【+PLUS】同じ時間で多くの収益を得るハウツー!100点の作品目指して無駄な修正してない?#22

(この記事は、同人音声.comと同時公開・Ci-en無料公開コンテンツです)

そもそも、世の中には100点満点の完成度の作品しかないって本当?

思い出すのです・・・作画崩壊した数々のアニメを......技術が進化した最新ゲームでも紛れるバグを......国民的有名漫画のあの真っ白背景を......

それを防ぐために、映画は完成前試写会を行って最終調整を行ったり、ゲームのバグ発見テスターの専門会社に依頼をしたりしていますよね......

それでも修正すべきところに誰も気づけなかったり、そもそも納期が間に合わず突貫工事で公開されてしまうのは、誰もが知る一流のコンテンツだったとしても現実には起こっていることです。
ゲームは特にアップデート可能になったことから、後からパッチを当てて治すというのが大前提にもなってきました。

完全にアウトの領域では、メルカリの情報流出や、このご時世で一番動いてなければいけないコロナ対策アプリがAndroidで全く機能していなかったことも記憶に新しいと思います。

そして100%の完成度・・・その100%って、全人類共通で同じなわけないと思いませんか?
それまで見てきたコンテンツも違えば好みも違う、こういった異なる経験や前提があれば、何を100%とするかの評価軸も違って当然です

そんななか、世の中に流通し、売上を得ている商品に共通することを考察してみました。
それは、「売上に大きく影響するレベルのミスを残さない」という考えてみれば至極あたりまえのことではないでしょうか?

仕事やクリエイター活動における落とし穴

音声作品に限らず、普段のにおいても「すべてのミスを完璧に潰さなくちゃ!」と人はよく思いがちな傾向がありますよね。
例えば10時間の予定のうち3時間で終わったら、7時間かけてミスを徹底的に見つけようとしたり細かな修正をやることって、経験ありませんか?
本当に7時間をかけた分、実績や売上、販売、クオリティーは上がることってあるのでしょうか?

そもそも、100%の定義が人それぞれによって違うこの世界で、ミスを完璧になくす、100%を追求しようとすることは論理的に考えても不可能ではないでしょうか?

3時間で終わって2時間は売上に影響するレベルの致命的なミスを発見した後、残りの5時間を使ってもう1作をつくったら、利益は2倍になるのではないでしょうか?
会計上の言葉ですが、回転率2倍という意味合いになりますよね。

「人生一回切りと同じく、音声作品も人生1回きり!この仕事も人生1回きりだから無限に時間とお金をかける!」
という場合には、このお話はあてはまりません。

そうでない方にとっての、制作や仕事の目的って何でしょうか?

「多くの人に自分が携わったモノで楽しんでもらい、継続的に行うための収益を得る」
ということが多くのクリエイターにとっての共通する目的ではないでしょうか。
実際に当たり外れは出してみないとわからない世界ですから、継続的に数を複数出しながら、自分の経験値もあげていき、いつしか大ヒットを出したい・・・この流れに共感していただける人の方が、割合としては大多数ではないでしょうか。

改めて、時間を無限にかけて100点を目指すのか?

スパイダーマンの映画でさえ、物理の法則に反した方向に髪がなびいたり、アナ雪でさえ、エルサの髪の毛が肩を貫通してるCG上のミスがあったりするわけです。

あれだけの資本をかけ、膨大な人数がチェックしたはずの作品でさえ、こういったミスが存在しています。
ですが、これらのミスは作品全体の総評や売上に影響する問題ではないのです。
なぜなら、ほとんどの視聴者はそんなことに気付かないどころか、気付いたところで作品の体験価値を損なうほどには全く気にならないからです。

こういったことは後から修正されることは稀です。
もちろん、こんな微々たる部分を再編集するには莫大な時間とコストがかかるという現実的な問題もあるでしょう。
これを修正したらかけたコスト以上に売上が上がる見込みがあるなら修正するでしょうが、ROI(訳:投資対効果)が得られないものに限られた資本を投下することは、財務的に優れた会社であるほどやらないというのは現実だと思います。

