無名@憑依空間 2024/01/14 16:49

★無料★<女体化>大規模障害②~収束~(完)

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”おいっ!どうなってるんだ!”

”わたし、もう仕事できません!どうしてくれるんですか!”

”家族から縁を切られた!テメェらのせいだ!”

「ーー申し訳ございませんー
 申し訳、ございませんー」

”女体化アプリ”を開発した企業
ゴッド・ソフトウェアの社員が必死に平謝りをしているー。

しかしー、
この世界では”女体化アプリ”はもはや日常生活に
浸透しすぎていて”大規模障害”を起こすことなど、
あってはならなかったー。

”女体化した元男”であることを隠して
アイドルとして活動していた女ー…
いいや、今は大規模障害で男に戻ってしまったその人物は
泣きながら”これじゃ、もう仕事できない!”と、
怒りをぶつけているー。

”元男”であることを隠して、家族と幸せに暮らしていた主婦も
怒りをぶちまけているー。

”くそっー…どうしてこんなことにー”
社員の男は、困惑の表情を心の中で浮かべながらも、
それを表に出すことなく、必死に謝罪を続けるー

「ーーー本当に、申し訳ございませんでした」
オフィスの中では、ゴッドソフトウェアの会長が、
行政から”一刻も早く復旧させるように”ときつい叱りを受けていたー。

社会に浸透した女体化アプリの大規模障害など、許されないー。
恐ろしいほどまでの被害と影響が出るー。

既に、社会は”あの人も男だったのか!”と、
大騒ぎになり、大混乱に陥っているー。

「ーーーーとにかく、早く復旧させろ!」
会長は、そう叫ぶと、社員たちは青ざめた様子で
復旧作業に当たったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
大学周辺にやってきた恭輔ー。

”女体化アプリ”が大規模障害を起こし、
大混乱に陥っている中、
”母親”のような人物が身の周りにいるのではないかー、
そんな何とも言えない不安が湧き上がってきて、
大学に足を運ばずにはいられなかったー。

”ーーまさか、母さんが男だったなんてー”

知らなかったー。
確かに、女体化アプリの効力はカンペキで、
内側まで含めて、完全に女体化するー。

そのため、出産することも可能だー。

だが、恭輔の母親は今まで”純”だと言っていたため、
恭輔も、いいやー…父親も妹もそれを信じ込んでいたー。

”純”とは、生まれた時点から元々女性だった女性を示す、
この世界の言葉ー。

そして”改”とは、女体化アプリを使って女性になった人間の
ことを示しているー。

母親が”純”ではなく、”改”だったー。
別に、それならそうだと言ってくれればよかったのにー、と、
恭輔は悲しそうな表情を浮かべるー。

ちょうど、今日のお昼に、彼女の香苗とそんな話をしたー。

香苗は言っていたー

”じゃあ、もしもわたしが”改”だったとしても、
 今まで通り好きでいてくれる?”

そんな言葉に、不安が募るー。

母親に、”嘘”をつかれていてー、
その上、彼女である香苗にも”嘘”をつかれていたとなればー
ショックから立ち直ることができるかどうか、
その自信も、もはやないー。

「ーーー(確か香苗は今日はサークル活動でまだ大学にいるはず)」
”女体化アプリの大規模障害”発生後から
香苗とは連絡がついていないー。

言いようのない不安に襲われる恭輔ー。

昼に、香苗にも言った通りー
自分の彼女が”純”だろうと”改”だろうと、恭輔は
どちらだっていいと思っているー。

しかしー

”嘘”は、イヤだー。

純なら純と言って欲しいし、
改なら改と言って欲しいー。

どっちだろうと対応を変えることはない。

でも、嘘だけはー
勘弁してほしいー。

恭輔は、そんな考えを持っていたー。

「ーーー!」
大学の正門前で涙目の男が、立っていたー。

恭輔は一瞬ビクッとするー。

”女体化した元男”であっても、
そのことを知らなければ、
”本来の姿”は知らないー。

香苗がもしも”男”だったとして
女体化アプリの不具合で元の姿に戻った場合ー、
その香苗を見ても、恭輔には香苗だとは分からないのだー

「ー恭輔ー…」
正門前で落ち込んでいた男が、そう呟いたー

恭輔は呆然としながら
「か…香苗…?」と、言い放つー。

だがーー
その男は首を横に振ったー

「ーーーーちがう」
とー。

「ーーえ…」
じゃあ、誰だ?と一瞬思い、聞こうとした恭輔ー。

しかし、先に男の方が言葉を発したー。

「ーー穂乃果」
とー。

そう、正門前で落ち込んでいた男は、幼馴染の穂乃果だったのだー。

「ーえっ…!?えぇっ!?」
恭輔は驚くー

幼馴染の穂乃果は”純”だと聞いているー。
しかも、小さい頃から仲良しで、
小さい頃から”女子”だったことも知っているー。

それなのに、何故ー?

