夜山の休憩所 2019/08/16 19:38

書き下ろし小説制作中! 途中の原稿を公開中!(2019年8月16日)


*続くノベルは制作中の書き下ろしです。
 挿絵をつけて有料プランで公開する予定です。
*未完成段階での公開内容は、
 ぶつ切りで終わっているケースもあります。
 続きにご期待下さい。
*開発中につき完成品とは異なる場合があります。
*完成品の発表と同時に、この記事は見られなくなります。
 予めご了承ください。


「うわぁ! 海だ! 海だよみんな!」
 ギラギラと元気に照りつける太陽。
 火が点いたように熱い砂浜。
 水平線の向こうまで広がる青い海。
 入道雲が広がる濃紺の空。
 そして、水着姿の大勢の人達。
 くぅーっ、テンションあがる~!
 K学園の二年生は、夏の真っ盛りに臨海学校に来ていた。
 わたし、常世初美(とこよはつみ)が所属するB組を含め、生徒は皆、学園指定の水着を着ている。
 男子は海水パンツで、女子は野暮ったい競泳水着。
 どちらも濃紺色でお揃いなら、水泳キャップも白で統一されている。
 女子の水着はパッと見、ノースリーブのワンピースに短パンを穿いてるみたいな格好だ。
 昔は陸上競技のユニフォームみたいに、足の部分の露出が多い、レオタードみたいなデザインだったそうだけれど、今はこう。おまけに色は紺色で、地味さが目立つ。
 うー。一般の女性客みたいな華やかな水着、着てみたいなぁ。
 だって、こんなにも天気がよくてビーチも海も綺麗なんですもの。
 綺麗と言っても、有名リゾート地ってほどではないだろうけど、ゴミが散らかっていたり、浜辺に流れ着いているわけでもないんだから、十分よね。
「ったく、初美はガキだよなぁ。海なんかではしゃいじゃって」
 男子の一人が溜息をつく。
「なによー。気の置けない仲間と海に来たのよ? じっとしていられないわよ」
「学園の行事で来たんだぜ? よくそこまで喜べるよな」
「海での体育をしたら、宿舎での勉強……」
「めんどくせー」
 男子たちの目はどんよりしている。
 けど、それは、一組のカップルが通りかかったときに一変した。
 皆、ハッとした顔になって、金縛りにかかったみたいに動きが止まる。
 カップルが通り過ぎて、だいぶ遠ざかったあと、わっと歓声を上げた。
「おい、今の女見たか?」
「二十代半ばくらいのおねーさま」
「すっげぇ、ボンキュボンだったな!」
「真っ赤なビキニがよく似合ってた。AV女優かなんかか?」
「よくよく周りを見渡すと、同レベルがゴロゴロしてるぜ」
「うへへ、目の正月とはこのことだ」
 今までの陰気さが嘘みたいに、明るく言い合っている。
 仕方ないのかも知れない。
 だって皆、思春期真っ盛り。
 異性に興味があるお年頃だもの。
 同じ年頃とはいえ、女のわたしはちょっと引いちゃうけど。
 だって、カラダしか見ていないのはどうなのよ。
 人間、カラダじゃなく心でしょ!
「いやぁねぇ、男子って」
「女性をなんだと思ってるのよ」
「さいってー」
 他の女子は、あからさまに侮蔑の視線を投げかけた。
 控えめに苦笑いしたわたしと違い、まるで腐りかけの生ゴミでも見るような目で、男子を見回している。
 男子たちはすぐ気付いた。
 ほんとイヤな目つきだもんね。
「ンだよ、お前ら」
「ほっとけよ、ブスども」
「自分らが見られないからって、嫉妬してんじゃねーよ」
「ガキはこれだから困るぜ」
 男子たちも同じような目になって見返す。
 わわ、気持ちのいいビーチに、剣呑な空気に包まれてるっ。
 周りの一般のお客も、なにごとかとチラチラ見ていた。
 引率の先生はいるのだけれど、あさっての方を見ている。
 止めるつもりはないらしい。
 それって、教師、いえ、大人としてどうなのよ。
 このクラスは、ちょくちょく男女で衝突するけど、うやむやのうちに解決することが多いのを知って、放置してるのかもしれない。
 無責任!
 解決するといっても、わたしはなだめたり、苦労してるんだから!