クリエイターも商品開発部も人間も、そのときにはもう新しい仕事を抱えていることがほとんどで、時間は限られています。
アーティスティックな業界といえど、投資以上のお金を稼がなければ継続することはできない。
そんな中、売上向上に直結しない、細かな修正に対応していたらキリがなくなってしまい、すぐにお金は底をついてしまうはずです。

作品としてのクオリティーを上げたい気持ちは、人間ですからもちろんあるでしょう。
ただし、ある程度のところで現実との兼ね合いで見切りをつける必要が出てくるものです。

※ブルーレイ版でアニメ作画が修正されて圧倒的美画質になるのはよくあることですが、それこそがユーザーがBD版にお金を払って買う価値の1つで、売上に直結するからです。テレビ放映後のdアニメストア配信版に修正は加えないですよね?

音声作品も仕事も人生1度きりではありません。継続的に制作をし、経験値を得続け、いつしか大ヒット作を出すためにも大事なのは
「売上の現象にめちゃくちゃ影響することが確定してるレベルの、致命的なミスだけを修正すること」
だと私自身、これまで意味不明なほど変なこだわりをもってやってきた無駄時間から反省する思いです。

以下に、私の音声作品の辛い経験から、意味なく時間をかけすぎて、1円にも繋がらなかったことをご紹介しますね。
ぜひ、みなさんは同じ道を辿らないでください!

こんなことしようとしてない?

例えは、音声がメインコンテンツとなる、音声作品上の話です。

・徹底的にリップノイズを消す
・徹底的にホワイトノイズを消す
・徹底的にイントネーションを正そうとする(致命的なレベルで不自然ではないのに)
・徹底的に読みを台本通りにしようとする("擦る"をスル・コスルのいずれかだけにする、など)
・ロゴ入れ作業に膨大な時間をかける(それこそ無くてもそこまで問題ではないのに)
・イラストの細かい部分の修正で悩む(小さい画像になった時に気づけ無いレベル)
・超微細な演技表現の修正リテイクをお願いする(神は細部に宿るとも言うけれど・・・)

めっちゃ経験ある・・・わかる・・・
どっぷり浸かり込んで制作しているほど、どうしても気になっちゃうんですよね。
でも、それ、ユーザーさんの満足度や売上にどれだけの影響を生みますか?

今回は、台詞のリテイクを例にとってみます。

「先輩のことが、好きなんです」
「先輩のことが、好きです」

読み間違いはあってはならないのは大前提として心得えているのですが、お恥ずかしい話、どうしても目が滑って間違えることもままあります。
一方、誤字脱字の無い台本は、私はほとんど見たことはありません。99%といってもいいくらい、収録時に私の方で読み替えています。(多くの方はこの誤字脱字修正にはそこまで時間をかけていません。むしろ素晴らしいと思います!)

上記2つの台詞、もちろん作品のコンセプトにもよるところはあり、どうしても読み方を統一する必要はあるかもしれませんが、多くの場合は視聴者にとって、どちらの読み方でも何も問題がないことの方が多いのではないでしょうか?
(合唱コンクールで歌詞をミスっても、気にせず歌い続けなさい。何が正解かなんて相手にはわからないんだから・・・と言われた記憶が蘇ります)

もちろん読み間違えは無償リテイクの範疇で私自身も承っていますが、リテイクって台詞の差し替えを編集者も行う手間があります。

具体的には・・・
リテイク箇所のリストアップをし、声優さんにメールを送り、一週間かいくらかの間をへてリテイクデータをもらい、それを確認して、受領メールを送り、データを新たに差し替えて、整音も改めてして、ようやく完成です。

ここまでの時間と手間をかけてデータを更新し、販売するとなると、当然販売時期も遅くなりますよね。
販売日を遅らせてまでこの作業をするメリット、果たして本当にあるのでしょうか?

アニメのアフレコではタイミングがあってないなどの致命的になりうる読み間違えも、音声作品というコンテンツの世界で考えてみてください。
究極的には、作品の売上にもお客さんの満足度にも全く影響しないと言い切ってもいいレベルのこういった修正を頑張る必要、本当にあるのでしょうか?

