無名@憑依空間 2024/03/23 16:41

★無料★<入れ替わり>万引きしたのはあなたでしょ!?①~確保~

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とあるスーパー。

「ーーー」
若い女性は、店内を徘徊するあるおばさんに
目を光らせていたー。

”万引きGメン”とは、
警備会社などに所属し、スーパーなどの店内で一般の
利用客を装い、万引き行為がないかどうか、
目を光らせている人々ー。

そんな、万引きGメンとして働いている
彼女、木野 梓(きの あずさ)は、一人のおばさんを警戒している
最中だったー。

万引きGメンの中ではかなり若い部類に入りー、
まだ20代の梓は、高校時代から付き合い始めて
大学卒業目前に結婚した夫・幸也(ゆきや)の先輩の紹介で、
警備会社に所属し、こうして若くして万引きGメンとして
働いているのだったー。

学生時代はバレーボール部に所属して、
運動神経も高い梓は、
一見華奢に見えるものの、
万引き犯に抵抗されても、取り押さえることが
できるだけの体力もあったー。

ポニーテールを揺らしながら、
レトルト食品のコーナーの前に立ち、
視線を横に送る梓ー。

一つ隣のお菓子コーナーには、小太りのおばさんが
行ったり来たり、徘徊を続けているー

無論ー
おばさんは、ただ徘徊しているだけの可能性もあるー。

”経験”と”直感”
その相手が万引き犯かどうかを100%突き止めるのは、
ベテランであっても、難しいー

だからこそ、怪しいと感じた客がいたらー
徹底的にマークし、
”もし”実際に万引き行為に及んだ場合のことを
想定しなくてはならないー

”万引き”でなければ、それでいいー。
自分にとっても、お店にとっても、お客さんにとってもー

しかしー

「(入れた…)」
梓は呟くー。

小太りのおばさんが、お菓子コーナーにあったカルパスを1,2本
バッグの中に入れたのだー

「(何でカルパス?)」
梓はそんな風に思いながら、さらに徘徊するおばさんの様子を
確認し続けるー。

最初に、駄菓子のカルパスという
安価なもので様子を見たのだろうかー。

カルパスの万引きに成功したおばさんは、
色々なものを万引きし始めたー。

10円なら万が一見つかっても、
問題ないー
そんな風にでも考えていたのだろうかー

カップ焼きそば
コールスロードレッシングー
砂肝ー
真ん中ぐらしソーセージー
カリフラワー
バナナチップスー

「ーー(随分派手にやるわねー)」
梓はおばさんの万引きを呆れた様子で見つめながらも
”その時”を待つー。

バッグに商品を入れているのは確実ー。
だが、今の時点で声を掛けても
「これはマイバッグです」と言われてしまえば、
例え99パーセント黒でも、捕まえることはできないー

”会計をせずにお店の外に出たタイミング”

