無名@憑依空間 2024/03/02 16:15

★無料★<他者変身>彼女とデートしてるつもりが親友とデートしてました①~デート~

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男子大学生の江田 幸春(えだ ゆきはる)は、
遊園地で、彼女と待ち合わせていたー。

同じ大学に通う彼女の朝倉 陽菜乃(あさくら ひなの)ー
とても優しく、気配りが出来て、明るい性格の彼女だー。

「--陽菜乃…遅いなぁ…」
幸春は、そう呟きながら、陽菜乃の到着を待つー。

幸春はー
いじめられていた過去を持つー。
中学時代までは、壮絶とも言えるいじめを受けていてー
基本的に、物事をネガティブに考えやすいー。

高校に入学し、
幼少期に親しかった陽菜乃と再会ー
それからは、まるでお姉さんのように陽菜乃が幸春を
守ってくれてー
高校ではいじめはなくなったー。

それだけではないー
陽菜乃のおかげで、幸春は”闇”から救い出されたー

陽菜乃がいたからこそー
物事を前向きに捉えることができるようになってー
結果的に、高校生活は
”友達がたくさん”と言うわけではなかったが
ある程度の友達が出来て、
楽しい高校生活を送ることができたー。

そしてー
偶然、大学も同じ進学先で、
大学生活を送るうちに、幸春と陽菜乃は、ついに付き合い始めたのだったー。

最初は正直、罰ゲームなんじゃないか、ともそう思ったー

でも、陽菜乃は言ったー。

”幸春の優しいところー
 たくさん知ってるから”

とー。

小さいころー
近所に住んでいた陽菜乃とは、よく遊んだー

まだ、男女の関係云々なんて全く分からない時代ー。
幸春は、とても優しかったー
陽菜乃はその、小さい頃の思い出をずっと覚えていてー

高校で再会した時に、
幸春がいじめられ気味だったのを見て
いてもたってもいられず、幸春に積極的に絡みに行くようになったのだと、
そう、いつも言っていたー

”優しい男の子が、いじめられるとか、おかしいでしょ?”と
陽菜乃はいつもそう言っていたー

”今日はデートだったよな~?”

ー!

