無名@憑依空間 2024/04/13 16:01

★無料★<女体化>境界線なき世界①~ハイブリッド~

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2158年ー
人類は、更なる進歩を遂げていた。

100年前の人間からは
想像もできなかったような世界ー。

既に、人類は”地震”の恐怖からも解放されている。

人々が生活するスペースはすべて
”地面から数ミリ程度、浮遊している”状態になっていて、
大地が揺れたとしても、その影響を全く受けないように
なっているのだー。

台風が接近すれば、ドーム型のバリアが張られ、
その影響を受けずー
ゲリラ豪雨も、特殊な装置により
雨雲の発達をコントロールできる技術を手に入れていたー。

今や、月や火星、さらにはその先の惑星にまで
宇宙ステーションが建造され、
人類は、太陽系の外ー、冥王星のその先にまで
向かう方法を検討している。

そんな、2158年ー…
”性別”にも大きな変化があったー。

それはー
”ハイブリッド”と呼ばれる新たな人間が
現れ始めていたのだ。
生命の進化ー…とでも言えば良いのだろうか。

「--地震ってすごかったんだなぁ」
男子高校生の鎌田 平助(かまた へいすけ)が言う。

歴史の授業で”地震”というものを習った。
だがー
平助は”地震”を知らない。
人間の住む場所はすべて、地面から浮遊している
状態となっており、地震が発生しても、生活スペースは
一切揺れないのだ。

「---…そうね~…地面が揺れるってどんな感じなのかな~」
彼女の坂田 麻帆(さかた まほ)が苦笑いしながら言う。

雑談をしながら帰宅する二人ー。
車は、道路を走っていないー。
かつて道路だった場所には、さまざまな施設や
装置のようなものが設置されておりー

「--お~!金持ちはいいな~!」
平助が笑いながら空を見上げるとー
そこには、浮遊するマシンのようなものが
飛んでいたー。

同級生の一人が、運転しているのだ

この時代の車は、宙を浮いているー。
既に”運転”する必要さえない。
目的地を入力するだけで、あとは自動で
気ままなフライトを楽しめるー。

人口の爆増と共に、スペースが必要になった人類は、
”車”を地上から排除した。
大道路だったスペース、高速道路だったスペース…
そういった場所はすべて、撤去されて
居住地になったり、お店になったりしているー

平助が帰宅するー。
帰宅した平助はーーー
「よ~し!」と笑みを浮かべるとー
そのまま”女”になったー。

「ふっふふふ~♪」
慣れた様子で女になった平助はーー
男子高校生の制服を着たまま、
自分の部屋に向かう。

「あ、姉さんおかえり~!」
弟の真司(しんじ)が、当たり前のように
挨拶をするー

平助は、「ただいま~」と可愛らしく言いながら
部屋へと入るー。

鞄から出した生徒手帳には
鎌田 平助
鎌田 千佳(ちか)

2つの名前が書かれているー。

”ハイブリッド”
2070年台から突如出現した
新たな人類ー。

”男”と”女”を意のままに
自分で変化させることができる存在だ。
女体化したり、男体化したりー
自分で好きなように性別を変化させることができる。

最初は”異端児”として大きな騒ぎになり、
性別を自由に変えられる人間は弾圧された。
どこから出てきたのかは分からないー
けれども、人は”少数のモノ”に対して冷たいー。

