドラマ色強めの展開、隙あらば大量破壊兵器ぶっ放したい人たちで満ちているサツバツ世界、などなど。
 そういうSEEDらしい味を20年経ってもブレずに出してくるの、なるほどそう来たか……と思って見てたら、進むごとにそのSEED味が濃くなっていくんだよねw
 懐かしい味だなぁって言いながら具材山盛りの鍋食ってたら、そこにSEED味の原液をさらにドバドバ注がれ続けて、「え、あれ、これさらに味濃くなるんスか? え、ちょ、待って」ってなったw
 まぁでも、変に一般向け意識して薄められるより、もうとことん持ち味を煮詰めて煮詰めて凝縮して突き抜けてくれたんで、逆に「ここまでやられたらむしろ清々しいな」って感じでした。

 とりあえず、序盤のダンスパーティー前後の場面で、爆速で人間関係がこじれていく手際、もはや職人芸だよね、みたいな感じで笑ってしまった。あの短い尺の中で、後半のバトル盛り上げる対立軸と関係性(既存キャラと新キャラの)を突貫工事で組み上げていく手際、すごかったっスね。この辺、全部メロドラマの文脈で組み立てるのがSEED流なんだよねw

 序盤でシンたちと組んでたアグネス、下敷きにしてたのは『逆襲のシャア』のクェスなんでしょうね。アムロに言い寄って邪険にされたからシャアについていったクェスと、キラに言い寄って邪険にされたからファウンデーションの隊長に乗り換えるアグネス。でもラストでルナマリアと対決するのはZのレコアとエマだったな。
 けっこうZとか逆シャアとかのオマージュ多かった気がしますね。
 あとそうそう、映画冒頭で、武力衝突鎮圧のために、宇宙のミレニアムから発艦したキラたちの機体が航空機形態に変形して大気圏突入、そのまま現地で作戦行動に入るの、あれ熱かったですね。あれこそ本来のZガンダムの運用法なんだよな。宇宙から直接、大気圏突入して電撃的に作戦の急所に降下してそのまま作戦行動に入る、というのがZガンダムのウェイブライダーが当初想定していた運用方法だったとどこかで読んだ記憶がある。Z劇中ではジャブロー攻略戦とかで使われてたけど。今回のキラたちの運用法、少数精鋭の鎮圧部隊が短時間で事態に即応するために宇宙から降下する、というのは、おそらく大気圏突入機能を持ったウェイブライダーになれる可変MSの一番理想的な運用法なんだと思う。コンパスという組織の目的と合致してて、メカ考察的にも熱かった。SEEDで見せてもらえるとは、って感じでした(感想内容が重度のガンオタすぎる

 で、ストーリー感想に戻りまして。
 シン・アスカきゅん可愛すぎたよね!!!w
 Destiny時代の鬱屈から抜けだしたら、なんですか、あんなに可愛くなるんですか彼。ズルくない?w パーティーでモリモリご飯食べてるところも、潜入員のふりしてルナマリア脅して逆にボコされるのも、感極まったルナマリアにビンタ張られまくるところも、とにかくあらゆるシーンで可愛すぎた。
 キラとアスランがケンカしてるところに無駄に割って入って、なぜかパンチ入れられてるところ、笑いすぎて呼吸困難になってたw なんにでも首突っ込んで、そのたび痛い目にあってる残念な子っぷりで、一気に愛着湧いてしまった。
 で、そこから終盤のあの大活躍でしょ。Destinyで割を食ったのを取り返すかのように無双してくれたの良かったよなー。しかも、愛機デスティニーに乗った途端に戦力バランス逆転するの、もう最高のファンサービスで良かったよなぁ。あそこは素直に気持ち良かったです。
 劇伴も良いよねぇ、デスティニーでシンの見せ場になった途端にSEED Destinyの曲流すのズルい。今回、ここぞというところでちゃんと「分かってる」曲流してくれたのも、最高に気持ちよく見れた要因でしたね。20年前のSEED2作品を見た人がちゃんと報われる盛り上げ方が随所にあって、素朴に「この作品に付き合ってきた自分」に対して報酬が返って来たような気分になれたんだよな。