幸春は、親友の蔵居 隆三(くらい りゅうぞう)からのLINEに気づき、
返事を送るー。

隆三は、大学に入ってから知り合った人物だが、
今では親友と呼べる間柄だったー

陽菜乃とも親しいー。

隆三とLINEのやり取りをしているうちにー
ようやく、陽菜乃が到着したー

「---」
笑顔を浮かべながら
少しキョロキョロして近づいてくる陽菜乃ー。

「ごめ~ん、遅れちゃった」
陽菜乃が苦笑いするー。

「一瞬、なんか僕、騙されたかな?って思っちゃったよ」
幸春が苦笑いしながら言うと、
陽菜乃は、少しだけ、表情を歪めてからー

「そ~やって!ネガティブな考え!しないの!」
と、幸春の肩を叩いたー。

「---じゃ、いこっ!」
陽菜乃が、歩き出すー。

「--はは…ごめんごめん」
すぐネガティブな考えをしてしまうのは
いじめられていた経験故だろうか。

今はもうそんなことはないのにー
どうしても、何かあるとネガティブな考えが浮かんでしまうー。

「---って…」
幸春が苦笑いするー

陽菜乃が先にぐんぐん歩いて行ってしまいー
いつの間にかずいぶん差が出来てしまっていたのだー

「--あ」
陽菜乃が振り返って、幸春が置いていかれていることに気づくー。

「--い、、いつもより歩くの早いよ…」
幸春は、苦笑いしながら言うと、
陽菜乃は「ご、ごめ~ん」と、引きつった笑みを浮かべたー

しかも、なんだか顔が赤くなっているー
しきりに落ち着かない様子でキョロキョロしている陽菜乃。

なんだか、様子がおかしい。
心配になった幸春は、陽菜乃の方を見つめて、尋ねるー。

「あ、、あの…何かあった?」
ーと。

幸春は、普段遅刻しない陽菜乃が遅刻してきたことや、
到着後の陽菜乃の様子がなんだかおかしいことを
気にしていた。

「--え、、あ、、、あはは、、、あは…な、、なんでもなぁ~い!」

なんだか、口調もおかしい気がするー

無理して女の子してるようなー。

「--……あ、ちょ、ちょっとトイレー」
陽菜乃が近くのトイレの方に向かうー

幸春は
「あ、うん」と頷くー

”あ…トイレに行きたかったのかな”と、
幸春は思いながら、
そうだったら申し訳ないことをしたなぁ…と
心の中で後悔するー

トイレを我慢してソワソワしてたなら
それを聞くようなことをして、申し訳ない、
という気持ちー。

「---って、陽菜乃!?」
幸春は思わず叫ぶー

陽菜乃が男子トイレの方に入ろうとしてたからだー

陽菜乃は立ち止まって
振り返るー。

「-な~んちゃって!」
と、笑いながらー。

そして、女子トイレに入っていく陽菜乃ー。

「---なんか、今日の陽菜乃は変だなぁ」
そんな風に思いながら、幸春は近くのベンチに座って
遊園地の乗り物を見つめるー

自分が、彼女と遊園地デートをするなんてー
中学時代ー
いや、高校時代まで、思いもしなかったー。

まさかー
こんな風に彼女が出来るなんてー

思いもしなかった。

ずっと僕は彼女なしなのだろう、と覚悟していたし、
自分に自信がなかった幸春は
”別にそれでもいいや”と小さいころから思っていたー

そんな自分がー。

だからこそ、陽菜乃のことはとても大切にしているし、
今日の遊園地デートも、
この先のデートも全力で、陽菜乃と一緒に楽しみたいと、
そう思っているー

今日も楽しみすぎて、3日前から眠れなかったぐらいだー。

男子大学生が、彼女との遊園地デートを
そこまで楽しみにしているー、
なんて笑われてしまうかもしれないー。

でも、楽しみなものは楽しみなのだから、仕方がない

♪~

LINEが届く。

親友の隆三からー。

”朝倉さんとデート真っ最中かぁ~?
 お邪魔しちゃうぜ!”

と、茶化すようなLINEを送って来る隆三ー。

”デート中は、隆三は、後回し!”
と、LINEの返事を送ると、

”ケッ~、

 ま、楽しめよ~!”と
返事が来たー。

少しだけ微笑む幸春ー

そして、陽菜乃が入っていったトイレの方向を見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”デート中は、隆三は、後回し!”

LINEの返事を見てーーー
女子トイレの個室にいる陽菜乃が
「へへ」と呟くー。

「---は~~~~~」

深呼吸する陽菜乃ー

彼女はーーー

いいや、
”彼”は、
陽菜乃ではなかったー

(おいおいおいおい…無理がありすぎだろ…?)

遊園地デート真っ最中の陽菜乃は、
陽菜乃ではないー

親友・隆三が陽菜乃に変身した姿ー。

(…いきなりミスばっかしちまうし)
長い髪を押さえながら、陽菜乃が「あ~~」と呟く。

遊園地にやってきた陽菜乃の様子がおかしかったのはー
”本物”ではないからだー。

親友の隆三が、陽菜乃のフリをして
陽菜乃として振舞っているー

そして、いきなりの変身で、陽菜乃になりきれるわけがなくー
”本物の陽菜乃”より早く歩いて幸春を置き去りにしてしまったり、
自分が陽菜乃の姿になっていることで、
興奮して顔を赤らめてしまったり、
言葉遣いがおかしくなったりしてしまっているー

一度心を落ち着けようと女子トイレに入ったものの、
自分が陽菜乃の姿で女子トイレにいる、というだけで興奮してしまうー

「-----」
スマホを見つめる陽菜乃の姿をした隆三ー。

”ごめん!大丈夫だった!”

”本物”の陽菜乃からのLINEを確認するー。
隆三は、その返事に少し安心しながらも、
”今からこっちに来るのか?”と返事を送るー

”もちろん!”

