無名@憑依空間 2024/06/16 15:49

★無料★<憑依>モーニング憑依②~実~(完)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

朝ー
目覚めし時計が鳴り、
誠吾が目を覚ますー

「さて、とー」
誠吾がカーテンを開けて、まだ太陽の光が昇り始めたばかりの外を見つめるー。

早起きなのは、彼女の香奈に”憑依”を始める前からで、
別に、特別意識して早起きをしているわけではないー。

前より”気を付けて”早起きしているものの、
それ以上のことはしておらず、誠吾自身も特には
負担に感じていないー。

「香奈、大丈夫かなー?
 まぁ、憑依すればそれも分かるかー」
誠吾はそんな風に呟くー。

昨日の夜、電話したとき”風邪気味”だと言っていたー。

最近は特に、何かが流行っているということは、
少なくとも、誠吾たちが暮らしている地域では起きてはいないが、
何が原因であるにせよ”熱”は侮ることはできないー。
誠吾だって、憑依能力を手にするきっかけとなった幼少期に、
インフルエンザで死にかけたのだー。

ただー、
幸い、昨日の夜の時点ではそこまで調子悪そうな感じじゃなかったし、
今日、朝起きてみて大丈夫そうなら、学校にも来るつもりの様子だったー。

香奈の体調のことを心配しながら、
自分の朝の支度やひと時を過ごし、時計を見つめるー。

「よし、そろそろ行くか」
誠吾は幽体離脱をすると、そのまま自分の身体がベッドに
横たわっていることを確認し、街を霊体の状態で飛び始めるー。

この感じは、嫌いじゃないー。
何だか、空を飛んでいるみたいで楽しいからだー。

小さい頃、何も分からずに霊体になってしまっていた
あの時とは違うー。
あの時は、苦しんでいる身体に戻るためにとにかく
無我夢中だったけれどー、
こうして”平時”の憑依であればー、
特に問題はないー。

「ーーーよし」
香奈の家に到着すると、中に入る誠吾ー。
香奈は少し寝苦しそうな表情を浮かべているー。

もしかしたら、まだ熱があるのかもしれないー。
今日も体調が悪いのであれば、大学は休んで病院に行く、と
確か昨日の夜はそう言っていたー。

「ーー…まぁ、とにかく一旦起こさないとな」
誠吾がそう言いながら、香奈に憑依すると、香奈は「うっ」と、
声を上げて、ビクンと震えるー。

いつもより、ビクッ、ビクッ、と身体が痙攣して、
苦しそうな声を何度か上げてからー、
ようやく落ち着くと、香奈は起き上がって、心配そうな表情を浮かべたー。

「ーいつもより”馴染む”のに時間がかかったなー」
香奈はそう呟くと、
汗びっしょりになっていることに気付いたー。

「ーーあ~~~~~…」
香奈に憑依してみて分かったー。
一気に”体調が悪く”なったー。

それまでは健康そのものだった誠吾が、
いきなりズンッ、と身体が重くなったような
そんな感覚を味わうー。

「ーーこりゃ…結構きついなー
 っていうか…熱、結構あるようなー」

喉もカラカラで、
汗は、恐らく熱が高くて出てしまったものだろうー。

そう思いながら、
”熱だけ、測っておくか”と、
香奈の身体で立ち上がろうとするー。

がーーー

突然、ふらっ、とめまいを感じて、
香奈は近くの棚にぶつかると
「ーやべ…こ、これー」と、そのままその場に倒れ込んで、
意識を失ってしまったー

”高熱”の香奈の身体が、”憑依により強引に目覚める”負担に
耐えきれずに、意識を失ってしまったのだー。

「ーーーーーーーー」

「ーーーーーーーー」

倒れたままの香奈ー。
しばらく、時間が経過するー

「ーーー!!!!」
香奈がようやく意識を取り戻すと、
「ーーえ…?あ…」
と、香奈に憑依したままであることに気付いた誠吾は
慌てて時計を見つめたー。

「ーーーぎ、ギリギリセーフ」
大学が始まる前の時間ー。

だが、既に香奈に憑依してから2時間以上が
経過しているー。

香奈の身体から抜け出す前に、誠吾は
香奈の身体で大学に連絡を入れておくー。

そして、ひと息つくと、
熱を測ったー。

「39.5かー。よくないなー」
さっきより体調が良くなった気はするが、熱は高いー。

「ーー高熱の時に憑依するのは、まずいみたいだなー」
さっき、意識を失った時のことを思い出しながら
そう呟くと、誠吾は香奈の身体をベッドに座らせてから
香奈から抜け出したー。

