市街地 2024/06/05 15:44

【小説サンプル】淫墜神話〜女スパイを守る半神の執着監禁愛〜

あらすじ

帝国の力の秘密を探るため、研究施設へと潜り込んだ私は研究所の所長を務めるアレスと出会う。
彼と親しくなるほどに自分がスパイであることに罪悪感を抱くようになり、次の潜入先を見つけて研究所を去ろうとするが、直前で正体がバレてアレスに捕まってしまう。
アレスの所有物になることで処刑をまぬがれた私は彼の屋敷に監禁される。


全体を通したプレイ内容

無理矢理・中出し・連続絶頂・クンニ・乳首責め・クリ責め・ポルチオ・溺愛・執着・玩具・異物挿入・お仕置き・正常位・お風呂エッチ・寝バック etc.

※ハート喘ぎ、濁点喘ぎなし。
※ヒロイン視点の一人称小説です。



『淫墜神話』

1.彼の所有物になる


血まみれの手をひっさげて、その人は私の前に現れた。よく見ると手のひらの肉がぱっくり割れている。

「ごめんね、掃除してくれたそばから汚してしまって」

あまりの痛々しさにぎょっとしていると、申し訳なさそうに話しかけられた。

まさか帝立魔法工学研究所のトップが私みたいな下っ端に謝るとは思ってなくて、慌てて勢いよく首を振る。

「とんでもございません! そんなことよりも、お怪我は……」

聞いてはみたものの、大丈夫じゃないのは一目瞭然だった。手のひらは肉が裂けて、傷口から本来見えてはいけない中身が顔を覗かせている。救護室行き必須の緊急事態だというのに、なぜ傷を負った本人が涼しい顔をしているのか。

彼は興味なさげに自らの手のひらへと視線を落とす。

「実験中に神力が暴走してうっかりやってしまったんだ」

「差し出がましいとは承知していますが……その、うっかり……で済ませていいレベルの怪我ではないかと」

「そっか、君が最近新しく入った子だね。だったらその反応も無理はない。そう焦らなくても、この程度の傷はすぐに塞がる。——俺は、半神だから」

彼の視線が血まみれの手のひらから私へと移動して、目があった。宝石みたいな薄紫色の瞳に自分が映ったことで緊張感が一気に高まり、モップを持つ手に力がこもる。

余計な心配をしてしまった。偉い人の時間を無駄にした。無礼な口利きを真っ先に謝らなければならない——と、頭でわかっているのに、私の口からは別の言葉が出てしまう。

「その……痛くは、ないのですか?」

意外な質問だったのだろう。おや、と一瞬目を見張った彼は苦笑して肩をすくめる。

「俺の半分は人間だから、痛みは人と同じように感じているよ。でもこれぐらいはもう慣れっこだ」

つまり、人間を超えた存在であるこの人にも、痛みはあるんだ。

「心配してくれてありがとう。ここの職員は俺が損傷しても『またか』って感じで気にしないから、その反応は新鮮で面白かった。手間をとらせて申し訳ないけど、もう一回、廊下の掃除を頼むよ」

彼は傷のない手をお椀のようにして、血が流れる手の下にそえた。そのまま立ち去ろうとした彼を引き止めたのは、なんの下心もない、無意識の行動だった。

「あのっ、もしよろしければ、私に手当てをさせていただけませんか。外傷の治療なら、少しは心得があります」

きょとんとした彼が断り文句を口にする前に、勢いでさらにまくし立てる。

「たしかに放置しても傷はすぐに塞がるかもしれませんが、痛覚を感じている時間は、一分一秒でも短いにこしたことはないでしょう。それに傷を治療したという実績は、精神的にも痛みの緩和に繋がるのではないか……と」

警戒心をひしひしと感じて言葉尻がすぼむ。

やっちゃった。苦労して入り込んだ場所で、働き始めて間無しに施設のトップに目をつけられるようなまね、したら駄目でしょうが。

案の定、彼にとって私の気遣いは不要——を通り越して不愉快だったようで、柔らかな表情にやんわりと拒絶の色が浮かび上がった。

「放っておけば治るものに余計な治療を施すのは、効率が悪いと思わない? 廊下を汚してしまったのはすまないと思うけど、俺の怪我は君と関わりのないことだよ」

完全に怪しまれている。彼は私の心配が演技で、他に狙いがあるのではと疑っている。

たしかに私には後ろ暗い部分がある。でも……その怪我を治療することに下心はないんだけど……。

「出すぎた発言をして申し訳ありません。ですがその傷は……見ていて、とても痛いです」

どちらかというと、治療をさせてほしいのは自分のためだった。止血して包帯を巻いて、もう大丈夫という実績を作って私が安心したいのだ。

かいつまんだ説明に彼はますます目を丸くする。

「君が痛いの? 君自身は怪我をしてないのに?」

「……はい……」

「……そっか、それはごめんね」

頭脳明晰で聡明な彼が、そのときどんな思考をして自己完結に至ったのかを知るには、私の知識がたりなかった。

目の前の美しい青年はかすかに目を細めてふわりと微笑む。そうして真っ赤に染まった手のひらを、淑女をエスコートするように私へと差し出した。

血がだらだら。そのうち治るとは言ってたけど、こうして話しているあいだに出血が止まる気配はない。大丈夫なの、これ?

裂傷の深さに眉を寄せた私を見て、彼はくすりと笑った。

「それじゃあ、君にお願いするよ。掃除はあとでいいから、俺の私有エリアまで来てもらおうか」

「いえ、救護室で十分では」

「うちの医官は無駄を嫌うから、俺に備品を使われたくないだろう。こっちだよ、ついておいで」

返事を待たずに背を向けられ、歩き出した彼を早足で追いかける。

共用エリアを出る際に、彼は私の持っていたモップを取り上げて手近な職員に押しつけた。

「所用があって彼女を借りてくから、廊下の清掃は他にまわしてくれ」

あっさりと了承した職員は、彼の血まみれの手に見向きもしなかった。

「君は共感能力が高いんだろうね」

ひと気のない通路で、前を歩く彼に告げられる。

「他者の感情や痛みに敏感なのは、ある種の個性であり、才能なんだろうけど……。ここで長く働きたいなら、俺の怪我を見て『痛そう』なんて、職員の前で言ってはいけないよ。心の弱さは、解雇理由に相当するから」

