無名@憑依空間 2024/01/21 16:06

★無料★<憑依>ポゼッションシャーク②~サメとの対峙~(完)


達夫は、サメに憑依されてしまった彼女・静香がいる
砂浜に向かっていたー

静香を、取り戻されなくてはならないー

バイクで道路を走りながら、
後ろにしがみつく幼馴染の蓮子が叫ぶ。

「いったいどうやってみんなを正気に戻すつもりなの?」

蓮子の言葉ー

確かにそうだー
サメに憑依された人間を、どうやって
元に戻せばいいのかは、分からないー

それでもー

「わからねぇ…!でも、なんとかする!」
適当な返事をする達夫。

なんとかなるはずだー。
そう思いながらー

「---おい!やべぇぞ!」
一緒にバイクで走行していた友人の洋平が叫ぶー。

目の前から、サメが2匹ー
風に乗ってとびかかってきたー

「つかまってろ!」
達夫はそう叫ぶと、
映画のごとく、バイクをジャンプさせたー

そしてー
サメの顔面をバイクの後輪で踏みつぶすー
サメが地面に叩きつけられてぐしゃっと潰れるー

「-やるねぇ!」
洋平が叫ぶ。

もう一匹のサメは、
風が止んだことで、飛べなくなり、
そのまま地面でじたばたしているー。

「--静香、必ずお前を迎えに行くからなー」

達夫たちは順調に、
目的地へ向かっていたー

しかしー

再び風が吹いたー

道路でじたばたしていたサメが
風に乗ってー
背後から達夫と蓮子が乗るバイクに
襲い掛かるー

「ひぅっ!?」

達夫の背後に乗っていた
幼馴染の蓮子がうめき声をあげたー。

「--蓮子?」
達夫が異変に気付いた時には遅かったー

蓮子が凶悪な笑みを浮かべてー
達夫の首を絞め始めたー

「--れ、、れんこ…?」

「--く…ふふふ、、サメに歯向かうなんて…」
蓮子はくすくす笑っているー
ぶるぶる身体を震わせながらー

「蓮子!まさか!?」
友人の洋平が叫ぶー

蓮子は、サメに憑依されてしまったー

「--人間は、愚か、、、だ!」
蓮子が首を絞める力を強める。

達夫は苦しみながらなんとか
転倒しないように、バイクを走らせたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--君たちがどのように考えているか、
 知ることができたよ」

官邸ー

江見留総理大臣がため息をつくー

江見留総理大臣の反対側にいるのはー
サメに憑依された日焼けしたマッチョな男性ー。

海パン1枚で官邸に乗り込み、
総理に何やら要求を突き付けたようだー

”人間とサメの共存共栄”と
汚いひらがなで書かれている。

人間の脳を支配した
ポゼッションシャークは、字を書くことも
できるようになったー
だが、まだ不慣れなのかまるで
幼稚園児のような、汚い字になっているー

「何が共存共栄だ!笑わせるな!」
近くにいた防衛大臣が叫ぶ。

サメが憑依する人間を選定し、
必要以上の憑依は行わないことを
約束する代わりに、人間は
サメの憑依活動を認め、
さらには、サメたちによる政治を
認めよという一方的な内容ー

「---…」
江見留総理大臣は困惑しながらも
これを飲み込むしかないと判断していたー

事実上、人間は
サメの支配下に置かれることになるー

だがー
こうしている今も、
各地でサメに憑依される人間やー
憑依された人間により犠牲になる人間がいるー

これ以上はー

「--寒いのかね?」
江見留総理大臣が言う。

マッチョな男は、ぶるぶると震えている。

その後ろに立っている
ふたりの水着姿の女もぶるぶる震えている。

「---……くひ…ひ」
マッチョな男が唇を青くしながら不気味に笑うと、
「返答は明日聞きに来るー」と呟いて
そのまま側近らしき女たちと共に立ち去ったー。

サメの王に憑依された男は笑うー。

”もうすぐ、サメが、人間を支配することになる”

「--人間は、愚かだー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「く…う…うぅぅぅぅぅ」
もがく達夫。

