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Aqua-baiser 2020/01/26 19:00

火鷲将――恋人の次、キスの先

今頃何を言ってるんだという時期になってしまいましたが、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします!


先日、ギリギリまで粘っていたWindows10への移行が完了しました。
XPから7への移行の時はいろいろと勝手が違いすぎて発狂寸前でしたが、7→10は思ったよりもすんなり進んでホッとしています。それでも完全に以前の環境を再現するまでに一週間以上かかってしまいましたが(;´Д`)
ともあれ、もうデスクトップを買い換えることも無さそうですし、この新たな相棒とともにバリバリ創作活動をがんばってまいります。


さて、2020年最初の記事は、前々回からのシナリオの続きを公開させていただきたいと思います。
まずは、前々回有料プランで先行公開した本編シナリオの一部から。
(一部シーンを省略しております)



(中略)


「それではお話の続きを。えぇと――そうそう、ロートレック王国の滅亡についてでしたね」
「……ええ」

 ルリカがわずかに困惑している様子が伝わってくる。
 まさかこんなに堂々と応対されるとは思ってもみなかったのだろう。
 それどころかネグレイロスが進んで答えようとしているのだから。

「中立国であるロートレックを侵略するのは……ふふ、国際法違反である――と」
「ええ、そうです」
「ですが姫。姫はご存じなかったかもしれませんが、我が国は国際法に則り正式な宣戦布告をしていたのですよ」
「攻め入る前日に、でしょう?」

 ルリカの唇が嘲笑をかたどった。

「相手の都合を完全に無視した、一刻の猶予も与えぬ無慈悲で一方的な宣戦布告。果たしてそれは正当な交渉と言えるのかしら」
「………………」
「そもそも、バルツァトラウム帝国の圧倒的な軍事力を前に、ロートレック王国がまともな応戦などできようはずもない。それは当時の国力差の検証から見ても明らかです。勝機のない相手をただ蹂躙するなんて、そんなのフェアな外交とは認められないわ」
「フェア、ですか。……ふ、ふふ、ふっ……
 ふはははははははははははははははははははははははっ!!」

 唐突なネグレイロスの高笑いが響き渡った。

「ッ、だからっ……何がそんなに可笑しいというのですか!」

 明らかにルリカを小馬鹿にしている。
 こんなにも発言権がない我が身を悔しく思ったことはない。俺は怒りを必死で鎮めようと奥歯をぎりっと噛んだ。せめて視線だけはネグレイロスから逸らすまいと心に決めて。

「い、いや……はは、その、申し訳ない。ただ、ククッ……あまりに姫がその……いいえ、そう――そうですね。客観的事実のみを語れば、姫の仰る通りかもしれません。ええ」
「客観的も何も、それが歴史に刻まれた真実でしょう」
「それがそうとも言いきれぬのですよ、姫。まぁ一言で説明するのも難しいのですが……どの国家にも起こりうる、やむなき事情を汲んでいただきたく――」
「やむなき事情ですって? ……まさか、ロートレック王国の件は先代皇帝の――父親のやったことだから自分は関係ない、とでも言うつもりじゃないでしょうね」

 白熱するあまり、ルリカはすっかり言葉遣いがくだけてきている。
 もはや公的な会談とは言い難い応酬だ。

「もちろんです、ルリカ王女。バルツァトラウムのすべては過去の功罪も含め先代皇帝から私に委任されています。たとえ先代が独断で押し進めた所業であろうと、皇帝の名を引き継ぐからには我知らずというわけにはまいりません」

 そしてネグレイロスの方も、最初の頃と比べるとずいぶんと気安い話し方になっていた。

「だがしかし、奇しくもそれは貴国も同様であると言えましょう。そうですよね? アルネイオス王」
「――――……」

 ネグレイロスの意味深な一言で、国王様の顔色がサッと変わった。
 ……どういう意味だ?
 なぜこいつは急にルリカではなく王様に話をふったんだ?

