無名@憑依空間 2023/12/09 16:55

★無料★<憑依>小銭おばさん①~大量の小銭を使う客~

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ジャラジャラと音を立てて、小銭が受け皿に
横たわるー。

”大量の小銭”ー

彼女はこのコンビニの店員たちの間でも
有名な存在だったー。

”小銭おばさん”
そんなあだ名で呼ばれてー。

今日も、大量の小銭で買い物をするおばさん。

おばさんが今日、購入したのは缶ビールとおつまみらしきもの数点。

会計は620円ほどだったー。

がー、店員に”620円です”と言われたおばさんは
あろうことか、10円玉は62枚取り出して、
そのままレジの受け皿にそれをばらまいたのだー

「し、少々お待ちくださいー」
男子高校生バイトが戸惑いの表情を浮かべながら
会計を進めていくー

このコンビニはー
駅から離れていて、来店数はそんなに多くはないー。
そのため、”小銭おばさん”の存在も、
いつも混雑しているようなコンビニに来るよりかは
まだ”マシ”と言えたー。

しかし、それでも負担であることに変わりはないー。

この店舗には、まだ”自動精算機”もないし、
店員が自分たちで数える必要があるー。

しかもこの”小銭おばさん”はー、
かなりの頻度でお店にやって来るしー、
その都度なぜか大量の小銭で会計をしてくるー。

一度、店長の松下(まつした)も、
理由を尋ねたことはあったが、
”それ以上は聞かない方がイイよ”と、小銭おばさんに言われたため、
それっきり黙り込んでしまったー。

”小銭おばさん”は、以前はスーパーで働いていたことがあるのだと言うー。

コンビニの常連客の一人が、
”あの人、俺が良く行くスーパーで前は働いてたよー”
と、教えてくれたー。

その常連客によれば、”小銭おばさん”は、
店員時代は愛想が良く、接客も良い雰囲気だったというがー
今の彼女からはその面影は感じることが出来ないー。

今日も、そんな常連客と、
松下店長が話をしていたー。

このコンビニは客足が少ないため、
意外と雑談することもできるー
そんな環境だー。

「ーへ~…今日もその小銭のおばさん、来たのか
 君たちも大変だねぇ」

バイトのほうを見て、常連客の男がそう言うと、
続けて彼はこんな言葉を口にしたー

「俺さ、毎日のように仕事帰りにそのスーパー寄ってたから知ってるんだけどー
 あの人を最後にそのお店で見かけた時ー
 お客さんに何か注意してたんだよー」

常連客の男が、買った缶コーヒーと今晩のおかずらしきものが
入った袋を持ちながらそう呟くー。

「ーー何を注意してたんですか?」
女子大生バイトの堀崎 明菜(ほりさき あきな)が、
常連客の男に尋ねると、
男は半笑いで続けたー。

「ーーー”小銭”」
とー。

「ー小銭?」
首を傾げる松下店長ー。

「ーあのおばさんー、 
 ”小銭を大量に使おうとしたお客さん”に注意してたみたいでさー
 なんか、揉めてた感じだったー。

 それがー、スーパーであの人を見た、最後の日だったかなー

 まぁ、俺も行かねぇ日はあるし、元々あの人、
 毎日スーパーにいたわけじゃないから、いつ辞めたのかは知らねぇけど」

常連客の男はそこまで言うと、半分呆れたような笑いを
浮かべながら、

「しっかしー、小銭の使い方を注意していた元店員さんが
 今じゃコンビニで小銭ばらまいてるなんてー
 変なおばさんもいたもんだなぁ」

と、言葉を口にしたー。

「ーーいらっしゃいませ」
他のお客さんがやってきて、松下店長や女子大生バイトの明菜が
挨拶を口にすると、
常連客の男は「ま、あんま酷いようなら注意した方がいいぜー。
ルール的にも断れるはずだろ?」と、笑いながら
「どうもありがとう」と、そのままコンビニから立ち去って行ったー。