 わたしはこんな空気はイヤだから、もちろん、なだめにかかる。
 でもどう言おう。
 切り出し方に悩んでいると、女子が男子に切り返した。
「ガキはどっちよ。あんたたちが鼻の舌を伸ばしてる女性は皆、恋人がいるじゃないの」
「「「「「ぐっ」」」」」
「俳優みたいにイケメンだけど、なにより、日焼けしたカラダが逞しい、ね」
「そうそう。あんたたちとは比べものにならない魅力的なカラダしてるわ」
「あんなカラダの男性が恋人なら最高よねー」
 ……ねぇ女子の皆……それじゃ、男子のことバカにできなくない?
 心の中で突っ込んだけど、男子の誰も、同じことを口にしなかった。
 女子が言い返したことが、クリティカルヒットしたみたい。
 皆、さっき以上にどんよりしている。
「くそぉ……おれだって……金と時間があれば……」
「いい女を連れてるあいつら、いかにもジムで鍛えましたってカラダしてるもんな」
「学生と社会人とじゃ、資金力が違いすぎる……授業や部活で拘束されるし……」
「できるもんなら、マッチョになって女を引っかけたいぜ」
 皆の落ち込みようと言ったら、ひどかった。
 男子の周りの空気だけが、黒く濁っていくように見える。
そんな淀んだオーラが霧みたいにたちこめて、範囲も広がっていた。
「わ! わ! これはマズイ! マズすぎるよ!」
 わたしは思い切り慌てた。
 なにがマズイかというのは、すぐにわかる。
 それが実際に起こるのだから。
 でも、このときのわたしは、「ソレ」を防ごうと躍起になった。
 クラス円満のために骨を折るのも、そのためなんだけれど、とにかく、男子たちを元気づけることを考える。
 えーと……この場合、肉体のことや恋人がいないことをけなされたんだから……。
「ねぇ、みんな! 人間……いえ、男はカラダじゃないわ! 心よ! 心がいいものなら、女性も好きになるものでしょ!」
 心に声よ届けと念じながら、一生懸命呼びかけると、男子たちがこっちを向いた。
 よし、いけるわ!
「わたしは知ってるよ。男子の皆は、気持ちのいい心の持ち主だって。皆と過ごした前期のことを、わたしはしっかり覚えてる。わたし、皆が好きだよ! 大人の鍛えた人ほど逞しくなくても、お父さんとお母さんがくれたカラダは立派で丈夫じゃないの!」
 男子たちには戸惑いの感情もあったが、満更でもないように口角が上がった。
「よ、よせよ常世……へへ」
「ばっかおまえ……なに言ってるんだよ……うへへ」
「まぁ、常世の言うことももっともか……人間、カラダじゃなく心だよな……うひひ」
 わたしは胸をなで下ろした。
 機嫌が直ったみたい。
 だけど、面白くないと思う人もいた。
 女子たちだ。
 考えれば当然かもしれない。
 だって、男子たちは彼女たちに、悪態をついたのを謝ってないのだから。
 不愉快な気持ちが出た強い口調で、女子が言い放つ。
「そんなの綺麗ごとだわ」
「その証拠に初美……あんた、男子の誰かに付き合ってと言われたら、オーケーする?」
「えっ」
 わたしは言葉に詰まった。
 男子の皆は好きだけど、それは友達として、クラスメイトとして好きという意味。
 異性に対するそれではないのよ。
 デートしたり、チューしたり、エッチなことしたりするのを前提とした好きじゃない。
「……っ」
 わたしがなにも言えないでいると、男子たちの間に不穏な空気が流れ始めた。
 まずい、こりゃまずいっ。
 なんとかしないと。
 もしも、「オーケーするわよ」なんて答えたら、もっとややこしくなりそう。
 そんな気もないのに言うことはできないという意味でも、解決策としては不適切。
 うー、じゃぁ、なんて言えばいいのよー。
 困りきったわたしに、女子はサディスティックな目を向けた。
 中には「ちょっと、やめなよ」とか、「やり過ぎよ」などと、制止の声をあげる子もいたのだけれど、いじめっ子の快感に支配された一部の子たちは止まらない。
「でも、初美だって、美女を連れてるあの人やあの人みたいに、マッチョで頼もしい男の人に告白されたら、オーケーしてもいいかなって思うわよね」
「それは……」
 彼女に言われた途端、頭の中にイメージが浮かぶ。
 男子たちを特に興奮させていた、彼らが読んでる漫画雑誌なんかに出てきそうな、肉感的な水着美女の肩を抱いて歩いている男性。
 日焼けしても瑞々しく照り光る大胸筋も、他の筋肉もはち切れんばかりの、大きくてマッチョなカラダ。
 あんなカラダに女子校生の華奢なわたしの肩を抱かれたり、抱きしめられる姿が脳裏をよぎったのだ。
 その途端、
 カァーッ!
