新年、明けまして!
…と言うにはあまりにも機を逃し過ぎましたねコレ。
どうもこんばんは、雑務です。
好きな足技は朧車とライオットスタンプとダブルローリングソバットです。
一月は数年ぶりにカラオケに行ったり、まぬりさんにラーメンをご馳走になったり、その足でかっぱ橋を散策したりと極インドアの雑務にしては結構出歩いた月になりました。
そして極インドアの恐ろしい所は「ただ歩いただけで次の日筋肉痛」という、二本足を授かる生き物として大変正しい症例が見受けられる所です。
たまには運動しような、僕。
改めまして、2023年もやさぐれ喫煙所雑務としてレビューやサポートを行って参りますので今年も変わらぬご愛顧を宜しくお願い致します。
では、今月のレビューです!
その女性は、父の愛人だった。
今回の作品は、以前紹介させて頂いたサークル「ふじきの」さんの新作「その女性は、父の愛人だった。」です。
ふじきのさんの作品は、純文学を思わせるような「静かな狂気」みたいなものを含む作品が多い(と勝手に思っている)傾向にあり、今作もそれに漏れず大変読み応えのある作品に仕上がっておりました。
今作は1~2時間の短編物語ですが、ヒロインはしっかりフルボイス!
ふじきのさんのイラストと作風にマッチした素敵な声優さんです。
ジャンルとしては 背徳感 これに尽きる。
更にふじきのさんの看板とも言える「毛深い女性」という魂のような性癖も完全収録。
父の愛人だった女性と過ごす、一時の夢幻にも似た体験をした青年は何を思うのか。
シリアスと母性、そして背徳が織りなす物語へ、いざ……
あらすじ
ちょっと待ってあらすじが完璧すぎる。
僕が補足することがこれといって何もない。
このあらすじに何かを足す事こそいわゆる蛇足という奴だ。
お店側が出してきたカフェオレに「俺はミルク多め派だから」などと言いマスターが静かに額に青筋を立てているのを横目にドプドプとポーションミルクを注ぎ込み、喫茶店の企業努力の賜物で作り上げた黄金比のカフェオレをただのコーヒー牛乳に変貌させる輩のような真似は決して出来ないのだ。
誓ってあらすじをサボる目的でふじきのさんの画像をお借りしたのでは断じてなく、このあらすじ以上に詳しく書く方法を僕は持っていないし、なんなら僕の書き方を読み間違ってこの作品がゲーミング人格排泄ゼリー対戦パズルゲームと思う人がいるかもしれないし、精子から子宮を守るタイプのタワーディフェンスだと思う人がいるかもしれない。
なのでここは静かにふじきのさんがご用意して下さった正しいあらすじを載せます。(Q.E.D)
ヒロイン紹介
ちょっと待ってヒロイン紹介が完璧すぎる。
僕が補足することがこれといって何もない。
このヒロイン紹介に何かを足す事こそ過ぎたるは及ばざるが如しという奴だ。
手順に厳しいラーメン屋が高菜を先に食べた客に…(以下同文
とはいえ僕にも魅力を語ることだって出来る。
サークルふじきのさんはシナリオとイラスト、この二つを二足の草鞋を履いて制作する方なので、自分のシナリオに完璧に合ったヒロインを自前で生み出すことが出来る製作者の一人だ。
21歳にして大人びた憂い気のある端正な顔立ちのヒロインに剛毛属性をぶつけてきた上にそれがコンプレックスであるというのだ。
…今皆さんの隠れた性癖が鎌首をもたげ始めたのではありませんか?
そう、何を隠そうこのサークルふじきのさんのヒロインは美女+剛毛率100%なのだ。
どんなに美人でも、優しくても、暗い過去があっても、母性的でも、過去にAVに出てても、喫茶店で働いていても、デリヘル嬢だったとしても、全員もれなく毛深い属性がついている稀有なサークルさんなのだ。そして僕はそんな鉄の意思を持つサークルさんが好きなのだ。
例に漏れず、今作のヒロイン沙織さんも自身が毛深いことを気にしている…が、それがまた男を興奮させる事を自覚している魔性のヒロインである。
ワクワクしてこないか。
どんな物語?