 で、ですよ。アスランさんですよ。何なんですかあの人w
 主人公が最大のピンチに陥ったところに、かつてライバルでもあった親友が助けに駆け付けるって、最高に盛り上がって最高にカッコ良いシーンなのに、乗ってる機体がアレなせいで面白さが上回るのおかしいでしょw お腹よじれるかと思ったよ。
 ちょっとあのズゴックはね、伝説ですね。私の中ではハマーン様が颯爽とアッガイに乗って現われたのに比肩するレベルの面白レジェンドだった。
 しかもポッと出のネタじゃなくて、なぜかあの機体で後半まで活躍しまくるのも凄いし、隙を生じぬ二段構えなのもズルい。もういや、何なのあの人……w
 しかも、凹みまくってメンタル面倒くさいことになってるキラに直球ストレートで喝入れられるのも良かった。
 劇場版『まどか☆マギカ 叛逆の物語』で「絶好調のマミさんはすごいぞ」って言われて「これが……絶好調のマミさんか……」となったりしましたが、今作のアスランさんも「これが……絶好調のアスランさんか……(何だこの人」ってなりました。


 なんだろな、今回の劇場版を見て、ようやくラクスの、超然とした顔とは違う、普通の女の子らしい側面が見えて、それに合わせてキラも「最強のコーディネーター」から一転して「アコードから見たら出来損ない」みたいな相対化を食らったことで人間らしい側面が目に入ってきて。ようやくこの2人を生身の人間として見れた気がしましたね。そこも良いところだった。
 まぁ、いきなり全身ぴっちりエロ戦闘スーツで出撃するところまでは読めませんでしたが……w

 Destinyの時、バルドフェルドが単機で死にそうになりながら敵に応戦してるのに、キラとラクスがイチャイチャしてるシーンがあって思いっきりツッコミ入れてしまったことがあったけどw 今回も戦場でイチャイチャしておったね。けど今回に関しては、イチャイチャするほど敵が煽られてムッキーってなる局面だったので、戦術的にも正しいw

 愛ですよ。愛。そこが落としどころになるというの、SEEDらしいと言えばSEEDらしい。もともとメロドラマ基調の珍しいガンダム作品だったからね。花嫁を結婚式から強奪するなんて昼ドラ展開をやったのは後にも先にもSEEDシリーズだけだからな!w
 でも、そこに落ちてくるの、個人的には納得感もあったんですよね。
 テーマ的には宮崎駿の『ハウルの動く城』とも近いと思う。いくらスーパーコーディネーターだからって、世界中の戦争全部たった一人で背負いこもうなんて無茶が過ぎるよね、って。先日『水星の魔女』感想でも書きましたけど、なまじガンダムなんてすごい機体で無双できるから、世界から戦争なくそうなんて大それた理想にも手を伸ばせてしまう気になるけど、しかしそれでもやっぱり、個人が世界の戦争を止めるって身の丈に合わない理想なんで、どこかで破綻するんですよね。
 世界から戦争が無くならないことを「仕方ないこと」として諦めろ、ってわけじゃないのよ。でも、闇雲にデカすぎる目標に飛び込んでって疲弊するのと、自分にできることをやる、というのは違うんで。

 SEED世界の戦争は、お互いへの高まったヘイト故に和解も和睦も和平もへったくれもない、大量破壊兵器ぶっ放しまくりの対立世界です。
 TV版放映当初は、「いや、戦争ってそんなもんじゃないだろ」ってけっこう冷淡に受け取られた面もあったのよね。バルドフェルドが「お互いが滅ぶまで戦争を続けなきゃならんのかね?」みたいに言った時に、「何言ってるんだ、戦争はお互いに停戦合意して条約締結した時が終わりだ、作者は戦争を知らないのか」みたいな批判が出てた。
 ところがその後、長引く「テロとの戦争」とか、アメリカで進む「分断」とか、我々も日々XなどのSNSで見せつけられている、とうてい和睦できそうにない「分断」を見せられるにつけ、当初は鼻で笑えたかもしれないSEEDの世界の描かれ方が、だんだんリアルに感じられるようになってきた。
 憎悪が駆動する対立と戦争をどうしよう、っていうのが、SEEDというガンダムシリーズがずっと取り組んできた課題なんですよね。
 これはなおのこと、一人で背負い込むのはムリです。大国同士の利権目当ての戦争なら、まだどこかで手打ちにして停戦する見込みもあるかも知れない。けど、憎悪感情は人々の間に広く蔓延するもので、変えようったってそう簡単に変わるはずもない。
 そういう世界を、無理やり変えようとすると、デカい政府が人間全部を管理しようみたいな、強権的な、極端な力技で解決するしかない。デスティニープランはその象徴ですよね。
 たった一人で世界中の憎悪感情と戦うなんて出来るはずがない。デスティニープランのようなトップダウン式の強引な解決法も否定する。なら出来ることは何か? と言った時に、とりあえず自分の身の周りで、憎悪に負けない愛を育むことから始めよう、ってのはそんなに不誠実な答えでも無いと思う。

