【ご質問コーナー】シナリオってどうやって書くの?
ある方より、メッセージをいただきました。
私は創作者を目指して、脚本執筆に挑戦していますが、読み返すともっと上手に書けないものかといつも感じてしまいます。創作の初期に、どのように計画を立てましたか?
※メッセージを一部改変しています
ご質問いただきありがとうございます。個別でご回答しましたが、せっかくなのでこのテーマについてより深く論じていきたいと思います。
※質問者様よりご了承いただいています。
シナリオを書いたことある方なら経験したことがあるかと思いますが、
「おお! 筆が動く!!」
「こんなストーリー思いつくなんて自分って天才!!」
翌日
「なんでこんなの書いたんや……」
次の日に読み返すとげんなりすることありますよね。
シナリオ執筆に限らず、イラストなんかでも次の日見返すと違和感があったりします。
さて、そんなお悩みを解消すべく、私の経験と思い込みで論じていきたいと思います。
初めに断っておきますが、私はシナリオ執筆の勉強をしてきたわけではありません。すべて独学ですのでご理解ください。
お品書きは下記の通りです。
核を作る
高品質なシナリオ、イマイチなシナリオ、世の中には様々なストーリーが創作されています。その中で共通するのは『何かを表現している』です。
恋愛ものか、ホラーか、ミステリーか、SFか。
表現しようとしているテーマはどんなストーリーでも決まっていると思います。
しかし、執筆する前から決まっているとは限りません。
いやいや、書きたいものがあるから書くんでしょ?
って思われるかもしれませんが、少なくとも私は決めません。
書きたいものを知る
私の場合、ゲーム用シナリオがメインなのでまずはゲームという構想が最初にあり、シナリオはその後に考えます。
ちょっとおかしな例かもしれませんが、シナリオはいずれ必要になるけどどんなストーリー・ジャンルか決めないケースもあります。
じゃあどうするか。
まずは何でも良いから書いてみる。
『死月妖花~四月八日~』というゲームシナリオを初めて作ったとき、最初に書いたのは
私は桜が嫌い。
という文字列。
世界観もストーリーも登場人物も、ジャンルすら決まっておらず、頭に浮かんだ文を書きました。
桜とあるので、何となく舞台は日本かなというくらい。
少しずつ書いていくと、自然と自分がやっていくべきテーマが浮かんできました。
それは、何を表現したいか、どんなストーリーにしたいかよりも、
自分が楽しいと思えるかどうか。
それを最も大事にしました。
- 自分ならどんなジャンルなら楽しめるだろう?
- 自分ならどんなキャラクターが好きだろう?
- 自分なら本作を通してどんな体験をしたいだろう?
そこからは、自分の欲求に従ってシナリオを書いていきました。
自分ならどんなジャンルなら楽しめるだろう?
→自分ならホラーとかサスペンスとかがいいかな。自分ならどんなキャラクターが好きだろう?
→むさくるしい男よりもかわいい女の子をたくさん出したい。自分なら本作を通してどんな体験をしたいだろう?