そこそこの年のように見えるし、
認知症のような状態に陥っているのかもしれないー。

松下店長は、”優しい”性格の持ち主で
小さい頃から”優しすぎる”と、よく指摘されてきたー。

”小銭おばさん”に強く言えないのも
”それ以上は聞かない方がイイよ”と言われたから
ビビっているー…わけではなく、
”可哀想”と言う思いからだー。

”小銭”であっても、お金はお金ーという考えの元、
松下店長は”他のお客さんに迷惑にならない”範囲内なら
大量の小銭でも支払いを受け付けようと思っていたし、
混雑時は”数えるのに時間がかかるから待っていてください”と言えば
小銭おばさんは待つことはするー。

またー
”認知症”のような、高齢に伴うことが原因であればー、
尚更、可哀想だと松下店長は考えていたー。

と、言うのも昨年亡くなった松下店長の祖母も
認知症で、時々本人が我に返った時に
泣きながら謝ってきたり、辛そうにしているのを
間近で見ていたからだー。

だからこそー、
松下店長は”小銭おばさん”に注意することができなかったのだー

「ーー店長、確か同じ小銭は20枚まででしたよね?」
男子高校生バイトが言うー。

「あぁ、そうなんだけどなぁ~」
松下店長がため息をつきながら言うー。

法律上、同一硬貨は20枚までと決められており、
店側の判断でそれを受け取る選択もできるもののー、
それを”断る”ことも法律上、問題なくできることだー。

例えば今日の午前中の”小銭おばさん”のように
10円玉を62枚使おうとしたような場合には
お店は”拒否”できるー。

それは松下店長も重々理解しているー。

「ーー…ーーでもなぁ~」
優しすぎるー…ある意味では”頼りない”ようにも映る
松下店長ー。

だがー
”彼の”推測は間違っているー

”小銭おばさん”が小銭をたくさん使うのはー
”認知症”などではないー。
彼女は”ハッキリとした”意識を持っているー。

しかしー、
その”勘違い”か、”優しさ”かー

松下店長が、彼女に”小銭の使い過ぎ”を注意せずにいたのはー
松下店長自身にとっては”正しい判断”と言えたー

何故なら、それはー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーいらっしゃいませ~!」

数日後ー
女子大生バイトの明菜と、
先日とは別の男子学生バイト・幸一(こういち)はー、
入って来たお客さんを見て、互いに表情を歪めたー

”小銭おばさん”がー
ご来店してしまったのだー。

”はぁ、またあの人ー”
うんざりする明菜ー

”ーーはは…今日は店長いないし、こっそり注意するか?”
幸一がそう呟くー。

店長の優しさも理解はできるー。
だが、バイトからしてみれば、
”不満”が高まるのも無理はないー。

あれだけ連日小銭を使っていれば、
注意されても当然だし、
明菜も幸一も”注意したい”と内心では考えていたー。

「ーーー」
小銭おばさんは今日もビールとおつまみー
完全に”おじさん”が買うかのようなものを手に
レジへとやってきたー。

「370円になります」
明菜がそう言うとー
小銭おばさんは、信じられない暴挙に出たー

袋から大量にばらまかれる”1円玉ー”

今までにも1円玉を使われたことはあったものの、
今日は大学でちょっと嫌なこともあった明菜は
カチンと来て
「あの!お客様ー」と、いらだちを隠しながら
言葉を口にしたー

「なんだい?」
小銭おばさんは白々しい対応をするー。

「ーー小銭ー。
 銀行で両替できますから、
 ちゃんと、両替してから持ってきてくれますか?」

明菜がそう言い放つと、
小銭おばさんは「おやー」と、明菜のほうを見つめるー。

「ーー”小銭”に”ケチ”をつけるのかい?」
とー。

「ーーケチをつけるとかじゃなくて…
 法律でも同じ硬貨は20枚までしか使えないんです」

明菜がそう説明すると、
小銭おばさんは、手をバッと上げたー。

「ーそれ以上はやめなさいー」
とー。

「ーーーど、どういう意味ですか?」
明菜は脅すような”小銭おばさん”の言葉に、
少しイラッとして、「お客様ー」と、
小銭のルールを再度説明するー。

時々であれば仕方ないとは思うことー、
けれど、あなたの場合は回数が多すぎる、ということー
そんなに大量の小銭がある理由は知らないけれど、
例えやむを得ない理由であったとしても
しっかり銀行で両替してくるなどして対応してほしいことー
お店にとっては、負担になっていることなどを
できる限り丁寧に説明したー