 競泳水着のカラダ全体が火照る。
 晴天の浜辺の暑さが気にならなくなって、自分がどこにいるのか一瞬忘れた。
 じゅわぁぁぁ。
 なんと、大事な部分まで反応して、恥ずかしい体液が出てしまった。
 水着の股間にはパットがついているから、そうそう漏れたり外に見える位のシミができたりはしないだろうけど……うぅ……恥ずかしいよぉ。
 ここは、クラスメイトを含め、大勢の人がいるビーチなのに。
 まずい。
 目には見えなくても、匂いはしちゃうかも。
 なにか理由を付けて海に飛び込んで誤魔化さないとっ。
 あー、でも、海水にいやらしいお汁を混ぜちゃっていいの? 何も知らずに海で遊ぶ海水浴客がこんなにいるのにっ。
 頭の中がグルグル回る。
 目も渦巻きしてたかもしれない。
 でも、勝ち誇った女子の声はハッキリ聞こえた。
「あはは! 顔が真っ赤よ! なんだかんだいっても、初美もマッチョが好きなのね」
 傷ついた男子の声も聞こえてきた。
「ちくしょう、常世お前もかっ」
「あー、マッチョになりたい!」
「美女を連れて歩きたい!」
 男子たちの怨嗟の声が響いたとき、空の一点がドス黒く光った。
 ドゥンンンン!
 降り注いだ閃光がビーチのすぐ側に着弾。
 熱砂の地上がめくれ、噴水みたいに噴き上がった。
「あ! しまった!」
 わたしは我に返ったけど、もう手遅れだった。
「ぬっふっふ……モテないお前たちの恨みの声、確かに聞き届けた」
 低く地の底から湧いてくるみたいな不穏な声がした。
 中年男性めいた声で、声優になれそうなイケボ。
 けれど、尊大さに満ちた声音だ。
 声の主は、ビーチをひっくり返した男だった。
 噴き上がった砂に埋もれて、ランランと光る黒い目だけが露出している。
 彼は「ふんっ……モストマスキュラー!」とわけのわからないことを口走った。
 気合いの声と共に、やや前傾姿勢で両手を胸元の前で固めるポーズになる。
 すると、まるで爆発が起こったみたいに砂が飛び散り、彼の正体が現れた。
「うおっ! すごいマッチョ!」
「どこの筋肉も発達していて……けれど、プロポーション抜群」
「もっこりパンツが浮かび上がらせるアレの形も大きさもすげぇ!」
「そうだよ、こんなカラダが欲しいんだ!」
 黒く光るブーメランパンツに、ハチマキみたいなマスクをつけたその男に、男子たちが見入る。
 真っ黒く日焼けした肌は生命力に満ちていてセクシー。若者とも声音通りの中年ともつかない謎の男性に、男子とやりあっていた女子すらも、「素敵……」と賞賛し、見とれていた。
「ハーッハッハ。マッスルフェロモン! むぅん!」
 今度は、直立姿勢。腕を畳んで手首を曲げるポーズを取る。
 するとどうだろう。
 異変に気付いて野次馬になっていた海水浴客のうち、女性がうっとりした。
 年齢は関係なく、美女かどうかも、側に恋人がいるかどうかも関係ない。
 とにかく、あらゆる女の人が、人気絶頂アイドルに出くわしたみたいな顔をしている。
「あぁ……なんてイケメンマッチョなの?」
「もう我慢できない……抱いて~!」
 女性たちはひとり、またひとりと駆け出し、彼に抱きつく。
「おいっ、○子!」
「てめぇ、人の女になにするんだ!」
 面白くないのは男たち。
 特に、恋人がわけのわからない男に目をハートにしている人の彼氏だった。
 食ってかかったり、中には本当に殴りかかる人もいる。
 けれど、謎の男……怪人は、ひょいと拳を掴むと、ポイ捨てするみたいに放り投げた。
 見たまま言うと、本当にそんな感じなのだ。
 常識外れなことに、放り出された男性は、かなりのマッチョにもかかわらず、何メートルも宙を舞った末に、不格好に海にダイブ。ぷはぁっと海面に顔を出して、狐につままれた顔をする。
 目の前で起こったことが信じ切れないのか、腕に覚えがあるからなのか、恋人の変貌のショックが大きいからなのか、同じように向かっていく、見るからに屈強な男の人は後を絶たないのだけれど、辿る結果は皆同じだった。