→いつまでも真相が見えない深淵サスペンス。
つまり、自分が書きたいものをこのとき初めて理解しました。
このように、書いていくことで見えてくる核というのもあります。
さて、だんだんと言っていることがぼんやりとしてきましたね。
そもそもの創作初期の計画についてですらない。
「そんなの分かってるわ!」
「実用的なテクニック教えろ!」
と思われる方もいるでしょう。
正直に申し上げると、『死月妖花~四月八日~』という作品は上記の方法でのみ書き上げました。
まあ、無計画に自分が好きなように書いて書いて書きまくりました。
ただ、これだとご質問いただいたように「時間をあけるとアラが見つかる」なんてことがたくさんありました。
シーンによっては冗談抜きで50回は書き直したと思います。
書きたいものなんて変わっていい
もし創作の初期からきちんとした計画を立てていたなら、もっとスムーズにシナリオが出来上がっていたでしょう。
ではなぜこんな「核を作る」なんてことを書いたのか。
それは書きたいものなんてどんどん変わっていくことを明言するためです。
シナリオを書いていくと手詰まりになったり話が思いつかなくなったりして、
- 自分は何がしたいんだろう
- なぜシナリオなんて書いてるんだろう
と哲学的な袋小路に迷い込むことがあります。
大事なことなんでよく覚えておいてください。
書きたいものなんてどんどん変わっていきます。
むしろそれでいいんです。
変わっていくということは、自分の成長の証です。
もし哲学的な袋小路に迷い込んだら、私は以下のようなことをします。
- 序盤から読み直し、今の自分に合うように修正する
- テーマを変えたくなったら変える
長々と書いて最初からやり直しなんて勇気のいることですが、私の経験上、これをやると99%いい方向にいきます。
時間が許すなら、どんどん変えて、どんどん書き換えていきましょう。
気がつけば、哲学的な袋小路は大通りに続く道になっています。
何度書き直したっていい
書きたいことが変わるのは成長の証
そうは言っても、できるだけ手間を省いてスムーズに進められるならその方がいいですよね。
はい。ここからが本題。
書き直すと言っても、できるだけ手間は少ないほうがいい。
今の自分ならこうするというテクニックを述べていきます。
4秒を意識する
この4秒とは何の数字かお分かりでしょうか。
人間が生きる上で必須となる行動の周期。
それは呼吸です。
人間は1分間に15~20回の呼吸をしており、おおむね3~4秒周期となります。
また日本人が日本語を読む場合、読む速さは1分間に400~600字です。
ここからは、一文一文をどのように組み立てていくかをご説明します。
いきなりストーリーの構成よりも細かい視点になっていますが、マクロな部分は後ほど。
呼吸を意識した文字数
1文の文字数は?
人間の呼吸に合わせて文字数を考えてみます。
例えばリラックスシーンを例にします。
こういったシーンでは読者も落ち着いており呼吸周期も長い(と思う)ので4秒、読む速さも多分遅めになると思います。
ではなく、
意図的に遅めになるよう工夫し、演出したい空気感に近づけます。
読者任せにせず、作者側もできる限り体験してもらいたい空気感を演出しましょう。
数式にすると遅めの
- 1分間に400文字
- 4秒の周期
400文字÷(60秒÷4秒)≒27文字
これが1呼吸で読んでもらいたい文字数となります。
1文で読ませたい文字数を1呼吸に近づけます。
別に科学的なデータはありませんが、私はこれを一つの指針としています。
何でもいいので指針があると楽です。
例えば下記の文章。
リラックスシーンを表現したいとします。
私は夕日に染まる部屋の中でゆったりとソファに腰かけ、そのまま横たわって目を閉じた。……①
ずいぶんと平和なシーンですが、句読点を入れると41文字です。
41文字を4秒だとかなり速く読ませることになります。
一文だけだと簡単に読めますが、これが何十分も続くとこのペースはなかなか大変です。
これくらいがちょうどいい方もいるでしょうが、ここで表現したい雰囲気にしてはちょっと急ぎ過ぎです。
なのでこうしてみましょう。
夕日に染まる部屋の中――ソファにゆったりと腰かける。
そのまま横たわり、夕日を手でさえぎるとそっと目を閉じた。……②
同じシーンですが②では文を2つに分け、文字数をダッシュも含めて26文字+28文字としました。①と比較してみるといかがでしょうか。
私は夕日に染まる部屋の中でゆったりとソファに腰かけ、そのまま横たわって目を閉じた。……①
夕日に染まる部屋の中――ソファにゆったりと腰かける。
そのまま横たわり、夕日を手でさえぎるとそっと目を閉じた。……②
①は、ちょっと機械的というか、せかせかした印象がありませんか?
