HOTLINEしまへび 2019/07/09 22:00

どくへび紹介最終回「キングコブラ」


『わたくしはキングコブラ…誇り高き孤高の王なんて言われていますわ。昔、人間達に助けられたことがありますの。今度はわたくしがあなた方を助ける番ですわ』

解説

長かった毒蛇紹介も今回が最終回です。

最後に紹介する毒蛇は世界で最も有名なこの種、キングコブラです。

東南アジアの広い地域の熱帯雨林に生息しているこの超大型の蛇は平均全長3メートルほどにもなります。世界最大の有毒蛇で、キングコブラ属に所属する唯一の種です。

つまり、キングコブラというのは本種のみの単独種であり、名実共に孤高の王と言える存在なのです。

他のコブラと同じように興奮した時や威嚇する際にフードを広げるのですが、キングコブラはさらにその状態で移動することができます。

意外なことに、実は本種が持つ毒(神経毒)よりも他のコブラ科の蛇の毒のほうが強く、毒の強さ自体はそこまででもありません。

しかし、本種はその身体の巨大さから注入する毒の量が凄まじく、現地では像をも殺すと言われているそうです。

また、生息域が人間の住んでいる場所から離れていることが多く、あまり本種による人間への被害はありません。

鼠を追って人家にやってきた他の蛇をさらに追いかけて出没することが稀にありますが、タイ王国では本種は神聖な生き物とされているために専門の業者が保護して自然へ帰すそうです。

“蛇をなぜキングコブラが追うの?”と疑問に思われた方もいるでしょう。

実はキングコブラの主食は蛇なんです。他にもトカゲ等の爬虫類も食べますが、得に他の蛇を好んで食べます(実はキングと名の付く蛇は本種に限らず蛇食が好きな蛇が多い)。

本種には他の蛇には無い面白い習性があります。雌は産卵期になると枯れ葉等を集めて巣を作り、その中に卵を産んでとぐろを巻いて孵化するまで保護します。子育て熱心なお母さんなのですね。

最後にキングコブラにまつわる心温まる話を紹介して毒蛇解説シリーズを終わりたいと思います。

干ばつが続いた年、とある南インドの村に一匹のキングコブラが迷い込んできました。村人たちは怯えつつも何か様子がおかしいと気づきました。どうやらその蛇は水を求めていたようです。そこで、ペットボトルの水を差しだすと、なんと人の手からごくごくと水を飲み始めたそうです。

そのキングコブラは保護施設で保護されたのですが、一切人を襲わなかったと言います。

蛇は人に懐かないと言われていますが、ひょっとしたら彼らも我々と心を通せられる優しい生き物なのかもしれません。

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