同じ時間でより多くみんなで収益を得るコツ

だったら、次の作品の制作に取り掛かる方が良くないでしょうか?
時間は有限ですし、制作に投下した資金の回収だって早ければ早いほどいいはずです。
何より、みんなが頑張ったのに、それは1mmもお客さんには分かってもらえない。
当然、売上もアップしないわけですね・・・。

それなのに、発注者も外注先も、みんなが時間と労力をかけてやるリテイク、意味はあるのでしょうか?
もし、声優に加えて編集も外注だったとして、「既にお金を払ってるわけだからその範囲内で好き放題に働かせられるのは権利だ」と思われるかもしれません。
ですが、外注先の人の時間は無限ではなく、その仕事が早く終われば他の仕事でより多くを稼げるようになるのです。

表面上だけ仲良くやって喜ぶことは、本当のWIN-WINではありません。
コスパがすごく良い仕事だと外注先に思ってもらえれば、信頼も一緒にうなぎのぼり、リピートして仕事を受けてくれる確率は高まりますし、その分新しい外注先を探して交渉して都度お金を払う、という発注者の見えないコストも大幅に削減されるのではないでしょうか?
(そうして仕事が早く終わったら、次から安く発注をかけようとするのが日本全体の悪癖だとよく言われるのを耳にしますが、本質的にはみんなで一緒に売上をあげるために頑張れる関係になるのが一番ですよね。)

大事なのは、いかに短い期間でこなし、それを年に何回繰り返せるのかということです。(回転率:回転が高いほど、この繰り返しの回数が多いというザックリ理解でOKです)
結果的には、意味のないレベルの改善や修正を1作に繰り返すよりも、比較にならないほどの売上・利益が継続的に、より手間が少なく入ってくることに繋がります。

「ここからはもう売上に繋がらない、無駄な改善や修正だ」と見極めることが重要です。

粗探しを始めようとしたときは要注意、黄色信号です。
「売上に対するプラスの影響が大きく見込める、ROI(投資対効果)が高いもの」のみに絞って行うことを心がけましょう。

もちろん、兎月起因のリテイクは無償で行っていますし、有償リテイクも全体のご依頼のうち5%発生するのは当然と捉えていますので問題なく承りますが、「そのリテイク、本当にROI良いのかな・・・?」と思うことがあるのは正直なところです。
過去にご依頼をくださった方には、ふと兎月側からその点をさりげなく言われた方もいらっしゃると思います。
多くの場合、そうしたときには「自分も結構手間かかるし、別に編集10秒で修正するだけで済む話だった!」という答えになりましたよね!

でも、自分は、自分自身が完璧に納得のいくものが作りたいんだよ!

「人生一回切りと同じく、音声作品も人生1回きり!この仕事も人生1回きりだから無限に時間とお金をかける!」
という方もいることは承知の上、不快にさせてしまうかもしれないとは思いつつ、今回の記事は執筆しています。

もしその制作物が、自分ひとりじゃ作れないものだった場合のことを考えてみてください。
自分自身が完璧に納得できるものを作るには、それ相応にリテイク(やり直し)は必ずセットですよね。
なぜなら、自分の中の正解は自分にしかわからず、さらに言えば自分にとっての正解は、時間とともに変化していくものだからです。

実際に納品されたものを見て、聞いて、
「あ!やっぱこっちのほうがいいかも!」みたいなインスピレーションが沸くことは当然のことだと思います。

自分ひとりだけで完結する作品で、時間もお金も膨大にあるのであれば、そのインスピレーションのまま修正を加えて良いと思います。
けれど、一度立ち止まって考えてみてください。

けど、もし誰かと一緒に作ってるものだったら…?
しかもその誰かが、外注の形で参加してる人だったら…?

その他人に当然のように無償でのリテイクを要求するのって、何かがおかしいと思いませんか?(サービス残業、タダ働き、好きな人、います?)