それは困る。ようやくここまできたのに、私は同情で今までの苦労を水の泡にしかけたのか。今後は気をつけないと。

前を歩く足が止まる。振り返って中腰になった彼に顔を覗き込まれた。

「わかった?」

「——はい」

念押しに深くうなずくと、彼もゆっくりと顎を引いた。

「そういうわけだから、今回君に手当てしてもらうのは、ただの俺の気まぐれだよ?」

……表向きにはそういうことにしておきなさい——という意味だろう。

「承知しました。お心遣いありがとうございます」

「良い子だね。さあ、ここは研究所内でも俺の私的なエリアだから、君も肩の力を抜いて大丈夫だよ」

「いえ……さすがにそれは」

突然何を言い出すんだこのお方は。

「じゃあ慣れてきたらそのうちってことで。ひとまずコレの処置をお願いできるかな。なんか太い血管やっちゃったみたいで、いつも以上に出血が長引いてるんだ」

慣れてきたらって、なに? ラスボスとの遭遇なんて今回が最初で最後にしてほしい。

心の中で毒づいていたが、すぐにハッと我に返った。

「ていうか、どうしてそんな裂傷を自然体で放置してるんですか⁉ 傷口は洗いましたか? 布で患部を圧迫するとか、心臓に近い血管を圧迫して止血するとか……もっとこう、いずれは治るにしてもできることがあるでしょう!」

「うーん、なんかめんどくさくて」

「血で汚れた施設を掃除する者のことも考えてください!」

「あはは、ごめんごめん」

軽い口調で謝る彼は、なぜかとても、嬉しそうだった。





これが私と、彼——アレスのはじまりだった。

それからというもの、アレスは実験で怪我をするたびに私のところまで来て、応急処置をねだるようになった。

私が断ればどんな大怪我でも放置されるとわかっていたから、拒否することはできなかった。

お願いに裏があるのではと、警戒したのは最初だけ。手当ての回数を重ねるごとに私から彼への遠慮が消えて、気さくに話せるようになっていった。

研究所の職員は、半神半人の彼が人間の私を可愛がるのを、ただの暇つぶしと認識しているようだった。贔屓に対する多少の嫉妬はあっても、みんな様子見という感じで何も口出ししてこない。それをいいことに、私たちの関係はどんどん親密になっていった。

——君は優しいね。

アレスにそう言われると、いつも胸が痛んだ。

秘密が罪悪感となって心に重くのしかかる。





私は、本当は帝国民ではない。

たとえどれだけ親しくなろうとも、帝立魔法工学研究所の所長に私が敵国のスパイだと打ち明けるわけにはいかなかった。





    *





グラナート帝国は雷神ゼノルウスに護られた、大陸最大の国家である。

およそ四〇〇年前、まだグラナートが小さな王国だったころのこと。

雷神ゼノルウスはグラナートの姫に惚れ込み、妻にと望んだ。

求婚を受けた姫は神に嫁ぐ条件として、戦争によって危機的な状況に陥っていた祖国の救済を申し入れた。ゼノルウスは姫の要求を聞き入れ、自らの力の一部をグラナートに与えた。

そうして姫は天界に渡る。

雷神の加護を手に入れたグラナート王国は敵国を圧倒し、やがて多くの植民地を支配する一大帝国となった。





天界の神に気に入られ、加護を受けた人間は「加護持ち」とされ、神から与えられた加護を自らの意思で操れる稀有な存在を、人々は「魔法使い」と呼んだ。

神の加護は受けた本人だけの特権。魔法は一代限りの奇跡の力であって、通常は人間の意向で誰かに継承させることは不可能だ。

そういった点からも、雷神ゼノルウスがグラナートへ与えた加護は例外中の例外であった。

グラナート帝国にはゼノルウスの加護を持つ魔法使いが百人規模で存在する。彼らは皆、皇帝直属の魔法部隊に所属していた。

神の加護を受けて魔法使いになる者の選定は雷神ゼノルウスではなく、歴代の皇帝——つまり人間によって行われてきた。これも本来ならばありえない。

帝国の魔法使いはゼノルウスの加護を駆使して敵国に雷の雨を降らせる。武器と武器をぶつかり合わせる戦いが馬鹿らしくなるぐらい、帝国が仕掛ける戦争はいつも一方的な殺戮だった。

グラナート帝国の領土は日を追うごとに拡大している。このままでは大陸の覇権を帝国が握ってしまう。



帝国という共通の敵に危機感を強めた大陸の国々が同盟を結ぶのは、必然的な流れだった。とはいえ帝国が脅威となるまでは領地を奪いあって敵対していた国同士、そう簡単に一枚岩にはなれない。

どうにかして、グラナート帝国の強さの根源たる雷神ゼノルウスの加護の秘密を突き止め——あわよくば、我が国の力にできないか——と、大陸中の国々が望んでいた。

私の生まれた小国もまた、そんな思惑のもと一縷の望みをかけて私を帝国に送り出した。

しかし私が何年もの月日をかけて、ようやく帝都の魔法工学研究所に潜り込んだころにはもう、祖国は大陸の地図から消えていた。

帰る場所は、もうない。今の自分を突き動かしているのが怒りなのか、虚しさなのか、憎しみなのか。私にもわからない。

ここまできたらもうあとには引けない。へたに国外へ逃げるほうが危険だ。

それに与えられた使命とは関係なく、帝国がひた隠しにしている「ゼノルウスの加護」の秘密を知りたかった。——だったらもう、前に進み続けるしかない。





そしてこれは、その選択の結果だ。





     *





「……っ、……ぅ……、く……んぅっ、うぅ……、ぁっ」

「声は抑えないでって、何度言えばわかるかなあ。……それとも、この程度の刺激は、君にとって感じるにあたいしないってことなのかな」

グジュリと、熱い雄芯に身体の深い場所を押し上げる。

「ちっ、ちが……っ、うぁ、やっ、……ぁっ……ああぁっ!」

腹の奥から湧き上がる快感に否定の言葉はかき消され、彼の望んだとおり口から嬌声がこぼれた。

「うん、良い声」

薄紫の瞳をうっとりさせて、私を組み敷いたアレスが微笑む。

最奥からペニスが引き抜かれる。そり返った先端に膣壁を抉られて、背中がゾクゾクとわなないた。

カリが膣口に到達する。ぐぼぐぼと入り口の引っ掛かりを楽しんだあと、その凶悪な亀頭でGスポットを執拗に責められた。

「ひ……ぃっ、や、もうっ、だめ……っ、あっん……っ、あ……また、イッ……イッちゃう、から……っ! あっ……ああぁ————っ!」

ビクビクと全身が痙攣して、呆気なく絶頂に達した。これが何回目の絶頂なのか、もうわからない。肉体はとうに限界を超えていた。しかし身体は貪欲に快楽を拾い、ペニスの刺激を享受し続ける。

「やぁ……も、苦し……ぃんっ、……おねがい……はやく、おわって……ぁっ、んぃいっ!」

————ドチュッ!