一文が長いとその分一気に読めるので、どうしてもハイペースになります。
ハイペースだとゆったりとした空気感にはなりません(多分)。
②は2つに分けることで読む速度が遅くなり、さらに文字数調整のためにダッシュを使い、「夕日を手でさえぎると」という文言を追加しました。
さらに前後の文を加えるならこんな感じでしょうか。
改善前
今朝の天気予報とは裏腹に、今日は太陽が目いっぱい顔を出し、とても暑い一日だった。
私は夕日に染まる部屋の中でゆったりとソファに腰かけ、そのまま横たわって目を閉じた。
背中にジトッとした汗の感触が張りつくも、起きるのも面倒なほど疲れた。
しかし身体は火照ったままで、眠気らしい眠気が襲ってくるわけでもない。
↓
改善後
今朝の天気予報とは裏腹に、太陽が一日中顔を出していた。
夕日に染まる部屋の中――ソファにゆったりと腰かける。
そのまま横たわり、夕日を手でさえぎるとそっと目を閉じた。
背中にジトッと汗が張りつくも、起きるのが億劫。
太陽といっぱい仲良くしたのだ。今日ばかりは疲れが勝る。
身体は太陽のように火照ったままで、睡魔も億劫がっている。
読む速度を調整して空気感を演出します。
また文字数調整が必要になると、表現方法にも工夫が必要です。
今回は擬人法を取り入れて文字数調整、さらに文としての面白さを出してみました。
ただし、これにも改善の余地があります。
それについては後ほど。
呼吸周期と一文の文字数を意識。
右脳と左脳
では、今度は緊張時の表現をしましょう。
緊張時の表現は大きく2通りあります。
- リラックス時と同じく呼吸と文字数を意識
- 右脳と左脳の使い分け
リラックス時の数式に緊張時の数値を当てはめると、
600文字÷(60秒÷3秒)=30文字
となります。
あれ? リラックス時の27文字と1割しか変わってない?
はい、変わりません。
読む速さと呼吸の周期が反比例するので結局30文字程度に収まってしまいます。
余談ですが、読む速度と呼吸周期は下記の4パターンを意識してみましょう。
- 呼吸周期長い&読む速度遅い:回想・独白・リラックスシーン(1文27文字)
- 呼吸周期長い&読む速度速い:ギャグシーン(1文40文字)
- 呼吸周期短い&読む速度遅い:駆け引き・推理・思考シーン(1文20文字)
- 呼吸周期短い&読む速度速い:緊張・恐怖・アクションシーン(1文30文字)
ではこれに従って緊張シーンの例を書いてみます。
逆光で黒い影となった悪魔がまっすぐとこちらに迫ってくる。……①
①は28文字です。
見るからに緊張シーンではありますが、リラックス①と同様、どこか機械的な印象があります。
リラックスシーンならまだ許容されるでしょうが、緊張シーンではもう少し何とかしたいですね。
その方法が、『右脳と左脳の使い分け』です。
逆光にまぎれた黒い影。
あの悪魔だ。
迷うことなく迫ってくる。……②
②は29文字です。
しかしこれまでと大きく違うのは、1呼吸で表現するテキストを分断(11文字+6文字+12文字)したことです。
短文にすると区切りが速くなり、スピード感が増します。
さらに人間は文字を追って言語を理解しますが、短文だと一つの映像として捉えます。
例えば『悪』という字。
これは読むというか、見ただけでマイナスなイメージがあります。
下記の文字列だと、
悪憎恨
死殺罪
意味をなさない6文字ですが、これだけで非常に嫌な印象があると思います。
さらに改行して一度に視界に入りやすくしました。
文にしても同じです。
逆光にまぎれた黒い影。
あの悪魔だ。
迷うことなく迫ってくる。……②
短文かつ改行を入れたことで一目で三文が視界に入りやすくなり、文というより一つの映像としてテキストを読ませます。 また、
- 黒い影
- 悪魔
- 迫ってくる
というマイナスイメージの文字をちりばめているので知覚精度も良好です。
つまり、
- 長文:左脳(言語)的理解
- 短文&改行:右脳(イメージ)的理解
となります。
主観か 客観か
情報処理速度は右脳の方が左脳より数百~数万倍速いと言われています。
この特性を利用し、短文を連発することでスピード感を出せます。
しかし右脳は細かな表現を取得するのが苦手で、それは左脳にて処理されます。
ですので、細かな表現をするなら左脳の論理的かつじっくりとした処理を利用し、リラックスシーンと同じ手法を用います。