『リコリス・リコイル』で、結局あの世界の不誠実な社会構造、社会問題は解決してないじゃん、ってツッコミ入れる人もいたけどさ、なんか作中に出てきた「世界全体の問題」はラストで解決してめでたしめでたしするのが当然みたいな感覚ありますけど、現実に我々を悩ます社会問題がそんなにスッパリ綺麗に解決したら苦労はないわけでさ。むしろ、そういう問題を無理やりスッパリ解決しようとすると、過激派になるしかないんだわ。そこに釘を差すのも大事だと思うのよね。
 憎悪感情にまみれたこの世界を平和にするために、「愛」を育むことから始めようとか言われても、それで自分が生きてる間に当の問題が解決するのを目にできる期待なんてまったくないですよ。ないけど、それでも解決に向けて、自分の身の丈にあった方法で少しでも漸進していく取り組みの大事さっていうのもあるやん?
 今回の劇場版SEEDにしても、ハッピーエンドにはなったけど、あれであの世界が変わるのか? って言われたら相も変わらず隙あらば大量破壊兵器ぶっ放そうとする人たちはうじゃうじゃいるだろうし、小競り合いも止まらんでしょう。そこが完全に解決したって結末じゃない。
 でも、キラたちの物語に一つの決着はついたと思うのよね。それはそれで大事だよなって。

 私、劇場版『ガンダムW』でさ、五飛が逡巡の果てに、最後に平和を求めるデモの中にアルトロンガンダムを立たせて「これで俺も戦いを捨てられる」って述懐するシーンが大好きなのよ。
 民主主義ってのは、そんなインスタントに社会問題をさっぱり解決できるような政治体制じゃないですよ。社会問題が綺麗さっぱり解決する国に住みたいなら全体主義国家に引っ越すしかないよ。喧々諤々、あちら立てればこちらが立たない状況で、あっちを調整しこっちを調整し、消化不良感を抱えながらもちょっとずつ変わっていくのが民主主義社会じゃないですか。
 めちゃくちゃ隔靴掻痒、もどかしい社会体制だけど、その代わり何万人も死んだりせずに済む。
 このもどかしい感じと付き合うのが、つまり平和ってことなんだよな。


 細かいところ。
 メカニック担当のアルバートさん良かったよね! あの異様に早口な技術者、画面に映る時間は短いのに「あ、この人めっちゃ優秀なんだ」という印象をしっかり残すキャラ立てで素晴らしかった。ほんと、端役にまでキャラ立てが行き届いてて、丁寧に作ってあって良かった。
 イザークとディアッカ来てくれたのもめっちゃテンション上がりました。既存キャラ、なんだかんだ見せ場あってありがたい。ムウ兄貴も相変わらず「なんで生きてるんだアンタ」という芸風健在でな。
 ほんと、2時間くらいの映画の枠に、こんだけ多い登場人物を活かしてシナリオ組んだのお見事だった。
 また、そんだけ詰め込んだからこそ、ストーリー展開の疾走感がすごいことになってましたな。多分、歴代ガンダム映画の中でも展開の疾走感についてはトップクラスなんじゃないかしら。不動のトップオブザトップは逆シャアだろうけど……w


 ……さてと。どうもガンダムについて語り始めると長くなっていけないねw
 そんな感じで、個人的には大満足でした。
 シリアスになり過ぎそうなところで笑える小ネタ挟んだりして重くし過ぎないところとか、現代的なシナリオだよね。その辺も勉強になった。

 いやぁ、最近映画視聴が楽しくて、ありがたいことですね。
 受けた刺激を作品に還元するべく、また頑張りましょう。ではでは。


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