懇願は最奥に叩きつけられた衝撃でいとも簡単に潰された。

アレスが鼻で笑った。覆い被さった彼の口づけで言葉を封じられる。

「むぅ……ふっ、……ん……んぅう……ぅっ」

分厚い舌がねっとりと口腔内を這いまわる。息苦しさから振りほどこうと試みるも、反抗を察したアレスに顎を掴まれては逃れられなかった。

酸欠で頭がぼうっとする。蓄積された疲労感も合わさり意識を手放しかける寸前で、口づけがとかれた。

荒い呼吸を繰り返す。息が整わないうちに秘所に腰をぐりぐりと押し付けられ、快楽に悶えた。

「終わって……か。まさか自分が要求できる立場にいると思ってるの? 俺はまだ満足していない。その意味は、いくらなんでもわかるよね」

「ぃっ……あ……ぁんっ、あっ……やぁ……んんっ」

「君は俺が飽きるまで付き合わなければいけない。道具と同じだ。ただ一方的に使われるだけで、そこには義務すら発生しない。自分の物をどう扱うかは、俺の自由だから」

「……っ、はぅ……ぁ……っ」

口端からこぼれた唾液を彼が舐め取る。唇についばむようなキスが落とされた。

涙で滲んだ視界にアレスの紫の瞳が映った。

どこも怪我していないはずなのに、まとう空気がとても痛々しい。

至近距離で見つめあう。彼の薄い唇がゆっくりと動いた。

「君は俺の——玩具、になったんだ」

——オモチャ。その単語だけは、ひときわはっきりと発音された。まるで扉の向こうで様子をうかがっている者に聞かせているような言い方だ。

痛い、痛い……。胸を締め付ける痛みは私の受ける仕打ちからくるものではない。これは全部、アレスの苦悩だ。

流れ落ちる涙を指で拭われた。ぶつけてくる言葉とは裏腹に、彼の手つきはとても優しい。

「そんな顔しても無意味だよ。面倒な事は好きじゃない。頼むから、簡単に壊れないでね」

身を起こしたアレスは私の涙で濡れた指先をぺろりと舐めて、その手を秘部へと近づけた。

グリリィ——と、親指の腹でクリトリスを押し潰される。

「い……っ、あっ、ああぁっ! やぅっ、うん……っ、あ……っ、やぁあっ」

快楽神経の塊を容赦なくこねられ、浮いた腰がガクガクと前後に揺れた。連動するように膣道が勝手に収縮してペニスを締め付け、快感が上乗せされる。

甘イキを繰り返す私を見下ろし、アレスは声をあげて笑った。

「いいね、君のさえずりは聞いてて飽きない。ナカの締まり具合も最高だ。ほんと……いい拾い物をした」

アレスの不穏な気配に悪寒が走ったのは一瞬だけで、すぐに強烈な快感によって私の思考は流されてしまう。

「……っ、ゃっ、あ……っ! いっ……イク……ぅ、イッ……っ、やぁっ、も……や……っ、だめっ……やめてぇ!」

強すぎる刺激に恐怖して必死に訴えるが、彼が聞き入れるはずもなく。親指と人差し指で挟むようにしてクリトリスをいじられ、さらにはペニスで感じる箇所を重点的に擦られる。

「そうだね。いっぱいイけて、気持ち良いね」

「やだぁっ、あ……あぅっ、……も、むりっ、ぃ……っ、イク、の……やあぁ——っ!」

プシッ、プシャアアァ————。

勢いよく吹き出した液体が彼の手にかかる。

「ああ……潮まで吹いて、そんなに良いんだ」

「あぅんっ、あ……あん、う……ぁっ、あっ……」

「気持ち良い、よね?」

絶頂から降りられないさなかに同意を求められ、気づくと首を横に振っていた。快楽を否定したわけじゃない。気持ち良いとか、そういったことを考える余裕もなくて、もう身体が限界なのだと伝えたかったのだ。

反抗ともとれる仕草をアレスは特別気にした様子もなく、両手で私の腰を掴む。

「まあ、反応はどうでもいいか。重要なのは、俺が君で楽しめるか否かの一点だけだ。玩具の性能に過度な期待はしていないよ」

多少の欠陥があろうとも私の身体には満足していると尊大に言い放ち、アレスは容赦のない抽挿を開始した。

彼の儚げな風貌からは想像できない、太くて長い、血管の浮き出たグロテスクなペニスが膣壁を抉りながら奥へと突き進む。

————バチュンッ!

先端が子宮の入り口を突き上げる。衝撃に腰がビクンッ! と大きく跳ね、目の前に火花が散った。

背中をそらせて声にならない悲鳴をあげる私を無視して腰が打ちつけられる。

「……っ、……ぃっ……ぅ、ぉあ、あ……っ……んぁあっ!」

これ以上はないと思っていた快楽が、いとも簡単に上書きされる。気持ち良い……良すぎて、自分が置かれている状況はおろか、アレスに対する複雑な感情すらもわからなくなる。

アレスが腰を引くのにあわせ、先端の膨らみがGスポットの上をズルリと通る。

「いぅっ、あ……んんっ……ぁっ」

ゾクゾクと腰の痺れに見舞われるかたわらで、熱が退いた膣道の奥は刺激を欲して切なくうねった。貪欲に収縮するその場所へ、狭くなった肉の道をこじ開けながら肉棒が突き進む。