逆光にまぎれた黒い影――あの悪魔が私の方へ迫ってくる。……③
③は28文字の一文です。
ダッシュの使用と、迫る対象を表記しました。
文脈によってどちらが適切かは変わると思いますが、印象がやや異なります。
並べてみると、
逆光にまぎれた黒い影。
あの悪魔だ。
迷うことなく迫ってくる。……②
逆光にまぎれた黒い影――あの悪魔が私の方へ迫ってくる。……③
②は文を分けることでテンポを操作。
③はダッシュを入れることで後半へのつながりを示し、『私』を入れることで主観性が出てきます。
ざっくり言えば、
②は客観的な表現で状況説明(視覚的、スピード感、右脳的)
③は状況説明から主観視点へ移る表現(心情的、説明的、左脳的)
③の場合はリラックス時と表現方法が同じなので、読み手側の時間の流れはゆっくりになり、緊張シーンではあっても400文字&4秒を意識した方がいいでしょう。
イメージで読ませるか、文字で読ませるか。
右脳と左脳の違いを駆使する。
ダラダラとメリハリ
どのシーンにも共通して言えることですが、単純に呼吸周期と読む速度に従うと同じ文字数が繰り返され、機械的な印象がさらにダラダラとした印象に変わっていきます。
同じ文字数やリズムを続けてしまうことはよくあるので、ここは常に注意してください。
例えば先ほど書いた、
今朝の天気予報とは裏腹に、太陽が一日中顔を出していた。
夕日に染まる部屋の中――ソファにゆったりと腰かける。
そのまま横たわり、夕日を手でさえぎるとそっと目を閉じた。
背中にジトッと汗が張りつくも、起きるのが億劫。
太陽といっぱい仲良くしたのだ。今日ばかりは疲れが勝る。
身体は太陽のように火照ったままで、睡魔も億劫がっている。
実は悪い例です。
周期を守ろうとするあまり、ダラダラと同じリズムが続きます。
この周期に変化を持たせることでメリハリが生まれます。
今朝の天気予報とは裏腹に、太陽が一日中顔を出していた。
ソファにもたれ、部屋を染める夕陽を手で隠しながら横たわる。
背中に汗が張りつく。
ああ、汗ふくのめんど。
いいや汗くらい。
太陽といっぱい仲良くしたし、お疲れの自分をねぎらってあげよう。
睡魔さん、そろそろお仕事しなよ。今日こそしっかり寝るんだから。
え? 身体が火照ったままだとどうせ寝れない?
今日の睡魔さんは、私と同じくめんどくさがりのようだ。
背中に汗が貼りつく。
ああ、汗ふくのめんど。
いいや汗くらい。
この短文をはさみ、「汗」を繰り返すことでこの三文(29文字)がぱっと見で処理できる構造にしました。
これにより周期を変化させますが、一文(厳密には一行)当たり27±5文字を保っています。
またシーンによる文字数の使い分けとして、
- 呼吸周期長い&読む速度遅い:回想・独白・リラックスシーン(1文27文字)
- 呼吸周期長い&読む速度速い:ギャグシーン(1文40文字)
- 呼吸周期短い&読む速度遅い:駆け引き・推理・思考シーン(1文20文字)
- 呼吸周期短い&読む速度速い:緊張・恐怖・アクションシーン(1文30文字)
を挙げましたが、これらを交互に登場させることで、さらにメリハリが生まれます。
しかしやりすぎると読者が疲れてしまうので、何度も読み返しながら適切なリズムを探していきましょう。
同じリズムが続くと単調になる。
ほどほどにリズムとシーンを切り替える。
起承転結を操る
ここまではミクロな視点で一文一文の表現方法をご紹介しましたが、今度はストーリー全体に関わるマクロな視点でのテクニックです。
ストーリー構想で重視される起承転結。
- 起:ストーリーの始まり。世界観の説明や事件(展開のきっかけ)が表現
- 承:起を受け、展開
- 転:大きな変化、最も表現したいこと
- 結:ストーリーの締め
この流れはぜひとも頭に叩き込んでください。
他にも序破急などストーリーの構成は色々ありますが、私は起承転結が分かりやすいのでこれを軸に述べていきます。
※起承転結は国際的なフォーマットでないので注意
起承転結の3ルール
さて、私がこの起承転結で重視しているのは3点。
- 起への帰結
- 結を転にする
- 多重構造
実際に即席のシナリオを作りながら起承転結に基づいたプロットを作ってみましょう。
起への帰結
例えば、地球を守るために悪い宇宙人と戦うストーリー。
- 起:悪い宇宙人登場