「どういう、こと?」

 ルリカもその言葉の意図を掴みかねているらしく、呆然とネグレイロスと国王様を見比べている。

「なに、そのままの意味ですよ。
 たったいま姫ご自身がおっしゃったではないですか」


 ――『父親のやったことだから自分は関係ない、とでも言うつもりじゃないでしょうね』――


「え? え……?」
「私の口からはこれ以上なにも申し上げられることはありません。きっと、あなたのお父上が一番ご存知でしょうから」
「お父様……?」

 ルリカの目線が呆然と国王様を追う。

「お互い辛い立場ですな。アルネイオス国王陛下」
「………………」

 だが国王様はルリカと目を合わさず、そしてネグレイロスの言葉にも返答しなかった。


「…………ルリカ。もう気は済んだだろう」

 国王陛下は悲痛な面持ちで沈黙を続けていたが、しばらくして重々しく口を開いた。

「お父様、でも……」
「おまえの我が侭のせいでどれほどの人々に迷惑がかかったと思っている?
 時間も押している。これ以上の討論は無意味だ」
「で、でも……」
「ネグレイロス殿も、帝国の随伴の方々も、おまえの自己満足のために列席しているのではない。いいかげん弁えなさい」
「…………」

(国王陛下……どうして……)

 俺にはわかる。ルリカは今ひどく傷ついている。


 国王陛下、違います。違うんです。
 ルリカは決して自己満足なんかで意見してるんじゃない。
 発言権のない俺の代わりに、この場にいながら欺瞞に囚われて何も言えないでいる列席者の代わりに、正々堂々と相手に立ち向かってくれているだけなんです。
 ルリカの言動に偽りがないことは誰の目から見ても明らかだろうに。
 それは父親たるあなたが一番わかっているはずではないのですか……?

「……っ……」

 俯きながら肩を震わせる恋人の姿を見ても、俺は何もしてやれない。

(どうして……)

 どうして俺はあの席に座れないのだろう。
 ルリカの後ろに立っているのに。今こんなにも近くにいるのに。
 何のために、俺はここにいるんだろう。


「――もうよいではないですか、アルネイオス王。ルリカ王女殿下はご立派だ。
それはこの場にいる誰しもが認めることでしょう」

 その時、やけに朗らかなネグレイロスの声がこの気まずい空気を打ち砕いた。
 端から見ればルリカを庇ったようにも思える。

「しかし、ネグレイロス殿……」
「無意味だなんてとんでもない。姫との弁論は私にとっても非常に有意義な時間でした。迷惑をかけられたなどとも思っていませんよ」

 ……猛烈に悔しかった。あまりにも理不尽な現実に。
 どうしてルリカに助け船を出してやれるのが俺じゃなく、よりによって元凶のあいつなんだ。

「そう――ですか。ネグレイロス殿がそう仰るのなら……。
 ルリカ、もう座りなさい。ネグレイロス殿のご厚情に深く感謝するように」
「…………はい」

 憮然とした面持ちでやっと着席するルリカ。
 短い返事の中に、無念や失望が滲んでいた。


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Aqua-baiser 2019/12/31 12:30

2019年ありがとうございました。

本日は大晦日! 2019年最後の記事になります。
12月はなんとか月3更新を達成できたぞ……!!。゚(゚´Д`゚)゜。


今年4月から始めたCi-enも、これでようやく8ヶ月。ご支援くださった皆様のおかげでここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。
過去最大ボリュームのAqua-baiser最高傑作を目指して制作を続けてまいりますので、2020年もどうぞよろしくお願いいたします。


なお有料プラン特典予定の新作に使えるクーポン(最大100%オフ)は、これまでのご支援回数によって値引率が細かく変わる仕様となっています。途中で有料プランを退会されても、もちろんクーポン配布対象になりますのでご安心ください。
その際、販売開始と同時にクーポンを個別に発行させていただきます。


さて、ずっとテキストのみ更新が続いたせいか珍しく「絵を描きたい!」という欲求がわいてきたので、新作よろめき姫メインヒロイン・ルリカのHシーンのラフを切ってみました。

巨乳キャラは難しいですな……バ、バランスががが(;´Д`)
下から突っ込んでインナーの中にびゅびゅーって感じのシチュです。
このまま本編に使うためにブラッシュアップするかもしれません。でも没になる可能性も高い……です;
ちなみにパイズリ自体は本編で何回かあります。
せっかくの巨乳キャラ。長所はフルに活かさないと!