それが、声を掛けるタイミングなのだー。

おばさんの万引きはさらに続いていくー。

キャットフード…
白桃の缶詰ー
アルカリ乾電池ー
カリフラワー…
また、カリフラワー…
さらに、カリフラワー。

そして、再び真ん中ぐらしのソーセージを今度は3,4箱
バッグの中に入れると、
そのまま外に向かって歩き始めたー

梓の思った通り、おばさんは、万引きおばさんだったのだー。

「ーーあの~!」
梓が、店の外に出たおばさんに声を掛けるー。

「ーー何よ?」
おばさんが不機嫌そうに振り返ると、
梓は「そのバッグの中身、お会計忘れちゃってませんか~?」と
笑顔のまま指摘したー

この後の行動はー
相手によって異なるー

逃げ出す人間もいれば
反撃してくる人間もいるし、
とぼける人間も、
素直に認める人間もいるー。

想定できる全てのパターン、
いずれで来たとしても、対応できるように
梓は心構えをしながら、
おばさんの反応を待ったー

「万引きしたのは、あなたでしょ」

おばさんの反応は、
今まで何人も捕まえてきた梓が
遭遇したことのない”パターン”だったー。

”万引きしたのは、あなたでしょ?”
そう言ったのはー
梓ではないー。

おばさんの方だったー。

「ーーーーはい?」
梓は思わず変な声を出してしまうー。

「ーーわたしに触れると、火傷するわよ」
おばさんが脅すような口調で呟くー。

「ーー…あ、、あのですね!
 そのバッグの中、お会計していないもの、入ってますよね?」
梓が困惑しながら今一度指摘を行うー

だが、おばさんは「あなた、まだ若いんだから、よく考えなさい」と、
高圧的に反論してきたー

意味が分からないー。

梓はそう思いながらも「一旦事務所のほうで、お話しましょう」と、
おばさんの手を掴もうとしたー

その時だったー

「ーーはい、火傷~」
おばさんが満面の笑みで呟いたー

「ーーーえ、、な、、なに」
梓が戸惑いの声を上げようとした直後ー
おばさんは、いきなり、梓に”キス”をしたー

「ーー!?!?!?!?!?!?」
驚く梓ー

若い女性と、おばさんがキスをしている光景ー
幸い、スーパーの出口付近にそのタイミングで
人はいなかったがー

そこには、奇妙な光景が広がっていたー

「ーーー万引きしたのは、あなたです」
キスを終えた梓は、そう言い放ったー

ーーー?

梓は、首を傾げたー

「ーーーえ…?何を言ってー…???」

梓が、目の前を見ると、そこには、
梓がいたー。

「一旦事務所のほうで、お話しましょう」
目の前にいる梓がにこっと、微笑むー。

”え……?”
梓は激しく動揺するー

”わたしの目の前に、わたしがいるー?”
とー。

「ーーえ、ちょ、、ちょっと待ってくださいー!
 何かがおかしーー」

自分の口から、おばさんの声が出るー
梓は思わず言葉を止めて、喉のあたりに手をやってからー
自分のシワのある手で見て、驚きの声を漏らしたー。

目の前にいた梓がニヤリと笑うー

「ーーあんたと、わたしの身体を入れ替えたのさー。
 これで、わたしが万引きを捕まえた万引きGメンで、
 あんたが、万引き犯さね」

梓が笑みを浮かべるー

「え…!?ちょ、、ちょっと!?何ですかそれ!?」
おばさんになってしまった梓が叫ぶー

梓になったおばさんは
「さ~事務所で話を聞きますよ~!」と店内におばさん(梓)を
無理やり引っ張っていくー

「ーーで、事務所はどこ?」
梓(おばさん)は、店内で立ち止まると、そう尋ねてきたー。

「ーーふ、ふざけないで…!は、早く元に戻しー…」
おばさん(梓)がそう言いかけると、
梓(おばさん)は笑みを浮かべながら叫んだー

「みなさ~~~ん!このおばさん、万引き犯で~す!」
晒すようにして叫ぶ梓(おばさん)ー

「ーちょっと!」
おばさん(梓)が叫ぶと、利用客の何人かがどよめき、
おばさん(梓)の写真を撮り始めるー

あまり騒ぎになっても困る、と判断した、おばさん(梓)は
”わかったから”と、仕方なく事務所の場所を教えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー万引きのおばさんを捕まえてきましたぁ~」
梓(おばさん)が、おばさん(梓)を事務所に連れてくるー