「ーー…ごめんね…わたしも知らなかったー」
穂乃果が悲しそうに言うー。

「ーーそ、それはどういうー?」
恭輔が困り果てた様子で言うと、
穂乃果は、悲しそうな表情を浮かべながら答えたー。

「ーーわたしも…自分が女だと思ってたのー
 でも、違ったみたいー」
自虐的な笑みを浮かべる”男に戻った”穂乃果ー

「ーさっき、親に電話したのー
 そしたらー…
 わたし、生まれた直後に女体化アプリで女体化させられてたんだってー」

穂乃果が泣きながら言うー。

「ーーーお父さんが、女の子を欲しがってて、生まれたわたしが男だったからって
 女体化アプリを使って、わたしを女にー…」

泣き崩れる穂乃果を見て、
恭輔はどう声をかけていいか分からなくなって困惑するー。

穂乃果は、本当に知らなかったのだー。
ついさっき、世界的な大規模障害が起きて
自分が”急に男に戻る”まで、
穂乃果は自分が女子だと、ずっとそう思っていたー。

だが、実際には0歳の時に親が女体化アプリを穂乃果に使いー、
親が所定の手続きを行い、戸籍上も女性となっていたため、
穂乃果は気付かなかったー。

「ーごめんね…」
穂乃果の言葉に、恭輔は「穂乃果が謝る事じゃない」と言い放つと、
「ー障害が直ったら、また、いつもの穂乃果に戻ればいいー」と優しく言い放ち、
穂乃果を慰めたー。

するとー
背後から「恭輔ー?」と、声がしたー。

「ーー!」
振り返ると、そこには彼女の香苗がいたー。

「ーー香苗ー…!」
恭輔が、香苗の姿を確認して、名前を呼ぶー。

彼女の香苗はーーー
”いつもの”可愛らしい女子大生のままだったー。

「ーーーどうなってるのー?
 わたしの友達も急に男になっちゃって、もう大混乱ー」
香苗が混乱した様子で言うと、
恭輔の背後にいる”知らない男”に気付いて
「その人はー?」と確認するー。

「ーーー」
恭輔は背後にいる”男に戻った穂乃果”のほうを見ると、
「ーー高校時代の友達ーー」と、言葉を濁したー

”言わなければ”
これが穂乃果だとは分からないー。

恐らく、”元男”だと知られたくないであろう穂乃果のために、
恭輔は、そう答えたのだー。

「あ、そうなんだー
 はじめまして」

香苗が優しく微笑むと、
穂乃果も、恭輔の優しさに感謝しながら
「はじめましてー」と頭を下げたー。

「ーーあ、この子は俺の彼女でー」

当然、穂乃果は香苗のことを知っているし面識もあるー。

だが、恭輔はあえて、香苗を紹介してから、
「ーじゃあ、俺、あっちに行ってるからー」と、
香苗と二人で話したい風を装いながら、穂乃果と香苗を遠ざけたー。

「ーーーーなんか、”女体化アプリ”で大規模障害が起きたらしくてー」

穂乃果から離れた恭輔は、香苗にそう言葉を投げかけるー

「大規模障害…!?」
呆然とする香苗ー。

「ーもう、滅茶苦茶だよー。
 ”あのアイドルが男だった”とか、
 テレビでも生放送中にアナウンサーが男になったしー」

恭輔が戸惑いながら言うと、
ざわつく大学の敷地内を見つめながら
「てっきり、俺は香苗もー」と、苦笑いしながら言うと、
香苗も苦笑いして、恭輔の方を見つめたー。

”女体化アプリ”の大規模障害は続くー。
その影響は全世界に及びー、
女体化アプリで女体化していた人間ー”改”は
全員、一時的に男に戻ってしまったー。

元々、自分が”改”であることを公言していた人間はともかく、
女体化アプリを使っていない、元々の女性であると言っていた人々に
与える影響は甚大だったー。

離婚、訴訟、失業ー
あらゆるトラブルに見舞われるー

「ーくそっ…!早く元に戻せよ!」
「どうしてくれるんだよ!」
「障害の詫びに何を貰っても割に合わないぞ!」
「ーわたしの人生、終わっちゃう!」

男たちが、ゴッドソフトウェアの本社ビルの前に群がるー。

担当の社員は平謝りー。

その大規模障害は、半日以上に渡り続きー…
ようやく”解消”されたー。

「ー大変、申し訳ありませんでしたー
 2度とこのようなことがないよう、再発防止を図りー、
 この度の責任を取り、私はー」

大規模障害がようやく解消された翌日ー。
ゴッド・ソフトウェアの会長は辞任を発表したー。

そんな会見を見つめつつ、
”後任”となる男は静かに笑みを浮かべるー。

大規模障害は、彼自身が仕組んだものー。
会社の権力争いにより、多くの人間の人生にダメージを与えてしまったー

しかし、それを知る人間はいないまま
大規模障害は”システム更新の際の大規模なトラブル”と発表され、
その男が次期会長に就任してしまうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーじゃあ、行ってくるよー」