「————っ‼」

硬い亀頭が子宮口を穿つ。強烈な快感が全身を駆け巡り、思考をぐちゃぐちゃに掻きまわす。

「……とんじゃった? よがるのはいいけど、呼吸ぐらいは自分でやってね。帝国産じゃなくても、生き物として最低限の生存本能は備えているでしょ」

「……は、ぁ……ぅ? ぃ……ぉっ、ぐぅ……あっ、ああぁっ!」

アレスがなんと言ったのか、耳から入ってきた声を言葉として処理する間もなく、次から次へとペニスを子宮口に叩きつけられる。

いつもの穏やかさが消えた酷薄さの滲む中性的な声は聞こえている。でも、蔑みの言葉が心に刺さる余裕がないぐらいに、私は彼がぶつけてくる快感に溺れていた。愛液と白濁液でドロドロになった膣内が、もっと欲しいと子種をねだる。愉悦が私から惨めさを忘れさせ、今この場で感じる快楽が自分のすべてになっていく。

グボグボと容赦なくポルチオを責められる。アレスのやり方にこの身はすっかり慣らされ、最奥に到達した凶悪なペニスに肉壁が媚びて吸いつく。荒々しいピストンを包み込むように受け止めて、自らも悦楽を享受する。自分がこんなにいやらしい肉体をしていたなんて信じられない。

「……あぁ、俺もイキそう。またナカに出すから、ちゃんと全部飲むんだよ」

ドクリと脈打った肉棒が、太さを増した。

「ぃっ、ぅあっ、あ……っ、〜〜〜〜!」

ペニスの先端が子宮口に食い込む。次の瞬間、胎内で灼熱が放たれた。

これが初めての射精ではない。何度目の中出しなのか、もう数えていない。

私の腰を抱え込んだ彼は子宮内へと精液を注ぎ込む。

子宮が歓喜に震え、痺れるような快感が熱と共に全身を駆け巡る。腹部がヒクヒクと小刻みに痙攣する。はくはくと開閉を繰り返す口からは、声らしい声が出てこなかった。

ズチュ、ヌググゥ——。

「……っ、……ふ、く……ぅ……うぁ、ぁっ……」

子宮口をこねまわされて沈みかけた意識が浮上する。雄芯はいまだに萎えず、私が意識を手放すのを許してくれなかった。

「この程度でへばるとは……、今後は体力面のメンテナンスも必要かな。ああ、別に俺は長時間の性交に耐えられる、頑丈な玩具が欲しいわけじゃないよ、そこは勘違いしないでね。俺自身の手で、自分の好みにあわせて作り変えるのが楽しいんだから、くれぐれも俺の娯楽を奪ってくれるな」

扉を一枚隔てた先にいる誰かと、アレスが喋っている。

「——俺だって男だし、そりゃ欲しくもなるよ。これまでさんざん魔法工学の発展に貢献してきたのに、帝国は俺に抱き人形の一体も所有してはいけないと言うのか? ——皇女? ……そんなのいらないよ。しがらみが増えたら、研究どころじゃなくなってしまう」

……ヌチュ、ヌチィ……、ズル……ズチュン。

話しながら、彼はゆっくりと腰を動かす。送られる快楽に腰がなまめかしくくねった。

「ひぅ……あ、ぁっ……ぅっ……ぃんっ」

「——それぐらいは俺も承知している。コレは研究所の内部を知りすぎた。今後は外部の者と接触させない。俺のエリアで厳重に保管するとして、管理方法は明日にでも書類にまとめて提出するよ。皇帝を納得させるには必要だろう?」

扉の向こうにいる男がなんと言おうと、アレスは私を所有するという、自分の意思を曲げなかった。

言葉の応酬はしばらく続き、やがて部屋の外の気配が消えた。説得を諦めたのだろう。

「……やっと行ったか」

アレスが長いため息を吐き出す。疲れたとぼやく彼の、まとう空気が変わる。私を物だと断言したときの冷徹さは消えて、いつもの穏やかで優しい彼に戻った。

そして愛情深い眼差しで私を見つめながら——熱くたぎる剛直で、ドチュドチュとポルチオをこねてくる。

「あぁ、ぁ……、あんっ、んやぁ、あぁっ」

「もう何も心配いらないよ。君を処分なんてさせないし、帝国の連中からは、俺が守る」

「ぃ……ぅっ、ぁ……アレ、しゅ……っ、も……む、り……っ」

「うん。これからはそうやって、俺の腕の中で鳴いていればいい。君はもう、ここでしか生きられないんだから」

「あぅっ、んんぅ————っ」

耳元でささやかれ、この身は飽きることなく絶頂へと昇り詰めた。

「はぁ……っ、すごい締めつけ……、口では無理とか言うくせに、ナカは俺の子種を欲しがって……お互い、素直じゃないね」

打ち震える身体を抑え込まれ、膣奥に精液を放たれた。

度重なる射精に子宮が歓喜する。胎内に溜まる熱に思考が溶かされ、腹の奥から湧き上がる多幸感で埋め尽くされる。

焦点が合わずぼやけた視界で恍惚と微笑むアレスを見た。目が合うと、彼は私にキスを落とした。

「ようやく君を、俺だけのものにできた」

意識が薄れゆくさなか、独占欲を剥き出しにした彼の声は、いつまでも耳に残った。





     *





魔法工学研究所の所長アレスは、雷の神・ゼノルウスと人間の母親・マイアのあいだに生まれた半神半人の神の子だ。

彼は神の加護がなくても魔法が使えた。治癒能力も高い。

青年の見た目で数百年の時を生きてきたアレスの神秘的な薄紫の瞳は、父親である神の血の影響だという。

母親譲りの美貌は、世の美女たちがひと目で敗北を悟るほどだとうたわれる。実際に、アレスの容姿は非の打ち所がない芸術品のようだった。

一二〇年前に天界から帝国に降り立った彼は、父親であるゼノルウスの力によって繁栄を極める帝国に、さらなる発展をもたらした。

それまでゼノルウスの加護は皇帝によって選ばれた者を魔法使いに変えることはできたが、帝国の魔法使いが扱う魔法は攻撃に特化した術ばかりだった。そこにアレスが天界の知識で手を加えたことにより、ゼノルウスの加護はより汎用性の高い地上のエネルギーへと組み替えられた。アレスは帝国を守護する殺戮の力に、別の使い道を見出したのだ。