「ーーぅ…」
香奈が、ガクッと、ベッドに倒れ込むー。

「ーーーーー」
「ーーーーー」

いつもなら”すぐに”意識を取り戻す香奈ー

だが、今日はなかなか意識を取り戻さないー

「ーー…お、おいー…」
誠吾が心配そうにそう呟くー

既に5分以上経過しているー。

誠吾が慌てた様子で、香奈の身を心配したその時だったー。

「ぅ……」
香奈が、ようやく目を覚ましたー。

”あぁ、そっかー…憑依してる時間がいつもより長かったからかー…”
誠吾は思うー。

憑依時間が長ければ長いほど、憑依されていた相手が
意識を取り戻すのには、時間がかかるー。
今日は、香奈に憑依したまま失神してしまったことで、
いつもの倍以上、香奈に憑依していたー。

そのせいだろうー。

”大学には連絡しておいた
 熱が高いから、病院に行ったほうがいい”

香奈の身体から抜け出す前に、香奈の身体で書いておいた書置きを、
意識を取り戻した香奈が見つめるー。
そこには意識を失ってしまったことも書かれていたー。

香奈は調子悪そうにしながら、
”見えない”誠吾に向かって、
「わかったー。ありがとうー。面倒かけてごめんねー」と、
香奈が言葉を口にするー

「昨日、寝る時はこんな調子じゃなかったからー」
香奈がそう言うと、
誠吾は、霊体のまま頷くー。

と、言ってもー、
香奈にはその姿は見えないけれどー。

誠吾は、そんな香奈の反応を見ながら、
”とりあえずは大丈夫”と、確信すると、
そのまま自分の身体に戻るため、
自分の家に向かって引き返し始めたー。

がーーー

「ーーえ?」
誠吾は表情を歪めるー。

誠吾の家の”電気”がついているー。

いったい、これはー?

いつも、誠吾が幽体離脱をする際には電気は消しているはずだー。

そう思いながら、誠吾が慌てて自分の部屋の中に霊体のまま
突入するとー、
そこにはーーーー

「ママ… ママ… どこ? ねぇ、ママ~~~!」

「ーー!?!?」

”誠吾”の姿があったー。
幽体離脱して、抜け殻になっているはずの誠吾が
起き上がり、奇妙な言葉を口走って
部屋をウロウロしながら泣いているのだー。

「ーーな、なんだー…これ?」
”誠吾の身体”が、何故動いているのかー?
誠吾は戻っていないのにー?

「まさか、俺の身体が、誰かに憑依されてー…?」
誠吾がそんな風に思いながら表情を歪めているとー、
突然、誠吾の脳裏に”ある光景”が
フラッシュバックしたー。

幼少期ー
インフルエンザの高熱で死にかけた時のあの日の光景だー。

入院となり、ベッドに横たわるー。

当時は、インフルエンザが大流行していて、
付近にも数名の子供がいたー。

そしてーーー

”ーーえ…”
誠吾は、フラッシュバックをした光景を見ながら
呆然とするー。

親と会話をする自分ー
だが、自分が”スカート”を履いているー。

そしてー、
親と話し終えたあとに、鏡に”ツインテールの可愛らしい少女”が写るー。

”ーー!!!”
誠吾は、表情を歪めるー。

そしてー、
その子は、夜になり、苦しみ始めるー。

やがてー、高熱による脳症を発症し、
容体が急変するー。

その子は、医師たちの治療も空しくー、
そのまま息を引き取るー。

だがーーー
”その子”は、宙に浮いていたー。

自分が”幽霊”になっていると思いー、
その子は記憶もハッキリしないまま、
慌てて、”近くのインフルエンザで苦しんでいる男の子”の身体の方に向かっていくー。

そうー、
自分が”死んで”幽霊になって、記憶がハッキリしない彼女は
”インフルエンザで苦しむ”自分じゃない”男の子”を見て
それが自分だと勘違いし、その子に憑依したのだー。

