男は無慈悲な液体に蝕まれながら淫獣へと堕とされる
自分を拘束し閉じ込めた光が一切無い狭い空間に、液体が流し込まれている。その事実に気が付いた男は、死への恐怖と焦りを募らせながら自由を奪われた裸体をなりふり構わずにもがかせていた。
黒革の本体に輪の形をした金属が組み込まれている拘束具によって閉じることを禁じられた口から言葉にならない間抜けな唸りを上げ、床へと金属製の器具で手首を縫い付けられた左右の腕を暴れさせ、黒革で作られた首輪の前部と両手首の間に位置する床を短く繋ぐ鎖と足首を縛っている黒革製のベルトの金具と首輪の後部を繋ぐ長い鎖を甲高く鳴らしながら、男はどうにかして迫り来る液体からの脱出を試みていた。
しかし、今の男は違う。今の男はもう、液体からの逃走を求めてはいない。その理由は、液体の注入が決して呼吸を阻害しない水位で停止したからではない。その液体が有していた真の非道に裸体を苛まれ始めた男はもはや、己の解放を引き寄せる為の行動を取ることすら叶わない程の地獄へと突き落とされてしまっているからだ。
「あぁーっ! あぉっ、はぉぉぉーっ!!」
液体に触れている箇所全てが、異常なまでに感度を増幅させられている。不自然なうつ伏せを強要された裸体が、感度を高められたことによって生まれている望まぬ至福に為す術無くいたぶられている。
ビンと尖った乳首が、身体を少しでも動かす度に液体と床に摩擦される。腹部と床に挟まれている限界まで張り詰めた男根が、男自身の体重が生み出す圧迫やその圧迫を嫌がり無自覚に跳ねた肉体の振動に甘く嬲られる。
それらの淫猥な刺激を液体が触れている箇所全体に流し込まれている男は、駄目だと頭で理解していても裸体の痙攣を抑えられない。液体に波紋を生み壁で反射したその波紋が自身を更に甘く追い詰めると分かっていても、男は裸体の震えや床を掻く手の指の動きをとめられない。
手の平や腹部といった本来快楽からは縁遠い場所も性器へと作り変える無慈悲な淫薬の効果に蝕まれた哀れな男は、堪えきれない絶頂を断続的に迎えさせられながら、その絶頂に伴って訪れた射精が作り出す快楽で、己を次の絶頂へと惨めに上り詰めさせられるしか無いのだ。
「おぉっ! ほごぉぉっ! あぉぉぉーっ!!」
開きっぱなしにさせられた口から獣のような鳴き声を上げ、同じ口から垂れ落ちた唾液や大粒の涙が生成する淫薬の波紋由来の至福に悶絶しながら男が甘い頂点への到達を繰り返す。その頂点付近から下りたくても下りられない状況に閉じ込められた男が、本能が自制を促す理性を無視する形で紡いだ腰振りで己を一層の悦楽へと導きつつ精液を何度も何度も迸らせる。
自分の甘く歪んだ絶叫と無慈悲な薬品が立てる水音、そして淫獄から離れることを不可能にさせている拘束が発する冷たい金属音が虚しく響く暗闇の中で男は助けを欲する意思を忘れ欲に溺れることを拒む正気を粉々に打ち砕かれながら、やがて自ら腰をくねらせて男根を責め乳首を床で捏ね回す痴態を進んで晒す淫獣へと、自分をこの淫蕩な○問に放置した者達の思惑通りに堕ちていくのだった。