明菜は中学時代、高校時代共に生徒会に所属していたことがあり、
不真面目な態度や迷惑行為を見逃すことができない性格だー。

「ーーーーーチッ」
小銭おばさんは露骨に舌打ちをすると、
少し間を置いてから笑みを浮かべたー。

「ーおやおや、それはすまなかったねぇー
 大変、申し訳ございませんでした」

そう言いながらペコリと頭を下げると、
「もう”わたしは”あんたたちには迷惑をかけないって約束するよー
 今まですまなかったねぇ」と、
言葉を付け加えて、そのまま小銭おばさんは
ゆっくりとお店の外へと歩いて行ったー。

「ーーーやるじゃんー堀崎さん」
男子大学生バイトの幸一がそう言うと、
明菜は「分かってくれたのかなー?」と少し不安そうに
店の出入り口のほうを見つめたー。

キレてる感じではなかったし、
分かってくれたようにも見えたー。

だがー
最初に舌打ちしたようにも聞こえたしー

「ーーまぁ、ひとまず今後の様子を見て、じゃないか?
 あれであのおばさんが分かってくれたなら
 それはそれいいしー
 あの調子だと多分、他のお店でも小銭使ってるだろうかなー」

幸一の言葉に、明菜は「まぁ…うんー…でも何であの人ー
小銭ばかり使うんだろうー?」と、少しだけ首を傾げたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」
”小銭おばさん”は笑みを浮かべるー

「”次”はお前に決定だー」
とー。

小銭おばさんはーーーー
”憑依”されていたー。

かつて、自分が注意した”客”にー。

小銭おばさんに憑依している男はー
”わざと”大量の小銭で会計してー、
注意してきた店員に”憑依”することを繰り返しているー

何度も、何度も、身体の乗り換えを続けているー。

現在の”小銭おばさん”になる前の”男”の身体も他人の身体だー

その前も、その前も他人の身体ー。

コンビニの付近で待ち伏せしながら、明菜が
バイトを終えたのを確認すると、
明菜にゆっくりついていく小銭おばさんー。

”クククー”

そしてー
明菜が人通りの少ない道にやってきたタイミングで
「あの」と、小銭おばさんが背後から
明菜に声をかけたー。

「ーーえ?」
明菜が振り返るー。

振り返ったその先には”小銭おばさん”ー

明菜は少しだけ不安を感じながらも
「あ、こ、こんばんはー」と、頭を下げるー。

小銭おばさんは笑みを浮かべると
「さっきはすまなかったねぇ」と、明菜の方に近付いていくー。

「ーなんでわたしが小銭ばっかり使うかー、
 あんたにはちゃんと説明しておこうと思ってね」

明菜は警戒しながらも
「ど、どういうことですか?」と聞き返すと、
小銭おばさんは明菜の前にやってきて笑みを浮かべたー

「こういうことさー」

そう呟くと、小銭おばさんが明菜に突然キスをしたー

「ー!?!?!?!?」
驚く明菜ー

夜の路上で、女子大生とおばさんがキスをしているおかしな光景ー。

やがてー
小銭おばさんは静かに囁いたー

「今日からお前が”小銭JD”になるんだぜー」

とー。

そのまま再び強烈なキスをお見舞いすると、
小銭おばさんは白目を剥いて、その場に倒れ込んだー

「ーーーー…ぁ… ぅ… ひ… ぃ…」
立ったままの明菜がぶるぶると震え、
しばらく痙攣するような状態で立ち尽くしているとー
やがて、明菜は笑みを浮かべたー

「ーーーーークククー今日から俺がー
 いいやー、わたしが小銭お姉さんー♡ なんてね」

明菜はそう言うと、倒れたままの”小銭おばさん”だった身体に
唾を吐き捨ててそのまま歩き出したー

「早速明日ー両替してこないとー」

小銭おばさんを注意した明菜はー
おばさんに憑依していた男に”乗り換え”されてしまいー
今、小銭お姉さんになってしまったのだったー

②へ続く

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コメント

大量の小銭の恐怖…!★
次回もぜひ楽しんでくださいネ~!☆!

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