この先思いっきりネタバレがあります。
・
・・
・・・
物語の冒頭は、ヒロインのCVを担当する如月 菫さんの落ち着いた声と共に、宮沢賢治の「よだかの星」の一節の朗読から始まる。
自然の摂理、食物連鎖の上に成り立つ、またその贄とされる自身を嘆いたような一小節が美しい女性の絵画をバックに流れる。
「よだか」は、この小説に至ってはとても醜い鳥とされている。
その風貌のせいで同類からは後ろ指を指されるような扱いを受けている存在だ。
果たしてこの一小節はこの絵画の女性が詠んだものなのか。
もしそうだとしたら、何故こんなにも悲しい文章を詠んだのか…。
・
・・
・・・
主人公の「僕」は天才画家である父の絵の才能にあやかる事が出来ず、「絵」と「父」から距離を置いていた。
そんな折、父の訃報が彼に届く。
地下鉄の階段から落ちて、あっけなく死んだという。
天才画家と謳われた、自身にとって疎ましい存在であった父を喪った「僕」の胸中はどう揺らいだのだろうか。
父の遺品の整理をする為に、何年も遠ざけていた父のマンションに訪れると、そこには一人の女性が住んでいた。
彼女は父の絵画に描かれたモデルであり、「僕」が絵画を通して一目惚れをした女性だった。
そして、僕が一目惚れをした女性は父の助手であり、同居人であり
愛人だったのだ―――。
みどころ
この作品はまさに官能と純文学のハイブリッドだと思うんです。
遺品整理が始まってからは、お互いに絵の心得がある事や、父の思い出話等で二人は急接近していきます。
手分けして父の絵画の整理をしていると、「僕」はふとある絵画が目に留まる。
その絵画には、完全にSMに興じ切った成れの果てのような沙織さんの姿が描かれていた。
ここから「僕」は沙織さんを「一目惚れした絵画の女性」から「女」としてハッキリ意識していく事になります。
元々綺麗な沙織さんに対して、一目惚れによる憧れや好意はあったのかも知れない…が、
明確に二人が雄と雌として舞台に上がるのは恐らくここらへん。
この絵画を目撃する事によって、「僕」は沙織さんが本当に父の愛人であった事を強く印象付けるきっかけになっていきます。
絵を通して一目惚れした相手が父親の愛人で、しかもガッチガチのSMプレイに興じてる上に乳首にピアスまで空けられて恍惚の笑みを浮かべてる絵画を目にするってどういう心境だろうか。
最早新手の○問ではなかろうか。
伴侶や恋人が他の異性に奪われるのが、今日日正しい寝取られだと思う。
勝手に好意を寄せてた異性が知らない内に自分以外の異性と親密になるのが今日日正しいBSSだと思う。
だとすれば、
「絵画の女性に一目惚れしたら実の父の愛人だった」
場合はジャンルとしてどう区分けすればいいのだろうか。
ここにまた新たなトリビアが誕生した瞬間だった。
しかも徐々に親密になるに連れて父の影が濃く印象に残っていくのだ。
「僕」にとって沙織さんとする”初めて”は、ほとんど実の父親が先に済ませている事実にどう立ち向かえばいいのだろうか。
父によって開発されたキスやセックス、ソーププレイやアナル調教に至るまで…沙織さんの痴態を見る度に「自分の父親が仕込んだ賜物」だと思うと興奮と嫉妬で頭がおかしくなる。
そして沙織さんはとても優しいので、乳房に触れる度、口づけを交わす度に「父の時はどうだったか」をこと細かに教えてくれる。
「実の父の愛人」という立ち位置の女性がこんなにも複雑かつ興奮するとは。
SMの絵画を沙織さんが見つけた時に、父との馴れ初めを話してくれるのだが
どんな寝取らせ報告よりも心に来る。
だって相手が父親なんだもの。
例えば滅茶苦茶好きなゲームのヒロインがいて、その子で死ぬほどシコってたらモーションアクターが父親だった、みたいな事ですよ。
なんか違うな。この話一旦忘れて!