しかしー
次第に”ハイブリッド”の人間が増えていくー。
生まれてくる人間にも、男女を自由に切り替えできる人間が
増えてきたー

条件は分からないー。
けれどー
”男”
”女”のほかに、
自由に性別を切り替えることができる人間が
現れ始めたことを、世界は認めるしかなかった。

2090年台に入り、世界は、
”ハイブリッド”という名称を世界統一とし、
男女の切り替えができる人間が正式に、
新たな性別として認められたー。

トイレはどうするのかー?
男として扱うべきなのかー
それとも女として扱うべきなのかー。
各国は対応に追われた。

男女の切り替えができるー
そうは言っても、
心は男なのか、それとも女なのか。
痴○の問題はどうするのかー。
色々な課題が山積みだったー。

2110年台に入り、
結局は
”男女どちらとしても考えない”ことで
決着がついたー

”男”
”女”
”ハイブリッド”
性別は3つ存在するー

そういう結論で、決着がついたー。

ゆえに、この世界にはーーー
トイレが、3つあるーーー

「---ふ~」
ハイブリッドのトイレから出てくる千佳ー。

「--まだかな~!」
平助・千佳ー
2つの名前を持つことに、
彼女は特に違和感を感じてはいない。
生まれたときからハイブリッドであった彼女は
それが普通なのだ。

「お待たせ~!」
背後から、彼女の麻帆が声をかけてくる。

ふたりは学校後にデートの約束をしていたー

「あ~!女の子できたんだ~!
 被っちゃった!」
麻帆が笑う。

麻帆もハイブリッドー。

女としての名前は、坂田 麻帆。
男としての名前は、坂田 誠。

麻帆は、基本”男”として行動していることの方が
多いが、平助・千佳と出会ってからは
麻帆として行動することも多くなっていたー。

「---ま、いいじゃんいいじゃん!」
平助・千佳が笑うと、
麻帆もにっこりとほほ笑んだー。

女同士のデートとなって、歩く二人ー。

街中の人々を見つめながら千佳がほほ笑む。

「でも…なんか、不便だよね~」
千佳の言葉に、麻帆が「ん~?」と首を傾げる。

「ほら、性別変えられないやつら!
 男と女、どっちかだけなんて
 なんか、おかしくない?」
麻帆が笑いながら言う。

「確かに~!考えられないよね」
千佳も麻帆の言葉に合わせて返事をする。

2158年の現在ではー”ハイブリッド”が
そうではない人間を見下しているー。
それが、彼ら・彼女らにとって
当たり前なのだ

”性別をコントロールすることもできない
 劣った人類”

ハイブリッドから見れば、
普通の男女とは、そういう存在でしかないのだ。

今やー
国の重要な機関や、
会社の重役ー
あらゆる”重要なポジション”は
ハイブリッドが担っている。

男に生まれたー
女に生まれたー
ハイブリッドではなかった時点で
”人生負け組”などと言われてしまっている状況で、
それが別の社会問題になりつつあった。

就職の際にも
”ハイブリッド以外お断り”の会社は多いー。

各国のトップもほとんどがハイブリッドの人間になっており、
大企業も、何もかもがハイブリットに支配
される世の中になっていた。

アメリカだけは、何故かハイブリッドによる支配を嫌い、
ハイブリッドを徹底的に排斥しており、
現大統領も普通の男性だが、
他の国のほとんどは、ハイブリッドが国のトップに立っている。
当然、平助・千佳の住む日本もそう。
現在のトップは、ハイブリッドだ。

世の中の基準は、ハイブリッドになりつつある。

「--将来結婚したら、子供何人つくる~?」
千佳が笑いながら言うと、
麻帆が笑う。

「う~ん、一人ずつ産もうよ!」と。

ハイブリッドは、自分ひとりで子供を産むことも出来てしまう。
平助の姿で男として、この時代の特殊な器具にアレを出し、
そして、千佳の姿として、女としてその特殊な器具から、
中にそれを出す。

そんな方法を使えばー
一人で妊娠・出産することもできるこの時代では
”少子高齢化”などというものも無くなりつつあった。

「---そうしよっか」
千佳がほほ笑む。

ハイブリッドたちは”混乱”すらしない。
生まれたときから、男女の切り替えを自分の意志で
切り替えできるから、
男女の使い分けには慣れている。

ある日、朝起きたら女になっていた!
なんてことになれば当然戸惑うけれど、
ハイブリッドは、小さいころから男になったり
女になったりするのが当たり前で、
男の姿のときは男の仕草、
女の姿のときは女に仕草をすることは
たやすいことだった。