それによって新たな動力と機械が発明される。土木工事や鉱山での採掘に携わる者の死亡者数は大幅に減り、帝国民の暮らしは飛躍的にさらに豊かになった。功績が皇帝に認められ、アレスは魔法の発展のためなら予算を気にせず好き勝手に研究を実施できる権利を得ていた。

自らも魔法を使いこなし、卓越した頭脳を持つアレスは容姿も含めて存在そのものが人間を超越しているが、その実、性格は気さくで傲慢さなんてかけらもない。

外民への差別意識が根付いた帝国民よりも、半神であるアレスのほうが親しみやすい。——そう感じてしまったところから、もしくは、もっとずっと以前から、私の潜入は失敗していたのだ。





ゆっくりと意識が浮上する。

まぶた越しに感じた明るさで今いる場所があの暗い地下室でないとわかり、ほっと力が抜けた。

全身がぽかぽかと温かい。ピチャリと水が跳ねる音を聞いて、遅れて自分がお湯に浸かっているのだと気づく。

「……ん、ぁ…………?」

「起きた? ……よかった。だいぶ無理をさせたけど、身体は大丈夫?」

後ろからした声にほっとする。声色は、いつもの優しい彼だった。

「……アレス?」

名前を呼ぶと腹部にまわされた腕にぎゅっと力がこもる。

「そうだよ」

私の肩に顎を乗せたアレスが静かにささやく。

もくもくと湯気の立つ、乳白色を基調としたタイル張りの浴室。私はお湯が満ちたバスタブの中で、アレスに背中を預けていた。

「疲れているだろうから、そのまま何も考えずに力を抜いていればいい。あとは俺がするから」

わかったと、素直に従うことはできなかった。かといって無闇に拒絶もできなくて、背中に当たる彼の体温に心をぐちゃぐちゃにかき乱される。

「……どうして」

疑問は自然と口からこぼれ落ちた。疑問は漠然としていて、私自身が置かれた状況への理解が追いついていなかった。

問いかけに答えは返ってこない。代わりに腹部にまわされていた手が滑り降り、長い指が蜜壺に侵入してきた。

「や……っ、だめ……ん、ぁんっ」

「一応、さっきかき出しはしたけど、まだ俺のが残っているかもしれない」

さんざんペニスで突き上げられて柔らかく熟れた媚肉を二本の指が押し開く。

「あ、……ぃ、んんっ、あっ、やぁ」

膣道で指が鉤状に曲げられ、できた隙間にお湯が入り込んだ。ナカをかき混ぜるような指の動きに身悶え、水面が大きく揺れた。

「可愛い……君がこんなに敏感だったなんて」

「んぃっ、あ、ああっ、やめて……そこっ、やぅ……だめぇっ」

クリトリスの裏側を指の腹で擦られる。押し出されるようにしてツンと突き出たピンク色の肉芽は、外側から親指でくにくにと転がされた。

快楽神経の塊に直接刺激を与えられて脚が跳ねる。バシャンと水面が大きく波打った。

「あつっ、熱いの、アレス……っ、やだぁ……あぁっ」

「嫌なわけないだろ。俺が助けなかったら、もっと悲惨な目に遭ってたってのに。軍の奴らの慰み物になって、○問の末に処分されるほうがよかった?」

「ちが……っ、あ、あなた……が、んんぅ、あっ、ああぁ、いっ、んぁあっ!」

「イキそう? いいよ、いっぱいイッて、頭を真っ白にしようか。悩みも不安も、……俺への憎しみも、なんにも考えられなくしてあげる」

「ひぃうっ、あっ、ああっ! や……っ、あれ、す……うぁっ、あ、アレス……っ!」

執拗な指責めに怯えて身を捩るが、腹部にまわったアレスのもう片方の腕にがっちりと身体を抑えられては快楽から逃げられない。

「んっ、んあぁ————っ!」

抗うすべはなく絶頂に達した。意識しなくても膣道はぎゅうぎゅうと指を締め付け、さらなる快感を求める。そんな私の本能的な願望を無視して、アレスはあっさりと指を抜いてしまった。

「んっ、あ……ふぅ、ぅ……はぁ、あっ……」

ひくんっ、ひくんと揺れる腰を両手で掴まれ身体が浮いた。お湯の浮力を借りてバスタブの中でくるりと身体が向きを変えてアレスと向かいあう。

前のめりになって倒れかかった上半身を支えるため、咄嗟にアレスの肩にしがみついた。

「目がとろんとして可愛い。そんな顔見たら、俺もまた欲しくなるよ」

ヌチ……。

水中で、熱の塊が膣口に当たる。彼の腰をまたいで湯船に身を沈める私のナカに、ペニスが埋まる。

「そう……ゆっくり腰を落として……良い子だね」

「ふぅ、んん、んぁっ、あ……」

肉壁を押し広げながら、熱くて硬い肉棒が奥へと入り込む。気持ち良い……いけないことだと頭の片隅ではわかっているのに、感じてしまう。

たしかに私がこうして生きていられるのは、アレスのおかげだ。

正体がバレたスパイの末路は悲惨なものだ。アレスが助けてくれなかったら、今ごろ私は帝国軍に引き渡されていただろう。

アレスは恩人。

だけど……、私の正体は帝国民ではないと、出自を偽装したスパイであると、軍に告発したのもまた——アレスなのだ。

アレスに正体をバラされた憤りなら当然ある。でも、私だって彼を今まで騙し続けていたわけだから、裏切られたのとはまた違う気がして。

この人にどんな感情を向けていいのかわからなくて、頭の中がぐちゃぐちゃになる。そんななかでも、この身は胎内に埋まる熱棒に淫らな快感を拾ってしまう。

「はぁ……ほんとうに、君のナカは気持ち良い。何度出しても飽きない……ずっとこうして、繋がってたい」

「んんっ、あ……あぅっ、んぅ……っ」

耳元でした低い声に子宮がきゅんと反応を示す。甘美な痺れが下腹部から全身に駆け抜け、なまめかしく背中がくねった。

身じろぎにペニスが位置を変えて胎内を擦る。刺激を受けて震える身体をアレスに強く抱きしめられた。

密着が深くなり、ペニスの先端に子宮を押し上げられる。

「ひぅんっ」

「不思議だよね。知能や身体の構造には、これといって違いはないんだよ。少なくとも俺には、君が周りよりも劣っているとは思えない」

「……んぅ、……な、に?」

「帝国民は他国の民を、自分たちとは別種の生き物だと認識しているよね。幼少期から行われる、徹底的な刷り込み教育の結果、帝国民かそれ以外かの区別ができあがる。だから帝国に生きる者は、他国の民にどんな仕打ちをしても心は動かない」