”ーーーえ……”

何故、今になってその光景がフラッシュバックしたのかは分からない。

がーー
”身体の本来の持ち主”が意識を取り戻したことが何か影響していたのだろうかー。

「ーー俺…池岡誠吾じゃない…」
誠吾の霊体ー…
今までずっと”誠吾”だと思ってた、
小さい頃にインフルエンザで死んだ少女の霊体が、そう呟いたー。

「ーーーー……」

彼はー
”誠吾”ではなかったー。
あの時、同じ病院で死んだ、少女ー、元木 美穂(もとき みほ)の幽霊ー。
自分が死んで、幽霊になって、記憶がハッキリしなかった美穂は、
近くで苦しんでいた男の子ー…誠吾が、”自分”だと思い込み、
そのまま”自分の身体に戻る”つもりで誠吾に憑依したー。

以降、美穂はずっと、自分を誠吾だと思い込んで生きて来たー。

”それ以前の記憶”がハッキリしなかったのは、自分が誠吾ではないからー。
異性にあまり興味を持たず、下心も持たなかったのは、
そもそも、自分は誠吾ではなく、元々女だったからー。
幽体離脱がいつでもできるのは、自分は誠吾ではなく、誠吾に憑依した幽霊だからー。

「ーーーー…ママ!!ママ!! どこ? ねぇ!」
誠吾が叫ぶー。

そうー
”本来の誠吾”はー、
子供の頃、あの病院で憑依されてからずっと意識が戻らないままだったー。
だから、彼にとっては”身体は大学生”でも、中身はまだ子供だー。

「ーーー……う、嘘だろー…」
誠吾…ではなく、美穂の幽霊は呆然としながら呟くー。

今更、自分が”美穂”であることを思い出しても、
ずっと男として生きて来た彼女は、今更女として振る舞うこともできないー。

「ーーー…!」

”憑依してる時間が長いほど、本人が意識を取り戻すまでに時間がかかる”

誠吾ーいや、美穂は今まで”他人に憑依している時間は1時間まで”と決めていたー。
それ故に”長時間憑依され続けている誠吾本人”が意識を取り戻すことはなく、
今まで、普通に”自分の身体”として誠吾の身体に戻っていたー。

がー、今日は、
香奈の身体で意識を失ったことで”誠吾の身体”をいつもの倍以上の時間、
放置してしまったー。
それ故に、誠吾の意識が戻ってしまったのだったー。

「ーーーーーーー」
美穂は、呆然としながら、周囲を見渡すー。

もう一度、”誠吾”に憑依すれば
今まで通り、自分は誠吾として生きていくことが出来るー

だがーー

”「だってさ、自分が奪われる側になったら?を、想像したら
 そんなことできないじゃん?
 身体を奪われるとか、死ぬようなもんだしー。」”

”自分”が香奈に言ったセリフを思い出すー。

「ーーーーー………」

誠吾ーー…だった美穂は霊体のまま表情を歪めると、
もう一度”本当の誠吾”のほうを見つめたー。

身体は男子学生なのに、”本当の誠吾”は、
”子供”だー。

「ーーー…………」
美穂の霊体は、戸惑いの表情を浮かべながら
”誠吾”にもう一度憑依したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーうっ」

誠吾の彼女・香奈がビクンと震えるー。

そしてー、
香奈の身体で、香奈に憑依した誠吾…いいや、美穂は、
困惑の表情を浮かべながら、
”思い出した全てのこと”を紙に書き、そして、
香奈を解放したー。

正気を取り戻した香奈が、その紙を見つめると
「えっ…… う、嘘…!?」と、呆然とした表情でー、
今まで付き合っていた”誠吾”は、誠吾ではなかったー…
という事実を知るのだったー。