…そうして沙織さんの生々しい父親とのまぐわい報告を受け、更には一度きりだった筈の体の関係の継続を求めたのは沙織さん自身だという事が発覚する。
父はヌードを描く時、モデルの女性を必ず抱くという習性を利用したのだという。
ここでも「父親の性癖」を暴露され、色んな意味でいたたまれない気持ちになる。
そんな話を聞かされて思いっきり勃起している「僕」に沙織さんは
「あなたも、私のヌードを描いてみますか」
という実質の体の誘いを提案される。
ここから先はダムの放水の如く怒涛の濡れ場である。
ヌードデッサンという体裁を取りながらその妖艶な肢体に誘惑されていく「僕」。
沙織さんは「僕」が童貞だとわかるや否や、そのフェロモンを夥しく匂わせ、「僕」を虜にしていく。
最初は敬語だった話し方も徐々に小さな子を宥めるように柔らかい口調になっていき、その端々からは鼻を突くような強烈な母性が襲ってくる。
「僕」が初めての実績を達成する度に沙織さんの口から放たれる父が達成した実績に狂おしく嫉妬しながらも、その話の先を求めてやまない。
「僕」は絵の才能には恵まれなかったかもしれないが、父の背中を追う才能はあったのかもしれない。
時間が経つのも忘れて体を求め合い、ヌードデッサンという名の筆卸しが終わる頃、彼女は幻の様に「僕」の元から消えてしまう…。
で、この後「僕」の後日談があって物語は終わるのだが
全体を通してとってもおしゃれ
文学作品としてもえっちな作品としてもおしゃれなのだ。
言うなれば、よだかの星を現代風にオマージュしつつ「よだか」の醜さを実の父親とその愛人という形で表現しつつ性癖をこれでもかと散りばめて全く新しい作品に仕上げた感じだ。
僕はこの作品を読んで
「こんなにキレイにテーマに沿って作られる作品があるとは」
と腰を抜かすほど驚いたし、読み終わってから何かのピースがカッチリはまるような…テトリスの縦棒を差し込んですべてのテトリミノが消えた時のような得体の知れない感情になった。なんというか、ものすごいしっくり来る物語なのだ。
沙織さんが毛深い事をコンプレックスに思っているのは「よだか」のような心の底に抱いた醜さを隠すためのメタファーなのでは、とか考察してみたり。(逆に「毛深い」をテーマによだかの星を選んだ気さえしてくる)
詳しく書かなかったが、作中では沙織さんの胸中を表わしたかのような絵画も出てきており、それもまた「よだか」とリンクしているようで、とても興味深い表現となっている。
また、声優さんの演技も素晴らしく、沙織さんの儚さやミステリアスな所や童貞少年を誘う経験豊富お姉さん的な部分もしっかり演じ切ってくれている。めっちゃいい声なんです。
以上、背徳感と母性に溺れて焦燥感を煽られながら抜きたい人や、落ち着いた雰囲気で静かに抜きたい人、純粋に文学作品として読みたい人におすすめの作品でした。
(落ち着いた雰囲気で静かに抜きたい人って何だ?)
…これは余談ですが、アナル調教のシーンがすごく凝ってておすすめです。
・
・・
・・・
さて、サークルふじきのさんの作品を紹介させて頂くのは今回で2度目となりますが、改めてこちらのサークルさんの作品の雰囲気がとても好きなのだと再認識させてくれた作品でした。
二つ返事で掲載許可を下さったふじきのさんに改めてお礼申し上げます。
ありがとうございました!
関係者リンク
サークル「ふじきの」さん
Ci-en
Dlsite
Twitter
ヒロイン「沙織さん」役 如月 菫さん
Twitter
iikoe