そんなこと、改めて言われなくても承知していた。

圧倒的な力で敵国を制圧するグラナート帝国は、侵略した国の民を消耗品のように扱う。そこに人間としての尊重は一切ない。

帝国におもねるか、抗うか——。その選択は私たち他国民にとって、家畜になるか人間として死ぬかを選ばされているのと同義だった。

「今さら……それがなんだというの」

「君にはピンとこないかもしれないけど、帝国民の選民意識による線引きは、下層だけではく、上位者に対しても発生しているんだ」

上位者——つまりは半神のアレスを指しているのか。

彼の顔色をうかがうと、含みのある笑みが返ってきた。

「帝国民は皇族を天上人——つまり自分たちよりも上位のものだと認識している。もちろん、半神半人である俺のこともね。最初から彼らは俺を同じ人間として見ていない。帝国民からしたら、上位者を〈心配〉するのは、高貴な者を自分たちと同列とみなす不敬なことなんだ。俺の無関心は、彼らなりの俺への敬意の表れだったんだよ」

そこまで説明されたら、快楽にのぼせた頭でも何が言いたいのかを理解できた。

語られた内容は、私の失敗の原因だ。

最初に会ったとき、アレスがここの所長だとわかった時点で、私は態度を変える必要があった。負傷した彼を、どれだけ傷ましく思っても、帝国民に扮しているなら表情に出してはいけなかったのだ。

私はずっと、彼の手のひらの上で踊らされていた——。

パズルのピースが組み合わさるようにしてたどり着いた答えに、胸がざわめく。苛立ちや怒り……悔しさとも違う、言葉で表せない焦燥感に襲われて、いてもたってもいられずアレスの胸板に手を突いて離れようともがいた。

「急にどうしたの?」

「……っ、も……やっ、はなしてっ」

「そのお願いは聞けない。君はもう俺の物になったんだから、そこはしっかり頭に叩き込んでおこうか」

「ひっ、い……あっ、ぁ……っ」

下からの突き上げに背中がそり返る。自由がきかなくなったところをアレスに抱き寄せられ、開いた隙間はすぐに埋まってしまった。

「な、んでっ……、今まで、泳がせてきた、くせに……っ」

自分が他者の感情に人一倍敏感なのは自覚している。今までも利用しやすい人間を見極めて、ここまで生き残ってきたのだ。

アレスの好意は知っていた。でも、人の心は肌感覚だけですべてを理解できるほど単純じゃない。

彼の愛情の裏に隠された本心を見抜けなかったのは、私の落ち度だ。

私自身がアレスを好きになってしまったから。自身の弱さが招いた事態だとわかっているが、怒りを覚えずにはいられない。こんなの、完全な八つ当たりなのに。

「ふ、……ん、くっ……ぅぁっ、もぅっ……やなのに……っ」

やるせなさを置いてけぼりにして、ペニスを咥え込んだ膣道は収縮を繰り返して快楽をむさぼる。亀頭の膨らみに膣奥を押し上げられると、下腹部が淫らな熱を発して自分への嫌悪感が溶けていく。

はぁ……と、頭上から大きなため息が聞こえた。

「俺だって君がここを出ていくなんて言い出さなければ、こんなことはしはなかった」

「……それは」

「煌樹がこの研究所内にないとわかった途端にいなくなろうとするとか、俺じゃなくても怪しむよ。しかも次の働き先は、軍部の寮の食堂だっけ? 軍に繋がる人脈を研究所で働きながら築けるのは素直にすごいと思う。でもね、長年軍と事あるごとに対立してきた俺がそれを許すと思った?」

「いっ……んぅ、ぁっ、あつぃ……やぅっ……、あんっ」

身体を持ち上げられて、膣から抜け出るペニスが肉壁をぞりぞりと擦る。中ほどにさしかかったあたりでこの身は再び沈められ、熱棒がゆっくりとナカに戻された。

子宮口と亀頭がピッタリと密着する。わずかな隙間にめり込ませるように先端が押し付けられ、重く痺れるような快感がぶわりと子宮から全身に広がった。

「はぅっ、あぁ、あ……ぁぅ、で……でもっ、んっ、……や、やあぁっ!」

言い訳はいらないとばかりに強い快楽をぶつけられ、喘ぐしかできなくなった私をアレスは満足そうに見下ろし、耳元に唇を寄せた。

「俺の発明した技術なら、いくらでも盗ませてあげたのに……。自分の判断が無謀だったってことぐらい、さすがにわかってるだろ。……それとも、実は捕まってこうなるのが目的だったとか?」

「ちが……うっ、やめて、耳……舐めるの、やぁっ」

柔らかい舌が耳のでこぼこをたどるようにゆっくりと這わされ、くすぐったさに肩をすくめた。

「んんっ」

耳の穴に尖らせた舌先が入り込む。きつく目を閉じるといやらしい水音が頭の中に直接響いて、羞恥心から顔に熱が集中する。

ただでさえのぼせ気味だった頭がさらにくらくらした。

「ねえ、俺だけを見てよ。君にそんな意図はないって頭ではわかっているけど……、俺の魔法研究の成果よりもゼノルウスがもたらした加護のほうがいいって行動で示されるのは、腹が立ってどうしようもないんだ」

「んぅ——っ!」

彼の声に反応して膣道が熱棒をぎゅうぅーと締め付けて、また甘イキする。耳に吹き込まれる声と、膣を埋めるペニス、そして肌を滑る彼の手も——すべての刺激に感じてしまい、ひとときもじっとしていられない。