「大変大変! あいつ……シャドウマターに勝てるのは、変身したわたし……ティアブライトだけよ!」
 わたしは人の目が怪人に集まってる隙に、少し離れたところにある海の家の物陰に入った。
 店の親父さんも、かき氷やラーメンやおでんを思い思いに食べていたお客さんも、自分に気付いていないのを確認した後、水泳キャップを外した。
 コロンと出たのは、変身アイテム。
 ちょっと大きめのピンクのペンで、端には丸っこくて可愛い羽が付いている。
 普段は筆箱に入れて持ち歩いているけれど、水着姿ではそうはいかない。
 だから、こんなときのために、キャップの中に入れていたのだ。
 アイツ……シャドウマターは、いつでもどこにでも現れるからね。
 もっとも、姿はそのときそのときで違う。
 世界をネガティブな気持ちで満たすとかなんとか言ってるアイツは、周りのネガティブな気持ちに影響されて、姿形が変わるらしい。
 今回は、逞しい肉体を羨む男子たちの心を取り込んだから、あんなマッチョな姿なんだと思う。
「世界の輝きを守るため……インフィニティ、レイ!」
 わたしは小声で力強く呟いた。
 それが変身の言葉なのだ。
 本当なら、アニメの変身ヒロインみたいにかっこよく叫びたいのだけれど、敵を含めて、皆に正体がバレてしまったら、大変。
 きっと、プライベートなんかなくなる。
 世界を守るのはいいけれど、それは勘弁だから、いつも気を遣ってるんだ。
 皆も、わたしの正体は秘密にしていてね。お願い?
 ピカァッ!
 わたしの変身の言葉と意志に反応して、アイテムのペンが虹色に瞬いた。
 こっそり変身したいという気持ちを汲んで、だいぶ控えめで、ペンライト程度の光りようだったけれどね。
 それでも、虹色の輝きはちゃんと迸って、競泳水着姿のわたしを包んだ。
 パァッ!
 光の中でわたしの姿は変わる。
 いったん、素っ裸になったカラダは、みるみる急成長。
 手足が少し伸びるだけでなく、オッパイがドカンと大きくなった。腰回りやお尻にもお肉がついたけれど、太ったというよりは脂が乗ったという感じ。くびれが一段と細くなったから、ナイスバディなんてもんじゃない。
 前髪パッツンのボブカットめいた髪は桃色に変わって、しかも緩くウェーブしながらお尻まで伸びた。カラダだけじゃなく、髪型もすごく大人っぽいのが嬉しい。
 カラダが変われば今度はコスチューム。
 胸元は明るい紫色でフチにフリルがたくさんついた、チューブトップタイプのビキニになって、お揃いのパンツの方も、足を長く見せるハイレグタイプに変わっていて、大人っぽいデザインになっているけれど、サイドについた紐リボンがすっごくキュート。
 両手両足には、やっぱりフリルがついた短めのグローブとハイソックスが現れて、アダルトな赤いヒールも足を包む。
 これで完了っ。
 わたしを変身させた虹色の光は弾けてかききえた。
「ティアブライト! モード〝サマー〟!」
 夏限定の変身姿になったわたしは、やっぱり小声で叫ぶ。
 うぅ、なんだかストレス。
 変身すると、お腹いっぱい食べて十時間は熟睡した後みたいに気分がいいし、開放的なコスチュームがその気分を何倍も高めてくれている。
 だから、気持ちよく思いのままに叫べないのは、ちょっと気持ち悪かった。
「けど、世界がネガティブな気持ちで包まれたら、もっと気持ち悪いに違いないわ。そんなことにはしないんだから!」
 わたしは思い切りジャンプした。
 垂直に飛んで、平屋の海の家の屋根をずっと飛び越えた辺りで周囲を見回す。
 いた。
 シャドウマターだ。
 相変わらず女性に囲まれて、襲ってくる男の人を軽くあしらってる。
 男子たちの「マッチョになってモテたい」という気持ちから産まれたものだから、その通りに行動しているに違いないわ。
 わたしはアイツに向かって前傾になった。
 重力に引かれながら青空を何度も蹴る。
 その勢いで、すぐ目の前に、まるでミサイルみたいに突っ込んだ。
 ドバンッ!