「あ、あぁ、お疲れさんー」
店長の小山田(おやまだ)が、少し戸惑いながら
梓(おばさん)を見つめるー

明らかに梓のテンションがおかしいことに、
すぐに気づいたのだろうー

「て、店長!」
おばさん(梓)は思わず叫ぶー

「こ、この人、万引きなんですけど、捕まえた時に
 なんか、身体を入れ替えられちゃってー」

とー。

きょとんとする店長ー

梓(おばさん)は「そ~んなことないですぅ~」と言いながら
「さ、盗んだものを鞄から出しなさい」と、
おばさん(梓)に要求するー。

”万引きしたのは、あなたなのにー”
梓はそう思いながら、
「店長!わたしー、身体を入れ替えられてしまって!」
と、今一度叫ぶー

小山田店長は戸惑いながら、おばさん(梓)のほうを指差して
「ーーあ、梓ちゃん?」と、尋ねてきたー

おばさん(梓)はすかさず、普段の出来事や
誕生日、個人情報などを色々口に出して、
小山田店長に信じてもらおうとー
必死に訴えかけたー。

「ーーえ……え?い、、入れ替わりってー…」
小山田店長が、梓とおばさん、二人のほうを同時に見つめるー。

「ー店長~!万引きおばさんの言うことなんて、
 まともに相手にしちゃだめですよぉ~?」
梓(おばさん)が言うー。

「ーーで、、でも…き、木野さん、今日、なんだか変だけど…」
小山田店長は”明らかにいつもと違う”梓の態度に
違和感を感じ、そう言葉を口にするー。

「ーー店長」
梓(おばさん)が店長に身体を密着させるー。

「ーー店長、そんなことどうだっていいじゃないですかぁ~?」
甘い声を出す梓(おばさん)ー

おばさん(梓)は「ちょっと!何してるんですか!」
と、思わず声を上げるー。

「ーーーわたしが梓で、あの人が万引きおばさん…
 見ればわかりますよね?」

店長に顔を近づけて甘い声で囁く梓(おばさん)ー

「ん、、んっ…あ、、あぁ…そ、そうだね…うん、そう、そうだ」
小山田店長は顔を真っ赤にしながらそう言うと、
「き、木野さんは、木野さんだー」
と、疑問を感じながらも、梓(おばさん)を梓だと認定したー。

「ーーちょ、ちょっと!店長!わ、わたしが梓なんですってば!」
おばさん(梓)が必死に叫ぶと、
梓(おばさん)が、机をバン!と叩いたー

「あんたが万引き犯さね!自覚しな!」
とー。

おばさん(梓)も、小山田店長もビクッとするー

「ーーき、、木野さん、”さね”ってー」
小山田店長が、普段と言葉遣いの違う梓(おばさん)に
再び疑問を口にすると、
梓(おばさん)は、突然小山田店長にキスをしたー

「ーわたしが、あ・ず・さ」
梓(おばさん)の言葉に、小山田店長は「は、、はい!」と叫ぶー

「ちょっと!!」
おばさん(梓)は思わず突っ込みを入れたが、
顔を真っ赤にしている小山田店長は、梓(おばさん)を梓だと
思い込んでー、
いや、思い込もうとしたー。

そういえばー
と、おばさん(梓)は、小山田店長が以前、
”俺なんて全然モテないからさ、この年で彼女なしさ!ははっ!”
と言っていたのを思い出したー。

「ーーー(完全に色仕掛けに落とされてるー)」
おばさん(梓)は、”しかもわたしの身体で勝手に色仕掛けするなんて”と、
梓(おばさん)のほうを睨みつけるー

「ーー盗ったものを、まずは、出してくださいー」
小山田店長が何度か咳払いしてからそう呟くー。

「ーーー…て、店長!わたしはー」
おばさん(梓)は、必死に反論しようとするー。

自分は、梓であるとー

しかしー

「ーーいいから出すのよ!
 万引きおばさん!」

梓(おばさん)の言葉に
おばさん(梓)は、なおも反論しようとするー

けれどー

梓(おばさん)が近付いてきて、
静かに耳打ちをしたー

「ーーあんまり抵抗すると、あんたの身体のまま、
 滅茶苦茶なことしちゃうよ?

 そうねー。
 例えば街中で男を誘いまくったり、
 うふふ…興奮するわぁ…♡”

小声でそう呟く梓(おばさん)

「ーーーえ…ちょ…っと…」
おばさん(梓)は唖然とするー

”そうなりたくなかったら、出しな”
梓(おばさん)の言葉に
おばさん(梓)は、表情を歪めながらもー
抵抗することができないままー
”おばさんが万引きしたもの”を、
机の上に並べたー。

”ふふふふふ…
 ちょっと”予定”とは変わっちゃったけどー
 若い子の身体っていいわねぇ…”

梓(おばさん)は、笑みを浮かべながら
万引きしたものを机に並べるおばさん(梓)を見つめたー。

②へ続く

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コメント

万引き犯と入れ替わって万引き犯扱いされてしまう
入れ替わり…!

大変なことになりそうですネ~!

あ、無料作品なのでいつも通り完結までしっかり無料デス~!
安心してくださいネ~!

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