- 承:宇宙人の本部に戦闘機で向かう
- 転:激しい戦いの末、宇宙人に勝利
- 結:地球に平和が戻る
よくあるストーリーですね。一般的な起承転結に沿ってプロットを書いたつもりですが、まあ面白くはない。プロットの時点で面白いのも珍しいですが、これではかなり陳腐です。
そこで起への帰結をやってみましょう。
起への帰結とは、起と結を関連付けた構成にするということです。
つまり、
起→承→転→結→起'
という構成。
この起'の特徴として、
- 起'は結の中に含まれる
- 起にリンクする
- 承転結を経た結果
ちょっとややこしくなってきましたが、オチが始まりにつながる、もっと平たく言えば伏線回収が近いと思います。
つまり、起で表現したことを結でフォローします。
では起への回帰の準備として、起をもう少し充実させます。
例えばこんな感じ。
- 悪い宇宙人が登場
- 過去、人類は同じ侵略を受けていたことが判明
- 古代人が対宇宙人兵器を開発
- 古代人は宇宙人を撃退し、子孫のために兵器を保存した
ちょっとSFファンタジーな雰囲気になりました。
これだけの要素があれば、結での伏線回収もなんとかなるでしょう。
今回の例だと結→起'のアイディアとしては、
- 平和が戻ったかに見えたが、実は古代人による戦争シミュレーションだった
- 対宇宙人兵器は実は宇宙人の祖先が作ったもので、人類滅亡の罠が仕掛けられている
- 対宇宙人兵器がラスボス
ただ結として終わらせるのではなく、起を流用して起'を作り、結の続きを作る。
起と起'がつながるので、後は承転結を当てはめていけばOKです。
そのためには、起をよく練っておきましょう。
よく練ると言っても、確定させる必要はありません。
『核を作る』でも言った通り、何度でも書き直せばいいのですから。
結の中に起とリンクする要素(起')を入れる
次の『結を転にする』にて、起'をさらに洗練させます。
結を転にする
『結を転にする』とはそのままの意味ですが、たいていの場合、結は転の中に押し込めることができます。
先ほどの例だと、
- 起:悪い宇宙人登場。過去、宇宙人に侵略された古代人が開発した対宇宙人兵器(戦闘機みたいなやつ)を発見
- 承:宇宙人の本部に戦闘機で向かう
- 転:激しい戦いの末、宇宙人に勝利
- 結:地球に平和が戻る
↓
- 起:悪い宇宙人登場。過去、宇宙人に侵略された古代人が開発した対宇宙人兵器(戦闘機みたいなやつ)を発見
- 承:宇宙人の本部に戦闘機で向かう
- 転:激しい戦いの末、宇宙人に勝利して地球に平和が戻る
- 結:???
このように、結の描写はたいてい転の結果として押し込められます。
最初に設計したシナリオなんて、起承転結の役割が希薄になりがちです。
どんどんアップデートしていきましょう。
上記の例だと特に承も希薄ですので、
- 起:悪い宇宙人登場。過去、宇宙人に侵略された古代人が開発した対宇宙人兵器(戦闘機みたいなやつ)を発見
- 承:宇宙人の本部に向かい、激しい戦い
- 転:宇宙人に勝利して地球に平和が戻る
- 結:???
さらに転の一部を承に押し込みました。
- これまでの転:戦いに勝利する
↓
- 新しい転:地球に平和が戻る
プロットを一段階を圧縮できました。
すると結を作るため、さらに新しい要素が必要となります。
私が重視していることですが、
ストーリーを圧縮すると、作者が気づかなかった新しいプロットが出現します。
今回の場合は結が空いたことで、先述の起'へリンクさせる余裕が確保できました。
ここまで来たらざっと起~転を作ってしまい(どうせ書き直す)、どのような結にするのがベストか、じっくり考えていくといいでしょう。
承は希薄になりがち。
結は転に押し込む。
プロットが空くと、新しいアイディアの素になる。
多重構造
ではさらに起承転結を洗練させてみましょう。
皆さんは何らかの作品で『ストーリーにメリハリがある』という評価を耳にしたことはないでしょうか。
『ダラダラとメリハリ』でも少し述べましたが、メリハリがあると飽きずにストーリーを楽しむことができたり、平坦な表現に陥ったりせず変化に富んだ展開が可能です。
『ダラダラとメリハリ』では文構造の細かい視点でしたが、大きな視点、つまりストーリー全体にメリハリを持たせるとより良くなります。
このメリハリの正体とは『起承転結の多重構造』である(と私は思っています)。