「そういえばさ、麻帆ってわたしと付き合う前は
 ほとんど誠として行動してたんだよね~?」
千佳が言うと、
麻帆は笑う。

「うん~、いろいろあってね」
麻帆が笑う。
麻帆は小さいころから、ほとんどの時間を
「誠」…男の状態で過ごしていて、
女の姿、「麻帆」として暮らしている時間は
とても少なかった。

本当に”最低限の時間”だけー。

「--お父さんがね…ハイブリッドじゃなくて
 普通の男の人だから、
 性別コロコロ変えてると、すっごく嫌がるの。

 だからー
 あんまり性別変えないようにしてた感じかな」

麻帆の言葉に、
千佳は「そっか」と苦笑いするー。

ハイブリッドに対して、
普通の男女の中には嫉妬したり、
妬んだりするものも多いー。
ハイブリッド自体が、普通の男女を見下す傾向にあり、
性別の切り替えができる人間と、そうでない人間の対立は
深まりつつあるのだ。

「--ほんと、劣った存在だよね」
麻帆が笑うー。

麻帆の性格が悪い…わけではない。
ハイブリッドの人間が、普通の男女を見下すのは
”当たり前”になりすぎていて、
麻帆のような真面目な子でも、
当たり前のように、そう口にする。

「そうだなぁ…」
千佳は苦笑いするー。

「----でもさ…」
千佳はそう言いかけて口を閉ざすー

「ん?」
麻帆が首を傾げる。

「いや、なんでもない」

千佳と麻帆のデートは
終始、穏やかなムードで終わった。

「----」
帰宅した千佳は、
男としての姿・平助に変化する。

「ーーふ~」
服装は変化しないため、
スカート姿の平助は苦笑いしながら
男としての服装に着替えるー。

平助はーーー
”この世界”に疑問を持っている。

ハイブリッドとは何か。
何故、突然男女の切り替えができる
人間が生まれたのだろうかー。
今や、そのハイブリッドが人類の6割以上を占めていて、
性別の切り替えができない人間は
”旧人類”などと皮肉られているほどだ。

「--」
平助は、悲しそうに、部屋に飾られた写真を見つめるー。

可愛らしい少女ー。
彼女はーー普通の”女子”だったー。

けれど、それが原因で、
親から虐○を受けて、既に死んでいるー。

基本、ハイブリッドからは、ハイブリッドが生まれる。
片親が普通の男女でも、ハイブリッドが生まれやすい。
けどー、ごくまれに、ハイブリッド同士が結婚しても
普通の男女が生まれることがあるー。

写真の少女は、それだー。
平助の幼馴染の真紀ー。
彼女は両親がハイブリッドだったにも関わらず、
普通の女子として生まれ、
虐○を受け、死んでいったー。

「--俺は…」
平助はため息をつく。

平助は、”性別を切り替えできない旧人類”への
差別に心を痛めていた。

ハイブリッドは、
”性別の切り替え”を定期的にしないと
発作を起こして死んでしまうー。
それが、何故かは分からないー。

けれどー
平助は、何か得体の知れない違和感を感じていたー。

「--……」
手をかざすと、目の前にモニターが現れる。

この時代の、スマホに代わる、
電子端末だー
もはや、物体はなく、目の前に突如モニターが現れる。

「--ーー」
平助はあることを調べていたー

それはー
”ハイブリッドの秘密”

小さいころ、差別が原因で死んだ幼馴染ー
あの日から、平助はこの世界に疑問を持ち続けているー。
何故、男女の切り替えができる人間が生まれたのかー

平助は、まだ知らないー
いいや、誰も、知らないー

恐ろしいことが起きる日が、
目の前まで迫っていることをー。

②へ続く

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コメント

性別を自由に切り替えられる人間が出現した、
未来を舞台としたお話デス~!

②(最終回)も、もちろん無料なので
楽しんでくださいネ~!

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