仲見斬音 2023/12/28 18:25

歪な関係 ▼ep.fragment_√Z


――買い物から帰って来た"彼女"が、
少し疲れたのだろう、ベッドに横になってうとうとしていた。
とても無防備で、まだあどけなさの残る彼女のその姿に、
微笑ましさとか、庇護欲とかの感情と一緒に、
…あぁ、またどうしようもない感情を抱く。


「…?」

そっと近付くと彼女はこちらに気付き見上げて来る。
俺が今から何をしたいかなんて、何も気付いて無いかの様な無垢な瞳。

細くて白い首筋に巻かれたチョーカーに視線を落とす。
呼吸に合わせて僅かに上下するそれは微かに煌めく。


「?!」

俺は何も言わず、そしておもむろに彼女にのしかかると、
その細い首に手を掛ける。

彼女は小さく困惑と驚愕の声を上げるが、
抵抗の素振りは見せない。


「絞めていい?」
「……、ん……」

チョーカーを押さえながら訊ねると、
明確な同意の言葉こそ発しなかったものの、彼女はただ、身を任せて来た。

抵抗も否定もせず、弱々しく手を握り込む彼女の鼓動が、
ドキドキと少し早くなるのが掴んだ首筋から伝わる。


「んっ…、…~~っ」

そのまま両手を使って彼女の首を絞める。
やはり抵抗はしないし、多少身を捩りはしても逃げようともしない。

受け入れているのか、諦めているのか、
その本心までは分からないけど。


「…は…、う…」

ゆっくり少しずつ力を入れていく。
このまま折れてしまうんじゃ無いかという様な華奢な首を、
折れてしまわない様に、
そして呼吸を完全には止めてしまわない程度に、
強く、少しだけ優しく。


「…まだ息できる?」
「…ぅ…、はい…」

勿論苦しそうではあるがまだ大丈夫そうだ。
律儀に答えてくれるその小さな掠れた声が俺の加虐心を余計に煽るが、
別に殺したい訳では無い、とそこは冷静に力を抑える。
彼女もそこは理解しているからこそ、
こうやって無抵抗に身を任せてくれている訳だけど。


そのまま暫く絞め続ける。
一応辛うじて呼吸は出来る程度とは言え、酸欠に近い状態の彼女は
少しずつ脱力していく。

2人だけの静かな部屋の中で、か細く浅い呼吸音だけが聴こえる。


「う…」

彼女は縋る様な瞳で俺を見つめる。
彼女の首から伝わる鼓動が大きくなる。
彼女は消え入りそうな呻き声を上げる。

そのどれもが、俺の加虐欲を、支配欲を、征服欲を、満たして行く。


「ん…、っ……」

もう少しだけ力を入れる。多分コレでギリギリ。
これ以上いってしまうと、きっと彼女は……

…今、彼女の命は俺が握っている。
彼女は抵抗しない。(そもそも今そんな力は残って無いと思うが)


……彼女は、昔全てを諦めた事がある。
だからこそ、全てを放棄して身を委ねる事しか出来ないし、
俺が彼女を殺さないと信用している以上に、
俺にこのまま殺されても仕方が無いと甘受している。
そんな小さくて、いじらしくて、可哀想な彼女に、俺は……


「…っあ、は、う…」

――ぱ、と手を離す。
突然解放された気道に彼女は小さな声で呻き、咳き込む。

白い首に赤い痕が残っている。
すぐに消えるとは思うが、それでも少しだけ優越感みたいなものを覚える。


「…ぁ…」

俺は何も言わずに彼女を見下ろす。

彼女は息を整えようとしつつ、どうにか俺を見上げるその瞳は切なげで、
そしてどこか物足りなさすらある様な、そんな面持ちで。
小さく、小さく、声を上げる。


「…もう、大丈夫です…か…?」

――…彼女自身もまだ気付いて無い様な、
彼女の中の微かな、それでも確かな被虐心。

そんな彼女だからこそ俺はまた手を掛けるし、
彼女も俺にただ身を任せる。

【 別冊付録 】プラン以上限定 支援額:200円

プランに加入すると、この限定特典に加え、今月の限定特典も閲覧できます 有料プラン退会後、
閲覧できなくなる特典が
あります

バックナンバー購入で閲覧したい方はこちら
バックナンバーとは?

月額:200円

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

最新の記事

月別アーカイブ

記事を検索