すなわち、
このように起承転結それぞれの下には小さな起承転結があり、さらにその下により小さな起承転結が存在する。
ストーリー全体のボリュームが増えるほど、この層を厚くします。
では先ほどの宇宙人戦争(?)の例にてこの多重構造を組み立ててみましょう。
最上位に来るのは、
- 起:悪い宇宙人登場~兵器開発まで
- 承:宇宙人との戦闘
- 転:宇宙人に勝利
- 結:(未定)
これが第一層です。
まずは上記の起を分解して二層目の起承転結を組み立てます。
ここから固有名詞が出てくるのでまとめます。
A 主人公の一人。元空軍パイロット
B 主人公の一人。考古学者。
Z Bが発見した意思を持つ戦闘機
起:悪い宇宙人登場~兵器開発まで
- 起:宇宙人が攻めてくる
- 承:対抗兵器の発見
- 転:兵器を扱える人物を見つける
- 結:Aがパイロットに決まる
こんな感じの起にしてみました。
さらに三層目をまでやってみましょう。
起:宇宙人が攻めてくる
- 起:Aは優秀な空軍パイロットだった
- 承:Aは戦争で親友を亡くし、トラウマで飛行機に乗れなくなり引退
- 転:Aは今では家族を持ち、平凡なサラリーマン
- 結:宇宙人が攻めてあちこちを攻撃する
承:対抗兵器の発見
- 起:数日前、考古学者であるBが砂漠で見たことのない戦闘機のようなものZを発見
- 承:BはZを古代の宇宙船と唱えるも笑いものにされる
- 転:宇宙人の先制攻撃。Zには意思があり、宇宙人の攻撃によって目覚める
- 結:Bが調べた結果、Zは宇宙人に対抗できる兵器と判明
転:Zを扱える人物を見つける
- 起:Zには意思があり、適正あるパイロットでないと受け付けない
- 承:Aに依頼が来るも、トラウマで拒否する
- 転:さらなる宇宙人の攻撃でAは家族をも失う
- 結:Aは怒りと悲しみで戦いを決意し、適正テストを受けることにする
結:主人公がパイロットに決まる
- 起:ZはAに適性があるかテストする
- 承:Aはトラウマによりうまく乗りこなせない
- 転:Zが「憎しみではなく愛で戦え」みたいなことを言う
- 結:Aは家族愛を思い返し、乗りこなせるようになる
表にまとめるとこうなります。
粗削りですが、これで第一層の起が出来ました。
どうせまた修正を加えていくので、最初はこの程度でいいです。
慣れないうちは、この起承転結の多重構造のフォーマットにそってプロットを作るといいでしょう。
- 起への帰結
- 結を転に押し込む
- 多重構造
を意識すると、このプロット作成はさほど時間はかかりませんでした(20分程度)。
起承転結の多重構造を意識。
このフォーマットがそのままプロットになる。
核の作り方その2
さて、最初に述べた核の作り方ですが、こうやって起承転結を構成していく中でも発見できます。
- 意思を持つ古代の兵器
- Aの心情変化による人間ドラマ
- AとBの思いがリンクするシーンが山場の一つ
- 古代人と宇宙人に何があったのか
これらが今回の作品の核になっていきそうです。
核を充実させていけば、自ずと自分自身が書きたいものが湧いてくる。
いわゆる「登場人物たちが勝手に動いてくれる」状態になります。
そうなれば、後はあなたが見たいシナリオを連ねていくだけです。
開始数十分の創作の初期でここまで進んだので、もう何日か書いていけばそれなりのものになるでしょう。
私がここからさらに展開させていくなら、
- 兵器のZは人型に変身可能
- AとBとZは女性
- Zは人間を利用して宇宙人を滅ぼし、最後は人類を絶滅させて地球を乗っ取るつもり
- しかしAとBと築いた友情に葛藤していく
個人的な見解ですが、主人公を男性にするとハリウッド映画のようなヒーロー物、女性にするとアニメのようなファンタジーな感じになると思います。
私はAは女性を出したいのでそれに合わせて修正。
これがストーリー全体の起としたいです。
ここまで来たら、いよいよ各キャラごとの掘り下げの段階です。
長くなってしまったので今回はここまで。
続きは気が向いたら書くかもしれません……。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
ちなみに『死月妖花~四月八日~』ではここまで書いたテクニックについてはほとんど意識していなかったので、矛盾してても許してね。