サメに憑依されて完全に正気を失った蓮子は、
狂気の目つきで、達夫を睨む

「愚かな人間っ…!
 サメに逆らうな…!」

蓮子とは思えないほどの低い声を出す。

そして、蓮子は、首を絞めながら
達夫にかみついた。

「ぐあああああっ!」
達夫が悲鳴を上げるー

ついにバランスを崩して
バイクごと転倒してしまう達夫。

「達夫!蓮子!」
洋平が叫ぶー

バイクから転倒した衝撃で、
蓮子も吹き飛ばされて
達夫の首を絞める手も離されたー

「げほっげほっ!」
せき込む達夫ー。

身体中が痛いー。

蓮子もふらふらしながら立ち上がる。

「--じゅるり…」
蓮子はよだれを垂らしながら
達夫のほうを見るー

魚がー
獲物を喰らう前の目つきだー。

「--蓮子!おい!正気を、、正気を取り戻せ!」
達夫が蓮子のほうを見ながら叫ぶ。

「---おい!達夫!」
洋平が叫んだ。

「---俺のバイクに乗れ!」
洋平の言葉に、
達夫は振り返りながら叫ぶ。

「俺は男二人で旅をする趣味はねぇぞ!」

とー。

「冗談言ってる場合じゃねぇ!
 今は蓮子はそこに置いておくしかない!」

憑依された人間を元に戻す方法が分からない以上、
蓮子とここでやりあっていても仕方がない。

「くそっ!ヤローとバイクに乗るのは最初で最後だ!」
達夫はそう呟きながら
洋平にしがみついた。

「落ちるなよ!」
洋平はそう叫ぶと、バイクを走らせた。

「逃げる人間…
 く、くくくくく、、
 あっははははははははぁ~♡」
残された蓮子は一人、路上で
ゲラゲラと笑い、ゾンビのように
よたよたと歩き始めたー

バイクで走りながら周囲を見渡す
洋平と達夫ー

周囲には人の気配がほとんどないー
時折、人を見かけるが
サメに憑依されている人間なのか、
それとも憑依されていないのかが分からないー

ほとんどの人間は
緊急事態ということで
建物の中に避難しているものと思われるー。

「--くっ!サメだ!」
洋平が叫ぶー

前方からサメが迫っている。
風に乗ってー
洋平と達夫に憑依しようとするサメ。

しかしー
達夫が、持っていたチェーンソーでサメを撃退した。

「あぶねぇ!後ろで振り回すな!」
洋平が叫ぶー。

バイクのバランスをなんとか取りながら
洋平たちは、静香の待つ砂浜へと向かうー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

人の気配のなくなった繁華街ー

駅ビルの壁面のテレビが
突然写し出されるー

「人類のみなさんー」
セレブっぽい女が写し出されるー

「--サメテレビです」
セレブ女はそう宣言したー

彼女もまた、ポゼッションシャークに憑依されている。

ポゼッションシャークたちは、
ついにテレビ局まで占領したのだー

ぶるぶると震えながら笑う女ー。

「---人類の皆さんー
 これからは、我々が、、、皆さんを導く存在となってーー、
 我々と人間の共存をーーー」

ニヤニヤしていたセレブ女が激しく震え始めるー

「--共存を、、きょ、きょ、きょきょきょきょきょ」

ーー!?!?

官邸でその映像を見ていた
江見留総理大臣が驚くー

”ぐぇぇぇ…”

セレブ女が、液体を口から吐き出すー

「な、なんだ!?」
江見留総理大事が叫ぶー

サメテレビの映像が途切れるー

何か、問題が起きたのだろうかー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「-----ここだ」
バイクを止める洋平。

静香が憑依された砂浜にやってきたー
海岸沿いに展開していたはずの特殊部隊は
既に屍になっているー

サメによって、全滅したのだー

「---」
砂浜でたくさんの人がゾンビのようにうろうろしているー

全員、サメに憑依されているー

そしてー
その中心部に、静香がいたー
水着姿のまま静香は足を組みー
達夫たちのほうをちらりと見つめたー

「くそっ!静香!」
達夫が走り出す。

砂浜に降りるための道を見つけて、
階段を駆け下りる達夫ー

洋平がそのあとに続くー

”うおおおぉぉぉぉお”
”あぁぁぅぅぅぅぅうう”
”ぐええぇぇええ”