「エヴァの庵野監督はガンガンちゃぶ台ひっくり返してリテイクさせてるじゃん」
「プロはクライアントが満足できるまで付き合い続ける。そういうものでしょ?」

よくTwitterで目にする機会が増えてきた言葉ですね・・・。
でも、たったひとつ、けれども大きな誤解があると思っています。

庵野監督は自分の会社を持っていて、自分の仕事の仕方に付き合ってくれるクリエイターのみを採用してて、(ドキュメンタリーではちょっとしんどそうでしたがおそらく)リテイクを重ねながら作品を作っていくことにクリエイターを同意させ、なおかつ十分すぎるほどの報酬を払っています。(カラーがアニメーターにとっての雇用面で素晴らしい環境だという話は有名ですよね)

だから、雇用を維持し続けている限り、リテイクを何回でもやっても良いんです。

もし庵野監督式で仕事をしたいのであれば、そういったやり方でやることを先方に合意してもらう必要があります。(年俸契約、固定報酬の継続的な支払い)
なぜなら、「過剰なレベルの度重なるリテイク」を想定して料金設定をしていないからです。
一方、リテイクが何回もなされるという痛い経験から、クリエイターの基本料が設定されている場合もあるのではないでしょうか。

(クリエイターにおける業務委託契約は成果物の納品にて検収とされることが多いと思いますが、そこに過剰なレベルのリテイクが契約条項として入っていることは非常に稀ではないでしょうか。契約における条件面の擦り合わせが大事ですね。)

兎月りりむ。の場合、有償リテイクはご依頼のうち5%で発生し、残り95%では発生しないという数百件の実績からなる統計的な実証に基づいて、収録依頼の料金にリテイク料を上乗せしておくことはせず、別枠でいただくようにしています。
また、有償となる場合の線引きや、それに基づく判断は提携エンジニアに代行してもらう形をとり、公平性を出来る限り担保できるようにしています。
(これは、ご依頼をくださるサークル様みなさまが、同人音声.comやCi-enサロンを通じて、入念な事前準備とお打ち合わせにご協力していただいているからこそでもあります。それでも人によっての100%の基準は異なるので、どうしてもリテイクが発生することはありますが、悪ではなく、確率的には発生して当然のものと捉えています。)
参考:【サロン】リテイクって悪いこと?いいえ、必ず5%の方はリテイクになります!


継続的に安定的な雇用のもとで働いているクリエイターと異なり、多くのフリーランスのクリエイターは他にも仕事を抱えてて、同時進行で処理していることがほとんどです。
全ての案件に対して、人によって基準が異なる100%の作品を完成させるためのリテイクに応えていたら、どうなるかは想像に難くないことです。
仕事はいつまでたっても終わらない、次の案件にもいけない、報酬も支払われない、という苦難の連続です。

システムエンジニアがソフトウェアの開発で、依頼元からの度重なる仕様変更オーダーを受けてデスマーチになってるって、有名な話ですよね。
IBMが訴訟を起こして、しかも勝訴していたことは話題になりました。
これは度重なる仕様変更に対するお金を発注元の某社が払ってなかったから起きたことです。

つまり、こういった庵野監督形式で仕事をさせたいのであれば、以下の2つは絶対必要条件です。
・取引先に、仕様変更・リテイク込みで仕事を行うことに合意させる
・それに見合った報酬をきちんと払う

クリエイターは定額使い放題ではありません。ギガ使い放題だって、めっちゃめちゃテザリングを使いまくってたら通信制限食らって激遅になりますし、本当の意味で使い放題なことなんて、この世にはないんです。資源もお金も、人も時間も、有限ですから。

「プロはクライアントが満足できるまで付き合い続ける。そういうものでしょ?」
はい、そうです!※ただし、それに見合う報酬と条件があれば

まとめ

「ここは修正しないと売上に絶対的に影響があるよね」
「ここは修正しないと満足度に大きく影響して悪いレビューが書かれそう」

できた!と思ったら、こういった致命的なレベルのミスのみ潰していけばいいんです。
全部が全部完璧にしなくていい。やっても無駄なところに、限られたお金と関係者みんなの時間を投下するのはやめにしませんか?
次の作品を制作することに頭を切り替えて、限られた時間で継続的に制作をし、コスパ良く動いていきましょう。
その方が発注者も外注先も、継続的な関係で本当にWIN-WINになれるはずです。
肩の力を抜いて、力を入れるべき箇所にのみ注力しましょう。

大丈夫!かのエヴァでさえアニメ版最終話は絵コンテ状態で出したけど、それでもこれだけのヒット作になったんですから!

要点さえ押さえていれば十分結果はついてきます。
制作、がんばりましょう!!

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