前回の更新分ではネグレイロスを心の底から嫌悪し噛みつきまくっていたルリカが一体どういった事情でこんなふうになってしまうのか? ぜひ本編で確かめてみてください……って、その本編を完成させないとですね。
がんばりますっ(`;ω;´)


無料プランは↑のルリカの線画差分公開、有料プランはそれに加えて生おっぱい差分ほか、完成までのラフや原寸サイズをまとめてダウンロードできるようになっています。

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Aqua-baiser 2019/12/28 19:00

会談にて――欺瞞と対話

12月は、いきなり耳鳴りが止まなくなったり、耳鼻科に駆け込もうとしたら車のバッテリーが上がってしまったり、歯みがきをしたら詰め物が取れたり、聴力検査室の段差で足を挫いたりと散々な出だしでしたが、今はどうにか日常を取り戻せつつあります。
無事オフの仕事納めとなり、忘年会も終わってやっと休みに入れました。
シナリオは現在356KBで、大体アンニュイ天使と同じくらいまでになりましたが、それでも全体の半分も進んでいなくて戦々恐々としております……。
Hシーンが今までで一番多いことも理由の一つではあるのですが、ひょっとしたら初めてのMB突入になるかもしれません。

そんなわけで、年が明けてもまだ文章のみの更新が続くかと思われますが、連載web小説を追うような感じで見守っていただければ……と思います。申し訳ございません;


さて、10年間お世話になっていたDLsiteブログが近々サービス提供終了とのことで、今後の進捗はこのCi-enのみで報告していく次第です。
以前は無料・有料プランのみの公開でしたが、これからは「誰でも」見られる記事を基本として更新していくことになりました。コメント欄も開いておりますので、いつでもお気軽にご意見をお寄せください。
また無料プランではこの誰でも見られる記事に加えて少しの未公開部分を、有料プランでは従来通り無料プランの約2倍ほどの情報量を載せていく予定です。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


ここからは、前回有料プランで先行公開した本編シナリオの一部を掲載させていただきます。
(一部シーンを省略しております)



(中略)


 その語り口から、ルリカの嫌悪感がひしひしと伝わってくる。

「そいつは確かに……気味が悪いな」
「でしょ? あんなもの目にしたくもなかったのに、侍女たちが他のドレスと一緒に出してきたものだから……忘れた頃に嫌なものを見せられて、私も必要以上に苛立っちゃって……でも、ガートルード達にはただの八つ当たりだったわよね。悪いことをしたわ」
「いや、それは仕方ないよ」

 それもセベンヌ先生の意図だったのかもしれないとルリカの話を聞きながら俺は思った。
 あの先生は決して悪い人ではないが、王女としてのルリカを思うあまりに必要以上の礼節を強いるきらいがある。
 明日の会談で贈り物のドレスを着たルリカを見せれば、ネグレイロスの機嫌をよくさせて、あわよくば少しでも有利に交渉を進められると考えたのだろう。

「しかし……ルリカは本当にネグレイロスのことが嫌いなんだな」
「当たり前じゃない! あんなやつのどこに好きになれる要素があるっていうのよ!」
「お、おお……」

 ルリカの熱の入り様に気圧される俺。

「そもそも帝国は敵よ。仲良くなんて出来るわけないわ。
 コウキとマナだって――」

 そこまで言い掛けて、ルリカがハッとしたように口を噤む。

「ごめんなさい……」
「いいんだよ。俺は気にしてないから」

 ルリカも俺とマナの事情を知っている。

「……そうだな。ルリカが言うように、俺とマナにとっても帝国は仇だ」

 頷くと、ルリカの表情がホッとしたように緩んだ。

「うん。だから、私も許せないの」
「4年前に代替わりしたらしいけどな。今の奴は先代の息子なんだろ?」

 しかもかなり若いはずだ。
 本人に会ったことはないが顔は肖像画で見たことがある。20代後半くらいの長髪の優男だった。
 俺とマナにとっての本当の仇は、正確には現皇帝ネグレイロスではなく、やつの父親――4年前に病気だかなんだかであっけなくくたばったという――つまり先代の皇帝だ。死に際はずいぶん悲惨だったようで、多少溜飲が下がったといえばそうだが、俺としては正直複雑な気持ちでもある。
 あの男にはしっかり罪を償わせたかった。俺が直々に制裁を下す夢だって何度も見てきた。それなのに。
 やつの死を聞かされて、俺のくすぶった怒りは宙ぶらりんになってしまった。
 