こんな状況で話を正確に聞き取るなんて無理だった。それでもアレスが強く憤り、いらだっていることだけははっきりと伝わってきた。

「……くそっ、……これだと俺もアイツと同じじゃないか。……こんなはずじゃなかったのに……」

「ぁ……はひ、ぃ……? んぁ、……あ、れす……?」

胸の奥に痛みを感じて顔をあげる。一瞬、アレスの今にも泣きそうな顔が見えたが、彼はすぐに自分の弱さを隠してしまった。

腰をがっちりと掴まれ、ナカを下からドチュンッ! と突き上げられる。強烈な刺激に目を見開いた私の前で、アレスの口端がわずかに吊り上がった。

「まぁ、過去を悔やんでも仕方がないか。結果的に君を俺の物にできたのだから、それ以上を望むのは贅沢がすぎる。もう悩むのは終わりにして、全部忘れて楽しもうよ」

「やっ、あ、ああぁっ、お……、おく、突くの……だめ……うぁっ、ぁ……また、ぃ……ッ、イッちゃ、あぁっ!」

「うん、またイッたね。奥をトントンするたびに、ぎゅうって締まる。君のナカ、すごく良いよ……」

うっとりとした声に思考が溶かされる。ふにゃりと身体の力が抜けた次の瞬間、腹の奥に溜まった快感が弾けた。

「んぁっ、ああ! あっ、……ぃ、いぃ……っ、アレス……アレスっ」

「俺はここにいるよ。どこにも行かないから安心して。快楽に夢中になって、何もかも忘れてもっといっぱい乱れてしまえ」

アレスの言葉が心の深い部分に染み渡る。

帰る場所はない。帰郷を待ち望む家族も、とうにいなくなった。

私の周りは敵だらけ。外に出たら殺される、絶望しかない真っ暗な世界の中で、アレスだけが唯一の光。彼の庇護が私を生かす。

彼だけが、淫らな私を認めてくれる——。

「……ぅあっ、あっ……んっ、ああっ、ぅっ……アレスぅ……っ」

「大丈夫……大丈夫だから。怖いことなんて何もない。もう、頑張らなくていいんだよ」

「はぅうっ、あっ……ぁ……っ」

甘いささやきが涙を誘う。ぐちゃぐちゃになった感情を快楽が押し流して、思考がアレスでいっぱいになる。

「アレス……あっ、あぁっ」

「良い?」

「……うん、これ、気持ちぃ……ぃんっ、あっ! そこ、いいの……イッ——、んぁっ、あぁんっ」

絶頂するさなかも身体を上下に揺さぶられ、ペニスが膣道を行き来する。頭の中を快楽に支配され、気づくと私はアレスの誘導にあわせて腰を振っていた。感じる場所を肉棒が擦るように腰をくねらせる。