翌日ー
大規模障害が復旧し、
母親は”女”に戻ったー。

”まさか、母さんが”改”だったなんてー”
”どうして、母さんは女として生きていくことにしたんだろうー”

そんなことを思いながらも、
恭輔は少しだけ笑ったー。

”まぁ、俺にとっての母さんは、母さんだけだ”

ビジネスホテルに一時避難していた母親は
大規模障害の復旧後に帰宅したー。

父親と妹の天音には、上手く誤魔化す説明をしてありー、
母親が”女体化アプリを使って女になった男”だと言うことは、知らないー。

恭輔は”母さんは隠したいみたいだし、知ってるのは俺だけでいい”と、
その後も、そのことを決して口にすることはなかったー。

「ーーーおはようー」
大学に到着すると、幼馴染の穂乃果が
疲れ果てた表情のまま少しだけ微笑んだー。

「昨日はー、大変だったな」
恭輔がそう言うと、穂乃果は「うんー」と苦笑いするー。

「ーごめんねー。わたしも、知らなかったからー」
穂乃果が、自分が女体化アプリの使用者であることを知らず、
生まれつきの女だと言ってしまっていたことを詫びるー

「いやいや、穂乃果は知らなかったんだし、嘘をついていたわけじゃないだろ?
 それに、どっちだろうと、穂乃果は穂乃果だから」

恭輔が笑うー。

穂乃果は、”嘘”をついていたわけはないー。
生まれてすぐ、親に女体化アプリを使われて、
本人すら知らないまま女として生きていたのだー。

穂乃果に、何も非はないー。

「ーでも、友達の中には”もう話したくない”って子もいてー」
寂しそうに言う穂乃果ー。

まぁ、そういうやつもいるだろうな、と恭輔は思いながらも
「ー俺は、これまでと変わらないよー」と、穂乃果に
優しく言葉をかけたー。

「ーありがとう
 恭輔が幼馴染で、ホントによかった」

穂乃果のそんな言葉に、
恭輔は笑いながら「俺もだよ」と、返事をしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつものように、お昼を彼女の香苗と食べる恭輔ー

「昨日の障害、復旧したみたいでよかったね」
香苗がそう呟くと、恭輔も頷くー

「でも、女体化アプリが当たり前になってから
 あんな障害起きるの初めてだったらしいしー、
 勘弁してほしいよな」

恭輔がそう言うと、香苗は「たしかに」と、微笑んだー。

「あ、そうそうー
 昨日、どうして一度帰ったのに、大学に戻ってきたの?」

興味本位で香苗がそんなことを聞いてくるー

「え、あ、いやー」
恭輔は少し気まずそうにー
「実は、香苗も女体化アプリを使ってて、大規模障害で
 男に戻ってるんじゃないか、ってちょっと思っちゃって」と、笑うー。

「ーーなんだ~、そうだったんだ
 でも、わたしは女体化アプリの使用者じゃないよ」

笑いながら香苗が恭輔にそう言い放つー

「そ、そうだよなー、
 なんか、疑ったみたいになってて、ごめん」

恭輔が申し訳なさそうに言うー。

香苗は昨日の大規模障害発生時もそのままだったー
それはつまり、生まれつきの女性ー、”純”であることを意味するー。

「ーお、もうこんな時間ー
 そろそろ俺、次の授業に行かないと」

恭輔が時計を見て、そう声を上げると、
香苗は「恭輔の分も片付けといてあげる」と、微笑むー。

「悪いなー!ありがとう!またあとで」
恭輔はそう言いながら、手を振って立ち去っていくと、
一人残された香苗は少しだけ微笑みながらー

スカートの上から、
ついているはずのない”アレ”を触ったー。

「ーーーまぁ、わたしー… 
 ”ついてる”んだけどー…」

「ーーーいつ、打ち明けようかなぁ…」

苦笑いする香苗ー。

香苗は”女体化アプリ”を使って女体化した人間ではないー。

だがー、
香苗は”男”だー。

彼女が”男の娘”であることを恭輔が知るのは
まだまだ先の話だったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ちょうど何かで(もう何だったかは忘れてしまいました…★)
通信障害が起きている時に思いついた作品でした~!☆

トラブルも創作の糧にするのデス…笑

お読み下さりありがとうございました~~!

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