「誰が皇帝だろうと関係ないわ。帝国は帝国よ。私たちの敵であることにかわりはない」
「まぁ……確かにな」
「やったのは父親なので私は関係ないです、なんていいわけは通らないわ。あの男だって身内なんだから関わってないはずがないのよ。見ててねコウキ、明日の会談ではその辺を私がきっちり追求してやるんだから」
「頼もしいな」

 苦笑しつつ、いきり立つ細肩をそっと抱き寄せる。
 ルリカは抵抗することなく、素直に俺に寄り添った。

「講和――」

 俺の肩にもたれながら、ルリカがぽつりと呟く。

「お母様やセベンヌ先生は平和のために必要だって言うけれど……私には納得できない。
 本当にそれでいいの? 胸に不満を抱えながら、それでもなあなあで譲歩して、敵とうわべだけでも仲良くするのが平和なの? 本当は何一つわかり合えていないのに? 私は――私はなにか、違うと思う」

 その美しい青の瞳には何が映っているのだろう。

「見せかけの平和の陰で泣いている人達がいる。そんな気がするの」

 ふと、自分とマナのことを言われているように思えてどきりとした。

「……そういう人達を見過ごせない。したくないってことか」
「うん……」
「そうか。優しいな、ルリカは」
「……そうなのかな。わからない。私は、私の思うことを言っているだけ。
 本当は……そこに正義だなんてご大層なものはないのかもね」

 今のは国の象徴たる王女がしていい発言じゃない。
 ルリカもそれがわかっているんだろう。だから俺と二人きりの今、この瞬間だけは許してほしいと訴えている。
 俺にそれを咎める権利はない。だってルリカは、俺とマナの代わりにこうして怒ってくれているのだから。
 そう。優しいんだ、ルリカは。

「わかってるの。……個人的な感情だけじゃ何も解決しないってことくらい。お父様にも何度も言われてきたことだから。でも――」

 そう言うと、ルリカは自分を抱きしめるように両腕を組んで、ぶるっと身震いした。

「それでも、やっぱりイヤ。嫌い、あいつだけは嫌いよ。どうしても好きになれないの。仲良くしたいと思えないの」
「ネグレイロスのことか?」

 こくん。ルリカが頷いて、綺麗な髪がさらさらと揺れる。

「……あいつの目。何かイヤな予感がするの。あの冷たい目。気味が悪いわ」

 ルリカがここまで誰かを毛嫌いするのは珍しい。さっきからしきりに「わかり合えない」と言っているが、本来ルリカはどんな相手にでも出来るだけ歩み寄ろうと努力する性格なのに。
 話を聞いていると、どうも理由は「敵国の皇帝だから」だけじゃないような気がする。

「本当は……明日だって顔を合わせたくない。コウキも会えばきっとわかるわ、私が言ってること」
「どんなやつなんだ」

 聞くと、ルリカは思い出すのも疎ましい、という顔で首を横に振った。

「とにかく信用ならないの。見た目だけなら――そうね、高貴な人間なのかもしれない。皇族という品位と物腰だけはしっかり備わってるわ。でも私にはそれがうわべだけのものにしか見えなくて。話していても、笑っていても、いつでも同じ――からっぽなのよ」
「からっぽ……」
「なのに心の底では世界を憎んで、ずっと怒りの中で生きている。そんな感じがするの」

 ルリカにここまで言わせる男とは一体どんな奴なのか。
 先代皇帝の蛮行の数々を思えば、その血を受け継ぐ息子の人間性もお察し――と言いたいところだが、それじゃただの偏見だ。俺はそういうのは好かない。
 仇の身内だろうと敵国の皇帝だろうと、まずは一人の人間として敬意を持って向き合わなければと考えている。

「明日は俺が付いてる。大丈夫だよ、ルリカ」
「コウキ……」

 だからこそ、直に会ってこの目で見極めたいと思う。ネグレイロスという男を。
 ――明日の課題が一つ、増えた。


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Aqua-baiser 2019/12/01 19:00

憂う王女――忌敵

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