『影姫』は壊れてしまったようです ♡1 神官サリアは裏闘技場に潜入した

 上級神官戦士サリアは大きな人身売買組織とのつながりがあるとされる闘技場に潜入することになった。

 サリアが選ばれた理由は、まだ神官戦士になってからの日が浅くあまり顔を知られていないことと、その経歴の浅さに見合わない実力を持っているからだ。

 その長い銀髪と冷たい容貌からいずれは有名な神官戦士となるだろうことが期待されている彼女は、そのきらびやかな経歴を飾る最初の大きな任務として『人身売買組織の壊滅』を与えられるわけである。

 サリアの任務達成のための第一関門は『組織の運営する闘技場に闘士としてもぐりこむこと』だ。

 だがこれは問題ないと思われた。事前調査で闘技場が看板となるような『強く美しい闘士』を求めていることは知っていたし、サリアはその条件を満たしている。

 きらびやかで長い銀髪、冷たいアイスブルーの瞳。
 体つきは年齢相応というのか背が低いが、手足が長いので実数以上に身長が高く見える。
 普段は神官服を着込んでいるのでわかりにくいが背に見合わない豊満なバストを持っているのも有利に働くだろうと思われた。
 とはいえ、年若い神官の女性は多くが女だけの環境で育ち、肌を見せない服を着込む暮らしを続けているので、彼女が任務に選出された理由にその体型があることは、彼女自身には伏せられている。

 顔以外の肌を出さずに過ごすことが多い神官は目立つことに慣れていない。
 サリアに潜入を命じた神殿上層部が懸念しているところがまさにそこで、闘技場に闘士として潜入するからには意図して目立つ必要もある。
 サリアは特に『優秀だが愛想がなくカタい』少女なので、事前にレクチャーはされているが、果たしてどこまで『闘士』として振る舞えるかは心配されていた。

 一方でサリアは『さっさと実力を示して信用を得て、さっさと人身売買の証拠をつかんで帰ろう』と思っていた。

 神殿上層部が懸念した通り、目立つのは好きではない。しかも『闘士』というのは観客に戦いを見せる下賤な職業だとサリアは考えている。
 おまけにこういう裏の闘技場で見せ物に甘んじるような闘士など、実力も大したことがないだろうと思っていた。

 事前に受けたレクチャーでは露出度の高い踊り子のような服を着て戦うこともあると言われた。
『本当にそういう可能性を呑み込めるか?』と問われた時にはうなずいたが、サリアはそんな恥ずかしい格好をして恥ずかしげもなく戦う気はない。
 なにかあれば実力で黙らせて、もしも不埒なことをしようとする者あれば殴って黙らせようと思っていたし、そうしても問題なく任務を完遂する自信があった。

 そうしてサリアが闘技場に闘士として雇われることに成功した初日……

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小説家になろう(ノクターン)に掲載したものです。1話目のみ全体公開

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