 着地した衝撃で、砂が盛大に噴き上がる。
 まるで、アイツが現れたときの再現だった。
 突然、砂の並みに襲われた人々は、流石に驚いて、蜘蛛の子を散らす見たいに逃げる。
 ただ、シャドウマターだけは、何が起こったのか即座に理解したみたい。
 砂がけぶる中、にやりと口角を上げてこっちをじっと見ている。
「現れたな、お邪魔女」
「世界を照らす明るい心……ティアブライト! それはこっちのセリフよ、シャドウマター! 臨海学校先にまで現れるだなんて、どういうつもり!」
 わたしは見得を切る。
 飛んだり蹴ったり着地したり。
 常識では考えられないことをしたけれど、カラダは無事。
 変身すると常人離れした身体能力を身につけるお陰だった。
 アイツとの戦闘経験は、一度や二度じゃない。
 最初はもてあました力だけれど、今は使いこなせてる……はず。
 少なくとも、力に振り回されることはなくなったわ。
「その言い方……まるで、お前が臨海学校に来たみたいじゃないか。素顔のお前はやはり、臨海学校に来ているそこのK学園の女子生徒というわけだ」
 シャドウマターがますますいやらしく笑った。
 遠巻きに見ている学園の生徒たちからどよめきが上がる。
 まずい!
 正体が敵や皆にバレたら、普通の生活が送れなくなっちゃうじゃないのっ。
「な、なにを言ってるのよ。そんなはずないじゃない。わたしは……そう、通りかかっただけよ!」
「K学園やその近辺にオレが現れると、いつも邪魔しに来るが?」
「通りかかってるの! わたしみたいに目立つルックスの生徒がいたら、とっくに、学園中に正体がバレてるでしょうが!」
 皆は、変身するとルックスが変わるのを知らない。
 変身後の姿は、変身前とだいぶ違う。
 だから、説得力のある弁明だと思うんだけど……うぅ……必至さがモロに出るなぁ。
 と、わたしをほっとさせる声が、クラスメイトから出た。
「確かにそうだ」
「正義のヒロイン、ティアブライトのことは学園中の皆が知ってる。でも、あんなに可愛くてカラダのエロい女子なんて、学園にはいないぞ」
「男子の言うとおりだけど……ちょっと、カラダをジロジロ見てるんじゃないわよ!」
 誰も意義を唱えない。
 よかった。
 でも、男子だけじゃなく、一般のお客の男性まで、見世物を見るみたいにジロジロ見てくるのは、正直すごく恥ずかしい。
 強くて妙に脂っこい視線が全身に突き刺さっていると、手足が変に痺れて、妙な気持ちになってくる。
 わたしは堪らなくなって駆けだした。
 さっさとコイツをやっつけて、シュウジンカンシからおさらばしたいわ。
 ブオオオオオオオオオオッ!
 駆けだしたと言っても、そこは超人になってるわたしのこと。
 自動車が全速力で突っ込んでるみたいに、砂が巻き上がる。
 瞬きするよりも短い時間で敵に肉薄したわたしは、おもむろに拳を突き出した。
 ケンカの仕方なんてわからないフツーの女子校生のわたしだけど、変身すると、変身アイテムのペンを握りながらだと、まるで格闘家みたいに戦えちゃうんだ。そーいう電波でも出てるのかな。
 ドバンッ!
 生まれる衝撃音と衝撃波。
 アイツの胸元に向かってまっすぐ突き出した拳は、相手も同じように突き出した拳で止められてしまった。そのせいだ。
 目元だけを隠すハチマキみたいにマスクに、ブーメランパンツ一枚の、日焼けしたゴリマッチョという、見た目はかなりヘンタイなヤツだけど、身体能力はわたしにひけをとらないのよ。
 心や言動はともかく、アイツも立派に超人なのだから油断はできない。
「うおっ、いつもながらふたりの戦いは迫力あるぜ!」
「なんだコレは……まるで映画じゃないの!」
 ちょくちょく目の当たりにしているK学園の生徒達も、偶然居合わせた海水浴客も固唾を呑んで見守る中、わたしはさっとバックステップ。距離を置いて相手の様子を見る。
 シャドウマターは、自信たっぷりの様子だった。
 もっともコイツは、かなりの見栄っ張り。
 ほんとは、子供に小突かれても倒れるってときでも、勝ち誇った顔を崩さない性格だから、表情からはあんまり体調や気持ちを測れない。
 でも、他人を小馬鹿にしたり、見下したり、悪事を働いて皆に迷惑をかけたりするのは、本心からしているということで、確実ね。
 短くない付き合いだから、そのことはわかる。
 コイツには、話し合いなど通じない。
 悪いことはやめなさいと説得するのは、プリンにゼリーになりなさいと言うのと同じ位ナンセンス。
 ヤルかヤラれるかという相手なのよ。



今回はここまでです。
次の更新、作品の完成にご期待下さい。


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