大学に向かう準備をしていた香奈は
「ーこれから、どうするの?」と、
まだ”近くにいるであろう”、誠吾ー、いや、美穂の霊体に向かって語りかけたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まさか、こんなこともできるなんてねー」

”俺もびっくりだよ”

香奈の言葉に、”美穂”がそう答えるとー、

”俺は誠吾じゃなかったけど、俺も今更、自分が誠吾じゃなかった、
 なんて言われてもしっくりこないし、これからも”誠吾”でいいかな?”
と、美穂ー…”誠吾”がそう答えるー。

「ーーふふ…いいと思うよ。わたしにとっては誠吾は誠吾だし」
香奈が笑いながらそう言葉を口にした相手はーーー

”ノートパソコン”だったー。

あのあと、美穂は誠吾の身体にもう一度憑依し、
”急に激しい頭痛が”と、救急車を呼んだー。

そして、誠吾の身体を解放ー、
”中身は子供のまま”の誠吾の元には、救急車が駆け付けて
そのまま”意味不明な受け答え”を続けたことで、
病院に搬送されたー。

脳に異常は見当たらないとは思うがー、
記憶障害のような、そんな扱いになればー、
何とかなるかもしれないし、
”あの状態のまま”放置するわけにもいかず、
やむを得ず、そんな対応をしたー。

あとはー…
両親が何とかしてくれるだろうー。

”誠吾”の両親には面倒をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいだし、
自分にとって、ずっと”母さん”と”父さん”だったから、
別れるのも辛いー。

しかし”誠吾本人”のことを考えると、こうするしかなかったー。

両親に全てを打ち明けることも考えたが
今更”憑依”とか”自分は誠吾じゃなかった”とか言っても、
かえって混乱させるだけだろうし、
”だったらそのまま誠吾の身体を使えばいい”と言われてしまうかもしれないー。

がー…乗っ取られたまま人生を終える”誠吾”のことを考えると、
誠吾にはー、いいや、美穂にはそれはできなかったー。

”誠吾”の両親には、これから何らかの形で間接的に恩返しを
していきたいー。

そしてーーー
身体を失った美穂は、香奈と相談した結果ー、
”パソコンとかに憑依ってできないの?”と言われてー
試したところ、なんと、ノートパソコンに憑依することができたのだー。

結果ー。
今、こうして香奈と”パソコンに憑依した美穂”が会話をすることができているー。

”でもまさか、こんなことになるなんて思わなかったよ”

パソコン上にそんな文章が表示されるー。

「ーわたしもー」
香奈が少し寂しそうに言うと、
「ーでも、わたしにとって誠吾は誠吾だし、
 これからも、大切な人であることには変わりないからー
 安心してね」
と、寂しそうにしながらも、前向きに微笑んだー。

”はははーありがとな”
”誠吾”がそう言うと、
”これからどうするかとか、色々課題は山積みだけどー
 とりあえず、こうしてパソコンに憑依できてよかったー”と、
文字で香奈に語り掛けるー。

香奈はそれを見て、
「ー今度はわたしが誠吾を助ける番!」と、
いつもの”モーニング憑依”に感謝の言葉を口にしながら、
穏やかな笑みを浮かべつつ、そんな決意を口にしたー。

”ははー”
誠吾はそう答えると、
”で、明日”モーニング憑依”は必要?”と、
パソコンの画面上に文字を表示して確認するー

「あっ!?うん!必要必要!
 って、またわたしが助けられてる!?」

香奈はそんな言葉を口にしながら、
パソコンに向かって
「次はわたしが誠吾を助けようと思ってたのに、
 今度もわたしが助けられる番じゃん~!」と、
苦笑いしながら言葉を口にしたー。

予期せぬ形になってしまった二人の絆ー。

これから、きっと色々な問題も起きるだろうー。

けれどー、
二人なら、そんな壁も乗り越えていくことが
できるかもしれないー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

まさかの結末(?)に…!

このあとずっとうまくやっていくことが
できるかどうかは、
二人次第ですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!☆

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

記事のタグから探す

月別アーカイブ

記事を検索