謎のうめき声が砂浜から響き渡るー

まるで、ゾンビ映画のような、
不気味な声だ。
「--くそっ!何が起きてるんだ!」

達夫は叫びながら、やっとの思いで
砂浜に駆け下りるー

「--!?」
達夫と共に砂浜に到着した洋平は目を疑ったー

砂浜にいた人々が、液体を口から
吐き出したり、もがいたりしているー

「静香!」
人々を押しのけて静香のところに向かう達夫。

しかしー
静香も液体を吐き出して、
びくびくともがいていたー

「--ど、どうなっているんだー」

吐き出された液体のほうを見るー

そこにはー
まるでアリぐらいのサイズになった
小さなサメらしきものが混ざっているー

「---あ…あれ…」
静香が苦しそうに、呟く。

「--し、静香!?」
達夫が言うと、
静香はほほ笑んで、ぶるぶる震えると
気を失ったー

「--お、おい…!?
 なんだこれは…?」
洋平が叫ぶー

人間の口から吐き出された小さなサメたちが、
びちゃびちゃと暴れてー
海のほうに向かっていくー

「--つ、つぶせ!」
達夫は反射的に叫んだ。

ゆっくり海に逃げようとする
アリぐらいのサイズのサメを、
洋平たちは踏みつぶしていくー

これが何だか分からないが、
イヤな予感がしたー

海に待機していた背びれが、
慌てて海に潜っていくー

そして、あっという間に
憑依された人間はいなくなりー
海に待機していた背びれ…
サメたちも姿を消していたー

やがてー
その異変を、多くの人間が知ることになる。

官邸に乗り込んできた
”ポゼッションシャークの王”も、
二度と官邸に現れることはなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

静香は、水着姿で数日間ずっと
満足に眠ることもせずに、憑依され続けていたため、
ひどく衰弱していたものの、
病院で治療を受けてなんとか回復したー

幼馴染の蓮子も同じように正気を取り戻して
回復しているー

「--っかし、なんで、あのサメたちは
 急にあんなことに」

友人の洋平が言う。

「さぁ…」
達夫も戸惑っていはいたものの、
結局、サメとの全面戦争は避けられたと言っても良い。

”今回の件についてー”

江見留総理大臣が記者会見を行っている。

”ポゼッション・シャークと名付けた新種のサメは
 我々人類の目が届かない深海に生息しており、
 今回、そこから陸上に進出してきたものと
 思われます”

総理が言う。
深海にはまだまだ人類の知らないことがたくさんある

そしてー
調査の結果
人間に憑依したサメたちは、人間の持つ免疫力によって
蝕まれて結果的に、人間の体内で衰弱、
そのまま吐き出されたのだという。

憑依された人間が、時々ぶるぶると震えていたのは、
人間側の拒否反応だったのだという。

”ポゼッション・シャーク”たちにとっての誤算ー
一度憑依すれば人間を完全に支配できると考えていた誤算ー

彼らはそれを察知し、深海へと引き返したー

「--また、いずれ彼らがやってくるかもしれません。
 至急、政府としてもその対応を行っていきたいと考えております」

江見留総理大臣はそう語ったー。

「--まぁ、なんにせよ、良かったな」
記者会見をテレビで見ていた洋平が言うと、
達夫も「あぁ。ありがとな」と”戦友”に対して笑みを浮かべたー。

「でも、憑依されてた静香、ちょっとエロかったよなー」
洋平がニヤニヤしながら言うと、
達夫は苦笑いしながら
「それ、静香の前で言うなよ。静香に食われるぞ」と
冗談を口にしたー

・・・

・・・・・・・・・

深海の奥深くー

ポゼッションシャークたちが引き返してくるー

そしてー
代わりにー
”赤色のサメ”が、海上に向かって泳ぎ始めたー

戦いはーー

終わっていないーーーー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

唐突に訪れたサメの敗北…!
でも、何だかまだ不穏な気配もしてますネ~
引き続き、人類はピンチなのデス…!

お読み下さりありがとうございました~~!☆

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