水面が大きく波打ち、大量のお湯がバスタブからこぼれたけれど、それを気にする余裕はない。

何度達しても終わらない。悦楽に身を委ね、しがらみを忘れて堕ちていく。

胸の内に感じる軋みは、見えないふりでやりすごした。苦しんでいるのは私なのか、アレスなのか。——それとも、両方か。

そんなことは考えなくていい。答えなど知りたくもなかった。

「んくっ、あっ……アレス、おっ、奥に……っ、ナカ、だして……ぁっ、い、いっぱいに……してっ」

正気だったら絶対に言えない。現実を忘れて悦に浸る私は、さぞかし恍惚とした表情をしていることだろう。

夢中で快楽を追いかける私を、アレスが「良い子だね」と褒めそやす。淫乱な自分を手放しで肯定されては、我に返る暇もない。

胎内で雄芯が脈打つ。射精の気配に膣道がぎゅうぅーと熱棒を食い締めて追い討ちをかけた。

「……ぅっ、く……っ、出すよ」

息を詰めたアレスに抱き込まれる。結合部をこれ以上ないほどに密着させ、最奥に大量の精液が注がれた。

「ぁ……おっ、あ、あつ……ぃ……っん、おっ、おぅ……んっ」

ペニスの先端から噴き出す熱が子宮内を埋め尽くす。歓喜に震える子宮に呼応するように、全身がヒクヒクと痙攣した。

まるでお腹に溜まる熱がただただ気持ち良くて、身体に力が入らない。

アレスは荒い息を繰り返す私の首筋に顔を埋めた。

「俺のものだ。誰にも渡さない」

言葉に反発する気力はとうになく、私はすべてを手放して目を閉じた。





身体の内側も外側もじっくり丁寧に洗われて、アレスの官能を煽る手つきに感じてしまい、あれから何度もイかされた。

疲労が限界を突破しているはずなのに、愛撫に逐一反応を返して身悶える私を、アレスは上機嫌に世話していった。

バスルームから出たあと、ふわふわのローブを着せられ、ベッドの上で彼に支えられて口移しで水を飲む。冷たい水が肉体に行き渡り、ほっと息を吐き出した。

アレスはぎゅうぎゅうにくっついて離れようとしない。

私なんかよりもうんと長く生きているくせに、この人は時々こうした子供っぽい一面を見せてくる。

「……あなたは私をどうしたいの?」

「君はここを出て、どうしたかったの?」

同じタイミングで互いに同じような質問をしてしまった。

思わず口をつぐみ、アレスの顔色をうかがう。気まずい沈黙で部屋の空気がひずむ前に「先に言ってよ」とうながされた。

逡巡の末、真っ直ぐに見つめてくる彼の視線から逃げるようにうつむいて言葉を発する。

「煌樹に……少しでも近づきたかったの」

「無謀なことを命じる国があったものだね。煌樹を目標にするよりも、ここで得た情報を持ち帰ったほうが君の国にとって有益になると思わなかったのか」

「私に……帰る国なんてもうないわ」

祖国はとうの昔に滅ぼされている。

「そっか。……だったらなおさら、使命に囚われる必要はないだろう。危険を冒してまでわざわざ帝国の中枢に近づくとか馬鹿げてる」

「あなたにはわからないわ」

意味がなくても前に進むしかない。私が生きる理由は、もう他にないのだから。

突き放す物言いにアレスの腕の力が強くなった。絶対に離さないと態度で示され、彼の意志が歯痒くて涙腺がゆるむ。

「仮に奇跡が起きたとして、君は目的の煌樹にたどり着けたとしよう。それで、君に何ができる? 煌樹は雷神の力が宿っているから、普通の人間には燃やせない」

煌樹というのは、雷神ゼノルウスが自らの力を付与して帝国に授けた、地上に生える天界の樹木である。その実を食べた人間はゼノルウスの加護を得て、魔法使いになれる。

煌樹は皇帝一族が管理していて、帝国民には存在自体が秘匿とされ、煌樹の生える場所についてはアレスにも教えない徹底ぶりだった。

煌樹こそが、帝国の持つゼノルウスの加護のみなもと。私がそれを知ったのはこの研究所にきてからで、煌樹についての知識は全部——アレスから聞き出した。

「無駄な努力はやめて、ここにいてよ。非力な君にはもう、俺しかいない。俺の玩具じゃなくなった瞬間、君は即刻処分される」

震えた声で、切々と訴えられる。非情を装い脅す彼は、私をここに留めようと必死だった。

私以上にアレスのほうがよっぽど、私の死に怯えている。

「君の生きられる場所は、ここしかないんだよ」

願望がこもった弱々しい声音に呆れが込み上げたのは内緒だ。

アレスが私の胸元に額を押し付ける。湯上がりで濡れたままになっているくせ毛を撫でてみると「うぅ〜……」という情けない唸りが聞こえてきた。

わがまま言って、駄々をこねて……、その振る舞いは帝国の誇る魔法工学研究所のトップとはとても思えない。

二人きりになったとき、アレスはよくこうして甘えてくる。そして私は、彼の情けない一面にめっぽう弱かった。

「あなたのほうが私なんかよりよっぽど苦しそう」

「だって、もう……どうしていいのかわからないんだ」

半分とはいえ彼も神様だというのに、らしくない弱音に耐えきれず吹き出す。

「いっそ天界に帰ってしまったら? 天界の神様からしたらこんな悩み、些細なものでしょうに」

「無理。今のままじゃ……俺は天界に戻れない」

戻りたくない、ではなく、戻れない。

言い方からして、アレスは何かしらの役目を負ってここにいるようだ。遣わしたのは父親である雷神ゼノルウスか、人間の母親か……もしくは他の神なのか——。

なんにせよ、帰る場所も守るべき仲間もいない私よりも、アレスのほうがさまざまな問題に縛られていそうだ。

アレスの肩にかかるタオルを手にして、そっと彼の頭に被せた。柔らかい金髪から水気をとるように、タオルを頭に押し当てた。

厚みのある生地越しに頭を撫でる。しょぼくれた彼はされるがままだ。

「どうせ、私はここから出られないのでしょう? だったらあなたの好きにすればいいじゃない」

「それもやだ」

「……なんなのよ、もう」

これが世に言うイヤイヤ期……いや、反抗期なのか。この百歳児め。

「俺と一緒にいて」

「だからそう言ってるじゃないの。あなたのせいで、私はあなたの庇護下でしか生きられなくなったのよ」

「うん……ごめん」

「怒ってないわ。いずれどこかで殺されるだろうって、覚悟はできてたから。アレスは外民の私を助けてくれたのでしょう?」

それについてはちゃんとわかっていた。

冷静になるとなおさら実感する。帝国領土で他国民だと発覚した私が五体満足の状態でこうして悠長に喋っていられることは奇跡なのだ。

アレスが機転を効かせたから、手ひどく抱かれるだけで済んだ。

「わかってるならもっと感謝してよ」

冗談とも本気ともとれる口調だった。

「調子に乗らないで。あなたに計画を崩された事実は変わらないわ」

タオルの上から頭頂部を軽く叩いてやる。途端にアレスの浮上しかけた気分がずんと沈んだ。

「……捕まったら、殺されるんだよ?」

「そうね。でも立ち止まったら、私はそこで終わりなの。帝国だけじゃなくて、世界のすべてを憎んで、きっと狂ってしまうわ。そうならないためにも、目的を見つけて前に進むしかないの」

「…………うん、そっか……」

相槌をうったきり、アレスは動かなくなってしまった。

背中にまわる手の力は維持されているから、寝ちゃったってことはないと思うけど……。

うなだれるアレスの髪をわしゃわしゃと拭いて、タオルを肩に戻す。手持ち無沙汰になったので彼の背中をぽんぽんぽん……と、子供を寝かしつけるみたいに優しく叩いた。

静かに時間が流れる。自分が安全な場所に身を置いているこも対して強烈な違和感を覚え、自嘲しかけた唇をぎゅっと噛み締めた。やっぱり私は、アレスの好意を受け入れてはいけない。

ぬるま湯に浸り続けたら、いずれ内側から腐って崩れてしまう。

ズキズキと痛む胸に、アレスがひたいをぐりぐりと押し付ける。

「……俺に時間をちょうだい」

小さく呟き、彼はゆっくりと顔を上げた。今にも泣きそうな目で私を見つめ、口端を無理矢理吊り上げてさらに言葉を続ける。

「ときが来たら必ず、君をここから解放するって約束する。だからそれまで、そばにいて」

「あなたはそれで構わない?」

惚れた弱みなのか、アレスの提示した条件は私にとってメリットしかなかった。

自分を二の次にする彼の姿勢が良心にグサグサと刺さって手放しに喜べない。

決定権はこちらにないと理解しながらも返事を迷う私に、アレスがこくりとうなずいた。

「うん、このままじゃ駄目だって、本当はずっと前からわかってた。お願い……あと少しでいいから、——俺に夢を見させてよ」

懇願するアレスの目からボロボロと涙がこぼれる。

地上に降り立った彼が何を背負っているのか、私は知らない。彼の決意が、どれだけ重いものなのかも——。

私という人間の無責任さを改めて実感させられる。実感しながらも、私は自然とアレスを抱きしめた。

——わかったわ。あなたがしようとしていることを、見届けてあげる。

口から出かかった傲慢な言葉は直前で噛み殺した。こんなこと、言える立場じゃない。

明確な返事ができないでいると、しばらくしてからたどたどしい声で「ごめん」と謝られてしまった。

嗚咽を漏らして泣く姿は、帝国の叡智の結晶と呼ばれる傑物からからほど遠い。こんなので大丈夫なのかと、早くも泣き虫な彼の未来が心配になる。

ぐずるアレスと抱きしめあったままベッドへ横になる。先のことはわからないけれど、ここは憲兵の影に怯える必要のない、安全な場所だ。強い実感に緊張の糸が切れて疲労がどっと押し寄せてきた。

そこからは二人で眠ってしまい、気づくと朝になっていた。



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