その返事に、隆三は、”それまで任せろ”と、
返事を送るー

スマホをしまうと、深呼吸をしてー

「--陽菜乃…がんばりま~す」
と、力なく呟いてから、
トイレを出たー

・・・・・・・・・・・・・・・

「--おまたせ~!」
陽菜乃がトイレから出て来るー

幸春は心配そうに「だいじょうぶ?」と陽菜乃の方を見つめるー。

「--だいじょうぶだいじょうぶ!」
陽菜乃のフリをする、陽菜乃に変身した隆三ー。

”あと2時間ぐらいでそっちに行けるからー”
と、”本物”から連絡があったー。

陽菜乃のためにー。

隆三は、陽菜乃の中学時代の同級生で、
大学で再会したー。

隆三にも”別の彼女”がいるため、
幸春・陽菜乃の共通の友人という感じで、
それぞれ、浮気の心配などはせず、
そういう感情も持っていないー

だがー
”友達”である陽菜乃に
お願いされてしまっては仕方がないし、
これは”幸春のため”でもあるー。

「親友二人のためなら、仕方ないもんな」
陽菜乃がボソッと呟くー

「え?」
幸春が首を傾げる。

「なんでもないよ!」
陽菜乃の言葉に、
幸春は「なんか今日の陽菜乃、変だなぁ」と
苦笑いするー。

「---じゃあ…まずはやっぱりアレからかな?」

「--え?」
陽菜乃は、幸春が示しているほうを見て
凍り付いたー

”お化け屋敷”

「---!!!!」
陽菜乃が青ざめるー

「---あれ?」
幸春が苦笑いする。

「いつも、陽菜乃、お化け屋敷お化け屋敷~!って
 真っ先にお化け屋敷に向かうじゃん?」
幸春が苦笑いしながら陽菜乃の方を見るー

「--え、、あ、、、あは、、、あははは、そ、そうだね~」
陽菜乃に変身している隆三は、引きつった笑みを浮かべるー

陽菜乃はー
”ホラー系”と”絶叫系”が大好きだったー。
逆に、観覧車とか、そういうのんびり系はあまり好まず、
観覧車に乗っても、
「あれ面白そう~!」と、観覧車の中から
ジェットコースターを指さすような子だった。

「---(うぅぅぅぅ…オバケはだめなんだ…)」

だがー
陽菜乃に変身して陽菜乃のフリをしている隆三は真逆ー。
絶叫マシンはダメだし、オバケは大の苦手で、
今でも夜中にトイレに行くときは
一人でビクビクしている…
そんな状態なのだ。

「--僕もさすがに慣れてきちゃったよ~」
笑いながら幸春が言うー。

幸春もお化け屋敷は苦手だったが、
陽菜乃に付き合っているうちに
最近は慣れてきてしまっているー

「---え、、あ、、、え、、ちょ!?」
陽菜乃に変身している隆三が
変な声を上げるー。

「---…え?」
幸春が不安そうな顔で陽菜乃を見るー。

その顔を見てー
陽菜乃に変身している隆三はー
”だ、、だめだ、これ以上陽菜乃っぽくない行動するのは…”と
首をぶんぶんと振るー

そう、これはー
陽菜乃のためでもあり、
幸春のためでもあるのだー

「--う、、うん、おばけやしき、とってもたのしみーーー!
 やっほー!」

棒読みでそう叫ぶと、陽菜乃の姿をした隆三は、
嬉しそうにお化け屋敷に突入したー

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!」
陽菜乃の”この世のおわり”みたいな声が、
お化け屋敷から響き渡ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「だ、大丈夫…?」
お化け屋敷から出てきた幸春が心配そうに、陽菜乃を見つめるー

「う、、、うん~~~た、、たまには
 お化け屋敷で、、、こ、、怖がる女の子、、、に
 なってみたくてぇ、、えへへへへ」
陽菜乃は放心状態のままそう返事をしたー

「-ふ~ん、そっか~
 確かに普段の陽菜乃は笑ってばっかりだし、
 たまにはいいかもね」
幸春はそう呟くと、「あ、じゃあ、次はどうする?」と、陽菜乃に聞いてきたー

いじめられた経験を持つからかー
幸春は基本、控えめで自分から引っ張っていくタイプではないー

陽菜乃に変身している隆三は
”助かったぜ”と思いながら
「一旦、メリーゴーランドで一休みしよ!」とほほ笑んだー。

”メリーゴーランド”
”観覧車”
”コーヒーカップ”

このあたりで、時間を稼いで
”本物の陽菜乃”が到着するのを待つー。

だが、
そううまくいくはずもなくー、

「--あ、陽菜乃、ジェットコースター乗りたいって言ってたよね?」

コーヒーカップを乗り終えた幸春が、
指をさしたのはー

最近できたばっかりの新型ジェットコースター

”ブレイン”だったー。

脳天を抉るほどの快感ー
というキャッチコピーで新登場した
”最恐”のジェットコースターだ。

「あは…」
陽菜乃は、引きつった笑みを浮かべると、
”ちょっとトイレ!”と叫んで、そのままトイレに駆け込んだー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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